鍋尻山にフクジュソウを訪ねて
- GPS
- 04:26
- 距離
- 11.8km
- 登り
- 616m
- 下り
- 640m
コースタイム
天候 | 快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2023年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
河内からの取り付きがわかりにくい。主稜線に出る手前の斜面でルートがはっきりしなくなる。山頂下も不明瞭。保月へは打って変わって極めて明瞭。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
靴
ザック
昼ご飯
飲料
レジャーシート
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
GPS
ファーストエイドキット
保険証
携帯
時計
サングラス
カメラ
シュリンゲ
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感想
13年前、山形県の頭殿山で、雪融け直後に開花したフクジュソウを一株見たが、後にも先にもそれっきり。今年こそは再会を果たしたい。フクジュソウは石灰岩地に生えるということで、近場では鈴鹿に生育地が多いと聞く。昨年、ベニバナヤマシャクヤクを見に行った鈴ヶ岳あたりもよさそうだが、まだ行ったことのない場所でどこかいいところはないだろうか、と探していると、鍋尻山の名前が目に留まった。この鍋尻山は、以前、大見晴、茶野を周回した(記録ID4390239)際に起点とした大君ヶ畑(おじがはた)の北側に位置する山だった。南麓の保月(ほうづき)という集落から登るのが最短で、その集落にもフクジュソウが咲き乱れるという。しかし、保月までの県道が狭隘且つガードレール等のない嶮路であるとの記載が多々あって、自分たちのDELICAでここに突っ込むのは少々勇気が必要なのであった。そこで、山行としては難度が高いとの記載もある、しかし車でのアプローチには不安がないと思われる北麓の妛原(あけんばら)から登ることにする。
車のナビには妛原という難読文字の入力は出来そうもないので、わずか手前にある河内風穴を目的に設定。Wikiによると河内風穴は「総延長は約10,020 m で、日本国内第4位の長さを誇る。関西で最長かつ最も規模の大きい鍾乳洞である。数多くの洞窟がある鈴鹿山脈北部石灰岩地域(近江カルスト地帯)の多賀町の中で唯一、また、滋賀県内で唯一の観光洞(内部が一般公開されている洞窟)であり、河内観光協会により管理されている。」のだそうだ。見てみたい気持ちはあるが、山登りと洞窟見学との両立は難しいので、今日は諦める。河内風穴の前を通ると、駐車場とセットになった食堂が2,3軒あってかろうじて「観光洞」の雰囲気を漂わせてはいるが、観光客の訪れはまるで感じられないのであった。
河内風穴を過ぎるとすぐに妛原につく。古くから続く山村の外れに車がぎっしりと停められているのが目に飛び込んでくる。とてもミスマッチな光景である。ああ、洞窟はともかく、こちらの人気はますます高まっているようだと思うと同時に、果たして止めるスペースは残っているのかと、焦りを感じ始めた。とりあえず車の止まっているところに乗り入れては見るが、恐れた通り、立錐の余地もない。それどころか、DELICAで切り返すスペースもないのだった。kinuasaが車を降りて誘導し、バックして何とか集落の外に出る。切り返して戻ろうとすると、すぐ左の川べりに格好のスペース!ラッキーとばかりにここにとめる。
さて、山行開始だ。登り口は、集落を流れる川にかかった小橋を渡って川の左岸の民家の前をぬけたスギ林の中にある。右手の尾根末端をジグザグに登る古い仕事道を辿る。急峻な尾根をぐいぐいと高度をあげていく。その高度感は小気味よく、木々の隙間から見える妛原の集落がみるみる小さくなっていく。高度感を楽しみながら登っていくとやや大きな尾根に達し、右からの道を合する。ここからは、石灰岩の岩の露出が鈴鹿らしさを演出する。周囲の山々の眺望もなかなかのものである。大峯のような高度感がさらに登高意欲をそそる。周囲が灌木から杉植林に再び変わると道型が次第に不明瞭となる。その先、広葉樹林に入っていくが、道型があやしくなり、登山軌跡も発散している。ずっと一緒だった黄色の杭もいつの間にかお別れとなり、適当に斜面を登って稜線の鞍部に達した。丸い穏やかな尾根で思わずのんびりしたくなる。目前には鍋尻山のピークがある。ピークへのルートも不明瞭で、各人まちまちの登り方をしていると見える。我々は右によって石灰岩の露岩をつかんで登っていった。登り切った山頂は小広い平坦地で、北側に霊仙山を臨むことができる。霊仙山の頂部は未だ雪を纏ってその威厳ある姿を見せていた。雲一つない青空のもと、風もなく穏やかな山頂で昼食とする。
腹ごしらえを済ませ、すぐに保月に向かって出発だ。山頂のすぐ南は三方に広々とした眺望の開ける見晴らし台となっている。南東に聳える台形のどっしりした山は、御池岳、北鈴岳、鈴ヶ岳のブロックだろう。その背後に顔を覗かせている非対称の山容をした山は藤原岳か。展望台を後にしてわずかに下ると、そこかしこに黄色く輝くフクジュソウが惜しげもなく咲き誇っていた。その隙間を縫うように、登山道は走っている。ひとしきり撮影してその黄色いビロードの絨毯を満喫する。
この群生地を抜けると傾斜も緩まり、ありきたりの里山の雰囲気に変わる。出発してまださしたる時間も経過していないのに、もう人家が目前となる。保月である。すると林下にフクジュソウの黄色い群生が再び現れる。保月の集落の周りでも、多くのフクジュソウが美を競っている。集落のあちこちを散策して回っていると、集落のご婦人が声をかけてくださり、お宅の裏の畑に多くのフクジュソウが咲いているからどうぞ鑑賞してください、と御招きにあずかる。遠慮なく裏手に回ると、大輪のフクジュソウが陽光に輝いていた。
十分に楽しんだ後、長い林道歩きを開始する。権現谷林道は車で問題なく走行できるレベルの道である。しかし、山側は急傾斜の石灰岩の崖となっている箇所が多く、終始、かさこそと小石が転がる音がしている。そして、10センチくらいの石が眼の前にいくつか落っこちて来た。白谷出合を越えて下っていくと途中、動物や鳥の撮影をする人たちが車を停めて動画の撮影を試みていた。行者窟を過ぎ、さらに妛原に向かって歩いていくと、左の川に大きな岩がせり出して、その下から水がとうとうと湧き出しているのだった。きっとあの奥は鍾乳洞になっているのだろう。探検家の気持ちが少しわかったような気になって、若ければそんなアドベンチャーのとりこになったかも、などと、想像を膨らませるのだった。
こうして、初夏のような日差しの中、念願のフクジュソウ鑑賞を果たし、充実の山行を終えたのである。
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