モンテローザという山は、スイス中南部のヴァリス(Wallis/Valais)山群の最高峰であるとともに、スイスとイタリアの国境稜線上に位置する山である。
モンテローザは一つの山というより、巨大な山塊であり、モンテローザ山塊（Monte Rosa Massif）とも呼ばれる。

モンテローザの主稜線は、北東から南西方向走向をもつ、５ｋｍほどの長い稜線である。その主稜線には多数のピークがある。
主稜線上の主要なピークを北東側から順に述べると、ノルトエント(Nordend;4609m)、ディフイールシュピッェ(Durfourspitze；4634ｍ／主峰）、ツムシュタインシュピッツェ(Zumsteinspitze；4563ｍ）、ジグナールクッペ(Signalkuppe；4556ｍ）、パロットシュピッツェ(Parrotspitze；4432ｍ）、ルートヴィッヒスヘーエ（Ludwigshohe；4341ｍ）、シュヴァルツホルン(Schwarzhorn；4321ｍ）、バルメンホルン(Balmenhorn；4167ｍ）、ヴァンサンピラミッド(Vincent Pyramid；4215ｍ）などのピークが挙げられる（文献１）、（文献２）、（文献４）。

この項ではモンテローザ山塊の一峰である、ヴァンサンピラミッド(Vincent Pyramid；4215ｍ）ピークについて説明する。

ヴァンサンピラミッドは、モンテローザ山塊のうち、最も南西部に位置するピークであり、イタリア側に属している。ルートヴィッヒスヘーエ（Ludwigshohe；4341ｍ）ピークからイタリア側へ分岐している大きな支稜（南稜）上、シュバルツホルン(Schwarzhorn；4321ｍ）の南、約１ｋｍに位置している。
標高は４２００ｍ台と、モンテローザ山塊の中では標高が高い方ではないが、独立性が高く、目立つピークである。またピラミッドという名前のとおり、見る角度によっては鋭い峰に見える（文献１）。

このピークは、イタリア語では　“Piramide Vincent”と呼ばれる（文献２）、（文献３）。

この山の名前は、（文献２）によると、初登頂を達成したパーティのうちの一人、”J. Vincent” の名前に由来する。

（文献１）によると、このピークは、「ニフェティ小屋(Rif. Gniffity;3650m)の近くにあるので、モンテローザ山塊を登攀する際の、最初の高度順化のためのピークとしてはうってつけである」と記載されている。

このピークの初登頂は、1819年8月に、Nicolas(brothers), J. Vincentを含むパーティにより、達成された（文献１）、（文献２）。

ヴァンサンピラミッドへの一般的な登攀ルートについて、（文献１）に基づいて説明する。基本的には、モンテローザ山塊のうち南西部（イタリア側）にある各ピークへの登攀ルートと同じである。
具体的には、まずイタリア側のリゾート地、アラーニャ(Alagna;1200m)からロープウエーを使い、プンタ・インドレン(Punta Indren;3260ｍ)に至り、ここからスタートする。
ここから氷河、モレーンを登って、ニフェッティ小屋(Rif. Gniffity;3650m)に至り、一泊する。
小屋からは、まず氷河上を北へと向かい、途中からヴァンサンピラミッドピークを回り込むように東へと登高して、南稜線上のコル、コレ・ヴァンサン (“Colle Vincent”：4087ｍ)に至る。そこからヴァンサンピラミッドの北側の雪の斜面を登ると、頂上に至る。
小屋からヴァンサンピラミッド山頂まで、約２時間、標高差　約600ｍ。
小屋からのルートは単純な氷雪の斜面である。


※　本稿は、「アルプス４０００ｍ峰登山ガイド」リヒャルト・ゲーゲテ著、島田　訳、山と渓谷社　刊　（１９９７）（文献１）、ウイキペディア英語版の、“Vincent Pyramid” の項（文献２）、ウイキペディア イタリア語版の” Piramide Vincent” （文献３）、及び、ウイキペディア英語版の、"Monte Rosa"　の項（文献４）を参照して記載した。


※ ウイキペディア英語版の、“Vincent Pyramid“　の項

https://en.wikipedia.org/wiki/Vincent_Pyramid

※ ウイキペディア　イタリア語版の、” Piramide Vincent” の項

https://it.wikipedia.org/wiki/Piramide_Vincent

※ ウイキペディア英語版の、モンテローザ（Monte Rosa）の項

https://en.wikipedia.org/wiki/Monte_Rosa