三輪山と山の辺の道(桜井〜天理)


- GPS
- 05:59
- 距離
- 19.8km
- 登り
- 612m
- 下り
- 620m
コースタイム
天候 | 晴れのち曇り一時雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
|
写真
感想
930 山辺の道と三輪山
彼岸花の咲く季節となった。稲穂の垂れる田圃の畔を彼岸花が美しく彩る光景の記憶を辿る。天理から桜井にかけて山辺の道を歩いたのは昨年の9月の半ばであった。台風の到来する前で、太平洋側から湿った空気が周辺の山の上に雲をもたらしていた。
山辺の道の桜井の近くにある三輪山はこのコロナ禍の3年間は登拝が中止となっていたのだが、今年の5月になってようやく解禁となったので三輪山を訪れることを考える。三輪山の山麓にある今西酒造の三室杉のひやおろしも入手したいところだ。
三輪山の登山の受付は午前中のみであるので、山辺の道は桜井から歩き始めることになる。桜井の駅を降りるとまずは駅前のみたらし団子屋「卑弥呼」に立ち寄る。ここは前回に山辺の道を歩いた直後に朝日新聞の天声人語で紹介されていて知ったのだが、スタッフが高齢者ばかりで店長は90歳を超えるという。ここでみたらし団子を四本購入する。
ところどころに旧家の立ち並ぶ街並みを歩いて三輪の駅に向かって進む。みむろという三輪のお菓子の看板広告が目立つ。三輪駅を通り過ぎるとすぐにみむろを売る老舗の店舗「白玉屋栄壽」が左側に現れる。みむろとは正方形の小型の最中であった。10個入りは紙の箱に入っているのだが、数の多いものは木箱に入っていることに驚く。
大神神社の手前では今西酒造の酒店に立ち寄る。前回は残念ながら入手することが出来なかったのだが、今回は三室杉のひやおろしが店頭に並んでいる。純米吟醸のひやおろしは¥2200と高めであるが、この酒造で醸される酒はいずれも私達のお気に入りである。リュックの中にひやおろしを収納すると早速にもリュックが重たい。
大神神社の参道に入るとどこからこんなに人が現れたのだろうと不思議に思うほどに途端に多くの人が歩いている。勿論、多くの人は車で訪れておられるのだろう。大神神社から三輪山への登山口となる狭井神社に移動する。ここでも人がひっきりになしに訪れており、三輪山への登山の受付をしておられる。神社の境内には有難いことにコイン・ロッカーがあるので荷物を預けることが出来る。
襷(たすき)を受け取り宮司さんによる説明を拝聴すると、いよいよ登山開始である。この三輪山の山内は写真撮影は一切禁じられている。神社の右手の尾根に九十九折りで登ってゆく。まず最初に驚いたの登山道が綺麗に掃かれており、小石がほとんど落ちていないことだ。次に驚いたのはその登山道を裸足で降りて来られる方がおられることだ。それも一人や二人ではない。登り初めて短い間にも数名の裸足の方とすれ違うことになる。
尾根に上がると尾根の上は樹が切り払われて両側に高木が立ち並ぶようになる。広葉樹の樹々の高さが樹木の伐採が管理されてきたことを物語るが、同時に壮麗さを感じさせる。丸木橋を渡るとすぐにも尾根から細い沢が流れる谷道に入る。谷筋にはひんやりとした涼気が満ちている。
谷奥には小さな小屋があり、水垢離のための着替えの場所が用意されている。小屋の前の案内にもよるとこの小屋も篤志家によって建てられたものだそうだ。
小屋を過ぎると谷の左岸の尾根にトラバース気味に登り、再び広々とした尾根を登ってゆく。尾根には相変わらず両側に高木の立ち並ぶ広い登山道が続き、木製階段の整備された道には小石や砂利がほとんど見当たらない。以前に読んだヤマレコの山行記録では「他の山とは異なり、霊的な雰囲気が感じられる」という感想が印象的であったが、確かに壮麗な雰囲気である。
道には連綿と登山者が続き、この山の人気の高さが窺われる。いわゆる登山のスタイルの方はほとんどおらず、多くはハイキングあるいは普段着のままに登っておられる方も多い。山頂部が近づくにつれて斜度が緩くなり、先ほどまでの高木に変わり樹高の低い雑木が多くなる。
山頂部には小さな祠があった。奥津磐座(いわくら)と呼ばれるところらしい。平坦な山頂部を少し奥に進んだところに三頭三角点の柱石があった。その奥まで道が続いているが、ロープが張られ、行き止まりとなっている。山頂部は樹木が密生しており、全く展望はない地味なところであったが、本来、この山には展望を求めて登るようなところではないのだろう。
引き返して下山の途につくと続々と登って来られる方達がおられる。登山の受付は正午までの筈であるが、ぎりぎりまで登り始める方がおられたということだろう。
狭井神社の社務所で襷を返却し、山辺の道に入ると、山辺の道を天理から南下して来られたものと思われるハイカー達と時折、すれ違うもののすっかり静かな雰囲気となる。先程まで三輪山を登拝していた時には空には一面に雲が広がっていたが、いつしか雲はほとんどなくなり、蒼空が広がっていた。
桧原神社に到着すると、広い境内にはガイドの説明を受けているハイカーがいるばかりで閑散としgている。いくつかのベンチが設けられており、ここで竹田駅で購入してきたパンと先ほどの桜井駅の「卑弥呼」で入手したみたらし団子でランチ休憩とする。
竹田駅の構内にあるゲベッケンというパン屋は値段は高めではあるが、変わったパンを作っている。この日は「だし巻き弁当」と「なす田楽」というパンを頂いた。「卑弥呼」のみたらし団子は添加物を一切加えることなく作られたというタレは甘さが控えめであり、硬めの食感の団子と相俟って、かなりの美味であった。
桧原神社を後にすると景行天皇領と、道端には次々と無人販売所が現れる。この日は雲の流れが早いようだ。先ほどまでの晴天はすっかり雲の覆われ、山辺の道が進む方角には暗い雲の広がり始めた。
穴師の集落に入ると無人販売所が次々と現れる。まずは万願寺とうがらしを二袋手に入れる。道が左手の小さな丘に向かって登る坂の手前では草餅を二つ入手する。前回は保冷剤によってよく冷えた草餅の冷たい食感がなんとも心地よかった覚えがある。坂を登ると小さな農園があり、ここでは色々と葡萄が売られており、ここではシャインマスカットを入手。この山辺の道に沿って数多くある無人販売所はこのハイキング・コースの人気の最大の理由かもしれない。
祟神天皇陵を過ぎるとすぐに天理トレイルセンターがある。トレイルセンターのある高台にはオープン・エアのテラスがあり、なんとも雰囲気のいいところだ。テラス席に腰を下ろすと、生ビールを一杯注文して
トレイルセンターを後に彼岸花の咲く道を向かうと、雨が降り始めた。トレイル・センターでもう少しゆっくりと休憩しておけば良かったと悔やむが後の祭りである。中山町の小さな集落に入ったところで瀟洒なトイレの設けられた大和神社の御旅所とされる小さな社殿があり、ここで雨宿りをするうちにすぐにも雨は小ぶりになってくれる。
集落に入ると古民家が立ち並ぶところが多く、突如としてタイムスリップをした感覚を味わうのもこのハイキング・コースの魅力だろう。集落を抜けて雨上がりの道を進むと、道は小高い山裾を進むお陰で左手には奈良盆地の彼方に金剛山から二上山と続くダイヤモンド・トレイルの山並み、その北側には生駒山へと続くながらかな丘陵の展望が随所で広がる。急速に空も明るくなっていくようだ。
竹之内の環濠集落の休憩所では多くの人が休憩しておられる。ここはパスして先に進む。乙木町の集落では楽しみにしているところがあった。「せんぎりや」という切り干し大根を売っている農家があり、この切り干し大根が安くて美味なのだ。ここは軒先を休憩所として解放されており、無料のお茶まで用意されている。切り干し大根は冷蔵庫の中で販売されているのだが、その扉を開けるとアサヒのスーパードライの缶ビールも一缶¥250で売られているので、ここでもビールを頂き、休憩する。ついでに減農薬栽培のお米を頂くと、リュックはさらに重たくなった。
天理観光農園に向かって小径を進むと道端の無人販売所では一袋¥100のビニールには里芋が多く入っており、安いのだが、不覚にも先ほどのせんぎりやで小銭を全てはたいてしまったせいで百円玉が残っていない。無念だが里芋は諦めることにする。
前回は観光農園は大勢の人で賑わっていたが、時間帯の問題なのかこの日は全くひと気がない。観光農園の裏手の丘に登り、果樹園を下ると内山永久寺跡の小さな池がある。池のほとりには桜が植えられており、桜の季節は綺麗なことだろう。ここを過ぎるといよいよ前方には石上神宮の木立が見えてくる。
石上神宮は訪れる時は境内に放たれている軍鶏が盛んに鳴き声をあげていることが多いのだが、夕方という時間のせいか鶏鳴はほとんど聞かれず、静かな雰囲気だ。お参りをすると天理教の総本部の前を通って天理駅に向かう。壮麗な社殿からは制服姿の若い高校生が数多く出てくるところだった。どうやら天理高校の生徒達らしい。土曜日の午後にもこの教会本部で学校の行事が行われるようだ。
閑散としたアーケードを通り抜けて天理駅に辿り着く。天理駅での楽しみは駅の一角にある京座の名店「天雅」である。まだ16時だというのに、なんとこの日の餃子はほとんど売れてしまって、辛うじて二人分のみ残っているとのことだった。再びビールと共に一年ぶりの餃子の美味に舌鼓を打つ。山行の後でこの天雅の餃子にありつけなかったら失意が大きかっただろう。
餃子を食べ終わったところで天理発の急行の時間まで少し時間の余裕があるので、天理駅の西にある奈良の地酒を数多く取り揃えた登酒店に寄り道する。近鉄の急行に乗り込むと、雲の下から一瞬、顔を出した夕陽が空を明るく輝かせる。山辺の道は訪れるたびに充足感を感じ、また訪れたいと思うところであった。
コメント
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いつもの厳しい山行きと違って楽しそうな気分が伝わってきました 👏
週末に厳しい山行に出掛けており、レス返が遅くなり、失礼しました。
この山辺の道は実に楽しいところですね。
次の厳しい山行も「楽しい」ところでありましたが
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