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平成26年の2月に、関東で二週連続大雪が降りました。その二週目の日曜日に、私は高尾山に登りました。高尾駅〜高尾山口駅の電車が雪のため運休になってしまったので、しかたなく、雪の積もった、車が全く通らない国道20号を、軽アイゼンを付けて高尾山口駅まで歩きました。
その日の天気は快晴で、絶好の登山日和になりました。ケーブルカー駅まで行くと、登山者がたくさんいましたが、当然の如くケーブルカーは運休でした。
さて、今日は一番のお気に入りルート(6号路)で登ろうと、雪の積もった車道を登山口まで歩きました。初めのうちはトレースがあり、軽アイゼンを付けて順調に進みました。
琵琶滝の近くを通る時、私は驚きました。いつもは、沢沿いの登山道に設置された金網のフェンスの支柱をくぐるのに、この時は何と!またいだんです。ここは金網のフェンスがある為、雪が1.5mほど積もっていたからです。
途中まではトレースがあるので、多くの登山者が順調に歩いていました。しかし、コース上にある、飛び石の上を歩く細い沢の登山道の入り口まで来ると、その先はトレースが全くありませんでした。すると、何人かの登山者が諦めて引き返していきました。
ここで、私を含めほとんどの登山者は、すぐにはその雪道に足を踏み入れることができず、しばらく様子を伺っていました。すると、ひとりのお兄さんが積極的に前に出てきて、片手にピッケルのような道具を持ち、楽しそうに登り始めました。
そのお兄さんの後を追って、続々と他の登山者も歩き始めました。私は、先頭のお兄さんから数えて5番手を進みました。
お兄さんは相当慣れている感じで、雪をかき分けながら、ガンガン登っていきます。カッコよかったです。私は、足がズボズボ雪にはまってしまい、容易には前に進みません。ふと後ろを見ると、ざっと数えて20人の登山者が列をなしていました。
浅いところで膝上、深いところで腰まで雪があり、軽アイゼンを付けていましたが、まったく意味がありませんでした。私の顔は、おそらく必死の形相だったと思いますが、心の中では楽しくて楽しくて、ずっと笑っていました。
途中、前の登山者2人が休憩したので、私は3番手に押し上げられました。途端に今までよりずっと厳しくなり、しばらくは頑張りましたが、また5番手に下がりました。
深雪の登山道と格闘することおよそ2時間、ようやく舗装路と思われるところに上がって来ました。もう少しで頂上というところで、先頭のお兄さんが道を間違えて(もしかすると遊び心で)、急斜面を這い上がっていきました。誰も疑問を持つことなく、お兄さんの後に続きました。
頂上近くに達した時、お兄さんは「すいませ〜ん。最後間違っちゃいました!」と、お茶目に謝っていましたが、私達登山者は、全然OKだよ。良く頑張ってくれたね!と、お兄さんを褒め称えました。
皆さんよほど嬉しかったのか、満面の笑みで、「バンザイ!バンザイ!バンザイ!」と健闘を称えあっていました。「高尾山でこんな事できるなんてね〜。」「面白かったね〜。」などと、口々に言っていました。私もそう思いました。ここに、まことに不思議な一体感が生まれていました。
時計を見ると、高尾山口駅から約3時間が経過しています。いつもは1時間そこそこで登れる高尾山に、何と3時間!です。とはいえ、あっという間の出来事に感じました。
厳密に言えば、終始先頭で突き進んだ、お兄さんの勇気ある行動を「ラッセル」というのかもしれません。お兄さんが引っ張ってくれなかったら、はたして私は最後まで登りきれたかどうか。でも、細かいことは言わないでおきましょう。高尾山でこんなに素晴らしい経験をすることができたのですから・・・。
私は、山頂で満足感にひたりながら休憩した後、トレースのある稲荷山コースを慎重に下りました。不思議と疲労感はありませんでした。
下山後のことは何も覚えていません。たぶん頭の中が、楽しかったことで一杯だったんだと思います。
その後は、なかなか大雪が降らず、高尾山での素晴らしい経験は、それっきりとなっています。
以上、高尾山での最高に楽しい経験談でした。それではまた。
とても貴重な楽しい体験をされましたね。
先頭のお兄さんも十分楽しまれたのでしょう。
ただしこれが厳冬期の北アルプスなどでしたら顰蹙ものです。
暗黙値としてパーティー単位で先頭のラッセルは適時交代します。
パーティー内でも先頭は入れ替わります。
トップとセカンドでは使うエネルギーが雲泥の差です。
勿論「高尾山でラッセル!」は最高の出来事で、読んでいてとても楽しくなりました。
次作を期待します。
borav64mさん、こんにちは。
とてもためになるコメントを戴きまして、ありがとうございます。たいへん恐縮です。
私の山歩きは全くの我流で、本格的に学んだことはありません。お恥ずかしい限りです。今まで楽しければ良いと思ってやってきました。もちろん最低限のマナーやルールは守っているつもりですが・・・。
次回作は、再び失敗談にするつもりです。お楽しみに。
ためになるコメント、本当にありがとうございました。
私その時ずーっと後の方に居ました。下は大渋滞でみんなお菓子食べたりしていました。
私もフェンスまたいでびっくりでした!
下から見て、ラッセルってこうやってするんだー、と感心していました。ごめんなさい。
あのときは中央線も止まっており、山頂は長靴、トレラン、12本アイゼンにピッケル、スノーシュー、スキーといろんな人が居て楽しかったです。またどか雪が降ったら高尾山行きたいですね。
つい懐かしくコメントさせて頂きました。
mchdmzさん、初めまして。
うれしいですね〜。あの時のことをご存知だなんて。フェンスの支柱をまたいだ、という話はなかなか人に理解してもらえません。高尾山が大好きな友人に話したところ、「ふ〜ん、何でそんな日に山登るの?」で終わってしまいました。
それにしても、そんなに渋滞していましたか。私がかなりブレーキをかけたかもしれません。私は雪道が大好きで、雪が積もってそうな山を選んで出かけますが、あれほどの積雪は初めての経験でした。
私も、また高尾山にたくさん雪が降ることを心待ちにしています。コメントありがとうございました。とても嬉しかったです。それではまた。
こんばんは!はじめまして(^^)
その大雪の年のこと…
雪山を始めるにあたって受けた机上講習で「東京で大雪が降ったら、高尾山!」と、講師の方が話されていたことを思い出しました。
実際に、そんなことになるのですね〜
それ以来、行ってみよう!と思うほどの雪、東京では降っていませんが…
また、そんな機会があったら是非出動したいです!
ちなみに、その二週目の土曜日の朝、自宅からいつもは自転車15分の職場までプチラッセル!?で出勤しました〜(笑)
nyanco228さん、初めまして。
その時の積雪量がいかに多かったか・・・。次の事からも分かります。
その次の週に、高川山の登山口までの林道歩きに手こずり、ギブアップしました。
その次の次の週に、いつもは簡単な景信山のヤゴ沢ルートで、途中道が分からなくなり、引き返しました。
それでも私は、雪の登山道(もちろん低山ですが)が大好きです。今年は雪が少なくて残念でしたが、来年に期待します。それではまた。
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