八ヶ岳

コースタイム
小淵沢駅8:30
観音平発9:00
編笠山12:15
青年小屋13:00
8/17
4:00起床、5:20発
権現小屋6:30
キレット小屋7:50
赤岳9:40
横岳11:30
硫黄岳12:40
オーレン小屋14:30
8/18
4:30起床、6:00発
根石岳7:15
東天狗岳7:40
西天狗岳8:10
中山峠9:20
しらびそ小屋10:30
稲子湯11:50
天候 | 16日:晴れ 17日:晴れのち雨 18日:行動中は晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2012年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
小淵沢駅→観音平:タクシー¥3,230 |
ファイル |
非公開
6016.xls
計画書
(更新時刻:2012/08/10 13:59) |
写真
感想
八ヶ岳縦断山行記
夏期休暇中の予定がボツり、さりとて今から他パーティーにねじ込むのも申し訳ないという時期、それならば久しぶりに単独縦走でもやってみるかと思い立ち、南八ヶ岳の縦断を計画した。
色々考えてみると、日帰りではないテント泊の単独山行は16年ぶりくらいである。1人用のテントもずっと使わずじまいで、フライシートのシームテープが幾分劣化していた。
単独行であるからして、ペースも食糧も気を使う必要はない。夕食は消化の早い加工穀物のマジックパスタだけ。朝食は消化の遅い(腹持ちの良い)アルファ米と10秒カレーにした。もちろんコーヒーと持病薬のジャックダニエルも忘れはしない。
朝の出発時間を急ぐなら、献立は逆の方が早く終われるが、夕食は消耗した栄養素を早く取り戻す為に加工穀物が良いと思うし、朝食はこれから行動するにあたり、少しでも空腹感を遅らせたいので、腹持ちの良い無加工の米が適していると考えるのである。
その他に自分流に加工したスポーツドリンク(粉末スポーツドリンク、BCAA10g、クエン酸と食塩それぞれ茶さじ1杯)1リットルと、真水1リットルを装備。行動食は相変わらずブラックサンダー中心に、SAVASの固形ゼリーとブドウ糖、そして塩タブレットというラインナップ。愛用サプリのエランバイタルも忍ばせている。
結局45リットルザックのRIPENクロワールとフロントパックに納める事ができた。重量は大体14kg弱。フロントパックとは、パーゴワークスのパスファインダーという製品である。今回の山行では、この春から少しずつ揃えてきた新しい装備が役に立っている。このパスファインダーは新しい装備その1。ザックのショルダーとウェストのベルトで固定するので、ウェストだけのパックより邪魔にならず安定する。地図はもちろんケータイやカメラを入れるポケットもあり、専用のレインカバーまで装備されているのが嬉しい。岩場など、足上げの多い場所では少し上に引き上げると邪魔にならない。
*8月16日
出発は当日朝とし、珍しく電車等の公共交通機関を利用してのアプローチだったのだが、そこでいきなりトラブル発生。なんと小淵沢駅にはSuicaの改札が無いのである。中央本線の駅だというのに。せっかく多めにチャージしてきたのに現金払い。伊豆高原駅より遅れている( ̄ε ̄)
気を取り直してタクシーで観音平口まで。のはずが、観音平まで行ってしまった。タクシー代¥3,230。しかしどうやらここが正しい登山口らしく、駐車スペースはおろか車道脇まで車がびっしりである。
本日は編笠山に登って、麓の青年小屋にテン泊予定。行動時間も4時間程度。頑張ればキレット小屋まで行ける時間ではあるが、テン場のスペースに不安があったのと、事前調査で水が涸れているかも知れないとの情報を得たので、青年小屋に決めた。
北八ッの様な苔むした原生林の中を登り始める。遅めの出発なので下山パーティーとよくすれ違うが、子供連れが多かった。駐車スペースとの往復ならば、夏休みの遠足に丁度良い距離なのだろう。
日差しは暑く、額から汗が落ちる。なぜに汗は狙い澄ました様にメガネの内側に落ちるのだろうか。だが、もちろん暑さ対策も考えてある。今回の新しい装備その2は、モンベルのショートブリムハット(中折れ帽)。カンピ草(イグサ)で編まれた網目の帽子で、日差しもそれなりに遮りつつ、風通しが良いので夏向きである。ただし雨はダダ漏れだが。その3は「どこでもアイスノン」。服にスプレーすると、汗をかけばかく程涼しく感じる画期的な製品と言える。ザックの背中側にスプレーしても良い。ただし気温が低い状況では、逆に体温を奪われる事にもなりかねないので、使用状況は考えなければならない。
雲海展望台を過ぎた頃から、岩が多くなっていく。土の道は良く踏まれているが、場所によって踏み跡が複数あるのは、つい楽な所を歩きたがる家族連れの多い山故か。青年小屋への巻き道との分岐を過ぎ、山頂へ向かう道はいよいよ岩中心となり、やがて空が開け、ゆったりとした広さの山頂へ到着した。
実は、赤岳以南の八ヶ岳の山に登るのはほとんど初めてである。権現岳のみ冬期に権現東陵から登っただけで、もちろん編笠山も初。阿弥陀や赤岳、権現・旭をいつもとは違う方向から間近に眺めるのは新鮮だ。権現岳の頂上直下に、まるで山頂の神社かの様に権現小屋が見えている。
青年小屋へ向けて緩やかな道を降り始めるが、すぐに岩だらけの道になり、小屋の裏手などは、ほとんど岩と岩の上を飛び跳ねていく様な道であった。途中ヒカリゴケも観られたが、写真はブれてちゃんと録れなかったのが残念。
「遠い飲み屋」と書かれた提灯の青年小屋は開放的な雰囲気で、テン場も広く快適そうである。バイオトイレも外にあり、洋式なのは嬉しいが、個室1つだけではキャパ足りな過ぎだろう。4分程歩いた所に「乙女の水」と銘打たれた水場があり、綺麗な沢の水は冷たくて疲れが癒される。
着いた時間はやはり早すぎて、テントは暑くて入っていられない。ビール片手に近くの林にしばし避難。少し黒い雲も広がって来てはいたが、結局この日は夕立は無かった。少しパラついたかな?という程度か。
驚いたのは、とても開けている場所とは言えないこの青年小屋で、docomoの電波がしっかり入る事だ。おかげでケータイで気象情報を得る事ができた。いいのかこれ?
明日は夕方までは保ちそうなので少し安心。夕食を取り、近くのテントで子供達に寝物語を聞かせている声を聞きながらジャックを啜り、就寝。マジックパスタはそれなりに食いでがあり、夜中に空腹になる事は無かった。寝袋はフリースのインナーシュラフとシュラフカバーの組み合わせだったが、若干寒さを感じた夜であった。
*8月17日
今日は長丁場だ。ギボシや権現、キレット越え、そして赤岳から横岳を通過して硫黄、そしてオーレン小屋までの行軍。エアリアタイムに2時間プラスしても余裕のある行動計画にするため、4時起き5時発。アルファ米にお湯をぶち込んで15分待つ間にトイレ行き。まだ暗いので待ちは無かった。
朝食は10秒カレーのカレーライス。夕食のパスタもだが、食器を使わない食事を画策、アルファ米のパウチにカレーを突っ込み、お湯を追加する作戦にした。ちゃんと混ぜれば普通に喰える。
結露して若干濡れているテントを片付け、ザックとフロントパックを調整して出発。朝露でズボンが濡れるのに閉口しながら、第一関門のギボシへ向かう。
草の多い山道を登っていくと、目の前に急斜面の岩尾根、ギボシが現れた。踏み跡とペンキに導かれて登高する。表面が滑らかな岩質で、途中鎖のトラバースもあり、雨で濡れると初級者はかなりの緊張を強いられるだろう。
やがて山頂直下に引っかかっているかの様に建っている権現小屋に到着。前で休んだだけで中は覗いていない。なだらかな編笠山と青年小屋が下に見えている。
そして旭岳と、その先にキレットと赤岳を結ぶ稜線の一本道を臨む大ハシゴの上に。とにかく長いハシゴである。傾斜は無いが、長さで消耗しそうである。朝は夏でも金属が冷たいので、滑り止めの付いた手袋を着けた方が安心だろう。
それから先はキレット小屋までアップダウン。とは言え稜線上の道なので、キレットの下降も極端に長いという感じはしなかった。その分こっちからでは登りが長いのだろう。キレット小屋前で一本。なんとここでもdocomoが繋がる。
最近は一本立てるごとに、塩タブレットを3〜4粒飲んでいる。自分は昔から足がつりやすい体質だったのだが、この塩タブを飲むようになってから、行動中足がつる事が極端に減った。足がつる要因は人それぞれらしいが、どうやら自分は発汗による塩分の消失が原因だった様である。これ新しい装備その4ね。
さて、いよいよ赤岳へ向けて最大の登高。岩場のペンキマークが新しく、視認しやすい。しかし白ペンキなので、冬期は判りにくくもなりそうである。岩の感じは文三郎道上部と同じだが、鎖が少なく、マイナーな感じ。でもその方が自分としては楽しいのだが。
途中いささか不安定な場所で一本立てて、ハシゴと鎖を登って行くと、ようやく分岐の道標。登り慣れた文三郎道が見えてくる。程なく懐かしの?いつもの?赤岳山頂に到着した。その頃にはガスが上がってきて、周りの景色が見られないのが惜しかったが。
しかしまだ行程は途中である。これから横岳通過が待っている。ルート自体は何度もやっているが、フル装備と朝からの累積疲労によるバランスの崩れもそろそろ考慮しなければならない。
地蔵尾根の頭を通り過ぎ、横岳に向かう。キレットをやっつけてきた身にすればさほど難しくは感じないのだが、杣添尾根との分岐付近で雨が降ってきた。予報より早いが、それが山である。着たくもない雨具を着て行動再開。やはり岩は濡れると滑りやすくなる。
すれ違うパーティーと譲り合いながら黙々と進む。雨は降ったと思えば止んで夏の日差しが照りつける。そんな半端な状況を繰り返しながら、やがて硫黄岳山頂に。少し下って赤岩の頭からオーレン小屋に向かう。ここで前述のどこでもアイスノン登場。雨具の内側にスプレーしたら、あの暑苦しい雨具が快適な涼しさに!もっと早くやっておけば良かったと思いつつ下っていくと、昨年も泊まったオーレン小屋に到着。
小屋番の人達は親切で、手続きより先にテントを張って来なよとありがたい言葉。当然ビール購入と一緒に手続き。この時間に着いて大正解であった。ビールを飲んでいると、いかにもな妖しの雲がモクモクと。。そして今までにない大粒の雨が叩きつける様に落下。雷も盛大に鳴り、夏の夕立の様相。
昨日とほぼ同じエサを喰い、雨音を肴にジャックを啜って、明日の天気をやや憂いつつ就寝。大雨は遅くまでテントを叩いていた。
*8月17日
明けると雨は降っていなかった。ここでもdocomoが繋がるので気象情報を収集。昨日よりも雨の降り始めが遅い。良かった。ちなみに赤岳〜硫黄岳間はdocomoは繋がらなかった。ここが一番重要なのに。。
今日は天狗岳を越えて、中山峠から稲子湯で下山。少しだけ余裕を持って4時半起き、6時出発。テント類は昨晩の雨ですっかり濡れている。ポリ袋に詰め、ザックの一番下に押し込む。
稜線沿いに行きたいので、夏沢峠に登ってから天狗岳へ。手前の根石岳も天狗そのものへの登りも、昨日までの行程に比べるとスケールが一回り小さい感じ。
東天狗に着き、西天狗を往復して中山峠へ。天狗岳への登りよりも、中山峠までの稜線がやっかいだった。岩の道は不安定で、道一杯の避けようのない水たまりがいくつも出てくる。そんなこんなでようやく中山峠に着き、下降を始める。下り始めはかなりの急斜面だが、20分も行かない内に、緩やかな北八ッらしい道になってくれる。
今回の一番重要な新しい装備は、登山靴のスカルパ・ミラージュだろう。慣らし運転も不要だった程フィットしている。それまで片方1.1kgの、クッションも何も無い革製重登山靴だったので、解放された様な気さえする。今年の春から歩く登山が増えたが、それはこの軽い新世代の登山靴のせいかもしれない。
そんな新しい靴の感触を楽しみながら進んでいくと、やがてミドリ池の畔に建つしらびそ小屋へ。更に緩やかな下り坂を下っていくと、ついにこの山行の終了点、稲子湯に到着した。
稲子湯は秘湯らしく?シャワーもドライヤーもない。温泉に興味の無い自分にとってはいささか不十分な施設なのだが、温泉ファンにはそれが良いのだろうか。
14時のバスに乗る頃は、再び雨が降ってきた。バス終点の小海駅に到着すると、土砂流入により小海線が運休していた。なんとか帰宅できたが、鉄道に祟られた山行だった様な気がする。
冬から悩まされてきた膝の痛みもほとんど再発せず、充実の山行ではあったが、やはりパーティー山行の方が自分の性に合っていると思わされる旅でもあった。
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