記録ID: 8030970
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雪山ハイキング
槍・穂高・乗鞍
笠ヶ岳〜雪崩多発の四ノ沢下降〜
2025年04月19日(土) [日帰り]



体力度
4
1泊以上が適当
- GPS
- 10:57
- 距離
- 13.1km
- 登り
- 1,943m
- 下り
- 1,951m
コースタイム
天候 | ガス後快晴雪崩多発 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
路上の雪はすでになく、ノーマルタイヤでも問題なくアクセス可能(※2025年4月中旬現在)。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
【新穂高登山指導センター〜穴毛谷】 登山口から穴毛谷までは、積雪が依然として残っているものの、雪質はすでに春の腐り雪である。踏み出すたびに膝上〜股下まで沈み込む状態となり、まるで“罰ゲーム”のようなツボ足ラッセルを強いられる。行動時間には十分な余裕を見込む必要がある。また、融雪が進んだ影響により、下草や低木の藪が広範囲に露出しており、これをかき分けながらの前進は想像以上に体力を消耗させた。なお、穴毛谷の入口においては、現時点(2025年4月中旬)で雪崩の跡やデブリの痕跡はほとんど確認されなかった。 【穴毛谷〜五ノ沢出合】 穴毛谷から五ノ沢出合までは、引き続き雪渓上の行動となる。ここでもデブリは見当たらず、むしろその静けさに一抹の不気味さを覚えるほどであった。雪質は程よく締まり、歩行感は良好。ラッセルによる沈み込みも少なく、足取りは比較的軽快であった。ところが、このタイミングで同行した後輩の登山靴のソールがまさかの“パカッ”と剥離。一時は下山も検討されたが、当人の「まだいけます!」という前向きな一言と強引な“アイゼン常時装着ベルト固定スタイル”により、そのまま行動を継続することとなった。結果的には、この応急処置が功を奏し、大きな支障なく五ノ沢出合へと到達した。 【五ノ沢出合〜五ノ沢内部〜稜線】 五ノ沢に入ると、コース状況は一変する。沈み込みは股下どころか胸下にまで達することもあり、前夜の降雨により水分をたっぷりと含んだ極めて重たい腐り雪に全身を取られるような感覚であった。冷静に振り返れば、この地点で撤退を選択すべき状況だったのかもしれない。とはいえ、その判断をする間もなく進行は続き、後輩とは5分おきに胸下ラッセルを交代しながらのアタックとなった。膨大な時間と体力をここで消耗することとなる。後半に差しかかると、地形はさらに厳しさを増し、平均傾斜は45度を優に超える急登が続いた。雪壁のような箇所も現れ、ついには我慢できずピッケルを手に取る。一度バランスを崩せば、滑落距離は200m超えが想定される緊張感のある局面であった。そして、ようやく雪壁を抜けた先には、ガスに包まれた真っ白な視界ゼロの絶景が広がっていた。視界はゼロだが、何とも言えない達成感と、度々すれ違う雷鳥の愛らしさが、心を和ませてくれた。 【稜線〜笠ヶ岳山頂】 雪壁を越えて稜線に出ると、空模様は突如として変化し、雲の切れ間から眩しいほどの青空が広がった。これまでの苦労が報われるような絶景が続く、まさに“ビクトリーロード”である。 標高は2900m近くに達し、酸素の薄さを実感する場面もあったが、ここまで来れば残されたのはテンションと情熱と空腹のみ。足取りは自然と前に出た。そして、ついに到達した笠ヶ岳山頂。その場には他の登山者の姿は一人もなく、広がる大展望と静寂を完全貸切で味わうことができた。ちなみに、このあたりでも雷鳥がちょこちょこと現れ、そのあまりの愛らしさに毎回足を止めてしまう。 【笠ヶ岳山頂〜下山(四ノ沢経由)】 下山に際しては、本来であれば前日の降雨と気温の急上昇、加えて直近に3回発生した地震の影響を踏まえ、尾根ルートからの下降が安全策であった。しかし、時間の遅れと焦りから、最短経路である四ノ沢からの下降を選択することとなった。今思えば、その判断こそが本行程における最大の反省点である。 四ノ沢内では、懸念していたとおり雪崩が頻発。雪は不安定かつ重く、途中少なくとも5回の雪崩が発生。その都度、ダッシュで横方向へ逃げ込む場面が続出した。 下山中は、後輩と一定の距離を保ち、一方が歩行している間、もう一方は監視に徹っした。雪崩発生時には即座に声を掛け合った。当然ながら、二人同時に進むことができないため、進行には大幅な時間を要した。 中でも、最後の雪崩は過去に経験した中でも最大級の規模であり、正直なところ、あと一歩逃げ遅れていれば巻き込まれていた可能性が極めて高い。命に直結するリスクを肌で感じる瞬間であった。時間がかかっても、やはり尾根を選ぶべきであったというのが、今となっての率直な結論である。 出合に戻るまでは、互いに無言のまま淡々と歩を進めた。緊張と疲労、反省と安堵が交錯する中、ふと後輩がつぶやいた。 「あの靴、まだ壊れてないっすね。」 そうか、ソール剥がれてたね。なんだかんだで、今日も無事に帰れてよかった。 |
その他周辺情報 | 今回の出発地点である新穂高温泉をはじめ、周囲には平湯温泉など名湯が点在しており、下山後の癒やしには事欠かない。特に平湯温泉は当方推し湯である。湯の温もりが、山行の疲労と反省(特にライチョウ美味しそうと思ったことなど)を優しく洗い流してくれた。平湯温泉、好きです。最高です。愛してます。 また、地域一帯は観光客も多く、自然と人の活気が共存する非常に優れたロケーションであった。春の山の恵みとともに、ライチョウ(見る分には)にもたびたび出会え、自然との距離感を強く実感できた。ライチョウは、決して“美味しそうだった”などという感情を抱いてはならない。 だが、「ライチョウの里」は、美味しかった。紛らわしいが、こちらは間違いなく定番の推奨したいお土産である。 ちなみに、平湯の足湯は「温泉」というより「修行」レベルの熱さを誇っており、うっかり足をつけようものなら「アチチ!」と叫ぶこと必至。だが、それすらもこの地の魅力の一つといえるだろう。 |
写真
装備
備考 | 今回の山行における最大の反省点は、ルート選択と判断の甘さである。登りの時点で、膝から胸まで沈み込むような腐れ雪の状況にもかかわらず、そのまま強行した判断は、今振り返れば無謀であった。このような状況下では、たとえ遠回りになろうとも、安定した尾根ルートを選択すべきだった。 また、登山靴のソールが剥がれた時点で、潔く撤退するという選択肢を真剣に検討すべきだった。装備の不備は即ち安全の欠如を意味する。。という原則を、改めて身をもって学んだ。 そしてもう一つ、地味にダメージが大きかったのが日焼けである。高所の紫外線を侮ってはいけない。唇はパックリと割れ、下山後の担々麺は美味いどころか、一口ごとに地獄の痛みであった。味なんか、もうよくわからなかった。 なお、道中に幾度となく遭遇した雷鳥が、あまりにふっくら端麗で、と丸々しており、つい「美味そうだな」と思ってしまったことについては……ここでは書かないことにしておこう。 |
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