【 昔々 山で遭遇した奇々怪々な足音男のお話 】
長く山歩きをしていると、わが身に起こった危ない体験や、怖い体験、失敗体験等々、あまた多し。暇つぶしに私が山で体験した怖いお話の一席、一部始終を語ってみましょうかな。
まだ洟垂れ小僧の20代。 北ア・鳥帽子岳(2,628m)日本三傑急登尾根と言われる「ブナ立尾根」の登り口へ。(当時、高瀬ダム工事真っ盛り)
高瀬ダムからブナ立尾根登山口までおよそ1km。 周囲は濁沢から流れ転がってきた玉石の堆積石が敷き詰められ、辺りは遮る草木もない広々とした平面状の三角州。
明日のブナ立尾根の急登に備えこの日は玉石敷き詰められた三角州で野宿(標高1,290m)
午後も陽が陰った遅くにテント設営。 しばしテント内で大の字休息。
広い三角州は私一人の貸し切り状態。静かな夜を満喫できるというもの。
夕食は夕食とは名ばかりのラーメンにモチを入れただけの、我が一押し、簡単簡易定番食。
「んん?」突如、得体のしれぬ玉石を踏む足音が聞こえる・・・。
人間予想しない得体のしれぬことに遭遇した時、緊張感で息をひそめ身体が硬直こわばることを初めて我が身で実践会得。
玉石を踏む足音はテントの周りを規則的にヒタヒタ何周か回っている。足音からケダモノでなく人間であることは確か。緊張感で身じろぎもせず身体がこわばる。
(もともと、からっきし意気地のないオトコでして)
足音は何周かテントの周りを回ったのち、テントの入口で止まった気配。一瞬、間があり「新聞ないか・・・」返答言葉を躊躇したのち「ありません」と私。
(登山目的に誰が新聞なんざ持ってくるかいな)
「足音男」が私に発した言葉はこれだけで、その後「足音男」からはなんの音沙汰もなく薄気味悪い。しばし「・・・・・」の時間が・・・。こちらはまだ息をひそめ緊張感継続。
この言葉が一言発せられた以外「足音男」からの音沙汰は一切なしのつぶて・・・。
しばし静寂の時が。山奥の野宿する登山者に、奇妙奇天烈「新聞ないか・・・」はないでしょうに。
薄気味が悪く、しばしテント内で身を潜めること数分。それが3分か?5分か?10分か?定かでない。(それだけ緊張していたのでしょうね)
恐怖心を抱きつつ、意を決してテントから抜け出し周囲を見渡す。周りはヒトの気配もない。
濁沢の玉石三角州は隠れるところもない広々とした更地大地。 不気味・不可解「足音男」は何処へ。
実に不可解、魑魅魍魎的足音男だ。怖がらせ震えさせやがって「ったく・・・」 標高1,300mの山奥で街中でもあるまいに「新聞ないか・・・」 はないだろう。ったく脅かしやがる。
とまあ、あの山奥に突如現れた足音男。あれは一体なんだったのだろうかと、折に触れて思い出すのだが。今もって奇々怪々な恐怖体験。
クマさんと出会うのも怖いが、得体のしれぬ人間様のほうがが最も怖い怖いとの結論に。
【追記】訪問者の方からのコメントを頂き追記添付
周囲は広々とした玉石三角州地形。私以外の野宿者皆無。1km下流に高瀬ダム工事真っ盛り。当然工事関係者寝泊まり村が出来ている。
”新聞ないか男”から発せられたセリフはテント内の氏素性を確かめる一言だったのでは?
今にして思えば”新聞ないか男”は工事関係者?で”よからぬ魂胆”を企む不埒な輩だったのかもと推理。
(当時、山奥のダム工事に従事するなかには、流れ者も多く巣喰っていたとお聞きしたことがあるが・・・)
【追記の追記】
読者の方か””新聞ないか男”の正体は「オロク」だったのでは?と。
たしかに今にして思えば「オロク」のほうが信憑性があるような・・・。もしテントを開けてご対面していれば今頃・・・。(笑)
tokusandesuさん、こんにちわ。
まだ山でのマナーがそれほどうるさくなかった昔の
話なので、新聞紙の用途は意外とあったと思います。
焚きつけに使う、今でいうエマージェンシーシート代わり、
(新聞紙で身体をぐるぐる巻きにすると暖かい)
トイレットペーパーなど3000mの稜線上ならともかく
登山口くらいなら、持ってないかくらいは聞く人も
いたのかもしれませんね。
k-yamaneさん、コメントあるがとうございます。
k-yamaneさんのお話を頂き「日記」に追記で一筆啓上いたしました。
昔々と申しましてもS40年代、新聞紙を持ち歩き身体の保温、新聞紙で焚き付け?登山者の間でいくら何でも見たこと聞いたこともありません。ましてやトイレットペーパーの代用に新聞紙。時は高度成長時代ですよ(笑)
この時代は登山ブームで今と変わらぬ近代化の真っ最中。炊事はガス&ホワイトガソリンバーナは常識。
新聞紙? そうね、家族連れのキャンプ場では使っていたかもね。
「新聞ないか・・・」
「俺はこの上で仏になっているけど捜索はどうなっているか気になってな。」
borav64mさん おはようございます。
なるほど、おっしゃるように”新聞ないか男”の正体は「オロク」でしたか。
確かに言われてみますとテントの周りをヒタヒタ何周か歩く不可解な動き。
あそこならたしかに・・・。顔を出していたら今頃オロクに変わり果て三途の川を・・・。(笑)
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