![]() |
下山者とすれ違う。
始発は7:30だったはずだが?
日電歩道への登山口に立つ。
理想的な出だしだ。それでも今回の山行の長丁場を考えると勇足になる。
歩きだしすぐに道間違い。ダム下への降り口に気づかず観光ルートの裏口まで行ってしまう。
昨年のダム下への下降は路面が所々凍結してとても歩きづらかった。
今回は拍子抜けするくらいあっという間にダム下
に立つ。
8:55、内蔵助出合。
荷が軽いのも手伝ってか思ったより早く着いた。昼までには黒部を抜けるかもしれない。
昨年は暑さと20kgのザックに閉口した。
黒部の夏は暑い。
手ぬぐいで首の周りを覆っている。
すこぶる調子が良い。
黙々と歩くも東壁を回りこむはずが東壁自体が近づいて来る。
後続者も登って来ない。
おかしい?
道間違いか?
スラブの傾斜が増してきた。一般登山道ではない事はすでに明らかだ。
どうする?
せっかく稼いだ時間を浪費してしまった。
太陽がジリジリとあざ笑うかのように照りつける。
9:53、登山道に戻る。
沢の気配がし始める。
沢に合流する。
涼しげな様子に誘われ休憩することにする。
60代くらいの男性がザックを下ろし落ち着かない様子で辺りをウロウロしている。
男性の着衣は汚れている。
転倒したか?
やがて所在無げに男性が話しかけてきた。
どうやら浮き石に足を置いてしまったらしい。
その際に転倒した弾みで大事な時計を無くしたらしい。
しばらく辺りを一緒に探すも見つからず。
怪我は大したことはないらしい。
男性を後にし再び前進する。
10:23。
内蔵助平までは忍耐を強いられるのは知っている。我慢だ。山と根比べだ。照りつける太陽の下、一歩一歩と自分を鼓舞しながら脚を出す。
ハシゴだ。まだだ。ニセピークみたいなものだ。ここからまだアップダウンが続く。
12:04、内蔵助平。
肌着のみとなり全て脱ぎ捨て沢に足を浸す。
雪融けの沢の水は想像以上に冷たい。
マットを広げ少し昼寝する事に。
今後の行程を見直す必要がある。
横になり考える。
北方稜線は時間的に厳しい。三の窓はどうか?
どちらも私にとっては未知のルート。時間的制約のある中で突っ込むのは厳しい。
ハシゴ谷乗越で検討しよう。
そろそろ行かなくては。準備に取り掛かる。
ザックの口を広げると広げた弾みで何かが転がり沢の流れにのって流れていく。
呆然と眺めている。
不意に思う。
アレが無いと困る事になる。
身体の向きを変えた瞬間、苔むした岩に足を置いてしまう。
脛を打つ。
足を沢へ潜らせてしまう。
シューズの中まで水を侵入させてしまう。
しかも両足だ。
今回の山行は終わった。
これ以上シューズを濡らしたくない。
シューズも靴下も脱ぎ捨て沢べりを走る。
塊に追いつく。
自重で流れず浮いたり沈んだりしている。
今にも流れていってしまいそうだ。
沢の水はとても冷たい。
足が痺れる。
かまっていられない。
塊をひったくり沢べりへ戻る。
テントの中身は駄目になっていない様子。まぁ今回は天候が大きく崩れる心配はないから大丈夫だろう。問題はシューズだ。履いていたソックスはダメになった。
まだ1/3も歩いていない。
ガポガポの水まみれのシューズで歩くか?
いや、それは無いな。
敗退か?
中厚手の替えのソックスを持っていたはず。
出来るだけシューズの水気をとる。
これならいけるんじゃないか?
13:32、内蔵助平を後にする。
15:42、ハシゴ谷乗越。
大汗かいて何もかもビッショリ濡れている。
シューズもソックスも脱いで足をリラックスさせる。湿っぽいが嫌な感じではない。
こまめに足をリラックスさせることで山行後の疲れはモチロン、山行中の足のもちが違う。豆対策にもなる。
スープを作る。身体を温め塩分や水分を摂る。
さぁ、どうするかな?
三ノ窓は難しいな、癪だが長次郎から上がるか?
向かい側の先鋒であるスバリ岳をしばらく見つめる。
よし!決めた!長次郎から詰めよう。
乗越を回り込むと剱と対面する。
いよいよだ。
下り始めると沢音が聞こえはじめる。
回り込むように急斜面を下りきり真砂沢に出る。
17:22、三ノ沢。
シーズンだというのに人気がない。
足をリラックスさせる。白湯を啜る。
久しぶりの平地だ。
真砂沢ロッジ。
皆、リラックスしている。
22時までには熊の岩に着きたい。
先を急ぐ。
真砂沢ロッジを後に夏道を回り込むと轟音と共に大滝が現れる。
雪渓に人影。
明日の偵察か?
それとも同じこと考えてる奴がいるのか?
少し行くと60前後の装備の古い登山者に出会う。目的地は真砂沢ロッジか。
何処へ行くのか、何処から来たのか聞かれる。
雪渓を横切ると先ほどの大滝に出た。
何処から登るのかわからない。
大滝の前には大きくクレバスが口を開けている。左右を確認するもここからではよくわからない。左の壁にルートを読む。
壁まで来たが上に上がってもその先が読めない。戻ることに。
右の斜面に近付き目を凝らすと夏道らしきものを発見する。
壁を無理やり這い上がり夏道に出る。
道は滝を巻き、再び雪渓に出る。
夏道を離れ雪渓を中央に進むとトラロープが現れる。
警告が下がっている。
しかしロープのどちらが危険なのかわからない。禁止区域にいるらしい。
ヒドゥンクレバスの気配も感じられない。
進むことに。
大きな滑り台のようなところに出る。
おそらく右に回り込めば出合だな。
19:17、長次郎谷出合。
再び足をリラックスさせ行動食を貪る。
白湯を啜る。
最後の登りに備える。
黙々と登高を開始する。
しばらくすると右手に見覚えのある光景。
確か昨年泊まった場所だ。
ランプの光は闇に吸い込まれ5m先も見えない。
後ろは振り返らない。
熊の岩を目指す。
暗くてよく見えないがおそらくココが熊の岩と思われる場所だ。
21:19。熊の岩。
回り込めば幕営適地だ。
一張りツェルトが立っている。
思ったより早く着いた。
長次郎のコルまで行くか?
それともこのまま山頂まで詰めてみるか?
その前に足をリラックスさせよう。
母指球周辺が悲鳴をあげている。
白湯を啜る。
見渡す限りでは雪渓が切れ始めている。
クランポンをザックにしまう。
歩き出すと再び雪渓が続いている。
クランポンを付ける。
傾斜きつくなり始めた。
もうすぐコルだ。
22:15、長次郎のコル。
着いた。
黒部ダムより剱の稜線に出た。
やっとココまで来た。
絶頂はもう目の前だ。
クランポンを外す。
コルと雪渓の切れ間をボーッと見つめる。
この雪渓の切れる平らな場所は一張りするのに丁度良さそうだ。
もう少し上まで行くか?
23:23。
ルートを探る。
真っ暗でよくわからない。
手こずりそうだ。
この辺で仮眠をとろう。
傾斜があり岩や石でゴツゴツしてる。
マットを敷けば案外リラックス出来るだろう。
横になりストーブに火を灯す。
ペラペラのシュラフに半身を潜りこませる。
マットの上をずり落ちる。目をやると長次郎のコルや八つ峰の峰々や満天の星空が広がる。
1時間ほど仮眠をとる。
白湯を啜り再び歩き出す。
3:35、山頂。
真っ暗だ。
下山する。
剣山荘以降の御前小舎までの道程の短い間に入間市か狭山市在住のご婦人の方と同行させていただきました。ありがとうございました。
今日も今頃誰かが奮闘しているのでしょう。
無事をお祈りしてます。
挑戦と試練の山、剱岳。
今回も無事下山することが出来ました。
長文にもかかわらず最後まで読んでいただきありがとうございます。感謝。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する