■山頂部に樹氷は無い
まず皆さん意外と勘違いされるんですが、山頂付近に樹氷はありません。熊野岳を中心として刈田岳〜地蔵岳に至る山頂稜線部は砂礫広がる荒涼とした世界で、植物と言えばハイマツかコマクサくらい。樹氷に成長するオオシラビソ(アオモリトドマツ)は稜線より少し下がった標高1400〜1600mあたりに生息していますので、樹氷がみられるポイントもその近辺。標高低い方がビッグモンスターで、上がるにしたがって徐々にリトルモンスターになります。
■ライザワールド起点のパターン
これが個人的に一番安心できるパターン。2本目のリフトの途中から植生がブナからオオシラビソに変わり、運が良ければビッグモンスターのお出迎え。そこから御田の神までは緩やかな登りで危険箇所も少ないし、ゆったりと樹氷ハイクを楽しむことが出来ます。風も稜線手前までならさほど強くはない。ただ、ここで引き返す人は実際には少なく、多くの方が刈田岳もしくは熊野岳往復をされますが、稜線に上がると強風ホワイトアウトになりがちですのでそれだけ注意。なおアイスガーデンの氷瀑はリフト降り場のすぐ左から行くのが定番ですが、それでも激下り&激登りなので、正直めっちゃ疲れます。その往復だけで刈田岳往復と同じくらい疲れる。また3月になると雪崩の危険もありますのでご注意を。駐車場は今年から有料化、1、2月の土日祝は1台1000円になりました。オープン7時、付近は路肩含めて他に停められそうなところはありませんので (特に終点の除雪車転回場所は駐車厳禁!!)、早めに着いてゲレンデハイクアップも正直難しい。強いて言えば坊平ペンション街入口に駐車できるフリースペースはありますが、かなり距離あります。下山時はリフト乗車不可。徒歩コースも指定されてますので(パノラマー>うさぎコースの左側)、出来れば事前にHP等でゲレンデマップをご確認ください。#余力があればゲレンデ外の林間オフピステをモフモフ歩いて下山も可。楽しいけど疲れます。笑
■蔵王温泉起点のパターン
このパターンは色々注意が必要です。樹氷観賞目的であれば「蔵王ロープウェイ」を2基乗り継いで地蔵山頂駅まで行くことがほぼ必須となりますが、これが連日ゲキ混み。狭い駐車場はすぐ満車になるし、乗車まで1〜2時間並ぶことも多い。そのため山頂駅に着いて歩き出すのが午後になってしまうなんてことも。出来れば駐車場オープンの7時頃には着いて第1駐車場に停め、早めにチケット売り場(8:15販売開始だけど早めに並んだ方が良い)に並び、8:30の始発ロープウェイに乗れれば余裕を持った山行になるかと思います。また山頂駅からの山行は熊野岳や刈田岳への往復ルートが一般的ですが、このルートだと最初に書いた「樹氷の無い山頂稜線部」が行程のほとんどを占めますので、樹氷を楽しめるのは最初の地蔵岳山頂までのわずか20分くらいだけ。また途中のワサ小屋あたりは地形的に風衝地となるため、突風には最要注意。というわけで、このパターンは要注意項目が多いわりに思ったより樹氷を楽しめる区間は短いので、樹氷メインというよりは百名山ピークハント、温泉、ゲレンデスキーなどと組み合わせた楽しみ方で考えたほうが良いように思います。※なおこのパターンであえて樹氷トレッキングをメインで考えるのであれば、熊野岳を目指さず地蔵岳周辺を散策することになりますが、駅周辺の木はガの大量発生ですっかり立ち枯れてしまってるし、歩くとしてもかなり急傾斜な難ルートなので実際に歩く人は少ないです。またその先で結果的に原則歩行禁止のゲレンデを歩かざるを得なくなったり、中間の樹氷高原駅で下りロープウェイに再び1時間くらい並んだりとこちらも何かと問題が多い。ただそれを嫌って夏道の祓川コースに進むのだけは絶対に止めてください。大変危険です。命の保証はありません。
■すみかわスノーパーク起点のパターン
こちらも大変人気のルートですが、宮城県側だと山頂稜線を越えた風下側に位置するため、樹氷の成長も弱く、どうしても「薄着」のモンスターが多い。無いわけではないけど、迫力で言えばどうしても山形県側に比べて弱くなってしまうなーと。ただ杉ヶ峰、屏風岳などの南蔵王の山々の眺望が良いルートなので、その一面に広がる樹氷原の遠望は圧巻です。また井戸沢BCなども有名で、他のルートに比べ滑走器具を持って登ってる人が多い印象。
■遭難しやすいパターン
温泉側、ロープウェイ起点の場合の話ですが、
「何とか熊野岳まで行こう」
「着いた!御釜が見える!」
「でももうちょっと近くで見たい!せっかくだし!」
「じゃあ少し先まで頑張ってみるか。」
と。んで熊野岳までだった計画が無理して刈田岳を目指し、馬の背あたりで天候急変、ホワイトアウトと。熊野岳から刈田岳までの往復は健脚でもがっつり2時間掛かるし、最後はかなりの登り返しになるので意外とキツイです。少しでも不安要素があるようなら「御釜は次回」と割り切れるかどうかがポイント。近年、ニュースにもなる雪山遭難はほとんどがこのロープウェイ起点のパターンのように感じます。
またすみかわルートの場合、刈田岳山頂直前が少し細尾根急登の危険ポイントなので、悪天候の場合は車道であるエコーライン〜ハイラインを歩行するという手があります。ここは冬季でも雪上車ツアー用に常に通路が整備されてるので、歩きやすく道迷いもしにくいです。
■中丸山ルート
上記3ルートはいずれも天候さえ良ければ雪山初心者でも楽しめる危険箇所の少ないルートですが、中丸山の冬季は危険箇所のオンパレード。細尾根や急斜面トラバース、手すりのない吊橋など、難所が続く熟達者向けルートです。地図だけ見るとライザ起点で熊野岳周回にちょうど良さそうに見えますけど、実際に冬季に歩く人はほとんどいません。私も冬季は行ったことがありません。
■装備について
アイゼン、ピッケルなどの装備は意外と皆さんお持ちですが、蔵王でいちばん大事なのは「寒さ対策」。悪天候で強風が吹き荒れれば容赦なく体温をどんどんと奪っていき低体温症や凍傷などに即繋がりますので、それを守るのが何より大事です。防寒具の基準は、歩くのに十分な装備に加えて、何かあったときに捜索隊が到着するまで数時間止まっていられるだけの予備の防寒具があるかどうか。また凍傷対策はなんといっても「肌を露出しない」ことなので、ゴーグル、フェイスマスク、バラクラバが有効です。特にライザの下りは季節風をまともに正面に受けながら歩くのでゴーグルがないと目も開けられませんよ。また意外と大事なのが「手袋を外さずにスマホ操作できること」。ブリザード、ホワイトアウト状態で方向も分からず、さらにスマホも操作できないとなったら完全にアウト。ちなみに防寒テムレスはぎりぎりスマホ操作できます。故障時のサブスマホもあるといいね。また手袋は濡れたり風で飛ばされて無くすことも想定して予備を持っていくとさらに安心ですね。
とりあえずそんなとこで。なお上記はあくまで「樹氷を楽しむ」という点に特化した話で、そう考えるとライザからのルートが一般的におすすめではありますが、その他の眺望なども含めたトータルで見れば温泉ルートもすみかわルートも大変魅力的ですので、単純に甲乙はつけがたい気はします。
というわけで、くどいようですが安全には十分配慮の上お楽しみ頂ければ幸いです。
皆さんの樹氷の思い出が少しでもステキなものになりますように。
※おまけの山バッジ情報
残念ながらライザの売店には山バッジは売ってません。蔵王温泉まで行くしかない。蔵王ロープウェイ目の前の「能登屋」さんは目の前に数台の駐車場もあるので車でちょっと立ち寄るなら便利。バッジの種類も豊富です(5種類くらい)。ロープウェイの山麓駅にも数種類売ってる。13号線沿いの観光物産館(ぐっと山形)は見たところ無かったような。さらに夏場なら刈田山頂近くのレストハウスや刈田リフト乗り場の売店などにも多数売ってますね。
何か頭の中を整理しながら書いてたら長くなっちゃいました。
Kanさんのレコ、お待ちしてま〜す。
ロープウェイ乗り場前の第一駐車場に駐車できるかは大きいですね。スキーヤー(ボーダー)なら黒姫や大森からリフトでの山頂線へアプローチできますが。海外からの観光客も回復してきているので、おっしゃるように早めの到着がおすすめですね。
今年は家の都合で蔵王訪問は3月になりそうです。
確かに今の蔵王(温泉)は外国人だらけですね。ここだけにすごいたくさんいて何だかとても特殊な感じがします。ま、来てくれるのはありがたいですけど。
ライザルートもゲレンデ付近は樹氷になってませんが、上部はそれなりに成長してくれてるんで、3月でも楽しめると思います。ぜひ。
素晴らしいご案内、ありがとうございマス♪
先日、蔵王温泉スキー場からロープウェイを使ったら、、
全く仰る通りの事がおきましタ。。。
1時間待ち、いきなり爆風、数が少ない等々。
次回チャンスが有れば、迷わず「ライザ」ですね♪♪♪
ちょっと文面のほうがあまりに「ライザ推し」になってしまってたので、最後のほうを少し修正しました。樹氷を間近で楽しみたいなら確かにライザだけど、他のルートもいっぱい良いとこがあるから甲乙つけがたいよと。もちろん本心からそう思ってますので!ね。
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