実は以前から、この事故については私なりの解釈があったのだが、オープンな日記に書き綴るには、まだ時期が早いと思い、控えていた。が、ちょっと『思うところ』があり、あえて日記に書くことにした。『思うところ』というのは文末に記す。
学習院の事故当時の世間の状況（報道等）については、正直、よく知らない。テレビも見ないし、新聞も取らないので・・・。加えて、学生時代は北海道で山登りをしていたので、八ヶ岳どころか内地の山については地形や気象についても詳しくない。
が、
報道の様子や事故に対する感想が書かれたブログをみると、
・なんで天気の悪い中いったのか
・延期すればよかったじゃないか
・リーダー（以下、L）はかなりの経験者らしいのに残念
・八ヶ岳の地形や気象を甘く見たんじゃないか？？
・行動が遅れたメンバー（以下、M）が足をひっぱった
・中岳のコルへの下降は迷いやすい。
・なぜビバークしたあと登り返したのか？？
みたいな意見が多かった。
ただ、そういう記事を書いている人の多くは、
冬山を始めて数年という方が多かったし、
大抵は、個人でステップアップしたりリスク管理をしていて、
冬山登山に対しては自分なりの考えをもった人が殆どだったように思う。
なので、そういう人たちが、
上記のような感想や疑問を持つことは、
なんとなく理解できる。
けれど、学生時代に山岳部にいた自分としては、
遭難してしまった彼らのとった行動は、
すごく自然な成り行きで、起こるべくして起こった事故であり、
あまり疑問や感想の余地はない。
また、果たしてそれを防ぐことができるのか？？？
と聞かれれば、やはり防ぎようが無かったんじゃないか。
と思うのである。
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大学山岳部と云うところは、ある意味、
まるっきり素人の一年生が、４年間（実質３年）という短い期間のなかで、
その素人をそこそこ難しいルートにでも連れていける四年生へと成長する場だ。
社会人山岳会や単独で登っている人で、
登山を始めて３年目、４年目って人もたくさんいると思うけど、
果たして、どのくらいの人が、
自分がリーダーとして、ズブの素人を
劔岳のバリルートへ連れていけるだろうか？
たぶん、非常に少ないと思う。
社会人だったら、
お金払ってガイドに連れて行ってもらうようなところへ、
たかだか２〜３年程度の経験しかない上級生が、
１年生を連れて行く。
それが大学山岳部と云うところだ。
だから当然無理がある。
無理でもしなきゃ、やっていけないのが大学山岳部なのである。
それを理解しないと、今回の事故の本質はみえてこない。
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この遭難の一番の要因は、中岳のコルへの下降を誤ったことだろう。
ここでちゃんと降りていれば、それ以降の事故は起こらなかった。
何故、下降を誤ってしまったかといえば、
迷いやすい地形との認識が足りなかったのかもしれないし、
そもそもコルへ降りるのにどうやって降りるかという方針が無かったのかも知れない。
あるいは天気がシビア過ぎて地形判断が難しかったのかも知れない。
けど、ヤマケイの記事を読んでみて、
僕が一番気になったのは、
『A 以下3人（M）は途中からルートを間違えたらしいことに気づいていたと言う。
吉田（L）はもっと早くから気づいていたかもしれない。』
との一文。
この一文にこそ、この遭難の本質が詰まっている。
と、僕は思う。
つまり、間違っていると思っても、
それを相互確認できないパーティだったということ。
仮にそうだとすると、
悪天を予想した上で、３つある登攀計画のうち阿弥陀北稜を選ぶのも。
午前中のうちに登り終え、下り始めるということにしたのも。
それはLが一人で、決めていたんじゃないかということになる。
一年生や二年生のメンバーからみれば、
ヒマラヤ経験のある四年生は神様みたいなもんだと思うから、
そうなってしまっても仕方がない。
いわゆる、ワンマンパーティになっていたのかもしれない。
ワンマンパーティの場合、
その人の判断が狂えば、誰も修正できない。
Lが南稜を登り返すと言えば、
みんな全力で登り返しの努力をする。
一方、ワンマンリーダは楽かというと、
それは逆で、すべての責任が自分にかかって来るのだから、
余程精神的にタフか、余程チャランポランでないと務まらない。
ワンマンパーティが悪いとは思わない。
が、やはり、
相手が一年生であろうと二年生であろうと、
要所要所でルートや方針・パーティの行動について、
複数人で意見交換する必要があったんじゃないかと思う。
そういうことができてさえいれば、
立場沢下降中でも、ビバークの夜でも、
あるいは翌日の登り返しの最中でも、
いくらでも『遭難』から脱出するチャンスはあった筈だ。
だが、実際は異議や議論もなくパーティーは分裂したようだ。
パーティ内で話し合う雰囲気づくりというのは、
風雪の山で、いきなり成立するものではない。
むしろ、その逆で、状況が過酷になるほど、
パーティー内での会話はなくなり、
Lの判断に依存しがちになる。
それが人間だ。
というわけで、
『A 以下3人（M）は途中からルートを間違えたらしいことに気づいていたと言う。
吉田（L）はもっと早くから気づいていたかもしれない。』
という一文のもつ意味は大きい。
さて、これが全ての元凶か？
といわれるとそうでもない。
実は、もっと根深い問題がいくつかある。
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なぜ、ビバークしてまで南稜を登り返すことにしたのか？
遭難という認識はなかったのか？？
僕は思うのだが、
遭難という認識は十分とは言えないまでもあったんじゃないかと思う。
それでも登り返しを選んだのはなぜか。
なぜか？といえば、
それはきっと、
彼らは、そのまま下山して合宿を終わらせる気なんて無かったんだと思う。
まだ日数を残しているんだし、ベースまで戻れば、
登り残しの岩稜を登るチャンスもある。
それは、『欲』と呼ばれるものかもしれないし、
自分たちに課した『課題』だったのかも知れない。
多分、この２月の合宿は、
春休み中のメイン山行への準備的意味合いもあったんだろう。
少なくとも僕らの山岳部ではそういう時期の山行だ。
夏冬春の長期休みに大きな目標をもってメイン計画を立てる。
その計画を実行するために必要な技能・知識・体力を、
一つ一つ経験し、積み上げ、確認していく。
そういう合宿だったんじゃないかと推察する。
それは、逆に言えば、
この合宿で十分な経験が積めなかったなら、
せっかく立てた、春休みの大きな計画を、
縮小しなければならないことを意味する。
リーダーとしては、春休みのメイン山行に、
一年生たちを連れて行くためには、
どうしても登っておきたいルートがあったんじゃないかと思う。
そう考えると、ビバーク後であっても、
翌日、南稜を登り返した心境というのが理解できる。
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日曜登山家は、
何故、天気が悪いのに入山延期しなかったのか？
何故、船山十字路に降りなかったのか？
というだろう。
だけど、大学山岳部と云うところは違う。
あくまで上を目指す。
こういうことをいうと、
たかが山登りでそこまでしてどうすんの？
最後、死ぬでしょ。
と思うかも知れない。
けど、山岳部ってのは、いわゆる体育会系の大学公認部活動で、
やってる本人は、六大学野球とか箱根駅伝とか大学ラグビーとか、
ある意味、そういう部活の人間と同じなのである。
対戦相手が強いからといって、試合を放棄するのか？
２部リーグでもいいのか？
野球や駅伝で、限界まで頑張って身体を壊す選手がいる。
選手生命を断たれる人もいる。
大抵の競技はフィールドで行われるから死ぬことはない。
でも山は違う。
学習院の事故で、
入山延期すればよかったんじゃないの？
なんで南稜登り返したの？？
八ヶ岳の地形や気象を甘く見ていたんじゃないの？
という感想を持った人に、僕は問いたい。
あなたは、限界まで頑張って身体を壊した駅伝選手に、
もっとゆっくり走ればよかったんじゃないの？
さっさと棄権すればよかったんじゃないの？
高校選手権とったからって箱根を甘く見てたんじゃないの？
そういう質問をするのでしょうか。
文頭で書いた『思うところ』の理由も書いてないし、
中程で書いた『事故の本質』についてもまだ言及していないけど、
長文で疲れたので、一旦、休筆。
次回につづく
なるほどなあ！
南稜のりょうはノギへんですよ。
いま会報の校正作業中なので誤字が気になり〼。
よねさん、さんきゅー
会報楽しみにしとります。
iharaさん、初めまして。
とても懐かしい気分になりました。重いキスリングや幕営に鉄拳(笑)
「登山経験をいかに積んでも、カンが働くには年月が必要」って言われた事が、今になってから解る歳になりました。
ではダン之助でした。
だんのすけさん こんばんは
私も書きながらノスタルジックな気分に浸ってしまいました。
歳をとるっていうのは、こういうことなんですね。
拝読し、なるほどと思いましたね。
私は、1980年入部の山岳部員、しかも医学部の山岳部でしたので、もっと人は居なかった。それでも、４年の３月合宿では、２月に入部してきた、体力はそれなりにある変わり種新人をいきなり、チーフリーダーとして槍が岳硫黄尾根に連れて行った。このときは、４年生の私、新人は２名、２年生が１名の４人パーティーだった。山に向かう列車の中で、アイゼンの装着方法をその新人に教えた。
無事に硫黄尾根を登りきったその新人は、その数年後にブロードピークに無酸素で登ったりする様になった。
大学山岳部なんて、こんなもんだろうと思う。あんまり理論なんて無かったし、世間離れしていたような気がする。先輩にも私みたいなのが居たし。
今だったら、上記の状態で事故ったら世間から非難の嵐だろう。ある意味、日本人が小さくなったんだなあと思う。
ぱみーるさん、こんにちは
人口減少化社会というのは、精神的にも経済的にもどんどん追い詰められていく時代だそうです。小さくなったとしたら、それは私達、大人のせいかもしれません。若者には、信じることや夢見ること、思い悩むことや後悔することを忘れずに頑張ってほしいと思います。
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