【白山北部】黒池のほとりにて
- GPS
- 32:00
- 距離
- 8.7km
- 登り
- 912m
- 下り
- 914m
コースタイム
- 山行
- 10:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 10:00
- 山行
- 9:10
- 休憩
- 0:50
- 合計
- 10:00
天候 | 両日とも晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
【黒池へのガイド】 幻と言われる池です。 今回のように大畠谷側から詰め上げるのは全く万人におすすめできないので,より一般的と思われるルートをご紹介(話は無雪期に限定します)。 この池のある尾根は登山道皆無の猛烈な藪尾根なので,藪との格闘を極力避けつつ最短で黒池に至るには,開津橋南詰付近から桂湖沿いの林道(地図に表記なし)を辿って開津谷に入り,開津谷を遡行して標高620m付近から南に派生している枝谷を登り,黒池のある尾根のP1249のすぐ東側のコルに出て,尾根を西進して黒池を目指すルートが最も合理的ではないかと思います(今回の山行で下山時に採ったルート)。頑張れば日帰り可能かも。 実際,どうやらこの同じルートで黒池を目指した方がいらっしゃるらしく,開津谷の枝谷の源頭付近と,尾根に出たあたりからP1249付近までは比較的新しいピンクテープがあり,枝打ちの跡までありました。ただし,このピンクテープと枝打ちはP1249で終わってしまい,あとは完全な藪です。 この尾根の藪はがっちり絡み合った灌木主体の一番嫌なタイプの藪で,かなりの時間を要するのでご注意を(下りでも1km進むのに2時間ほどかかります。登りは推して知るべし)。また視界が悪いうえに尾根が広く方向を見失いやすいので,ガス等で視界が悪い際の入山はおすすめしません。なお,尾根が広い部分は尾根の中央付近に窪地が走っており,そこに獣道が集中していて比較的歩きやすいので,なるべくそこを歩くといいです。 また,このルートで少し厄介なのが,開津谷の遡行。開津谷は(少なくとも下部は)開けていて歩きやすい谷なのですが,大きな堰堤が連続するため,その度に左右どちらかを巻く必要があります(今回はほとんどの堰堤を懸垂下降で降りてしまいましたが,どの堰堤も右岸が歩いて巻けそうでした)。また,開津谷の標高620m付近から南に派生する枝谷は,基本的に難所はなく登山靴でも歩けそうなくらいですが,一箇所だけ7mほどの滝があるので注意。これは左岸側の灌木斜面を巻けます。 |
写真
感想
地形図で人跡絶えた深い山中に池の記号を見つけると,どうしてもそこに行きたくなってしまうのは,なぜだろう。
今回の池は,白山北部の大笠山と奈良岳を結ぶ稜線から東に派生した大きな尾根の真ん中にぽつんとある。誰がそう呼んだか,黒池と池の名の表記さえある。しかし,登山道の表記はなく,完全な藪尾根である。深い積雪に藪が埋まる冬季はまだしも,無雪期にこの池を訪れたという記録は数えるほどしかない。あまりに藪が濃すぎるのだ。
今年の3月に仙人窟岳から笈ヶ岳,大笠山を回って下山時にこの尾根を通過した際,雪に埋もれた白い空き地のようになった黒池の上に立って,いつか雪のない季節に,この池の水面を見てみたい,と空想していた。その時は,まさかこんなに早く再訪することになるとは思わなかったが…。
水場が近いと,深い藪の中でも獣道がわずかに濃くなる。途切れがちなヒントを辿るように獣道を追って藪をかき分けていったその先に,黒々とした水面を見た時,ああ,黒池だ,と思った。実際,その池は,一面の緑の森の中ではっとするほど黒く光っていた。しかしそのほとりに立って覗き込むと,水は驚くほど澄んでいた。なぜこんなに透明なものが,こんなに黒く見えるのだろう。まるで深い森の中に見開かれた黒目がちな眼のようだ。その澄んだ瞳の上に,朝日に光り輝く10月の森が静かに映り込んでいる。
一周100mくらいだろうか。立ち去りがたくて周囲をぐるりと歩きながら,小一時間ほど過ごした。風はなく,木立も水面も動かない。時々鳥の声がする。何の鳥だろうと思う。耳を澄ませるが,やはり名前は分からない。名前も分からなければ姿も見せない鳥が一日じゅう鳴いている,そんな雰囲気の池だ。
山から下りて職場に行って,パソコンのキーボードを叩いていると,藪で傷だらけになった両手がひりひり痛む。そしてふと昨日の黒池のことを思い出す。立ったり座ったり,池の周りをぶらぶら歩いたりしながら,ただ色とりどりの秋の木の葉が散り敷いた水面を眺めていた小一時間のことを。そしてあの名前のわからない鳥は今もまだ池のほとりで鳴いているのかなと思う。きっとそうだろう。そう考えると,少ししんとした気持ちになる。
※ルートや行程を見ると一目瞭然だと思いますが,今回の山行は,大畠谷遡行の副産物でした。序盤の2段25m滝,斜め懸垂の2連CS滝は順調に通過し,中間部連瀑帯の核心である5m・6mの2段滝は越えたものの,その先に思い切りが付かない滝があり,大事を取って左岸高巻きに入ったところ,これが大きな判断ミスで,下降点が見つからないまま追い上げられ,時間切れで小尾根のわずかなスペースでビバーク。翌日,大岩壁の二俣を眼下に眺めながら黒池の尾根にエスケープし,藪漕ぎ下山。せっかくここまで来たのだから,と黒池に寄り道したのですが,おかげでいい思い出ができました。大畠谷もまたいつか。
コメント
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無雪期の黒池いいですね、ロマンですね。積雪期の黒池しか知らないので勉強になりました
黒池、藪は壮絶でしたが、すごくよかったです。あまり経験したことがないような静寂境でした。あの平らな尾根にあれだけの池があるのが不思議ですね。
YSHRさんとモンタナさんの湯の谷の記録も大変勉強になりました。湯の谷は一度歩いてみたいと思っていたのですが、温泉あり滝ありで面白そうですね!珍しい風景を見せていただきありがとうございました。
hillwandererは、やっぱり凄いな〜。
桂湖から仙人窟、笈ヶ岳、大笠山経由であの地獄のような山を越して、五箇山七不思議の黒池を訪ねられた時、あまりの快挙に絶句して言葉になりませんでしたが、今回もしかり、ただ茫然としています。
1249P南東尾根は、木立のないとても急な尾根で、大畠谷側は雪の急斜面、開津谷側は断崖。2019.5.4.、そこを訪ねた時には夏靴でアイゼンもなく、昼食を摂って帰ってしまいました。まさかそこから谷を開津谷へと下ってしまわれるなんて・・・。そもそも開津谷の林道はズタズタに切れていて、使い物にならないと思っていましたからね。
実は、floatcloudさんが三等・桂を経由して黒池を目指された記録は拝読させていただいておりまして、私が黒池に憧れを抱いたきっかけのひとつでした。
P1249の南東側は、かなり急ですよね。無雪期だとちょっとした岩場のようになっています。雪が固いと確かにかなり怖そうですね。
開津谷へは、確かにちょっと急なのですが、無雪期だと藪をつかんで降りられるので、意外に大丈夫な感じです。floatcloudさんのおっしゃるとおり、開津谷の林道はほとんど消滅しかけていますが、開津橋から開津谷の入り口付近までならなんとか歩ける感じです(かなり藪が濃いですが、獣道を辿れます)。最後は急斜面を強引に降りて開津谷に降り立つ感じになるので、ちょっとワイルドですが…。
あんな奥地にある池なのに、黒池という名前があるのが不思議だなと思っております。地誌を当たってみたいのですが、未だ果たせていません。
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