「そこに山があるから、山に登る?スベリ台じゃないんだから」
山に登らない主治医は、プリプリ怒り始めた。
凍傷が完治していないのに、私が山に登ると言い、看護師さんが、
「『そこに山があるから』と言いますものね』と呟いたので、
発火措置が作動したらしい。
火に油を注ぎたくないので、黙ることにしたが、
一人になった時、なんで山に登りたいのか考えてみた。
ようやくたどり着いたことは、「好きになるのに理由はない」ということだ。
食べ物でも、人でも、仕事でも、気がついていたら、好きになっていた、
なんてことがほとんどだ。
理由はわからないけど、好きになっちゃったから山にいく。
(それを、カッコよく言ったのが、看護師さんも知っていた言葉なんじゃないかな)
逆に、私達は、嫌いな物、人などの理由は、すぐ挙げられる。
こんなことを主治医にはなしたら、きっと、
「凍傷は、山を嫌いになる理由として十分だ。山をやめろ」
と、言うだろう。