【八丈島】大川右俣遡行
- GPS
- 09:49
- 距離
- 10.3km
- 登り
- 1,260m
- 下り
- 1,254m
コースタイム
天候 | 曇り一時雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・平水の場合下部は水がないが、遡行していくと水が出てくる。 ・大滝から始まるゴルジュの登攀は難しいので要注意。特に2つ目の滝が難しく、1つ目の滝を登ると巻くこともできない。右岸の防衛道路を使い、まとめて大高巻きすることは可能と思われる。 ・右俣の湧水は水文学的な調査対象とされており、ピンクテープが目印として多数つけられている。 |
その他周辺情報 | 【他の記録】 ・ぶなの会月報609号(非公開) 2022年11月4日、L xx101、KookiiA、kokokohey、ppsakiqqによる遡行。 唯一の沢登りの記録。増水と悪天予報により大滝を登らず撤退。 ・「八丈島東山恒常河川を形成する湧水の湧出成因の再検討」(尾口俊一,2020.地下水学会誌,62(4):601-611) 流域の湧水を水文学的に調査した論文。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jagh/62/4/62_601/_pdf/-char/ja 【八丈島の沢登りについて】 八丈島における沢登りの記録は非常に少ないが、下記の情報がある。 ・けんじり(小阪健一郎)、ペコマ(稲田真)、チッペ(稲田千秋)による2018年9月の記録がROCK & SNOW83号に掲載されており、登龍沢(仮称)(東白雲山北面の沢:流水なし)、向里沢(仮称)(素石ヶ鼻の西の沢)、芦川、名古川下部ゴルジュ、名古の滝が遡行されている。 ペコマのブログ:http://pecoma0814.blog.fc2.com/blog-entry-212.html チッペのブログ:http://chippe0910.jp/blog-entry-1028.html ・2022年11月3日、L xx101、KookiiA、kokokohey、ppsakiqq(ぶなの会)による名古の滝登攀 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4918818.html ・「八丈島渓遊会」なる組織があり、島内での沢登りを行っているようだが、記録は出されていない。 ・沢登りツアーの対象として、大川の大滝、鴨川支流の三段の滝、大の川の下流部が利用されている。 https://natures.natureservice.jp/2016/08/30/4177/ |
写真
装備
備考 | ・大滝のゴルジュを登るなら、ラバーソール+タワシ必携。難度は高いが、面で乗るスタンスが多かったため、クライミングシューズよりも沢靴が適しているかもしれない。 ・ロープは30mで可。 |
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感想
【計画の経緯】
八丈島は2013年に一度行ったことがあったが、その時は沢登りを本格的に始める前だった。その後、沢登りの対象として考えたこともあったが、御幸の滝に平時は水がないということから、興味深い地形のところに水はなく、遡行価値の高い沢はないだろうと考えていた。2018年の小阪らの記録を見ても、辺クラとしてではなく、沢登りとして面白いところは無いように思った。
その考えが変わったのは2022年のxx101らの記録を聞いてからである。大川が沢登りとして結構良かったが、完遂できなかったという話だったので、それを解明しようと思い、今回、青ヶ島への旅行と併せて行ってみることとした。
【記録】
○大滝ゴルジュ下流まで
朝早くにアラームで目を覚ますが、予報に反して雨が降っており、いきなりモチベーションダウン。二度寝する。1時間後に起きるとやんでいたが、相変わらず天気予報は悪く、今後も雨が降りそう。どうしようかと思うが、そうそう来れるところでもないので、雨を覚悟で行ってみることにする。
人気のない鴨川沿いの道路に車をとめ、橋を渡って大川に入渓するが、水はない。2022年の記録では入渓直後から水があったということだったが、昨年は10月にかなり多くの雨が降って増水していたのであり、やはり平水では水はなかった。このままずっと水がないのだろうかと落胆するが、とりあえず遡行。しかし、いきなり巻くのが面倒な堰堤が出てきて、雨も降ってきて、帰りたくなる。それでも遡行を継続していくといくつか涸棚が出てきて、まずまず登り応えもあるのもあって、多少気が紛れる。
水もないのにある取水堰跡を越え、さらに堰堤を1つ巻くと御幸の滝。かつて昭和4年5月29日に天皇が行幸された所とのことだが、今となってはすっかり荒れていて水もなく、なんでこんなところに、という感じである。当時は上流での取水もなく立派な滝で、雨乞の地として信仰を集めていたのかもしれない。
その後も水の無い谷を暫く遡行していくと、徐々に水たまりが増えてきたかと思うと、遂に6m斜瀑で流水が現れだした。これを簡単に登って以降も水はあり、漸く普通の沢になってきたと、喜ばしい。遡行を続けると12mの裏見ハング滝が出てきて、多少見応えがあるが、登れない。ひとしきり裏見を楽しんだ後、左岸から巻きにかかるが結構悪く、モンキークライムをしていくが、結局舗装路の鴨川林道まで巻き上げられてしまった。林道を終点まで歩き、斜面を下って沢に戻る。戻った地点は12m滝の上の堰堤を越えたところだったので、12m滝の落ち口まで下ってみようかと思ったが、堰堤を下るのが面倒だったので断念。
○大滝ゴルジュ
上流へ向かい、小滝や右岸からの湧水を過ぎると15m大滝。驚くほど立派な釜を持つ滝で、迫力がある。ここで昨年のxx101らのパーティは撤退しているが、今日の水量なら登れそうなので、tamoshimaリード。上部が多少難しかったが、問題なく突破。しかし、上流を見て固まる。左は登れなそうな滝、右も登れなそうな滝、滝の周囲の壁も弱点がない。これはどうしたものかと思うが、最悪ハーケンを残置して懸垂下降すればよいので、とりあえずS野にフォローしてもらう。
さて、S野も登ってきたところで、2つ目の左の滝8mに向き合うが、近づいて見れば登れる可能性もありそうには見えてくる。ということで、tamoshimaリード。たわしをフル活用しながら登っていくが、左手の岩が崩れフォール、滝壺にドボン。しかし、登れそうだという手応えはつかめたので、もう1回。先ほど崩れた岩は使わないことにして慎重に登っていき、途中1つだけ中間支点もとって、フリーで登攀成功。小さいながらも、なかなか、達成感のある滝ではないか。S野はフルにゴボウしてフォローしてきた。
さらに3つ目の滝7mがあり、これも巻くのは大変そうだが、幸い、直登は難しくなさそうである。ここもtamoshimaリードで登ると、ゴルジュは終了の様相。これは島一番のゴルジュだろう。完登できて良かった。
○遡行終了まで
意外に深い淵をへつって越えるとすぐに取水堰。ここで全量を取水しているのではないかと出発前は思っていたが、そうでもなく、結構な量の水が下流に流れていた。この川の下流部に水がないのは、取水の影響もあるが、非常に水が浸透しやすい地質が主因なのだろう。なぜか水を1か所に集めて落水している石積み堰堤を越えると、すぐに二俣。今回は、地形的に興味深い右俣へ。
右俣に入るとまた堰堤があり、巻いて少し進むと登れない8m滝。右岸から巻いていくが、歩いて沢に戻るのが難しい地形のため懸垂下降。その先の4m滝は、なぜかぼろい残置ロープが垂れていたが、一応フリーでの登攀を目指す。結構きわどいムーヴがこんな滝でも出てきたが、なんとかフリー登攀に成功。
次の4m滝は登れなそうなので巻き、左岸が崩壊している箇所を過ぎると沢水の透明度は上がるが、ゴーロが続く凡流となる。文献を読んで湧水地でこの沢が終わることは分かっていたのでそこまでは遡行することにしていたので淡々と遡行すると、4m滝を経て壁に取り囲まれた湧水地となる。高い壁の下から滾々と清冽な水が湧いており、何だか神秘的な感じのするところである。tamoshimaは無神論者だが、神の存在を感じるとしたらこんな所だろう。
○下山
この大川右俣の湧水は地下水の研究対象地となっているので、ここまではピンクテープが多くあった。写真を撮ったり飲んだりしてこの場を十分堪能した後、このピンクテープに従って戻ることにする。すると部分的には軍道っぽい広い部分や踏み跡の濃い部分もあって、まあまあ歩きやすく、スムーズに取水堰まで戻ることができた。ここまでは車道がのびてきているので、淡々と歩いて下山。最後は、橋を渡ろうとすると遠回りになるため、水の無い鴨川の流路内を歩くというショートカットをした。
【総評】
水の無い谷が多い八丈島にあって、この沢には登れる滝が多く、ゴルジュ突破も楽しめる、遡行価値の高い沢であった。恐らく八丈島で最も遡行価値の高い沢だろうと思う。沢屋が八丈島へ行くなら、是非行くべきである。八丈島は初春や晩秋でも比較的暖かいため、本州の沢だと寒い時期にお薦めである。
【感想】
入渓して暫くは水もなく、雨も降って帰りたくなるくらいだったが、立派で難しくも登れる滝のあるゴルジュや、神秘的な湧水等があり、特徴的で面白い沢だった。八丈島という離島において、このような面白い沢を開拓出来て満足している。堰堤や残置ロープ等人臭いところもあったが、大滝ゴルジュについては初登ではないか。
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