横津岳トラバース
- GPS
- 32:00
- 距離
- 26.3km
- 登り
- 1,298m
- 下り
- 1,463m
コースタイム
3/11:C1発(6:00)→横津岳北方Co1030稜線上(7:00)→横津岳(7:30〜8:00)→袴腰岳(9:30〜9:50)→万畳敷原野→泣面山(13:10〜13:30)→大船温泉下の湯下山(16:40〜17:00)
天候 | 3/10:快晴 3/11:曇り 朝−12℃ 横津岳−11℃ 泣面山−7℃ |
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過去天気図(気象庁) | 2018年03月の天気図 |
アクセス |
写真
感想
数年来温めていた構想。ラッセルなしのカリカリ時期にスキーの機動力を生かして完遂。今年は例年より数倍の積雪、最後までスキーが楽しめた。
漁火と焚火、大氷原のトラバース、原野での彷徨、オドロオドロしさ満載のマイナーピーク(泣面山)、地すべり崩壊地の滑降から秘湯へ、と印象に残る山行でした。
NewTLT&FATスキーで久しぶり参加の梶鉄は、ストック折りながらも奮闘した。
以下、会報原稿より
道南/横津岳スキー横断(2018/3/10-11)
渡島半島南部の横津岳(1167m)は、広い頂上に無人のレーダー基地がいくつも設置された不遇な山であるが、山域として捉えれば、大沼を挟み北に対峙する駒ヶ岳よりもはるかに広くなだらかな山容をもっており、山スキーには適している。そこで、山スキーの機動力を生かし、週末一気に山域全体をトラバースしようという計画を前々から温めていたが、その年の積雪状況や天候の都合で、実践は延び延びとなっていた。なぜならこの横断計画のキモは、横津岳を越え隣の袴腰岳(1108m)から北東側に広がる「万畳敷原野」を迅速に横断し、さらに泣面山(835m)と呼ばれる大崩壊地形の一角から太平洋へ向かって豪快に滑り降り、さいごは大船温泉という秘湯中の秘湯に浸かる、というのがゆるぎのない貫徹の条件であった為である。その年の積雪状態にもよるのだが、あまり早い時期では深いラッセルに阻まれ1日では届かない可能性があるし、締まり雪の頃を待てば標高の低い方から真っ先に雪が消えてしまうため「秘湯まで豪快に滑降」というテーマが現実的では無くなる。しかし、今期はそんな懸念を一気に振り払うような数年に1度の大雪となり、それがアッという間にカタ雪となり、最高のチャンスが巡ってきた。このチャンスは逃せない。週末毎に独りシコシコとマイナーピーク漁りを続けている石川やんけ先生(1987年入部)、還暦間近で退職金の資金運用に頭を悩ませている戸田キンドー先輩(1977年入部)、そしてわが国が誇る鉄研究の第一人者、最近山スキー一式を新調してウズウズしていた梶鉄(1988年入部、室蘭在住)と私の4人が声を掛け合い、無理やり都合を合わせて決行まで至った次第である。
1日目は札幌を発ち、大船温泉下の湯に2台の車で集合する。ここに下山用の車を1台置かせてもらう。この下の湯は、沢沿いにある古い木造の掘っ立て小屋で、湯船の大きさは3〜4人が精いっぱいといった感じで、いかにも秘湯といった趣である。この近辺の漁師御用達といったところらしく、夕方4時以降は一般客の入浴お断りだそうだ。もう1台の車で山域をぐるりと反時計回りに半周し、函館七飯スノーパークの手前、精進川林道から昼すぎに入山する。林道の除雪は起点からまったく入っておらず、隣の尾根にうごめくスキーゴンドラを見て見ぬふりをしながら淡々とスキーを進める。ここで人力以外を頼るようであれば、せっかくの計画の美しさが台無しになってしまう(拍手)。快晴の下、駒ヶ岳をバックに精進川林道を最奥まで詰め、左岸台地状のCo750でC1とする。簡易ツエルトを2張。一帯にタンネは無く、立ち枯れたミズナラの巨木を倒し、焚火で夜を更かす。
2日目の朝は高曇り、頂上付近のみが霧で包まれていた。低気圧の前面晴れを期待しながらC1を出る。早朝の雪面は表面がガチガチに氷化しており、天場からシーアイゼンを着けていく。横津岳の北稜線へ近づくと、次第に山肌がオレンヂ色の朝焼けに染まり、視界前方にレーダー基地群がぼんやりと浮かびあがった。この頂上付近は常に編西風の吹き抜けるところで、完全に真っ白だ。基地に占領された頂上で一休みののち、シールを外して南西側の広い頂稜へと滑り出す。視界が利かないため、磁石を切りながらまるで極地の雪氷原のようなところを重力に従いながらひたすらカリカリと滑っていく。途中、やんけ先生が3年前に設置した地温観測点に立ち寄り、機器のメンテナンスに付き合う。数年後には立派な科学的知見が得られることであろう。頂稜のだだっ広い雪氷原を越えて袴腰まで近づくと、視界が一気に広がり、函館山と函館市街が一望できた。おそらくここからの夜景も素晴らしいものと思われる。袴腰岳の登りは堅く急な雪面のため幾分手こずったが、その頂上を越えれば愈々万畳敷原野の横断である。そこは原野というよりも樹林や灌木が茂るただの平坦地で、近年は赤エゾ松の植林もなされているようである。おおむね周囲の地形を観察できる程度に余裕のある速度でゆるやかな傾斜の斜面を滑り、一気に距離を稼ぐことができた。後半は伐開線のような作業道にのり、ひたすら東へ針路をとる。ラッセルはスキーが多少沈む程度でほとんど無い。そしてついに原野の果て、泣面山との広いコルへ至り、灌木の密生した斜面をジグザクに登りきると、東側に切れ落ちた崩壊地形の一角に出た。付近はすでに濃い海霧が漂い、海側に落ちこむ急崖からにょきにょきと巨大な雪庇が張り出している。そのおどろおどろしい光景を眺めながら空身で慎重に外輪を進んでいくと、突如崖側に定天のような凝灰岩質の4段のリッジが現れ、その頂点が泣面山の頂上であった。手作りの金属板に二等三角点「泣面山」と書いてある。夏道もないマイナーピークであるが、思いのほかイカしたピークだ。下りはブッシュの濃い外輪沿いに高度を落としながらドロップ点を探り、崩壊地形の中へと滑り込む。はじめ疎らな灌木の中にクラストした急斜面の滑降が続き、ストック1本たたき折った梶川はひとり苦悶していた。地滑り地形の末端まで降りると、休日であるのにもかかわらず、地熱発電の突貫ボーリング工事が行われていた。作業道を使わせてもらい、いったんスキーを担いだが、再び林道に戻ると、半分氷化した雪面を直滑降で一気に滑り降りた。途中、鉢合わせしたエゾ鹿たちも興奮しながら並走しはじめ、皆でゴールの大船川へと降り立つ。予定通り秘湯まで滑り降りることはできたものの、残念ながら下の湯は地元の漁師達の入浴タイムであった。我々は少し上流にある上の湯(南かやべ保養センター)へ向かい、良質なお湯に浸かりながら今回の山地横断の成功を祝った。
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