初めて覚えた山は剱岳だった。小学校の登下校、のどかな田舎道、田んぼの向こうの里山のその向こうの屏風のような山並みの中で、ギザギザの切れ目が剱岳だよ、と友達に教えてもらった。でも、大きくくぼんで、ギザギザと切れ目の入る、その刻みが剱岳だとずっと思っていた。
次に覚えた山は山に目覚めてからで、薬師岳か毛勝三山。ゆったり大きくなだらかな山容はわかりやすい。毛勝三山も、「山」という漢字の成り立ちを思わせる三つの頂きがかわいらしく、目に付きやすいのですっかりおなじみになった。
実は立山(雄山)はなかなかわからなかった。白状すると、山に登るようになってからもあの台形はなかなか判別できなかった。言い訳をすると、角度によっては大日岳が前に来て、その陰に隠れてしまうからだ。今はそんな屁理屈も身に付き、ザラ峠や獅子岳、鬼岳、龍王とたどっては見当をつけたりする。
薬師の前のとんがりは鍬崎山。薬師から鍬崎を眺めたときは感慨深いものがあった。『おまえの後姿見てやったり!』なんて具合だろうか。
山は一度登ると親しみが湧き、余計に見当が付けやすくなる。しかし、見る角度によっては表情が全然違うので、思う姿でないことも多い。
里から、東から、西から。登るのも、見える山の名前を覚えるのもまた楽しいものである。
ちなみに、「富山」はまさに呼んで字の如しだが、アイヌ語では「ト」は「入り口」という意味を持つというのを聞いたことがある。「トヤマ=山の、入り口」。これもまた然りである。
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