記録ID: 4910330
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
甲斐駒・北岳
宇多田ヒカル山って何や!?眺めるだけが結局、甲斐駒ヶ岳!!
2022年11月12日(土) [日帰り]
体力度
5
1泊以上が適当
- GPS
- 08:26
- 距離
- 11.8km
- 登り
- 1,814m
- 下り
- 1,796m
コースタイム
日帰り
- 山行
- 7:27
- 休憩
- 0:58
- 合計
- 8:25
15:35
ゴール地点
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
アサヨ峰を過ぎると宇多田ヒカル山が現れる 「宇多田ヒカル山ってなんや!?」 Mt.taka22さんのレコを読んでいて、目が釘付けになった。彼の壮絶なレコの一番どうでもいい部分だったかもしれない。すぐにググり、サントリー天然水のCMがヒットした。「あー!あのポップな曲にのせた森林の中のようなCMか😃」。すぐにYouTubeでそのCMを見てみる。「うぉー!甲斐駒めちゃめちゃ映ってるやん」。このCMが公開されたのは2016年らしく、当然その頃は登山を全くやっていなかった。日本一高い山が富士山で、二位が北岳くらいの知識量だったので、甲斐駒ヶ岳の存在を知るべくもない。早速アマゾンミュージックで「道」をダウンロードし、この一曲のみのプレイリストを作った。この週末は、土曜日がサイコーの天気で、日曜日は荒天予報だった。殺人マーケットの疲れがたまっていたので、絶好の登山日和の土曜を無為に過ごしそうになっていたが、急転直下で「栗沢山」に行き先が決まった。 Mt.taka22さんは別として、レコを見てみると当然ながらみんな北沢峠から行っていた。バスが面倒くさいのと、仙流荘までが遠いのでかなり悩んだ。「黒戸尾根で甲斐駒に行って栗沢山まで足を伸ばす」が頭をよぎったが、今回はライトな山行にしたかった。やはり、バスの殺人的な混雑に定評があるものの、北沢峠しかないという結論に至る。「さすがに、この時期だけにあんまり人もおらんやろう…」 仙流荘はおじろ対比猛烈に遠い。作成したプレイリストで「道」を無限ループで聞きながら、少し気分が悪くなってきた午前5時15分頃、現地に到着した。「こんな早く来て誰もおらんのんちゃう?」という予想に大きく反して、真っ暗な中、既に長い列ができていた。その行列の手前を左に曲がるも、どうもそこは駐車場ではないらしい。Uターンし、車でその行列に近づいていき、「これ、駐車場はどこなんですか?」と並んでいる男性に質問した。すると前の道をさらに少しだけ行き、左に入るらしい。言われた通りに行くと、本当にすぐに駐車場があった。幸い駐車スペースにはポツポツと空きがあった。ずっとトイレに行きたかったので、荷物を持たずにまずトイレに行き、その帰りに列に並んでいる人にまた質問した。「これ、どこでチケット買うんですか?」。すると、「これがチケットを買うために並んでいる列です」。マジかいな…。さらっと見たウェブサイトでは4時からチケット販売しているとあったと思ったが、この時期は遅いらしい。車に戻り、ハイドレーションなど身支度を整え、その列の方へ行くと既にチケット販売が始まっていた。最後列に並び、まずはチケットを購入する。チケット売り場は小屋の様になっていて、中に券売機が4台あった。奥に3台あり、入り口側に1台ある。どうやら、キャッシュレス券売機は手前の1台のみで、そこで列が二手に分かれていた。なぜかまだ日本は現金主義のようで、キャッシュレス券売機に並ぶ人の方が少なかった。自分の番が来て、横に立って説明してくれる女性の係員の指示通り、スイカで北沢峠までの往復チケットを2,740円で購入した。「今日は始発に乗れますかね…?」と係員に聞くと、「今日は少ないので、乗れますよ!」。これで少ないんか…。シーズンピークは地獄絵図なことが容易に想像できた。チケットを購入すると今度はバスを待つ列の最後尾に並ぶ。始発は午前6時だが、少し早めに1台目のバスがやって来て、続々と登山者が乗り込んでいく。かなり後ろの方だった僕は3台目に乗ることができた。バスは補助席まで使用し、すべて満席だった。 バスの中ではまるで観光バスのように色々山の説明をしてくれる。鋸岳の鹿窓がしっかり見えていたのが印象的だった。中央アルプスや北アルプスの展望ポイントでも説明が入り、とても親切な運転手さんだった。予定より早めの6時50分頃、北沢峠に到着した。北沢峠にはユル登山の象徴の極めてキレイなトイレがあり、至れり尽くせり感が溢れている。少しトイレにこもっていたこともあり、7時15分頃の遅いスタートになる。この頃にはもう全員スタートしていて、先ほどとは打って変わって北沢峠はひっそりしていた。 まずはのっけが難しい。恐らくほとんどの登山者が甲斐駒ヶ岳が仙丈ケ岳に向かうせいか道標がいまいちわかりにい。北沢峠を長衛小屋の方に向けて林道を少し下る。すると仙水峠との分岐の道標が出てきて長衛小屋の方へ向かうもなんか道が怪しい。その辺りでうろうろしながら、でもそっちしか行きようがないのでそのまま行くと、林道がかなり左に向けて大きく曲がり、無事に長衛小屋に到着した。ここにも、最近やたらと見るおっさんの顔のレリーフがあった。この小屋の創設者の竹沢長衛翁だった。レリーフが出てくる前から視界に入っていたが、既にテントが数張はられていた。「いつ張ったんや?平日に来たのかな…」。あまりにも不思議だったので、「これって、今日来られたんですか?」「はいそうです」「今バスで?」「そうです」「で、いきなりもう張ったんですか?」「はいそうです」「あーなるほど!😀」 小屋の前を通り奥に進むと沢があり、橋が架かっている。CMではこれが丸太橋だったのだろうか?そこに今度は分かりやすい道標があり、栗沢山と仙水峠の方向が指し示されていた。栗沢山までは意外に急登から始まる。シラビソなのか気持ちのいい樹林帯を登って行く。もうブームはとっくに去っているようで、誰もいない。平日に完全に破壊された精神が治癒されていくのを感じる。しばらくすると、何かガサガサと音がするのでビビっていると先行者だった。男女のペアでちょうどバス待ちの列ですぐ前にいた2人だった。さらに登って行くと、今度は何やら叫び声がする。ちょっと人間とも獣ともつかない声だったので、またビビっていると、多分眺望のいいところで「ヤッホー!!」と絶叫する登山者だったようで胸をなでおろす。 樹林帯を越えた所で視界がさーっと開けた。左に今まで見たことのない近さの甲斐駒ヶ岳。後ろには柔らかくどっしりとした山容の仙丈ケ岳があまりにも顕になっていた。「もうちょい!」と、恐らく先ほどのヤッホーの主の若者男性トリオに先を譲ってもらい、少し岩々になって来た道を行き、8時45分頃、栗沢山に到着した。この栗沢山が宇多田ヒカル山なわけだが、それだけではなく甲斐駒ヶ岳の随一の展望台と聞き、ほぼ衝動買いならぬ衝動山行だった。いままで黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳へはアルプスの中では一番行っているが、いまいち甲斐駒ヶ岳の雄姿を近くに見たことがなかった。黒戸尾根からも見えるのかもだが、山容があまりはっきりしない。白根三山や鳳凰三山からも当然はっきり見えるのだが、この栗沢山で見た甲斐駒ヶ岳は格別だった。こんなに惜しげもなく男前っぷりを見せている甲斐駒は中々見られないだろう。右に八ヶ岳、左には鋸岳を従え、それとの対比でますます甲斐駒が引き立っていた。また仙丈ケ岳好きにも堪らない山頂で、北岳、間ノ岳、塩見岳の南アルプスのスター達も迫力満点。遠くには金峰山もキレイ見えており、かなり贅沢な山頂だった。 次はアサヨ峰に向かう。大体このマイナールートを来る人は、栗沢山とアサヨ峰をセットで行っていた。恐らく、栗沢山からだと富士山が見えないからか。あまりアサヨ峰には興味はなかったが、三百名山でもあるのでピークハンターになる。しかし、この栗沢山からアサヨ峰までの道は、少し大変だがなかなか楽しい。かなりの岩尾根で鎖場もあり、登山道を無視して無名峰に登ることもできる。40分ほどかかり、9時50分頃アサヨ峰に登頂した。恐らく今日栗沢山に一番に登頂したソロの男性登山者が、気持ちよさそうにランチをとっていた。山頂の中央部の岩峰に登る。そこには「アサヨ峰」の黄色字のクラシックな山頂標識が建っている。360度の大絶景は相変わらずだが、やはりここからは鳳凰三山と北岳の間に富士山がはっきりに見える。富士山好きにはたまらない構図で、やはり栗沢山では満足できないだろう。甲斐駒という観点でいくと、栗沢山の方が少し上か。 たっぷりアサヨ峰を楽しんだ後、栗沢山へ引き返す。戻って来る途中、遠目に栗沢山辺りの岩に乗り、宇多田ヒカルごっこをしている登山者が目に入った。おっさんではないことを祈ったが、遠すぎて年齢までは分からなかった。今回、たまにはユルく行くのもいいんではないのか?と栗沢山とアサヨ峰だけ行き、そのまま帰るという山行も考えた。しかし、どうしても欲張りの性格からそれでは納得できなかった。せっかくここまで来たんだから、踏めるピークはできるだけ踏んでおきたい。それで、YAMAPで適当に周回コースを作った。アサヨ峰から栗沢山に戻り、仙水峠経由で駒津峰へ行き、双児山を通って北沢峠に戻るというプランだ。しかし、これをコースタイムで作ると午後4時の最終バスに間に合わない。「まあ、さすがに(コースタイム倍率)0.9くらいでは行けるかな…」と普段は決してやらない自分に都合のいい計画を立てた。ヤマレコでも同じコースを作ると、こちらはコースタイムで、30分ほど時間に余裕ができた。「アサヨ峰に行って、栗沢山に戻って来た時のタイムで判断すればいいか…」 午前10時50分頃、栗沢山に戻って来た。0.9倍の登山計画よりも少し巻けているようだ。この時間の方がむしろ栗沢山は賑わっているような気がした。ここだけに来るのなら、遅出でも全く問題ないからだろう。鋸岳はあまりピラミダルな印象を持っていなかったのだが、栗沢山からは本当にとんがって見える。近くにいたシニア登山者に、「あれ、鋸岳ですよね?」と声を掛けると、「確かに方角的にはそうですよね…。ただあんなにピーキーな印象はないですね」と僕と同じ印象を持っているようだった。「甲斐駒の山頂から見た時もあんな感じではなかったんですよね…」。この辺りから、危ない病気がふつふつと出始めていたのかもしれない。「ここまで来て、甲斐駒行かんって選択肢あるか…?」 この時は、甲斐駒はまだ意識の上にハッキリとは出てきてはいなかったが、11時頃、駒津峰へ向けて山行を再開した。ここもまずのっけが難しい。山頂にある仙水峠の道標の方向へ素直に行くと、険しい岩場の下りになる。しかも完全な断崖絶壁ではなくて、行こうと思えば行けそうな崖なのでややこしい。先程のシニア登山者も「マイナー登山道は怖いですね?」と、恐怖を助長する。ちょうどその時、そことは少しずれた道から登山者が上がって来た。シニアマンが「あ!今誰か上がって来ましたよ!」と登山道を教えてくれた。「あ!やっぱり、さっきの所は危険すぎますね😓」。無事にのっけが分かり、仙水峠へ下って行く。これもまた詰めが甘いのだが、山行計画作成時には、栗沢山から仙水峠まで450m下るとは知らなった。所々雪もついたかなりの急傾斜を下りても下りても着かないので、やっとYAMAPを取り出し標高差を知った。そしてその仙水峠から駒津峰まで500mほど標高を上げる。「500mも標高上げて、駒津峰に行くだけか…。そっから甲斐駒まではたった200mか…」と、また山から山へはいったん下ることを忘れてしまう。何とかいやらしい急坂を下り切り、11時40分頃、仙水峠に到着した。そこには、少し僕より若そうな男性ソロ登山者が岩に座り、あんパンを食べていた。「栗沢山からここまでどうでした?」と聞かれたので、「かなり嫌な下りでしたね😓」と言うと、「え??じゃあ、もちろん登りはキツイですね…」「結構、短い距離で標高下げるんですよね」。彼は駒津峰から下りて来たらしく、「こっちの下りも嫌な感じでした」と言うので、「まあ、同じ感じなんでしょうね」 とにかく駒津峰へは行くので少し急ぎ目を心掛ける。しかし、さすがに少し疲れも出ていたのかそれほどスピードが上がらない。北沢峠から栗沢山まで登るときは10分で100mちょっと標高を上げれていたのに、ここではそれは無理になっていた。しかし、その自分のペースとは裏腹に、どんどん甲斐駒に登りたくなってきていた。ひーひー言いながら仙水峠から1時間弱で駒津峰へ登頂した。山頂は平らなテントを張れそうなスペースになっていて、勿論ここからも甲斐駒の眺望は最高だ。また、栗沢山・アサヨ峰の奥の北岳から塩見岳、鳳凰三山と富士山、仙丈ケ岳、中央アルプス、ちょっと気になる鋸岳と全方位の大絶景だった。しかし、かなり気になったのは、駒津峰の山頂標識の横に「駒ヶ岳六合目」との木看板が立っていたことだった。「まだ六合目…?」。黒戸尾根の感覚ではまだまだ先が長いということになる。時刻は12時30分頃だった。ここから甲斐駒往復のコースタイムは2時間半だ。そして、駒津峰から北沢峠までのコースタイムは1時間50分だった。当たり前だが、コースタイム通りだと完全アウトになる。若干悩んだものの、「まあ、駒津峰から北沢峠は多分半分くらいの時間で行けるだろう」と、甲斐駒ピストンを決行することに決めた。 12時39分、駒津峰をスタートする。甲斐駒に敬意を表し、駒津峰山頂でヘルメットを装着した。ここからは、いつもファクターに入れ忘れるが、六方石にかけて50mほど標高を下げる。最初はそれほどキツイ登山道ではないが、八合目を越えた辺りから、少しテクニカルな登りなってくる。鎖もあるが、鎖なしで少し難しい部分も多かった。最近はストックをしまわずに両手を使って岩場を登ることが多かったが、さすがにここではモンベルのアルパインポールを短くし、ザックのポールループに固定した。一度思いっきり頭を大岩にぶつけてしまい、甲斐駒に敬意を表したことに感謝した。やっと危険ゾーンを越え、甲斐駒が白い部分に到達した。白砂のザレた歩きにくい登山道だったが、夢中で登って行く。「そこまでして甲斐駒登頂したいか?」と自分でも不思議だった。ついに山頂標識の裏側が視界に入って来た。GoProを回しながらビクトリーロードを歩く。時刻は午後1時半頃だった。山頂は時間が遅いからか独り占めだった。風が少しあるが、相変わらずの文句のつけようない青空ままで、暖かかった。見慣れたテッパンの景色を眺めつくす。鳳凰三山と富士山の構図はやはりここからが一番か。山頂のわらじがピカピカに見えた。今回はメジャーな山には登らず、「眺める」に徹する玄人登山者になろうと目論んだ。しかし、僕にはまだその円熟味は備わっていないようだ。押している時間が気になりつつも、贅沢な10分を心行くまで楽しんだ。 |
予約できる山小屋 |
北沢峠 こもれび山荘
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ハードボイルド山岳小説のようで楽しませていただきました。過去レコ拝見したら北鎌の時に拍手済みだったので、「あぁ、あの方か!」とフォローさせていただきました。
私も黒戸尾根から登ったことはありますが、甲斐駒本来の勇姿を間近で見たことがなかったので大変参考になりました。
しかし「よし、今度北沢峠から行くぞ!」と思ったらバスが先週末で終了したようで残念です。来年宇多田ヒカル山経由で行ってみます。
今後もレコ楽しみにしておりますので、よろしくお願いいたします。
初めまして!北鎌にチャレンジする時に、地図の詳しさの差が歴然としていたので、ヤマレコにも出没し始めました🎵今後は徐々にヤマレコ主体になるかなぁ〜も思っています。
そうですね!そのせいで多分駆け込みで混雑していたんだと思います😅 僕はまだ登山初めて2年くらいなので、レコを参考にさせていただきます。よろしくお願いいたします!
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