記録ID: 27800
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沢登り
日高山脈
ナナシ沢1823m峰南面直登沢(3-0)
2008年07月19日(土) 〜
2008年07月21日(月)
- GPS
- 49:30
- 距離
- 22.9km
- 登り
- 1,602m
- 下り
- 1,604m
コースタイム
2008/7/19
コイボク林道ナリノ沢下1キロ地点(13:50)→峠のっこしてナナシ沢Co400入渓(14:20)→3の沢二股(17:40)Co640広場C1(19:00))
2008.7/20
C1(5:45)発→23直登沢出会い(6:10)→・822荼毘の広場(8:10)→Co1040ババ遭難現場(11:00)→23山頂C2(19:10)
2008/7/21
C2(5:15)→最低コル・1573下降点(7:10)→コイボクシュシビチャリ川810二股(10:00)→イワナノ沢出会下、清和橋Co540(15:00)
コイボク林道ナリノ沢下1キロ地点(13:50)→峠のっこしてナナシ沢Co400入渓(14:20)→3の沢二股(17:40)Co640広場C1(19:00))
2008.7/20
C1(5:45)発→23直登沢出会い(6:10)→・822荼毘の広場(8:10)→Co1040ババ遭難現場(11:00)→23山頂C2(19:10)
2008/7/21
C2(5:15)→最低コル・1573下降点(7:10)→コイボクシュシビチャリ川810二股(10:00)→イワナノ沢出会下、清和橋Co540(15:00)
天候 | 曇りや雨時々晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2008年07月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
1986年のババの雪渓崩落遭難以来はじめて現場の墓参りができた。雪渓跡に一面に咲いていた黄色の花を供え、バーボンをかけてカメラーデンリートで弔った。 ここ数年にわたり現役学生を日高の難しい直登沢に誘い、沢力の底上げを続けてきた。今回もやる気満々の三年目、バイエルンを引率。ルーム現役は少人数ながらも着実にハイレベル化している。直登沢莫迦が続々誕生中だ。 1日目: 水満々:曇り コイボク林道から最低鞍部をのっこしてナナシ沢に降りる。水が多い。雨も降ったが、融雪期の続きのようだ。渡渉するのにいちいち選ばなければならない。函はおおむね中を行く。バイエルンは初め、この水量と流れでは「行ける気がしないんですけど・・」と言っていたが、渦と速さを読み、弱点を突いて渡渉を重ねるうち慣れてきた。前にナナシに来た斎藤の印象では、こんなに苦労した覚えはなく、今回の水量はかなり多い。水温はぬるくて助かった。右岸3mほどのギャップでトップにヒモを垂らしてもらう難しい箇所あり。予定を大幅に上回り、暗くなってきても23出会いに着かない。手前一キロに、広い河原、流木ありの地点があり、ここで泊る。タープを張り焚き火するなり日没。焚火の傍らで寝ていたら、夜中に一時雨が降りあわててタープに避難。ずぶ濡れになった。寒くてほとんど眠れず。 2日目:徹底的に滝・霧雨 朝から晩まで滝滝滝でもういちいち書いていられない。13時間半、30数本の滝を 登り続けた。最大で30m、10m台がいくつか、あとは数mのが無数。小さいものほど難しい。水量もかなり多く、少なければ水の際で登れたものを、側壁の別ルートを登ってトラバースといういやな対処もあり、時間がどんどん過ぎる。斎藤がアクロバチコなルートを切り開き、決して大高捲きせずにルートを開く。ほとんどを20mザイルで切り抜ける。 今年の雪渓は少ない。ババの遭難現場1140mに今年は既になかった。ババはここで崩れた雪渓の下敷きになって死んだ。それより上部には二か所ほど大きく残っていたが、滝をべったり隠してはくれなかった。雪渓の上から側壁に移り、アンザイレンで滝の上へ。 ザイルを垂らしたのは十回前後か。概ねトップはビレー無しで登り、後続が時間節約のため、粘らずザイルを掴んで登るという方法。背の高いいくつかの滝だけビレーした。ザック吊り上げを要するバランス微妙な滝も幾多かあり。登っても登っても次の滝が見えている。とうとう源頭には良い天場もなく、山頂泊の覚悟となる。 ようやく花畑に差し掛かると、頭の上うっすら切れたガスの先にアカネ雲が見えた。上は晴れている。クマの掘り返しあとなどを辿って山頂に着くと、雲海の上に39やコイカクが。完登の祝福だ。一日の苦闘を昇華する景色だが、すぐに宵闇が来た。タープを張って下に潜るが寒い。全身ずぶ濡れで火の気無し。行動食やハムを食べて横になる。震えが止まらずほとんど眠れない。十七夜の月が上がる。幻想的だ。 3日目:ヨボヨボと下山 寒くてほとんど眠れず明るくなると雲海の上だ。ストーブ無しなのでピーナツとギンビスを食べる。タープをたたむころ日が昇ってガスが飛び、カムエクが姿を見せた。神々しい。向かいのコイボクカールにバイエルンは先々週登ったばかり。ピラミッドへの稜線を辿り、最低コルまで。前半まあまあ、後半結構なハイ松藪こぎ。下降の沢はノーザイルのナメ滝が連続。筋肉痛の足で慎重に下る。それもCo1000までで、あとはコイボク沢を延々下る。水量が多く、水温は低い。楽しそうな函も飛び込む気になれず、へつりで下る。筋肉痛に加えて、とある淵で飛び込んだ時にバタ足で足を何かに打ち、ひどく痛むようになった。長い河原歩きで遅れがちになり、結果下山連絡の締切時間に1時間強遅れてしまった。もうまるで高齢者のような歩き姿である、我ながら。 下山連絡をするとやはり在札OBに救助準備連絡が回っていて平謝り。長い林道で、なかなか電話が通じないのである。静内温泉のぬるぬる湯で、三日間すっかり冷え切った体を温め、筋肉をほぐす。バイエルンは現役ながらよく楽しそうについてきた。斎藤はあの状況でもなんでも突破できるスゴ腕である。僕は、四ヶ月ぶりの山で、こんなところに来たにしては善戦したと思うが、トシなんだからもっと体作りしたほうがいい。 札幌駅の青森行き夜行列車を待つホームで訃報を聞いた。昔一緒にヒマラヤに行った上海の梶田さんが昨日の朝、奥秩父の井戸沢で死んだそうだ。ちょうど僕もいやな滝を登っていたころだ。一緒に屋久島の小楊子川や黒部源流を登った。沢での死は一瞬だ。若く未熟ゆえの事故もあるし、たくさん登ってきた末の事故もある。深く弔いたい。死んでしまうとみな悲しむが、逆だ。あんないい男と深く付き合っておいてよかったなあ、と思う。かなしみの感情は、数年経ってから湧いてくる。 |
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