【大峰】石ヤ塔 Dirac Sea 登攀
tamoshima
その他1人 
体力度について
- GPS
- 09:07
- 距離
- 4.5km
- 登り
- 1,422m
- 下り
- 1,439m
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- 山行
- 1:46
- 休憩
- 7:21
- 合計
- 9:07
| 天候 | 晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2023年11月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
○アプローチ ・同人ルーデンスのトポが参考になる。 ・林道から吊橋まではモノレール沿いを歩くほうが良さそう。（今回もそうした） ・トポに記載のあるケルンは見当たらない。所々にピンクテープ等の目印があるが、数は少ないのであてにはできない。 ・トポではルンゼを登る箇所があると書かれているが、その脇の樹林帯を登り降りする方が安全と思われる。（ルンゼは落石が起こりやすい） ・第1岩峰基部で最初に目に入る顕著なクラックが「扉を開けて」1ピッチ目で、そこから右のルンゼを登っていくとDirac Seaの取りつきに行ける。 ○Dirac Sea ・1ピッチ目と2ピッチ目は概ね藪漕ぎ。茨もあり不快。トポではIVだが概ね妥当と感じた。 ・3ピッチ目は出だしと上部が割と嫌らしい。トポでは5.8で体感も同程度。 ・4ピッチ目はチムニーをバック&フットで登るが、出だしに脆い岩が挟まっていたので落としておいた。トポでは5.8で体感は5.7程度。 ・5ピッチ目は高度感のあるトラバースだが、開拓時に比べて木が成長したと思われ、難しくはない。トポでは5.9で体感は5.7程度。 ・6ピッチ目は広いチムニーを突っ張りで登る、核心ピッチ。トポでは5.9+で体感も同程度。ボルトあり。 各ピッチは短いものが多いが、藪が多かったり屈曲していたりするので、繋げて登るのはお薦めできない。カムは#0.1〜#3で十分。 ○第1岩峰ノーマルルート ・トポで5p目とされる綺麗なチムニーのピッチのみを登攀。綺麗な岩で内容も良い。トポではIV+だが体感は5.8程度。グレーディングが激辛。ボルトあり。 ○デプローチ ・頂上から2段下った場所に残置支点があり、40m程度の懸垂下降で「広場」まで降りられる。 ・Dirac Seaの取りつきに戻る場合は、「広場」から歩いて北側に回り込み、立木を支点に50m懸垂下降でちょうど戻れる。50mちょうどのため、結び目等でロープの長さを使いすぎると足りなくなる恐れがある。 |
| その他周辺情報 | 【トポ】 同人ルーデンス：http://ludens.sports.coocan.jp/ishiyatou.html 【他の記録】 看板ルートとされるヒラニア・ガルバの記録は多いが、Dirac Seaの記録は少ない。 同人ルーデンスによる開拓(2009)：http://ludens.air-nifty.com/ayumi/2009/05/irac-sea-6901.html Life Page new (2016)：https://yama2013.exblog.jp/23084774/ 【備考】 ・下北山村により、石ヤ塔ではハーケンや鉄くさび（ボルトのことか？）の打ち込みをしないようお願いされている。 http://www.vill.shimokitayama.nara.jp/oshirase/2016/09/2026278.html |
写真
拍手
第1岩峰ノーマルルートの5p目。とても綺麗なワイドクラックで、楽しい。IV+ではなくて5.8とグレーディングすればもう少し登る人も増えそうだが。
装備
| 備考 | ・ロープは50m2本だったがちょうど良かった ・カムはキャメロット#6まで持って行ったが、#5まで使用。実際には#3くらいまであれば十分と感じた。 ・ジャミングはほとんど使わないのでテーピング等は不要 |
|---|
感想
【計画の経緯】
2020年に池郷川を遡行した帰りに見た石ヤ塔。同行のkumassiyやS田は登ってみたいと言っていたが、自分はあまり興味がなかった。しかし、2021-2022年末年始の紀伊半島遠征で、行先候補として検討してみると、ヒラニア・ガルバの特徴的な大チムニー、なかなか面白そうではないか。結局この時は寒そう過ぎてやめたが、今回は晩秋の遠征ということで年末年始ほど寒そうでもないので、行ってみることに。ヒラニア・ガルバは10aだが辛いグレーディングとのことなので、同じチムニーに反対側からアプローチするDirac Seaを選択。
【記録】
○アプローチ
モノレール沿いは薄く踏み跡もありまずまず歩きやすい。吊橋からは池郷川が見えて懐かしい。対岸に渡るとピンクテープもあり、これは楽勝かと思いきや、すぐに見失い、よく分からないままのトラバースとなる。トポを参考に2つ目のルンゼを登るが、結構急なので降りたくはない感じ。適当な所でまたトラバースして、次のルンゼを登るが、ここは落石が起きやすく、こちらも下りたくはない。ルンゼを離れて適当に左上していくと第1岩峰の基部に到着。目の前の顕著なクラックがどうやら扉を開けての1ピッチ目であると同定。
第1目標はDirac Seaなので、北面へ回り込むためルンゼを登る。多少登ったところで取りつきのクラックへ到着。確かに非常に藪っぽくて全くそそられないが、登れそうではあるので登攀開始。
○クライミング
1p目はS井リード。最初だけ一応クラックっぽいが、あとは全部藪歩き。茨もあり不快。立木でピッチを切る。
2p目はtamoshima。出だし、倒木と茨が組み合わさって非常に不快。そこを越えると普通の樹林帯登りになり、最後だけは木を掴んでの岩登りになって、少しだけマシ。立木でピッチを切る。
3p目はS井。出だしのスタンスが細かい割に岩が汚れていて、ちょっと登りにくい。終盤もホールドが分かりにくく登りにくいところがあった。立木でピッチを切る。
4p目はtamoshima。出だしの右のワイドクラックに挟まった不安定な岩を落としてからそのクラックを登り、左へトラバースするとチムニー。バック&フットで登っていけて結構楽しい。テラスに出たら噂のトンネルがあり、先の様子を見に行くと、トラバースした先には例の大チムニーがある。しかし、ロープの屈曲を考慮し、戻ってからトンネル内のクラックでピッチを切る。
5p目はS井。高度感はあるが易しいトラバースをこなして大チムニーの下に入り、そのまま進んで立木とクラックでピッチを切る。南面は日向で暖かいが、風が強い。
6p目はtamoshima。最終ピッチにして核心ピッチ。大チムニーを突っ張りで登るという異色のクライミングが楽しめるが、残置中間支点が古いリングボルトなのが怖い。カムを追加しつつ、絶対落ちないように慎重に登って、北面に出てチムニーは終了。最後に易しいフェースを登って頂上の1段下の段へ出る。頂上に登ってもノーロープでクライムダウンすることになることを考慮し、これ以上は登らずにカムでピッチを切る。
最後はフリーソロで3m程度(��)の岩を登り、頂上へ。なかなか素晴らしく開放的で、景観も優れている、良いピークである。来てみて良かった。
○デプローチ
懸垂下降支点は2段降りたところにあるので、フリーソロで2段クライムダウン。高度感があり怖さはあるが確かに難しくはない。絶妙な下降支点位置だと思う。50mロープ連結により1pで「広場」まで降りる。
さて、まだ時間はあるのでヒラニア・ガルバの1p目でも登ろうかと思うが、よく考えると1p目を登った先に懸垂下降支点はないので、それはできない。それならばと、懸垂下降中に見て割と面白そうだった、ノーマルルート5p目を登ってみることに。IV+というそそられないグレードがついているが、典型的なチムニークライミングで、登ってみればなかなか楽しい。デシマルグレードを付けておけばもう少し人気も出るだろうに。
ノーマルルート6p目の出だしまで見に行ってみたが、5p目に比べて面白そうでもないし、S井もフォローしないとのことなので、5p目終了点（残置）から懸垂下降で戻る。
荷物がDirac Seaの取り付きに残置してあるので、広場から北側へ懸垂下降したい。広場から北側へトラバースしていくと、ちょうど北面に降りられそうなところに立木があり、ラッキー。立木に連結したロープをかけて懸垂下降していくが、空中懸垂中にロープが絡まりまくったところに荷重をかけてしまい、ほどけなくなるトラブル発生。フリクションヒッチを作って荷重を抜いて何とかほどいたが、つまらないミスでずいぶん時間を浪費してしまった。横着せずにテラスでロープはちゃんとほどいておくべし。ほどけたロープを降りていくと、今度はロープ長が足りているのかが微妙。途中のしょぼい立木でピッチを切ろうか散々迷ったが、ロープの伸びを考慮するとちょうど降りられそうと判断し、下降続行。目論見通り、ぎりぎりで着地できた。なんだか、久しぶりに緊張する懸垂下降だった。
S井は問題なく懸垂下降し、帰途につく。来るときは、下りたくはないルンゼを登ったので、ルンゼは横断し、樹林帯で標高を下げるように心掛けたところ、1箇所だけ酷いシダ藪に苦しめられたが、往路よりはスムーズに吊橋到着。どうやら、ルンゼは横断するだけにしておいたほうが良さそうである。
最後は登りだと長く感じるモノレール沿いを淡々と登って終了。
【感想・総評】
Dirac Seaは下部は酷い藪だが、上部、特に6p目は非常に面白かった。顕著な岩峰の頂上にフリーで登れるというのも良い。マルチピッチクライミングをする方なら、ヒラニア・ガルバもしくはDirac Seaで、一度は大チムニーと頂上を訪れる価値があるだろう。こんな辺境の岩峰に着目し、興味深いルートを開拓した方々には頭が下がる。
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