|
時刻は午前十一時半とのこと。
虫の知らせと言うのでしょうか、私はその時刻、奥多摩の岩茸石山山頂にいて彼の声を聞いた様な気がしており、帰宅して暫くすると娘さんから訃報が届きました。
彼は社会人になってから得意先様担当として知り合ったのですが同い歳ということもあって気心が知れ、友人として付き合い出してからは御互いを呼ぶ時もそれまでの「森さん」から「モリッ!」などと呼び捨てとなり、その関係は二十五年間にも及びました。
昨日、親友の奥様から送られてきた‘御返し’に御手紙がしたためられておりました。
宜しければ彼とその長きに渡る親友関係をも少しだけ聞いていただきたく、その御手紙と私の返信を公開させていただきます。
奥様からの手紙
先日は故人とお別れにお酒を呑んで頂きありがとうございました。
喜んでいたでしょう きっと・・・・
まだ ひょいと 顔を 出しそうで玄関から帰ってきそうで・・
「結婚も子供もはやい方がいいんだ」と
「はやくおわらせて好きなビデオ たくさんとっておいたのをゆっくりとみて楽しみたいんだ」
なぜ? そんなにはやいほうがいいのかな?
彼なりのちょっと世間とは違う信念を思って生きたって言うか・・貫いたと言うか・・
お酒をのみながらちょっとこちらをのぞきこむようにして笑いながら「そうでしょ?」という声が聞こえてきそうです。
十九日にお別れ会をして彼の遺言どおり海葬となります。
「死んだら海にばらまいてほしいな。 かおる たのむよ。
墓にはいると 来ないとさびしいし、いつくるんだって気になっちゃうから。
お前たちだってそうだろう? めんどうだなとかサ
海だったら海の方に手をあわせてくれればいいし」。
さびしがりやで なくなる一日前も「ちょっとさびしいからすぐきてよ」。
お墓より海がいい きっとさびしいからかもしれませんね。
坂本さんもさそって下さって夕刻いらしていただけたらうれしいです。
まずはお酒おくります。
ステキなお友達をもって彼は楽しい人生をおくれたと思います。
ありがとうございました
私からの返信
拝啓、傷心癒えていない中 御心遣いいただきありがとうございました。
奥様からいただいた立派なお酒は森の好きだった‘あたりめ’と‘イカの丸焼き’を肴に今宵は天国に居る彼と酌み交わすことにいたします。
同封の御手紙を拝読させている間、親父の葬儀のときには流れることが無かった暖かいものが私の頬を伝って流れ落ちていました。
思い返せば彼と知り合ってから二十五年以上の月日が経ちました。
彼が現役で居る間の殆どの週末の晩は居酒屋の隅で酒を酌み交わしながら箸にも棒にも掛からない人生哲学論を戦わせながら過ごしたのですがそれは私にとって最も心の癒される時間であり、また彼が去った今となっては何にも代え難い貴重な思い出となりました。
生前、森が「前世でも御前と俺は友人だったんだ」。と意外なこと話していたのを覚えているのですが今の人生の中でも彼は親友中の親友、思えばあの言葉は我が身の終焉を悟った少し不器用な彼の「来世でも親友だからね」。とひとまずの挨拶だったのかもしれません。
森が自身の遺骨を海葬として希望していることは私も存じておりましたがそもそも森はとても型には納まり切れない性格の持ち主、いかにも彼らしい最後の旅立ち。
彼が海に帰って行く十九日土曜日の夕刻には是非、私もお別れに参列させてくださいます様御願い申し上げます。
日が近くなりましたら私からも御連絡させていただきます。
朝晩寒さが厳しくなって参りましたのでどうぞ御自愛くださいます様、御願い申し上げます。
不一
平成二十三年十一月十日
良きご供養が出来てよかったですね。人はいつか死ぬものですので、生前の思いが遂げられれば幸せですね。
wakaさん初めまして!
御拝読いただきありがとうございました。
亡くなった親友とはお互いに身の上の全てを語り尽くしてきた仲でしたので安らかに眠る彼の姿を目にした時、
初めて‘死’を感じ取れたように思います。
MAVERICKさん はじめまして。
私も友人が静岡の病院で亡くなるとき、友人の声を長野で聞きました。私を笑いながら呼ぶときの口癖「山ちゃん、ウフフフ…!」
今でも忘れません。不思議なものですね。(山上)
JJ0JVLさん、はじめまして
読んでいただいてありがとうございました。
私は信仰も、そして普段一切徳も積んではいない不心得者なのですが山頂で彼の‘ヨウッ!’って声を聞いたと思います。(アレッ?と思ったのは記憶しております)
通夜の晩、その事を娘さんに話すとニッコリと微笑んでもらえました。
科学では証明し切れないコトってあるのでしょうね。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する