大島亮吉『石狩岳より石狩川に沿うて』100年前の足跡をたどって�� 由仁石狩川・ルベシナイ川合流点 - 石狩川合流点〈大雪湖〉
kenn
chikappu
体力度について
- GPS
- 02:29
- 距離
- 5.4km
- 登り
- 18m
- 下り
- 17m
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標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 2:29
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 2:29
| 天候 | 曇り時々雨 |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2021年09月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
|
写真
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感想
100年前の大島亮吉『石狩岳より石狩川に沿うて』の足跡をたどる第3弾として9月4日に、この山岳紀行に印象的に描かれている由仁石狩川とルベシナイ川の合流点、そして由仁石狩川と石狩川本流の合流点を2人で歩きました。
地形図上は完全に大雪湖の中になっているこのあたりですが、大雪湖の水位がかなり低いために、あまり濡れることもなく歩くことができ、これら二つの「出合」もはっきり判りました。
言ってしまえば、水が少なくて露出したダム湖の中を歩いただけですが、そこにはどこか日本離れした風景が広がっていました。それは、たぶん100年前とは全く異なる風景だとは思いますが、また少し、大島亮吉たちと同じ場所に立ち、歩くことができました。この日のGPSログは、湖の上を歩いたかのような、ちょっとシュールなものになりました。
◉大雪湖の中を歩いて石狩川へ
旧石狩沢〜石狩岳〜音更山〜由仁石狩川の山行（ https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3402661.html ）から1ヵ月たった9月4日、『石狩岳より〜』に印象的に描かれている由仁石狩川とルベシナイ川の合流点、ルベシナイ川と石狩川本流の合流点を歩いてみようと妻と二人で出かけた。先日の山行に続く部分で、現在の地形図では大雪ダムによってできた大雪湖の湖水の下になっているが、今は水位が低く、問題なく歩けそうだ。
大雪ダムから大雪湖を回り込むように車で国道273号線を行くと、大雪大橋の上から北側に由仁石狩川が大雪湖に注ぎ込む手前のゴルジュの部分を見下ろすことができる。由仁石狩川沿いに国道をさらに数百�辰曚瓢姐馥淑�向に行った所の作業道の入口に車を駐める。雨模様の中、薮を少々漕いで由仁石狩川の川原に出て下流へ、大雪湖の方へ降っていく。広い川幅が次第に狭まり、高くなった両岸が迫って来る。1920年7月26日、ユーニイシカリ（現在の由仁石狩川）の流れを降ってきた大島たちはここにたどり着き、
「遂に再び両岸より山側が次第に迫って来るのを見たとき自分の心は秘かな悦びに満された。」
地形の変化によって大島は、留辺蕊峠（現在の石北峠）からの支流（現在のルベシナイ川）との合流点が近いこと、そして石狩川本流との合流点も遠くないことを知って喜んだのだ。
「次第に迫って来た山は頭上を圧し、狭められた水は音高くせせらぎ始める。遂に両岸は黒い岩壁に押迫まられて峡間をなし、泡立ちながらその間を吾がちに躍り込む様に奔下している、岩壁をへずり、深潭を腰まで浸かってゆくうちに何時の間にかまた峡間は開けて前方が明るくなって河相は以前と同じ姿にかえっている。」
私たちの前方の頭上30〜40mほどに橋が見えてくる。先ほどそこからこちらを見下ろした大雪大橋である。もちろん大島の頃にはなかった橋だ。川幅はこのあたりが一番狭いが、水量も少ない今は、大島の書くような難所ではない。橋のたもとが護岸されている以外は両岸とも土の斜面で、川原には土砂が堆積しているので難なく通過できる。
両側が開けると、そこはもう地形図上は大雪湖の湖面だが、今は広い谷の真ん中を小川が流れているだけ。右手の谷から流れ下って来るルベシナイ川も、砂の土手に隠れて水面はなかなか見えない。しかし、近づくと、現在の地形図には表記されない由仁石狩川とルベシナイ川の合流点がはっきりわかり、そこまで歩いて行ける。
「右手より大きな緩やかな流れが会している。これこそ「留辺蕊峠」より発する水系である。」
ここからは西へ、谷幅が200mほどもあるルベシナイ川の最下流部＝地形図上は大雪湖の東にフィヨルドのように延びた部分を行く。両岸の土手は高さ10〜15mより下には木がなく、境目がはっきりしている。そこが、水量の多いときの大雪湖の湖面なのだろう。境目のすぐ下は草地で、草原状の河岸段丘もある。
川は細かく分流し、川原には土砂が堆積し、濡れずにどこでも歩いて行ける。ちょっと日本離れした、どこかグランドキャニオンを思わせる景観。それは大島たちが100年前に見たのとは全く異なる風景だろうが、このルベシナイ川最下流部について大島は
「全く不安を洗い流した様な軽い気持ちで膝以上の河心をざぶざぶと流れに押されてゆく」
としか書いていない。
両岸が少し迫った喉のような部分を過ぎると、これまでとは比べものにならないほど開けた、実に広々とした所に出る。石狩川本流の谷、現在の地形図では大雪湖の中心部である。対岸までは500mほどもある。雨脚がはっきり見えるほど強くなってきたが、干からびてひび割れた旱魃地帯のような地面には薄く草が生え、鹿の群れの足跡が道になっている。
「そうするうちにまた前面より幅𤄃い河床を有った大きな河が折柄の斜陽にその水面一杯を宛で金色の流れの様に輝かせて静かに流れながら展開されて来た。再び自分たちはこの陰惨な針葉樹の下蔭の蘚苔の間から滲みでて、森林の暗さを通り抜け峡谷の間を奔馳し平原を緩やかに迂曲しつつ遠く海にまで流れゆく石狩の大河のまだ荒々しい表情をした上流の姿態を眼にすることが出来たのである。」
再び石狩川の本流と出合えた喜びを大島はこう表現している。私たちも、わかりにくいルベシナイ川の水脈をたどり、石狩川本流との合流点を見つけることができた。夕陽を浴びて河面を見つめる一人のアイヌを見つけて大島が感慨にふけったのもこのあたりだが、今は全く木もなく、モンゴルの大草原かスコットランドの荒地を流れる川のような風景だ。
大島たちはここから石狩川本流を上流へと少々遡り、三角点測量の小屋に泊まっている。そこは、アイヌからイワナを買い求めようとした大島が、金を受け取ろうとしないアイヌの姿勢に、深く自分の行為を恥じた場所である。現在の層雲峡本流林道と高原温泉への道の入口近くと思われるこの場所までも行ってみたかったのだが、かなり時間がかかりそうなのであきらめる。いずれ、大雪ダム方向と合わせて「大雪湖内」を一周してみたいものだ。
東の湖岸近く、水量が多いときには島になる小高い所の上まで、裏の草地から上がってみる。石狩川とルベシナイ川の合流点付近の雄大なパノラマが眼下に広がった。
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