捜索現場となった山は、第1章:棒ノ折山、第2章:飛龍山、第3章:秩父槍ヶ岳、第4章:鍋割山、第5章:皇海山、第6章:巻機山である。関西在住の私としてはどれも登ったことがない。しかし、関東では多くの登山者に登られているようだ。
本書によって(本書だけではないが)、遭難事例を知っておくことは自らの遭難リスクを下げることになるだろう。だから、多くの登山者は是非読んでおくべきだと思う。また、捜索にかかる費用や捜索の手順などもかなり詳しく語られる。登山者は現場の様子や捜索活動に気が行きがちだが、家族や身近な人が遭難した場合、費用がいくらかかるか、どのように情報提供するのか、などが必要になってくるだろう。
ところで、著者は救急救命に携わる看護師である。搬送されてくる多くの登山者との出会いから自ら登山を始め、山岳遭難救助、捜索の道を進まれる。章間のコラムで語られるが、もともと著者は看護師として何か特別なことに取り組みたかったようである。それが、山岳捜索の道なのだが、よほど思いが強くなければ進めない道だったと思う。今は山岳遭難捜索チームLiSSを立ち上げ代表をされている。統率力もある方だと思うが、むしろ本書では捜索を待つ家族に寄り添う姿勢を大切にされているところが印象的だ。
最後に、「普通失踪」と「危難失踪」の違いは知っておくといいと思う。山岳遭難では通常、普通失踪が適用される。これは、7年の時を待たなければ死亡が確定しないということ。しかし、危難失踪が適用されると1年で死亡が確定される。最終章の遭難者が会社経営に係わる方であり、危難失踪が認められるのだが、そのためのハードルは低くない。山岳遭難の場合、状況判断によってもう少し簡単に危難失踪が適用されてもいいのではないかと思う。
ヤマレコユーザーにはお勧めの本です。
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