三瓶山五座周遊(女三瓶・男三瓶・子三瓶・孫三瓶・大平山) ※山陰出張の帰りに三瓶一家にご挨拶。最後に予想だにしない展開が……。
- GPS
- 05:00
- 距離
- 8.2km
- 登り
- 878m
- 下り
- 871m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2007年10月の天気図 |
アクセス |
写真
感想
10月13日(土)山陰の浜田に出張することになった。折角山陰地区に行く訳だから山と温泉も楽しみたい。あいた時間に登山と温泉を楽しもうという腹積もりだ。いろいろ考えた挙句、次の通り計画した。11日(木)小倉〜山陰(米子、松江)へ移動し業務をこなす。12日(金)浜田へ移動し準備、13(土)本番、14(日)三瓶山登山という具合だ。しかしこの計画にさらに付け加えるのがオレ流というもの。11日(木)は夜中に出発し、朝早く山陰に着くことで世界遺産間近と噂される「三徳山投入堂」に行くという、いつもながらの超ハードな計画だ。
小倉から米子までは約450キロの長丁場、時間的に5時間は見ておかなければならない。ビジネス用と登山用の準備を万端整え、11日(木)夜中1時に小倉を出発した。特に今回は秘密兵器としてベルボンの携帯用三脚を購入、単独登山でも簡単に自分を撮影できる体制をとった。出発してから約180キロ、物凄い眠気が襲ってきた。その前にも数度の眠気の波を越えてきたが、ついに限界だ。広島県の吉和SAで倒れこむように仮眠を取る。10月も中旬になると夜は冷える。ヒーターをつけっ放しにして小1時間仮眠を取った。仮眠後、ウソのように回復。再出発した。
その時、気分良く運転している最中にメールが入った。「ウワッ!ビックリした!誰や!こんな朝っぱらから。」見ると、嫁からだ。「なになに、ビジネス用の靴は持って行った?」だと。「そんなん持って来てるに決まっ……、ウン?アレ?マジで????」「うわーーーーー!忘れたっああああ!!」。なんという大馬鹿者!登山靴はしっかり持ってきているのに、肝心のビジネス用シューズを忘れるとは!」「オレのバカッ!」こうなったらどこかで靴を買わなければならない。余計な出費だ。自分のアホさ加減につくづくムカついてきた。こうなったら、ムカツキを鎮めるために、(84)湯原温泉砂湯に入るしかない。(イマイチ意味不明だが…)。砂湯は露天風呂番付で西の横綱という有名温泉だ。朝7時前ということもあり、以前来た時のような混雑ではなく、私を含め2〜3人しかいない。湯船の底からプクプクと湧く足元湧出の湯はこれ以上ない新鮮さ。湯原温泉入浴後、完全に目が覚めた。途中、(292)関金温泉「関の湯共同温泉」に入ったあと、8時過ぎに三徳山の三佛寺に着いた。
標高900mの三徳山は山全体が国の名勝・史跡に指定され、特に奥の院の三佛寺「投入堂」は国宝に指定されている。現在、三朝町ではこの投入堂を世界遺産登録に向け運動を展開しているのだ。三徳山に着くと参拝受付所にて参拝料400円を支払う。ここで、ちゃんとした靴を履いているか、靴底がツルツルしていないか等を軽くチェックされる。チェックをパスすると、三仏寺本堂へ階段を上がっていく。階段を登っていくと荘厳な雰囲気に身が清められるような感じだ。次に投入堂への入山受付所にて200円を支払う。ここでもう一度靴のチェックをし、入山の許可を受けた者だけが、「六根清浄」と書かれた輪袈裟を掛け、投入堂を目指すことができる。ここまで念入りに足元を確認するのは、鎖場や切り立った崖などで死亡事故や滑落事故が続発しているからで、寺側も修験者による山岳信仰の場所がこの三徳山であることから、危険箇所を直す訳にはいかない。無事に入山を許可していただき、輪袈裟を掛け出発だ。
出発してすぐに、第一の難所「かずら坂」が待ち構える。ムキ出しになった木の根を慎重によじ登り、これをクリアすると鎖坂がある。鎖坂を越えると、「着いたぁ投入堂に。意外に早く着いたなぁ。」この日は天気も良く景色も最高だ。ちょうどいい所に先程追い抜いた人がやって来たので、写真を撮ってもらうことにした。話をしていると、ここは投入堂ではなく、文殊堂だということが判明。「ふうっーー!危うくここで引き返すところだった。どうも投入堂とは少し違うかなとは思っていたが……。あぶないあぶない」。気を取り直して出発だ。
切り立った崖を越えると、先程の文殊堂に良く似たお堂「地蔵堂」があった。鐘楼を越えると、最後の難所「馬の背・牛の背」であるが、これは難なくパスし、ついに投入堂に着いた。「おおーー!これや!これや!」「しかし、なんというバランス!!」それは、断崖絶壁の岩窟の中に絶妙なバランスで建っていた。凄いというより、どうやってこれを作ったのか不思議に思ってしまう。投入堂を見た後、今来た道を下っていく。登りよりも下りで滑落事故が頻発していることから注意して下りて行った。元の入山受付所で輪袈裟を返却すると、本日の下山第一号であった。寝不足もあり、かなり疲れたがこれからが今日の本当の仕事である。気合を入れて三徳山をあとにした。
業務は倉吉からスタートし、米子→境港→松江→安来→米子という順番で廻り、今日の宿泊場所の三朝温泉に戻る行程だ。途中、米子のジャスコでビジネスシューズを購入、痛い出費に頭を抱える。ついでにここでたこ焼きを食ってこれを昼食とした。余談だが、なかなか旨かった。ちょうどこの日米子で和牛祭りをやっており、そちらも気になるが仕事優先で業務に専念した。
松江を経由し米子に戻ってきた時には陽も暮れかかっており、寝不足から疲労も溜まってきた。最後の気合を振り絞り、急いで三朝温泉に戻ると、陽もどっぷり暮れていた。今日の宿は三朝温泉「木屋旅館」だ。宿に着いてすぐに三朝温泉の温泉めぐりに出かける。まずは、三朝温泉はもとより山陰地区を代表する名宿(293)「旅館大橋」を目指す。文化庁登録有形文化財の建物、自家源泉5箇所を持つ100%完全掛け流しの湯、現代の名工に輝く料理長が作る創作料理と非の打ち所が無い。かの温泉評論家、郡司勇氏曰く、全国で5箇所しかない満点を付けた宿である。宿のウリである、「天然岩窟の湯」は女性専用であったため泣く泣く断念、露天風呂とふくべの湯という内湯に入った。やはりこの旅館は泊まってこそ、その素晴らしさを実感できるのだと思われた。「そうだな、この旅館は今の自分ではまだまだ不釣合い。あと20年経ってからまた来よう」。
大橋をあとにし、近くの(294)三朝館に立ち寄った後、今日の宿である(295)木屋旅館に戻ってきた。この木屋旅館、明治元年創業の老舗でありながら、リーズナブルな料金で宿泊できることから、ここに即決した。とりわけ宿の名物「手掘り湯 楽泉の湯」は地下2mから湧く足元湧出の湯で、湯の新鮮さもさることながら、貸切風呂なのでのんびり浸かれると思われた。浴室に入り、掛け湯をすると「あちちちーーーー。殺す気かぁーーー!!」湯は煮えくり返っており、慌ててホースで水を入れ適温にして入った。入ると、確かに足元から熱い湯が湧いている。「おおー!これか!」新鮮な湯を堪能しながら、ゆっくり入ることができた。楽泉の湯から出ると家族風呂に直行だ。ここは既に適温に調節されており、ここでものんびり入る。最後に河瀬の湯という男湯に入りハードな1日を締めくくった。
翌朝、三朝温泉の名物風呂「河原風呂」に入りに行く。朝6時、誰もいないと思っていたが甘かった。既に2人のおじさんが温泉に浸かっていた。「クソッ!折角ゆっくり一人で入れると思ったのに……。仕方が無い。」例の秘密兵器、ベルボンの三脚をセッティングし、湯に浸かっている2人に写真を撮らせてもらってよいかを確認すると、「構わんよ。」と快諾頂いた。セルフタイマーで写真を撮っていると、その内の一人が、「私にもその写真ちょうだいよ。」と話しかけてきた。「ハハハハハハ。」と思わず笑ってごまかす。当然ながら本音は面倒臭いのでやりたくない!フツーの人はこれでだいたいの雰囲気を察知するのだが、今回は違った。「送ってよ。三朝温泉の記念にさぁ。」ここまで言われたら断る訳にはいかない。「もちろんですよ!当たり前じゃないですか!」今から思えば、何が当たり前なのか全くもって不明だが、写真を現像して送ってやることになってしまった。もはや1人も2人も同じなので、もう1人にも声を掛けるとその人も欲しいとのこと。河原風呂でそんなやりとりをして、三朝温泉を出発した。
というのもこれから本番ノ会場である浜田まで行かなくてはならず、距離的にも軽く200キロはある。米子手前から高速に乗り、宍道まで突っ走る。途中、出雲で業務を実施し、国道9号線を走る。その途中、温泉津温泉にやって来た。時間的にもまだまだ余裕、大のお気に入りである、(127)温泉津温泉「元湯」に入ろう。扉を開けると3人いた。この温泉津温泉、石見銀山とともに世界遺産に指定され、今や爆発的人気となっており、たった3人というのは物凄く少ない。3人とも地元の人で、あまりの人気で平日のこの時間しかゆっくり浸かれないと言っておられた。久しぶりに入ったが、相変わらずの物凄い濃い湯、舌に含ませると塩気と金気で複雑な味を呈している。熱い湯にさっぱり浸かり、浜田に向かう。
ほぼ時間通りに浜田に着くと、取引先の所長と課長に合流し、明日の本番の準備を行った。準備終了後、懇親会を実施。浜田の割烹「具味」で海の幸に舌鼓を打つ。刺身はあわび、さざえ、ノドグロ、鯛……と超豪華版。しかもノドグロは軽く炙ってあり格別だ。色々食って、食うもの全てうまかったのだが、平成19年最高に旨い料理に輝く年間MVP最右翼と思われるのが、ここ「具味」のノドグロの煮付けだ。ノドグロは20センチ、いやそれ以上あると思われる大物で、煮付けることで身がふわふわになり、煮汁との相性が抜群。こんな旨い煮付けは食ったことがない!こうやって思い出すだけでも、舌に残るあの感覚、はっきり言ってヤバイです。こういう時は普段全く飲まない日本酒を、しかもその土地の地酒が飲みたくなるもの。奮発して純米大吟醸の4合ビンを1本購入し、それを飲む贅沢。本当に大満足だ。私が満足なのだから、取引先の所長も最高に満足気分。最後はさば寿司としじみ汁で締め、会計は少し高かったが、それぐらいは当然だろう。会社の交際費だし、何より自分もお客さんも満足したのだから有意義な金だ。
さぁ、次の日いよいよ本番日になった。基本的に私のようなサラリーマンは立ち仕事でないので、足が棒のようになり正直疲れた。山登りのように足を動かしているならまだいいんだけど、ずっと突っ立ているだけというのは慣れていないと疲れる。夕方になって本番イベントも終わった。取引先のお二人ともここでお別れして、今日の宿泊場所である(297)出雲湯村温泉「清嵐荘」に向かう。浜田から軽く100キロ以上もあり、受付の女性に夕食の時間に遅れる旨電話をすると、「構いませんよ。お気をつけていらして下さい。」と、なんとも温かい応対。結局車を飛ばしたので夕食には間に合った。特別びっくりするような料理でもなかったが、腹も減っていたので全て平らげ温泉に入り、就寝とした。
今回この出雲湯村温泉に泊まったのは斐伊川のほとりに野趣溢れる野湯、(298)出雲湯村温泉「無料露天風呂」に入るためだ。翌朝一番に朝食を食べ終え、即効で精算を済ませると、急ぎ足で無料露天に向かう。まずは準備のため車に行き、カメラと秘密兵器を取りに行く。「えーと、ベルボンちゃん、ベルボンちゃんと。アレレレ、どこにいった?ん?トランクか?」「…………」「ない!どこにもない!」「なんでないんや?」考える……、ま、まさか三朝温泉のところに忘れたか?「な、なんちゅう大馬鹿者!!」「このバカバカバカバカバカ!オレのヴァカーー」。これからの山行で大いに活躍してくれると思ったのに、今回1発目の三瓶山登山にも持っていくこともできずに失くしてしまった。あまりのアホンダラさに涙がチョチョぎれる思いだ。失くしたものは仕方が無い、三脚無しで露天風呂に行くことにした。
「あれ、これか?」四角くコンクリートで仕切られた浴槽らしいものを発見、触ってみると「なんやコレわ!ぬっるーー」「ぬる過ぎてこんなん入れるか!」しかも藻みたいなんが混じっており、物凄く汚い。「ああ!ついてない!」三脚は失くすは、期待していた風呂には入れないわ。「ヤレヤレ戻るとするか。」と、戻りかけた瞬間、「なんやアレは?」さっきの浴槽の少し先からわずかに湯気が上がるのを確認した。近づいてみると、「ココや!間違いない!!」そこには石で囲まれた広めの浴槽があり、下からフツフツ泡を上げながら温泉が湧いている。その浴槽に体を沈めると、「ウオー!!これはこれは、丁度いい湯加減!」しかも地元の人が掃除しているのか、湯舟は素晴らしく清潔で、湯は無色透明な綺麗なお湯だ。泡が出ている箇所に座ってみると、底の砂利から湯が湧いておりとんでもなく気持ちいい、湯原温泉砂湯に似ているが、こっちの方が個人的には好きだ。」「いやぁ、本当にあのまま帰らなくてよかった。」温泉求道者である私もこんな素晴らしい湯に出会えて、嬉しくてたまらない。三脚のこともきれいさっぱり洗い流してくれた。
さて、あんまりゆっくりする時間も無い。急いで三瓶山に向かう。途中、ローソンで食糧と水を買い込み、三瓶山登山口の一つ、東の原登山口に着いた。東の原にはスキー場のリフトがあるので、それに乗ってズボラをしようかとも思ったが、思い直して歩いて行くことにした。リフトの横の草原を歩いていると、リフトに乗った子供たちから「頑張ってぇー!」という応援が入った。ちょっと嬉しかった。この草原には牛が放牧されており、あちこちに牛のデカいウンコが落ちている。緩斜面ではあるが、歩くと物凄くきつい。さらに歩くと急に傾斜がきつくなり、斜度20度はあると思われる急斜面に入った。「これはキツイ!」心臓がバクバクだ。ジグザグに歩き、少しずつ高度を稼いでいく。「うわーー!びっくりした。」何かと思えばヘビだ。油断もスキもあったもんじゃない!途中ススキ原を越えてようやくリフト上まで上がってきた。
まずは女三瓶を目指す。といっても女三瓶まではすぐそこだ。あっという間に女三瓶山に着いた。山頂は電波塔に占拠されており、少々味気ない気もする。女三瓶に着くと、さっきリフトの上から応援してくれた小学生がいて、「お兄さんもう上がって来たの?早いねえ」とみんなびっくりしていた様子。なにより嬉しかったのは「お兄さん」という言葉、仮に「おっさん」なんて言った日にはシバキまわすところだった。(笑)もうすぐ35、四捨五入すると40になってしまう。恐ろしい話だがこれが現実、仕方が無い。しかし見た目と気持ちは常に若くいたいものだ(笑)。
女三瓶をあとにし、男三瓶に向かう。途中、小学生と親子の総勢10名の団体にブロックされ、しばし同行することになる。さすがに普段山登りをしていない人達ばかりなので超スローペースであるが、狭い山道なので抜かすわけにもいかない。のんびりペースにお付き合いすることにした。眼下には三瓶外輪山の中心である室ノ内池が見える。しばらくして団体が休憩に入ったのを機に抜き去り、やっと自分のペースを取り戻す。途中、ユートピアなる場所を通り、男三瓶避難小屋を過ぎると、三瓶山の主峰である男三瓶山頂が見えてきた。山頂は小学生の親子遠足なのか、たくさんのちびっ子で一杯だ。これだけ山頂が賑やかだと、写真を撮ってもらうのも苦労しない。まずは山頂の標識に立つ私を撮って頂いた。その後、男三瓶山頂からの素晴らしい景色を堪能する。360度遮るものもない素晴らしい景色だ。山頂からは日本海が一望で、日御碕も確認できる。そして遥か先には伯耆大山も見ることができる。また山頂付近は一面にススキが自生しており、風にたなびく様子は実に秋らしい。山頂で景色などを見て時間を過ごした後、ススキの原っぱを通り次の子三瓶山に向かう。
男三瓶から子三瓶は大きく下ってまた登るという行程をとり、下りはかなりの急傾斜だ。最近は山登りのたびに下りでケガをしているので注意して下っていった。無事下り終えコルに着くと、子三瓶への登りが始まった。まだまだ疲れもたいしたこともない。子三瓶に着くと狭い山頂部に4人がくつろいでおり、私が入る隙間はないようだ。軽く子三瓶の山頂標識を写真に収め、少しはなれた所まで行き、昼食にした。今日は秋の絶好の行楽日和、天気も実に気持ちがいい。ローソンで買った普通のおにぎりも格別に旨く感じてしまうのは、山の魅力であろう。昼食を食べると、今度は孫三瓶に向かう。
大きく下がって、また上がるというアップダウンを行くのはさっきと同じである。「風越」というコルを越えると登りなのだが、さすがに少し疲れてきた。気合を入れて登ると孫三瓶山頂で、これで三瓶一家全てに挨拶が完了した。しかしこれで終わりではない。三瓶一家とは別に三瓶外輪山を構成する大平山という山があるのだ。孫三瓶から大平山までは割りとなだらかな坂でスイスイと来ることができ、これで今回の三瓶外輪山一周が完了した。大平山から少し下ると、リフトが見えてきた。行きはリフトのすぐ横のスキーゲレンデをそのまま登ってきたが、傾斜もきついし、何よりヘビもいるので砂利道を下って行くことにした。
その砂利道を少し行くと若い女性が2人と出会う。そのうちの1人は3〜4歳ぐらいの男の子をおんぶしていた。彼女たちは何を思ったか、子供をおんぶしたまま急傾斜のゲレンデを下ろうとしているではないか。「おいおい、ちょっと待って!なになに、ココを下りようとしているわけ?それは止めた方がいい!!危なすぎるわ。すぐそこにリフトがあるから。リフトを使い!!」と私が言うと、「いや、子供がリフトを怖がって乗ろうとしないんです。」何それ、そしたらどうやってココまで来たんだ?リフトに乗れないんだったら、登りもおぶって来たの??イマイチ状況が呑み込めないが……。「そしたらおんぶしてこのまま下っていくわけ?いくら砂利道でも危ないよ!」と忠告するも、「いや私は大丈夫です。」体も疲れているが、このまま放っていくわけにはいかない。「いいよ、いいよ。オレがおぶってあげるよ。」と申し出た。すると、「いや大丈夫です。」なんと、このままおぶって下りて行くと聞かない。あまりに固辞するので、オレがおぶるのは止めておいたが、放っとけないので一緒に砂利道を下って行くことにした。
話をすると、どうやら2人の女性は姉妹で、どちらも離婚している様子。特に妹の方はおんぶしている息子を女手ひとつで育てているようで、自分が守らなくてはいけないという固い意志を感じた。かなり下って来た。女性の体力では既に限界ではないかと思われるが、鉄の意志でがっちりおんぶをしている。「強い女性だ。この子を守るのに必死なんだなぁ。」と感心した。とその時、「ズルーー!!」既に体力の限界か、少年をおぶったままこけてしまった。「大丈夫か?!よっしゃ、もうエエ。ご苦労さん。オレが代わってやる。」と言うと、すぐに少年をおぶった。「ズシッ!!んぐぁ、お、重い!!」しかし彼女もずっとおぶってきたんだから、弱い所は見せられない。「全然大丈夫!!余裕!!」軽く強がりを言って、歩き始めた。とにかく行くしかない。
三瓶山一周の最後にまさかこんな展開になるとは全くの想定外だが、行くしかない。だんだん重さで腕が疲れてきたが、後は精神力しかない。姉の方が思わず言った、「やっぱり頼りになる男は必要だね。」妹が呼応するように「そうだね。誰かいい人いないもんかなぁ。」ってオレの方を見ていうので、少々照れてしまった。砂利道を行くと、今度は森の中に入り、リフトの乗り場であるゴールが見えてきた。もう充分一人で歩けると思うのだが、少年も久しぶりの男の背中なのか、なかなか下りようとしない。こうなったら最後の最後まで行ってやる。そう決めるとリフト乗り口までおぶり終えた。「疲れた……。」しかし、疲れた顔は絶対に出さない、いや出せない(笑)。2人の女性は何度も「有難うございました。」とお礼を言って、最後にちょっと待ってと、「ほんの気持ちです。」とジュースを頂いた。それを有難く頂戴し、3人とお別れした。帰る途中に(299)潮温泉に浸かり、体を癒して北九州まで帰った。この4日間本当にいろいろあったが、思い出深い出張になった。おわり。
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