大仰なタイトルから始まりましたが、あながち誇張でないのがおっかない。先日の北岳の登山でそんな経験をいたしました。
先日、北岳に行きまして。奈良田まで縦走するつもりで臨んだのですが、2日目が出発を躊躇する天気。元から予報は、3日間の計画日のうち2日目はわかんないよ?という予報でした。出発前からどうしたものか迷っていたのですが、せっかくの機会です。ダメなら広河原から奈良田までバスもあるんだし、帰ればいいよ。という気持ちで入山することに致しまして。で、初日から天気は予報通りに推移しまして朝がそんな天気でしたから、しゃあない。下山することにいたしました。
悪いとまでは言えないけれどもよくない天気でしたから、縦走しても大門沢は濡れてるだろうなー、濡れた大門沢を降りるのは嫌だよなあ。ましてついこの前、そこまできつくない濡れた土の下りで滑落したしなあ(八ヶ岳キレットの山行記録にしたためてございます)、でも、待てよ?草すべりなら濡れててもいいのか?なんてことを考えながら、肩の小屋から草すべりまでの岩場をこなしておりました。
こうして書いてみると、気持ち急いでいた…というか、焦りがあったかもしれませんね。濡れたら岩も土も怖いですから、これ以上濡れる前に下りたかったですし。普段の下山ペースよりも早いことを、そして濡れているせいで無理な姿勢で下りていることと、そのせいで膝回りの筋肉頼みの姿勢になっていることを自覚しながら下山しておりました。そこまで長い岩場じゃない。この程度なら…と思っていたのです。
ところが草すべりを相変わらず早いペースで下山しているうちに、左の膝に違和感が生じてきました。あれ?と思っているうちにその違和感、一歩ごとに存在感を増してきまして、痛みに変わるまでさほど時間がかからなかったのです。
白根御池でしっかり休まないとまずいな、と思っているうちに、痛みは激痛に変わり始めました。左膝の右上あたり、膝のお皿と太腿の骨の間に何かをこじいれられるような痛み方。覚えがある痛み方です。
実は私、過去に膝を痛めたことがあります。登山と筋トレによる使いすぎならびにケアのしなさすぎが原因でして、日常動作すらままならないまでに悪化させてしまったのです。スポーツ整形の先生にリハビリとマッサージによる治療を指導してもらいまして綺麗に治ったのですが、5cmの段差すら上がれなかったあの痛みはいまだ記憶に鮮明です。この痛み方は同じだ。ヤバい、早くしっかり休めるところにつかなくては。
痛みはどんどん増して、当時の痛み方に近づき始めています。周りに悟られまいとしてはいるものの、左足がびっこをひきつつあることも自覚できました。脳裏に一瞬、「救助要請」という単語がよぎります。膝痛って、街ですら本当に歩けなくなることを、私は身を以て知っている。
ただ、このことも身を以て知っています。
筋肉の痛みは治せる。
小屋までかなり時間をかけて下りたように思っていましたが、あとでログを見返してみるとそこまでペースは落ちていませんでした。それでも小屋が見えた時は、ほとんど歯を食いしばるようにしていて、ようやくベンチに腰を落ち着けた時の安堵はしばらく忘れられそうにありません。でも問題はこれからです。
原因は筋肉の疲労で、筋肉って疲れると硬くなる。硬くなるとすぐに痛みがやってくる。硬くなった太腿の筋肉が膝のお皿を引っ張ってるから痛いんだ。
疲労の原因にも見当がつく。濡れた岩場で無理な姿勢を続けたせいだ。なら、昔と同じやり方で治るはず。リハビリの先生に教えてもらったマッサージだ。
治療を受けていた当時のことはよく覚えています。自宅の階段すら上り下りができず、手摺にしがみつき、クライムダウンしながら必死にトイレに向かうくらいに曲がらなかった膝が、指導された運動を一挙手、また一挙手とやるごとにみるみる曲がるようになっていったことを。人目も憚らず「先生、動くよ。痛くねえよ」と、声を上げて泣いたこと。先生が「筋肉なんてものはね。押して動かせば柔らかくなるんだよ」と笑っていたこと。そしてボロボロ泣いている私にティッシュを渡してくれたこと。
ティッシュかよ、とちょっとだけ思いました。先生、ティッシュでよかったなあ。これがハンカチだったらいい歳こいたオッサンに惚れられてたぜ。
そんなわけで、当時のマッサージを施します。テニスボールを使ったマッサージなのですが生憎持ち合わせがありませんので、痛む箇所をゲンコツでグリグリやる。すると、とても痛い。それだけ筋肉が硬くなっているのですね。ゲンコツでは少し足りないように思ったので肘でやります。ロダンの「考える人」ポーズで、肘でもって膝回りをグリグリ、グリグリ。しばらくやってみて試しに立ってみると、明らかに痛みが軽くなっている。これなら治せる。
それから30分ほどかけてマッサージを続けまして無事に痛みが引きまして、その後の下山に差し障りがないまでに回復させることができました。ああ、よかった。救助要請、本気で考えたんだぜ。それで無事に下山して参りまして、こうして記事を書いております。
山での遭難が報道されておりますね。その中に膝の痛みによる救助要請もありました。とても他人事ではありません。人間、膝が痛いと平らな場所すら歩けなくなることを私は身を以て知っていて、それが山で起きない保証はどこにもないと今回改めて思い知らされたばかりなのです。
ですので今回、膝痛による救助要請をすんでのところで回避できた記録と、そのやり方を示しておこうと思いました。ロダンの「考える人」のポーズで、痛む箇所を肘でグリグリとマッサージするだけです。体重をしっかりかけましょう。率直に言って痛いです。でも、これだけでかなり治せる。
この記録が、一つでも膝痛による遭難を減らす役に立ちますように。
これはちょっと訂正します。「痛む箇所」を狙うのではなく、「疲労、硬直している筋肉全体をやる」が正しいです。
記事の事例ですと傷んだのは左膝のお皿の右上側ですから、太腿の筋肉、大腿四頭筋のうちの内側広筋という筋肉になります。これを中心に太腿全体をグリグリやって回復させることができました。
筋肉が原因で痛いときって、痛む箇所ではなく原因となる筋肉全部を柔らかくしてやる必要があります。特定が難しければ、膝の上側が痛いなら太腿を全部グリグリするといいと思います。
膝の下側や横の場合はまた原因の筋肉が違うので記事のやり方では、残念ながら対処ができません。また転倒などにより捻ったような怪我の場合も残念ながらこれでは対処ができません。
以上、補足になります。
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