と、のれんがかかった引き戸を開けて中に入ると、カウンターの奥の和室に座椅子に座ってるみよちゃんが見える。
みよちゃんは奥多摩の柳小路で焼き鳥屋を営む96歳の現役女将。
奥多摩の山帰りの 私の姿を確認すると、足元に気をつけながらお店に出てきてくれる。いつもちゃんとお化粧してる。目立たないけど明るい色の口紅。ブローチなどをつけている時もある。
みよちゃん元気だった?と聞くと、ええ、おかげさまで。と低めとのちょっと震える声で、いつも答えてくれた。
とりあえずビールをお願いする。お願いするおつまみはいつも、もつ煮と焼き鳥と冷奴。焼き鳥は、開店前にみよちゃんが自ら鶏肉を串に刺して準備しているという自慢の品。
でも最近はちょっと頼み過ぎたかなと思ってた。みよちゃんの歳を考えると、立って働いてもらうのが申し訳ない気持ちになってくるから。
店内はこざっぱりと掃除が行き届いていて、時々野花が飾ってあったりした。
カウンターに座ってからは、なんとなくみよちゃんから目が離せない。大丈夫かな…
そのうちビールとグラスとお通しが出てくる。お通しは山菜の煮物だったり、常備菜的なものだったり。素朴なおばあちゃんの味。亡くなった祖母が作った料理と同じ味。どれも美味しい。
私は日本酒が飲めないので、友人が日本酒の熱燗をお願いし、みよちゃんにも勧めると嬉しそうにして飲む。だんだん饒舌になってくる。何度か聞いた事がある話もする。震える手でお酌もしてくれる。お酌してもらうとありがたいし、恐縮したり。
お会計は大体いつも2000円。
また来るねーと言ってお店を出る。みよちゃん、元気ででよかった♪
頰と心がほくほくとあったかくなってるのを感じた。
みよちゃんは、今年の7月頃から体調を崩していたそうだ。食欲が落ちていたらしい。
長雨と猛暑がきつかったのかな。8月中旬に入院したそうだ。お見舞いに行った方の話によると、がんばりすぎちゃったみたい。と言っていたそう。
9月になり、中秋の名月の前日みよちゃんは天に召された。
もう会えないのかと思うとつらい。でも、私はみよちゃんにもっと会いたかったけど、みよちゃんしてみれば確かにがんばり過ぎちゃったかもしれないとも思う。
好きな仕事とはいえ… 半世紀以上毎日お客さんのためにお店を開けていたんだから本当にすごいと思う。
なかなかできることではない。お客さんにも神さまにも愛されたから、最期まで明るく生きたのだと思う。
みよちゃんが亡くなってから毎日みよちゃんの事を思い出す。
みよちゃんの手の皺、声、佇まい、覚えてるし忘れたくない。
みよちゃんのお店の前でお花をたむけていたら、山帰りの方が何人か訪れてお店の前の張り紙を見てびっくりされていた。
多くの方々に愛されたみよちゃん。
ご冥福をお祈りします。
「みよちゃん」の息子の行則です。
心に沁みる投稿を有り難う御座います。この場を借りて皆様に御礼申し上げます。
「みよちゃん」の息子の行則です。
心に沁みる投稿を有り難う御座います。この場を借りて皆様に御礼申し上げます。
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