抱き返りの滝

- GPS
- 00:47
- 距離
- 3.1km
- 登り
- 56m
- 下り
- 53m
コースタイム
- 山行
- 0:48
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 0:48
過去天気図(気象庁) | 2025年08月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
深いV字谷を刻む「抱返り渓谷(だきがえりけいこく)」の最奥に、ひときわ白いしぶきを立てて流れ落ちるのが抱返りの滝
1. 地形と水の色
抱返りの滝がかかる玉川は、上流域で酸性の温泉水が混ざり、さらに角閃石や安山岩由来の微粒子を多く含むため、日の差し方によってエメラルドグリーンからコバルトブルーまで表情を変える“ブルーリバー”として知られます。轟音とともに落下する滝の高さはおよそ30メートル。落ち口から放射状に飛び散る水滴が陽光を受け、虹がかかることもしばしばです。
2. 四季折々の風景
・春──まだ雪解け水を多量に含むため水量が最も豊富で、滝つぼに立ち込めるミストが周囲の新緑をいっそう瑞々しく映します。渓谷沿いにはブナやカエデに混じってヤマザクラも点在し、若葉の黄緑と淡い桃色が絶妙のグラデーションを描きます。
・夏──深い緑陰と水辺の涼風が心地よく、「天然のクーラー」として地元の人たちが避暑に訪れます。遊歩道の途中には河原へ下りられる箇所があり、澄んだ流れに足をひたせば、下界の暑さを忘れること請け合いです。
・秋──10月中旬から11月上旬にかけて開催される「抱返り紅葉まつり」の時期がハイライト。モミジ、ウルシ、カエデ、ブナが渓谷の壁面を覆い、燃えるような紅や橙が川面に映り込む様子は“東北随一の錦繍”と称されます。
・冬──12月初旬から翌年4月下旬までは積雪・落石の危険により遊歩道が閉鎖されますが、遠景からでも見える雪化粧の抱返りの滝は、静謐そのもののモノトーンの世界をつくり出します。
3. 散策ルートと所要時間
入口の「回顧(みかえり)の橋」から滝までは片道約1.5km、ゆっくり歩いて30〜40分。橋を渡った瞬間、視界に飛び込む瑠璃色の渓流と切り立った断崖は、まるで隠れた秘境に足を踏み入れたかのようです。途中、苔むした岩壁から湧水が滴り落ちる「誓いの泉」、S字に湾曲する渓谷を見晴らす「誓願岩」など、立ち止まりたくなる絶景ポイントが続きます。ルートは高低差が少なく舗装もされているため、スニーカーで十分ですが、雨のあとは木製デッキが滑りやすいので注意が必要です。
4. 名称の由来と伝承
“抱き返り”の語源について、もう一つ面白い説があります。仙北市に伝わる民話によれば、昔この渓谷には女神が住み、旅人が道に迷うと抱き留めて正しい道へ送り返したのだとか。滝のそばに立つと、どこか包み込まれるような安心感を覚えるのは、その伝承の名残かもしれません。
5. 写真愛好家へのアドバイス
・午前10時ごろまで:東側から差す斜光が滝正面を照らし、水飛沫が虹を作りやすい。
・午後:渓谷全体が順光になり、川の青さが際立つ。特に紅葉期は午後2時前後がベスト。
・スローシャッターを狙う場合は、遊歩道脇に設けられた三脚スペース(幅広の踊り場風)を活用すると、通行の妨げになりにくい。
6. 周辺観光とアクセス
JR角館駅から秋田内陸縦貫鉄道・神代(じんだい)駅へ乗り継ぎ、そこからタクシーで約10分。自家用車なら秋田道・大曲ICから40分、田沢湖駅からは25分ほどです。渓谷入口に無料駐車場があり、紅葉シーズンには臨時駐車場とシャトルバスも運行されます。観光の拠点には、武家屋敷が並ぶ角館や、日本一の深さを誇る田沢湖が至近。温泉好きなら、玉川温泉や乳頭温泉郷へ足を延ばすのもおすすめです。
7. エコツーリズムとマナー
抱返り渓谷は国の名勝にも指定され、希少なカワセミやヤマセミが飛来する貴重な生態系を抱えています。ゴミは必ず持ち帰り、ドローンの飛行は禁止。渓谷沿いの植物は根が浅いため、遊歩道外への立ち入りや踏み込みは土砂崩れの原因になるので厳禁です。
8. まとめ
轟く瀑音、吸い込まれそうなほど澄んだ青、苔むす岩肌を彩る四季のグラデーション。抱返りの滝は、訪れるたびに違う顔を見せつつも、人と自然が肩を寄せ合い、そっと抱き合うように守り継がれてきた秋田の宝物です。角館の武家文化や田沢湖の神秘と併せて巡れば、東北の懐の深さを全身で味わえることでしょう。次の旅ではぜひ、この抱返りの滝で、自分自身を“抱き返す”ようなひとときを過ごしてみてください。
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