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2015年11月09日 01:56カメラ全体に公開

山での星景写真撮影について(4)「星を撮りたいならこれだけは知っておきたい」

以下の内容は、「デジタル一眼を始めたばかりだけれども星を撮ってみたい」或いは「これからカメラを本格的に始め、星を撮りたい」という方を想定して書いています。初心者以外の方には「何をそんな当たり前のことを…」と思われる内容なので悪しからず。

※ 下記の質問箱への回答をベースに、大幅に加筆・再構成しています
http://www.yamareco.com/modules/plzXoo/index.php?action=detail&qid=3321

<デジカメの基本原理>
最近のデジタルカメラは賢いので昼間の風景写真ならば「お任せモード」で撮ってもほとんど問題ないですが、光が極端に少ない特殊な環境で撮影することになる星景写真となるとそうはいきません。自動露出はうまくいきませんし、オートフォーカスも役に立ちません(最近はそれができるデジカメも出始めていますが…)。全てマニュアルでやらないといけないので、カメラの基本原理を理解することは避けて通れない道です。ただ闇雲に撮っても真っ暗か真っ白かピンボケの写真を量産して終わってしまいます。

といっても、そんなに複雑な話ではありません。星の光は弱いので、デジタルカメラのセンサーにできるだけ光を集める必要があります。故に、「センサーに集まる光の量(=露出)はどうやって決まるのか」という部分さえ理解すれば大丈夫です。それは次の三要素で決まります。

 ・ISO感度
  →光量を増やすには「数値を大きくする(感度を上げる)」
 ・シャッタースピード
  →光量を増やすには「数値を大きくする(露光時間を増やす)」
 ・F値/絞り
  →光量を増やすには「数値を小さくする(絞りを開く)」

センサーに集まる光の量は、上の三要素のかけ算で決まります。ただし、ここで一つ注意点があります。F値だけは「数値の二乗の逆数」をかけなければなりません。…ここでギブアップしてしまう初心者の方も多いですが、ご安心ください。絞りの理解はできなくとも、あと二つの要素で調整できるから大丈夫です。

※ ただ、カメラを本格的に始めたければやっぱり絞りがこの中で一番重要なので、最後に余談として簡単に記しておきます。

<デメリットと限界>
さて、三要素で決まると書きましたが、じゃあISO感度をできるだけ大きく、シャッタースピードをできるだけ長く、F値をできるだけ小さくすればいいのか、というと、そう単純にはいきません。それぞれデメリット・限界があるからです(勿論、闇雲に光を集めるのではなく、適切な量にしなければならないのですが、それはひとまず置いておきます)。

 (1) ISO感度をできるだけ上げたい…
   →(デメリット)ノイズが増える
   →(限界)カメラによって最高感度は決まっている
 (2) シャッタースピードをできるだけ長くしたい…
   →(デメリット)日周運動により、星が点で写らず流れてしまう
   (そういう写真を意図的に撮影する場合は除きます)
   →(限界)カメラによっては上限が決まっていることもある
 (3) F値をできるだけ小さくしたい…
   →(デメリット)四隅の光量や全体の画質が低下したり、星の形が崩れたりする
   →(限界)そもそも、レンズによって最小値が決まっている

各論についてみていきます。

(1)のISO感度とノイズの関係ですが、どこまでが許容範囲かはカメラの性能と個人の感覚によります。一般論として言えば、ノイズ耐性があるのは「センサーサイズが大きい」「新しい画像処理エンジンを搭載している」「センサーサイズに対して画素数が多すぎない」カメラになります(あまり単純には言い切れませんが)。

どのくらいのノイズまでなら許容できるか、あらかじめ夜景撮影等で確かめておいた方がいいかもしれません。RAWで撮影した画像であれば、Adobe Photoshop Lightroom等のRAW現像ソフトを使ってノイズ除去も可能ですが、星景写真でこれをあまりやりすぎると、せっかく写った星が「ノイズ」として処理されてしまいますので注意が必要です(この辺の話はまた機会を改めて)。

スマホや一般的なコンデジ(最近は大きなセンサーを搭載したコンデジもありますが)で星空がまともに撮れない大きな理由の一つがこれです。センサーが小さいのでISO感度をあまりあげられず、星を撮るには力不足になってしまうのです。

(2)のシャッタースピードについては、星を「点」として写したい場合、焦点距離が長ければ長いほど短いシャッタースピードで撮らなければいけなくなります。逆に言えば、広角レンズであればシャッタースピードに余裕があります。「星だけ」を撮るならいざ知らず、景色も一緒に写したい場合は自然と広角レンズを使うことになるかと思います。

具体的にはどのくらいのシャッタースピードなら星が流れないのか。焦点距離24mm(35mm判換算)でしたらシャッタースピードは20秒以下、できれば12秒以下で撮るのが理想です。ただ、大きくプリントしたり等倍で見たりするのでなければ、30秒くらいで撮ってもそれほど分かりません。

※ 厳密に言うと方角によって星の日周運動の速さは異なります

(3)のF値については、デメリットも限界も全てレンズで決まります。たとえ開放F値が小さいレンズであっても、何段も絞らないと使い物にならないのであれば、開放F値が多少劣っても開放から使えるレンズの方がマシです。

また、F値をF2より小さくしたかったら明るい単焦点レンズを買う以外の選択肢はほぼありません(SIGMAがAPS-C用のF1.8ズームを出していますが…)。実際問題、星景写真をちゃんと撮ろうと思ったらF2以下のレンズが理想です。しかし、明るくて優秀なレンズほど重くて価格も高くなる傾向にあります。体力・予算と相談してください…。

…以上を踏まえた上で、次回は具体的な撮影方法について。


<<余談 F値/絞りの話>>
ISO感度とシャッタースピードは数値に比例して光量が増えるので分かりやすいですが(2倍の光を集めたければISO感度かシャッタースピードのどちらかを倍にすれば良い)、本文で書いたようにF値と光量は数値の二乗に反比例します。即ち、光量を1/2にしたかったらF値は√2倍に、光量を2倍にしたかったらF値は√2で割った数値にする必要があります。ここで「???」となってしまうことが多く、カメラ初心者のつまずきやすいポイントになっています。でも、難しく考える必要はありません。F値については次の数列さえ覚えてしまえば大丈夫です。

 1 / 1.4 / 2 / 2.8 / 4 / 5.6 / 8 / 11 / 16 / 22 / 32

数値が左から右に1つ進むごとに光量が半分になっていきます。逆に、右から左に進めば光量が倍になっていきます。カメラの話でよく出てくる「1段絞る」とか「1段開く」とかの「1段」はこの数列を1つ進めたり戻したりすることを意味しています。具体的には、F2.8からF4にするのは「一段絞る」で、F8からF5.6にするのは「一段開く」になります。

ここで問題。F4から2段絞ったF値は?…もう分かりますね。「F8」です。では、F4からF8にすると光量は何分の一になるか?…1段絞るごとに半分になるので、2段絞ると「半分の半分」で1/4になります。

F値「1」から1段ずつ絞っていく上記の数値が、基本となるF値です。実際にカメラでF値を変更しようとすると「1/3段」や「1/2段」単位で数値が変化しますが、そこまで覚える必要はありません。とにかくこの基本となる数値だけ覚えておきましょう。「なんだこの半端な数値の羅列は…」と思うかもしれませんが、数値を1つ飛ばし(=2段絞りごと)で並べてみると分かりやすくなります。

 1 / 2 / 4 / 8 / 16 / 32

倍々(=2のn乗)になっていますね。1段絞るごとに数値は√2倍になっていくので、2段絞るとF値は「√2の二乗をかけた数値」になり、丁度2倍になります。簡単な理屈ですね。さて、それを理解した上で先ほど飛ばした方の数値を並べてみると…。

 1.4 / 2.8 / 5.6 / 11 / 22

当たり前ですが、こちらも(ほぼ)倍々になりますね。5.6から11のところだけ微妙に違いますが、四捨五入して有効数字二桁にしているのでこうなっています。では、改めて全て並べてみると…。

 1 / 1.4 / 2 / 2.8 / 4 / 5.6 / 8 / 11 / 16 / 22 / 32

「2のn乗」の「次の数値」は√2の近似値である1.4をかけた数値になっているのが分かるでしょうか。微妙に違うのは、先述した通り「四捨五入して有効数字二桁」にしているためです。これでもう理解できましたね。

さて、では絞りを変えるとどうなるか。F値が小さいほど被写界深度が浅くなり、ピント位置の前後がよりぼけるようになります。絞るほど被写界深度が深くなり、ぼけが少なくなります。どういう写真を撮りたいかによって絞りを変えられるようになったら、ステップアップ完了です。

(ポイント!)写真のボケは絞りだけでなくセンサーサイズ、焦点距離、対象物・背景との距離等も関係しています。F値は小さいほど、センサーは大きいほど、焦点距離は長いほどボケやすくなります。スマホや一般的コンデジの写真にほとんどボケがないのはセンサーサイズが小さく焦点距離が短いからです。

※ ボケに影響するのは35mm判換算の焦点距離ではなく実焦点距離です。これはセンサーが小さいほど短くなります。

また、開放から絞ることにより画質が良くなりますが、絞りすぎると回折現象によりまた画質が落ちていきます。一般的にはフルサイズのF8あたりが「画質的に一番美味しい絞り」の場合が多いです。私は面倒だから、山で広角の時は馬鹿の一つ覚えでF8にして撮っています(笑)。

※ 勿論、これはレンズによりますが、開放から2〜3段絞ったあたりが一番画質がいいことが多いです。

もっと詳しい話を知りたい方はgoogle先生に訊きましょう…。
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コメント

RE: 山での星景写真撮影について(4)「星を撮りたいならこれだけは知っておきたい」
dhumeさん、こんにちわ。とても参考になります。これから、の人にはちょっとハードルが高いような気もしますが、絞り、シャッタースピード、iso感度と関連づけられて、わかりやすいです。

最終的には、レンズの性能、カメラの性能で、匙加減が、変わってきて、仕上がりにも自ずと限界があるのが、難しいところですね。

山歩きメインの人なら、軽量コンパクトて高性能なコンデジでどこまで撮れるか、どうやって撮れるか?が気になるところかな。
(((o(*゚▽゚*)o)))
いつも、いつもタメになる記事をありがとうございます。
2015/11/9 12:38
RE: 山での星景写真撮影について(4)「星を撮りたいならこれだけは知っておきたい」
s-katayama様、こんばんは。
いつもコメントありがとうございます。

「既にカメラは使っていて、本格的に始めたい」という方を想定して、
かなり噛み砕いて書いたつもりだったのですが、
ハードル高かったですかね…だとしたら申し訳ないです。

そうですね、上を見ているとキリがありません。
コンデジで星空は…数年後には普通にできそうな気もします。
今の1インチセンサーのコンデジはISO感度1600くらいでも普通に使えますし。

ご覧いただきありがとうございます。
お気に入りがなんだか凄い数ついていて驚いています。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。
2015/11/10 0:53
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