オバケ径路を歩く
神奈川県
knot
体力度について
- GPS
- 08:22
- 距離
- 14.7km
- 登り
- 1,852m
- 下り
- 1,864m
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標高グラフを拡大コースタイム
07:20 オバケ径路入口
09:00 五町歩沢の大滝落ち口
09:55 大棚沢左俣通過
10:10 〃 右俣通過
11:10 オバケ沢出合(昼食)
11:20 無名の尾根取付
12:40 長尾尾根合流
12:50 女郎小屋ノ沢右岸尾根下降
13:55 境沢林道
14:30 駐車場
| 天候 | 曇時々晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2015年04月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
その昔、焼きあがった炭を山麓まで運んだというオバケ径路。 もはや廃道同然、いや、それ以上に風化が進み風前の灯火状態にあるというオバケ径路。 自然に還る前に一度歩いてみた。 |
写真
◎オバケ径路昭和14年発行「山と渓谷」55号P66に掲載された、秦野山岳会の宇山幸治氏(ヤマケイの座談会にも出席された丹沢の重鎮)作成、本谷川流域の概念図である。金林ノタルからオバケ沢に向かう破線がオバケ径路。
この写真だけサイズ大きくしてあります。
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昭和14年発行「山と渓谷」55号P66に掲載された、秦野山岳会の宇山幸治氏(ヤマケイの座談会にも出席された丹沢の重鎮)作成、本谷川流域の概念図である。金林ノタルからオバケ沢に向かう破線がオバケ径路。
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油断をすると、径は消え見失ってしまう。何度も小尾根に挟まれた谷間を越えていくので、その都度、壁に行く手を阻まれてしまう。写真は振り返って撮ったもの。
オバケ径路で唯一のランドマークである「五町歩沢の大滝」。上品な直瀑。15〜20m位あるだろうか、見栄えのする滝でもある。少し下流の蓮瀑も見事だった。
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左俣を何とかクリア。ホッとする間もなく右俣。V字状の沢に下りれる場所がない。ロープの準備まで仕掛けたが、強引にクライムダウン。正面壁はとても無理なので二俣まで戻って写真に見える末端から登り返した。
1
オバケ沢出合。駐車場から5時間、オバケ径路完歩である。ここからの径路はオバケ沢からは日高径路、大日沢からは大日径路と名を変えて、それぞれ塔ノ岳を目指す。
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駐車場から5時間、オバケ径路完歩である。ここからの径路はオバケ沢からは日高径路、大日沢からは大日径路と名を変えて、それぞれ塔ノ岳を目指す。
出合からは長尾尾根に突き上げる無名の尾根を登ることにした。危ない個所はないが、とにかく勾配のキツイ尾根だった。酷使してきた身体が勝手にそう思い込んだのかもしれない。大きなブナの木の下でザックを下す。
長尾尾根から境沢林道へは、女郎小屋ノ沢を挟んで二本のモノレールが走っている。左岸尾根に乗るモノレールは歩いた事があるので、今日は新大日側に戻り少し遠くなるが右岸尾根を下ることにした。
感想
そもそも、はじめの計画ではオバケ径路から日高径路に入り、三角ノ頭を経て塔ノ岳まで行くつもりだった。オバケを舐めていた訳ではないが、径路に入り込んでも、道の形状が残っていることに、今日はいけそうな気がするとタカをくくっていた。そんな高揚する胸算用に、早くも一つ目の顕著な尾根を越えたあたりから黄色の信号が点灯した。設定した水平道の高度が保たれず、時間が思った以上に掛かってしまうのだ。消えて自然に還りつつある径探し、崩れた斜面をキックバックで進むトラバース、行き詰まるごとに繰り返す小さな高巻きの所為で、斜面を上下でジグザグ行進をしなくてはならない。およそ、効率的とは思えない時間の浪費、五町歩沢の大滝に着く頃には完全に日高径路は赤信号に変わっていた。そして、核心部の大棚沢の左俣右俣を越えた時には、帰りに使う尾根の選択に頭を痛めていた。もっとも、ググればそれなりにオバケ径路の山行記録は出てくるので、もう少し緻密な計画を練って挑んでみたらと思われるかもしれないが、探索の面白い所は、あえて情報を少なめにして未知の部分を多くしてこその醍醐味だと思っている以上、情報収集の深入りはしないと云うこの信念は変えられない。
昭和50年版「アルパインガイド37丹沢 道志山塊・三ツ峠」には、一般コースとしてはわかりにくい所があるとしながらも、「オバケ沢林道から塔ノ岳」の見出しで登山案内を載せている。もちろん、オバケ沢林道とはオバケ径路のことである。また、写真��1の宇山氏もオバケノ澤遡行と言えば、札掛尾根よりオバケノ径路を辿るのが通常であるとしている。現在と違って昔はそこそこに利用されてきたのだろう。
しかし、荒廃著しい現状を見てきた今、高々(？)40年前、いくらガイドブックに紹介されたとはいえ、一部登山者に親しまれていたとは俄かには信じられなかった。それくらいの荒れ方だった。かりにも、ここに足を踏み入れる時には、何等かの道…、路…、径…を期待してはいけない。ひたすら、あらかじめ決めた等高線を忠実に辿ることに徹しなけれならないのである。「ここが駄目ならあの尾根に逃げちゃおう」という手合いの風まかせバリエーションと違って、探索は突き止めねばならない難しさがあるのだから。
●オバケ沢とオバケ径路
オバケ沢については昨年の拙レコで紹介したが、「清川村地名抄」には次のように解説されている。
(抜粋)昔、狂った女がこの沢で髪を見だし、やぶれた着物を着てさまよっているのを見た人が、あの沢にはオバケが現れるなどといったことから、この話しがひろがって、この沢をオバケ沢というようになったという。また、この奥地に働きに行っていた札掛の人が、夕方家に帰る途中この道で美女に出会った。家に帰った人たちが、女が道に迷っているのではないかと助けに行ったが、どこにも見当たらないので、あれはオバケではないかと誰言うとなしに言ったことから、この道をオバケ径路というようになったというが、どちらがほんとうなのかわからない。(抜粋終)
この狂った女と云うのは本当で、H・シュトルテ氏の「丹沢夜話」に詳しく載っているが、もっと具体的な経緯を知りたいのであれば、「丹沢だより116号」(昭和54年7月20日）「丹沢遺聞・6」の項を一読されるとよい。ちなみに、この女性は秦野市千村のお寺の娘さんで、7年間行方不明だったそうです。
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