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更新日:2020年01月05日 訪問者数:752
登山・ハイキング 技術・知識
山歩きにおける年齢と歩行スピードとの関係
Swan_song
山歩きにおける年齢と歩行スピードの関係をピアソンの相関係数検定及びTukey-Kramer多重比較検定を用い明らかにしました
近年,高齢化社会となり元気な年配者が多くなってきています。特に,団塊の世代と呼ばれる方々も今年(2020年)には71〜73歳となってきており,山でも若者に負けず劣らず颯爽と歩く年配者も多く見受けられます。

一方で,ある記事では,老化は一定のペースで継続的に進行するのではなく,34歳の青年期,60歳の壮年期,78歳の老年期という3つのポイントで急激に進むことが報告されています。

(参考:toshimizu7556さんの日記「一気に老ける年齢が判明」)
https://www.yamareco.com/modules/diary/209519-detail-200478

そこで今回,ヤマレコで公表されている山行レポートを基に,年齢と歩行スピードについて解析し,年齢に従いどの程度歩行スピードに変化があるのか検証してみました。
1 解析方法

1.1 対象コース

対象コース(区間)は、
(1)塔ノ岳:大倉〜塔ノ岳(片道)
(2)雲取山:丹波山村営駐車場〜雲取山(往復)
(3)谷川岳:西黒尾根登山口〜谷川岳(トマノ耳)(片道)
としました。

1.2 解析

ヤマレコで公表されている山行記録で、それぞれの対象コース(区間)の年齢を公表している120件の記録をピックアップして、歩行時間を計算しました。

年齢と歩行時間の散布図を作成し,ばらつきの程度を観察するとともに,ピアソンの相関係数を用い,相関関係が有意水準にあるか検定を行いました。

また、30歳代以下、40歳代、50歳代、60歳代以上の4世代ごとの平均歩行時間を計算し、Tukey-Kramerの多重検定で差異の有無を調べました。

更に、歩行時間の逆数を歩行速度の指標とし、30歳代以下の歩行速度を1とした時のその上の世代の歩行速度比を計算しました。


2 結果及び考察

2.1 年齢層ヒストグラム(図1)
図1 年齢層ヒストグラム(各コース120人)
いずれのコースも正規分布を示し,40〜50歳代が最も人数が多いことを示しました。
平均年齢は、塔ノ岳コースは50.5歳(最少年齢23歳,最高年齢76歳),雲取山コースは49.2歳(最少年齢30歳,最高年齢79歳),谷川岳コースは48.1歳(最少年齢23歳,最高年齢75歳)でした。
2.2 散布図

年齢vs歩行時間(塔ノ岳、雲取山及び谷川岳)の散布図をそれぞれ図2−1,2−2及び2−3に示しました。

年齢vs歩行時間の相関係数(r)は,塔ノ岳,雲取山及び谷川岳についてはそれぞれ,0.41***,0.29**, 0.25**であり,有意水準にありました(年齢による歩行時間の増大が認められます)。

ばらつきについてはどのコースも顕著に現れました。
同じ年齢でも歩行時間が長い人と短い人の差は大きく,60歳代以上の人が30歳代以下の人よりも歩行時間が短いケースも見られました。
変動係数(CV)は,谷川岳(0.202),塔ノ岳(0.186),雲取山(0.174)の順で,歩行時間のばらつきは,谷川岳が一番大きいことがわかりました。
これは,谷川岳のコースの上部は岩稜が続き,個人の技量の差が現れるからと推察されました。

散布図の近似式を図の説明欄に示しました。
近似式の傾きより,塔ノ岳,雲取山,谷川岳の順に年齢が歩行時間に及ぼす影響が大きくなることがわかりました。
この式を用いて,30歳及び60歳の歩行時間を求めてみますと,
塔ノ岳:30歳では140 min,60歳では175 min,差異35 min
雲取山:30歳では315 min,60歳では345 min,差異30 min
谷川岳:30歳では172 min,60歳では197 min,差異25 min
となりました。
図2−1 年齢vs歩行時間(塔ノ岳)(n=120) 
相関係数:r=0.41***(P<0.001)
変動係数:CV=0.186
近似式:y=1.16x+105(x:年齢,y:歩行時間)
図2−2 年齢vs歩行時間(雲取山)(n=120)
相関係数:r=0.29**(P<0.01)
変動係数:CV=0.174
近似式:y=0.98x+286(x:年齢,y:歩行時間)
図2−3 年齢vs歩行時間(谷川岳)(n=120)
相関係数:r=0.25**(P<0.01)
変動係数:CV=0.202
近似式:y=0.83x+147(x:年齢,y:歩行時間)
2.3 年齢層別による平均歩行時間及び歩行速度比

各コースの年齢層別による平均歩行時間及び歩行速度比を表1−1,1−2及び1−3に示しました。

全体的には,年齢層が高くなるにつれ歩行時間は長くなり,歩行速度比は小さくなりました。
どのコースも60歳以上の歩行速度比は39歳以下の歩行速度比と比べ0.8程度でした。

雲取山及び谷川岳コースについては,40歳代及び50歳代の歩行時間及び歩行速度比は同程度に対し,60歳以上の数値は大きく異なりました。
これは,老化は一定のペースで継続的に進行するのではなく、60歳の壮年期で急激に進むという報告を裏付けている可能性があります。

https://www.yamareco.com/modules/diary/209519-detail-200478
表1−1 年齢層別による平均歩行時間及び歩行速度比(塔ノ岳)
歩行時間については,39歳以下と50歳代以上とは有意差が認められ,40歳代と60歳以上でも有意差が認められました。
表1−2 年齢層別による平均歩行時間及び歩行速度比(雲取山)
歩行時間については,39歳以下と60歳以上とは有意差が認められました。
表1−3 年齢層別による平均歩行時間及び歩行速度比(谷川岳)
歩行時間については,39歳以下及び50歳代と60歳以上とは有意差が認められました。
3 まとめ

(1)年齢層が高くなるにつれ歩行時間は長くなりました(年齢vs歩行時間の散布図で有意水準にありました)。

(2)年齢vs歩行時間の散布図では、ばらつきが大きく、60歳代以上の人が30歳代以下の人よりも歩行時間が短いケースも見られました。

(3)散布図の近似式を用いて,30歳及び60歳の歩行時間を求めてみますと,
塔ノ岳:30歳では140 min,60歳では175 min,差異35 min
雲取山:30歳では315 min,60歳では345 min,差異30 min
谷川岳:30歳では172 min,60歳では197 min,差異25 min
となりました。

(4)どのコースも60歳以上の歩行速度は39歳以下の歩行速度と比べ0.8程度でした。

(5)雲取山及び谷川岳コースについては,40歳代及び50歳代の歩行時間及び歩行速度比は同程度に対し,60歳以上の数値は大きく異なりました。これは,老化は一定のペースで継続的に進行するのではなく、60歳の壮年期で急激に進むという報告を裏付けている可能性があります。
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この記録へのコメント

登録日: 2016/5/5
投稿数: 1888
2020/1/6 22:23
 年齢別に年代の影響?
 Swanさん、こんばんは!

 今回のは特に力作ですよね。データのバラツキも大きいですし、レコの収集も大変だったのではないでしょうか?

 ちなみに山行記録の日付は2018〜2019年あたり? ヤマレコがスタートしてまだ15年ですので、今時点でのスナップショットで調べるしかないですが、もう15年ほどデータが溜まれば特定ユーザの年齢別歩行速度の推移を追跡することで、34・60・78の影響が顕著に見えるのでは思っています。

 ちなみに年代毎の体力推移の影響もあるのではと思って、この辺↓を見てみたのですが… ずっと体力低下が続いていると思い込んでいたら、平成10年から持ち直す傾向もあるようですね。また「高齢者の向上が続いている」と書かれています。

○スポーツ庁:平成30年度体力・運動能力調査結果の概要
 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1421920.htm

 何分、長い期間の話なのでなかなか分析が難しいところ、上手くまとめられていることが、考えてみてよく判りました(^_^)

 個人的には、できるだけ長く山歩きを続けられるようにガンバリたいです。そしてそれがQOLを維持して長生きすることに繋がると信じています。

 おまけに、こちらの日記と、こんな取り込みも(^_^;;;

○ヤマレコ日記:容赦なく長生き!
 https://www.yamareco.com/modules/diary/209519-detail-197052

○白馬八方尾根スキー場:100活ゲレンデ
 https://www.happo-one.jp/gelande/100katsu/
登録日: 2014/9/28
投稿数: 2472
2020/1/7 15:50
 Re: 年齢別に年代の影響?
toshimizuさん こんにちは

まずはPC直りました。

今回の記事では、いろいろお世話になりました。
いつも小生の記事に興味を持ってもらいうれしく思います。
また、いつも貴殿の深い洞察力恐れ入ります(理系バリバリ)。

>2018〜2019年あたり?
→ そうです。谷川岳と雲取山は2017年も入れました。

>特定ユーザの年齢別歩行速度の推移を追跡すること
→ 面白いアプローチだと思います。
データを取る際は、同じコースを何度も行き来している人が条件となりますね。
同一コースでの比較であれば良いデータがとれるかもしれません。
34・60・78の影響を一般化するのであれば、最低20〜30名のデータが欲しいところですね。
あと、今までだらけていたのが、ある時期に急にトレーニングを始めたとかの個人差も考慮に入れる必要があるかもしれません。そうゆう個人差を相殺するためにも多くのサンプルが必要になるかと考えます。

 「高齢者の向上が続いている」
→ 特に、団塊の世代の方々が元気があるのではないでしょうか。

>できるだけ長く山歩きを続けられるようにガンバリたいです。そしてそれがQOLを維持して長生きすることに繋がると信じています。
→ 私も同感です。
登録日: 2013/10/5
投稿数: 92
2020/1/17 21:54
 タイトルが気になり、
こんばんは。
タイトルが気になり、興味深く拝見しました。

もう相当昔のことですが、私も相関図だの信頼度だの回帰式だのやっていたことがありましたが、既に忘れてしまいました。
それにしても120件ものデータをもとに分析されたことは、驚くばかりです。

特に、
>どのコースも60歳以上の歩行速度は39歳以下の歩行速度と比べ0.8程度でした。

>老化は一定のペースで継続的に進行するのではなく、60歳の壮年期で急激に進むという報告を裏付けている可能性があります。

私も60半ばなので、うなずくことしきりです。
いつも登山計画を立てるときは、地図記載時間の2割増しにしています。
標高や日数にもよりますが、2.5〜3割増しの方が良かったと思えるときも結構ありました。
結果、もう一日余裕を取った方が良いということにもあります。

今回のレポートは、登山仲間に説得力をもって説明できるデータだと思います。
今春、雲取山テント泊ができればと考えています。
ありがとうございました。
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