同角沢
コースタイム
堰堤12:20→ 行水ノ滝13:20→ 遺言棚14:30→ 遡行終了16:30→
尾根が消え・・・下降開始18:00→ ビバーク開始19:00
下降再開5:00→ 小川谷8:20→ 小川谷遡行終了9:30→ 駐車場11:00
天候 | 曇り 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2013年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
遺言棚の左の奥の脆いザレたところを登って上に行ってあたった尾根が、東沢乗越の尾根かと思い、その尾根を西に行けども行けども登り下りであまり標高が下がらない。おそらくは、1031のピークを踏むルートを行っていたのかと・・・ 引き返すには遅すぎると判断し、小川谷には近づいているからと、そのまま突き進む。途中リボンやトラロープがでてきて、ホッとする瞬間があったが、そうは行かず・・・ 道が消え、懸垂下降をすることになってしまった。 |
写真
感想
リーダーが一人で遡行したことがある同角沢へ連れてって頂くことになった。装備は、ハンマー・ハーケン、マスターカムなどの登攀用具を持って行った。ロープは、8mm20m、40mの二本。
出合までの林道は長いトンネルがあるため、ヘッデンを付けて出発。そのトンネルは、2011年に新しくなったらしい。実際通ってみて、明かりがないとキツイと思った。鶴嘴でバチコンやって作られたような古いトンネルを二つ越して少し歩くと、電信柱に同角沢出合と書かれているのが目に入り、そこのすぐ脇を下る。左手に、同角沢のF1が見えた。沢装備を装着して、エメラルドグリーンの水に入り、いざF1へ。
トップをとうぞということで、右壁を登る。大丈夫そうなので、みんなもフリーで越える。すぐさま傾斜の緩い滝が。これは、流芯をそのままいける。
三重ノ滝20mは、最初リーダーが巻き道をと思って右側の落ち葉ゾーンを登って行ったが、見る限り、鎖伝えに行けば大丈夫そうな気がしたので、提案し、トップで登る。一段上がってからの右上するところがヌメっていていやらしい。古びた紐が垂れていて、それに少しは頼らないと厳しかった。その上部の立木でフィックスを張り、みんなに登ってきてもらう。そこからのトラバース、下降は確保なしで問題はなかった。
不動ノ滝20mは、最初リーダーとメンバーが右側の二つの巻き道を登ろうとしたが、あまりよくなさそうなので、ハーケンもスリングも残置であったので、見た感じ滝を登れなくはないと思い、提案。トップ行くかと聞かれたが、ここは少し不安だったので、お断りする。リーダーにトップを行って頂く。残置2箇所に支点をとる。滝を右へ横切るところで、完全に水を浴びる。滝からでてブッシュに入る前にハーケンを1個所打ち込む。そこからが悪い。ぐずぐずで落石パラダイス。リーダーは、悩みながらも突破。ロープが40mしかないので、フィックスして頂く。みんなが登り、ラストに行く。水流へ飛び込むところは、初めの一歩が怖いが、入ってみるとホールド・スタンスちゃんとしたものがあった。しかし、ずぶ濡れで冷たい。そこから脱出し、ハーケンを回収。そこらへんで試しに、マスターカムをと入れてみるが、引っ張ると岩がかけて外れた。そして、グズグズゾーンへ。確かに、崩れる。確実なホールド・スタンスは何もない。だましだまし、なんとか登りきる。登れなかったということはないだろうが、トップで行かなくて良かったと思った。
ここから、同角沢アスレチック始まり。倒木も多く、色んな動きができて楽しめた。
流木がかかった3m滝(これが行水ノ滝?)は、トップで行き、びしょ濡れとなるが、長いリーチのおかげで水流の中の石をつかみ体をズリ引き上げる。上で大石に支点をとり、みんなに登ってもらう。
凹型の奥にある滝は、4mくらいで高さはないが、とても登れるような気がせず、左のルンゼを楽に巻いた。
無名ノ滝25mは、残置が見えたが、見た感じ登れる気がせず、左の土ルンゼを高巻く。みんなフリーで行けた。
遺言棚45m、水量がかなり少なかったが、迫力は満点。当然、右側の巻き道を行くものだと思ったら、リーダーがフリーで登りはじめた。クライムダウンして、若いときに単独で登ったことがあるから、いくぞということになった。一段目は、なんなく登ることができる。左上するトラバースが滑りそうで怖かったが、傾斜がないためか問題はなかった。ハーケンが打ってあるあたりで、またマスターカムを入れてみたが、やはり引っ張ると、岩がかけて外れた。さて、いざ二段目。リーダーがとったルートは、左奥の砂壁からブッシュへ右上するもの。砂壁は、崩れるは崩れるは・・・ものすごいグズグズ。しかし、リーダーは、なんとか突破。そこから右上に行くのも土がグズグズ。木に支点を一箇所とり、そして姿が見えなくなり、ビレー解除の声が。みんなが登る度に、ラク、ラーク!下には、ラクで堆積ゾーンができあがった。ラスト、テンションをかけずに意地でも登るぞと意気込み挑む。触れたものがザラザラ落ちていく。こんなところ登れませんよと思うが、傾斜が少し緩い分、なんとか粘っこく上がっていける。砂壁を突破すると、トラロープ発見。こんなところにフィックスがあるのかと思って安心。でも、頼らずに、土壁を突破。リーダーに感謝し、遺言棚を上から見下ろす。いつの日か、左フェイスを登るぞと。それから、もう二度と出すことがないと思ったロープをザックに仕舞い。リーダーとみんなが待っている尾根へ上がる。
時計を見ると16:30。なんとか日没までには間に合いそうだ。その尾根を西へ行く。しばらくして、踏み跡が三箇所くらいある平らなところへでた。リーダーが、こんなところあったけっかなとつぶやいていたが、とりあえず方向を西にとり、その踏み跡がある方向へ歩いて行った。しかし、行けどもアップダウンアップダウンで標高が下がらない。みんなでおかしいなと言い合ったが、簡易GPSで確認したところ小川谷へとは近づいているので、そのまま突き進むことにした。途中、テープやトラロープがあり、この道を行けば小川谷へすんなり行けるのではないかと思いが強まった。しかし、完全に道が消えた。この時点で18:00。もう引き返すことなどできず。方向を西にとり、斜面を下っていく。そこから急になっていき、木に支点をとって、懸垂下降の連続。何度目か覚えてないが、リーダーが20mロープをダブルで試しに手で握りながら降りてみたところ、急にシュルルルルというロープが引かれる地獄的な音が。それとともに、ガラガラガーン。リーダーが滑落した。なぜという疑問とリーダが死んだという考えが同時に浮かぶ。恐る恐る、安否を確認すると、返事がちゃんと返ってきた。みんなで胸を撫で下ろす。しかし、怪我をしているのかもしれない。サブリーダーが次に40mをダブルにして降りる。そこから声がけして、状況を確認。リーダーのあたりから、サブリーダーの位置が確認でき、そこまで上がっていけそうだということ。残り三人は、上で待機。サブリーダーが、リーダーの到着を下で待つ。しばらくして、リーダが上がってきた。本当に奇跡的に無事だった。ここはもう降れないから、左上して違う尾根に入り下るということになった。ここで二隊に分かれ、上で合流することにした。残された三人、トップを行き、支点を3箇所とったあたりで良い場所をみつけたので、そこでロープをフィックスし、二人に登ってもらう。登り切ったあたりで、もう暗いから行動中止、ビバークとなった。
下の二人は快適な平地を見つけたらしいが、三人は斜面。他の二人は、気のところへなんとか横になれるスペースがあったが、私は木に座るという感じに。それぞれ、木にセルフビレーをとり、寝る支度。私は、雨具すら持っていなかった。ツエルトとエマージェンシーシートを持っている仲間がいたので、後者を頂くことに。それから、ビニール袋を被ると良いと教えてもらったので、穴をあけて被った。しかし、寒い。まだ着ているものも乾いてない。特に、靴、靴下は濡れ濡れ。食糧、ソイジョイ1本、どら焼き1つ。飲み物、350m紅茶、500mポカリスウェット1本と少し。貴重なポカリを少し飲んで、目を閉じる。木の上に置いたケツが痛い。ロープをひくことにする。少しは軽減された。木の葉の間から青黒い空が目に入る。しかし、星は一切見られなかった。雨が降らないことを祈って、目を閉じる。花火の音が聞こえる。そんな音さえ、もの凄く懐かしく思えた。色々と考えず、寝ることに集中しようとするが、眠れない。寒い。どうせ時間はたっぷりあるのだからと思い、面倒臭かったが、予備の乾いた沢靴に履き替えることにする。靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、濡れた足をずりずりと乾いた沢靴へねじ込む。暖かくなるわけではないが、少しは寒さが和らぐだろう。しかし、寒い。そういえば、手袋があった。ヘッデンを付けると、何やら虫が寄ってくるは、地べたには虫が這いずりまわっているのが目に入ったが、そんなのはどうでもよかった。さて、取り出してみると、悲しいことに濡れていた。上の仲間は、鼾をかいて寝ている。羨ましすぎる。私もなんとか目を閉じ、寝ようと努力する。意識が少し飛んだと思ったら、起き、また飛んで、また起きの繰り返し。途中、獣の声やシカの鳴き声が家族の声や救助隊の声に聞こえた。あまり時計を見たくはなかったが、それでも見てしまうと、まだ何時かまだ何時かの繰り返し。一向に夜が明けないと感じる、自分にとっては寒すぎる、長い夜だった。やっとのこと4:00になり、行きますかと下のリーダーたちに尋ねると、5:00まで待とうとのこと。また少し長い1時間を過ごした。5:00になると、完全に目が効くようになった。下の二人はもう登り始めており、合流地点を指示してくれた。そこまで行くことに。ソイジョイを無意識的に食べ、行動開始。合流して、元気なリーダーを見て安心する。状況を詳しく聞くところによると、落ち葉で滑って片手を離してしまい、ロープが抜けて滑落したとのこと。落ち葉斜面をズーと滑った後、崖っぽくなっている手前の平地で運よく止まった。そして、そのときの衝撃でメットとヘッデンを落としたが、ロープは大丈夫だったとのこと。なんとも奇跡的だった。さて、左の尾根をみると下り易いことがわかった。リーダーを先頭に懸垂下降を交えながら、下っていく。右手に沢筋が見えたので、リーダーが偵察で降りていく。しかし、そこの下は滝になっており危険だということで断念。右の尾根に登り返すのは大変だから、左の尾根にトラバースしてその尾根に立ってみると、どうやら傾斜が緩く良い感じ。ここでエネルギー不足を感じ、仲間から貴重な飴を分けて頂いた。本当にありがたかった。そして、その尾根を懸垂下降を交えながら、下っていく。そしてついに行き止まる。右と左に沢筋が見えた。GPSで確認すると、小川谷はもうすぐ水平距離で100mくらいとでている。もし、両方とも凄い滝とかでてきて降りられなくなったら、登り返してまた道を探さなければならない。運命の分かれ道。リーダーは、左の沢筋を選び、40mロープをダブルで降りていく。どうやら少し足りないみたいだが、クライムダウンできるとのこと。三番目に降り、見てみるとかなり良い感じ。先を偵察していたリーダーを追いかけていく。リーダーと一緒に右カーブを越して少し下りブッシュを抜けると・・・!!!出ました。ついに、小川谷へ!一目散に元来た道を駆け上がり、カーブを越えてみんなが見えるところで○サイン。ふと上を見ると、木の枝にピンクテープが。なんと、ここを降りたグループがいたのだった。まっ、そんなことはもうどうでもよく、みんなを引き連れて、小川谷へ降り立つ。本当に小川谷かという疑問が一瞬よぎったが、GPSがちゃんと指し示している。なんかどらやきまでは食べる気がしなかったので、再度貴重な飴を分けてもらい、ポカリを口に含んで、いざ、ラストスパート。2週間前に行ったのに確信はなかったが、少し遡行すると、ヘツッた感触があるところがあり、安心した。すぐにデッチ沢の二俣につき、そして5m滝のハイライト。流芯右を登れたが、疲弊した体で無理してもしょうがないので、左巻きで通過。しばらく歩いて、大きな堰堤の上で、リーダーと熱い握手。靴を履き替え、やっと帰路につく。途中、心配している家族のこと、それから遭難対策のことを話したが、おそらく12:00までに連絡できれば大丈夫だろうとの予想で、なんとか時間に間に合いそうな目途が立ち、安心。11:00に駐車場に着くことができた。携帯がビジターセンターあたりまで通じなかった。みんなそれぞれ家族に連絡し、無事を伝え、心配をかけたことを謝り、また遭難対策連絡委員をはじめメンバーにご迷惑をかけたことを謝罪した。
最後に・・・
今回の遭難の要因は、東沢乗越の尾根を間違えたことにあり、またおかしいと気づいたときに日没時間を考えて引き返そうとは思わなかったことである。しかし、3種類のルート図やブログの記述から、間違えそうにはないような感じがしていたが、どこへ行ってしまったのだろうか、不思議だ。とりあえず、次回はちゃんとしたGPSと地図を持って、遺言棚を右から巻くか、小川谷を通過し東沢を通っていき、そのルートを通って復習する必要がある。
日帰りの沢登りだからと、ビバーク時に必要な雨具も着替えも何もかも持っていなかったことは反省すべき点だ。もし、ビバーク時に雨が降ってきたら、私は寒さに弱いのでかなり危険な状態になっていただろう。これからは、通常個人装備として持っていこうと思う。また、ビバークの仕方も平地を探してたき火をするべきだったなど何点か反省点がある。
ビバーク時、私もそうだったが、あまり取り乱さなかったことは幸いだった。みんな不思議とその状況を受け入れられていたのは、凄いことだと思った。
基本的にわからない状況で下降するのは、危険なことだったとは思うが、リーダーが小川谷に必ず着くという信念のもと全てのトップを引き受け、そして結果メンバーみんなを無事生還へと導いたことは素晴らしいことだ。数々の困難を潜り抜けてきたリーダーの後姿を間近に体感できて、勉強になった。
色々と書いたが、今回の遭難は、ある意味運がよかった。それを体験できたのは、ご迷惑をかけた方々から思えば不謹慎かもしれないが、良い体験だった。これを糧に、安全面を重視した沢登りを心がけ、そして他の方々にも伝達していきたいと思う。
リーダーをはじめ、メンバーのみなさま、ありがとうございました!
また沢登り、楽しみましょう☆
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