(はじめに)
この7−9章は、第7部「東北地方の山々の地質」の初版リリース時(2021年)にはなかった新しい章で、2024年1月に新しく書き下ろしました。
この(新)7−9章では、「奥羽山脈」に関する地質などの説明のうち、非火山性の山々の地質を第1節にて説明します。また「奥羽山脈」の隆起や地形的特徴に関して、第2節にて説明します。
この(新)7−9章では、「奥羽山脈」に関する地質などの説明のうち、非火山性の山々の地質を第1節にて説明します。また「奥羽山脈」の隆起や地形的特徴に関して、第2節にて説明します。
第1節 奥羽山脈の非火山性の山々
「奥羽山脈」には、7−7章、7−8章で説明したように、火山性の山々(第四紀火山)が多数あり、百名山クラスの有名な山や、それ以外でも登山対象として良く知られている山々は、ほとんどが火山性の山々です。逆に、登山対象となっている非火山性の山々は、あまり多くはありません。
「奥羽山脈」の非火山性の山々としては、まず、宮城県と山形県との県境部にある、「和賀(わが)山塊」(主峰は和賀岳;1439m)と、「和賀山塊」を含む山地である「真昼(まひる)山地」が挙げられます。
なお、この2つの「山塊」、「山地」名称の関係はややこしく、(文献1)(文献2)によると、元々は広域的な山地名称として「真昼山地」と呼ばれていたようです。その後、1990年代末ころから、「真昼山地」のうち、和賀岳を中心とする一帯が、「和賀山塊」と呼ばれるようになったようです。
その他の非火山性の山地としては、「奥羽山脈」の主脈からは約20km 西に離れていて秋田県/山形県の県境をなしている、「神室(かむろ)山地」(主峰は神室山(かむろやま);1365m)があり、この山地も産総研「シームレス地質図v2」を見ると、第四紀火山ではない(非火山性の)山地です。
以下では、「和賀山塊」(真昼岳付近を含む)と、「神室山地」について、その地質構造を中心に説明します
「奥羽山脈」の非火山性の山々としては、まず、宮城県と山形県との県境部にある、「和賀(わが)山塊」(主峰は和賀岳;1439m)と、「和賀山塊」を含む山地である「真昼(まひる)山地」が挙げられます。
なお、この2つの「山塊」、「山地」名称の関係はややこしく、(文献1)(文献2)によると、元々は広域的な山地名称として「真昼山地」と呼ばれていたようです。その後、1990年代末ころから、「真昼山地」のうち、和賀岳を中心とする一帯が、「和賀山塊」と呼ばれるようになったようです。
その他の非火山性の山地としては、「奥羽山脈」の主脈からは約20km 西に離れていて秋田県/山形県の県境をなしている、「神室(かむろ)山地」(主峰は神室山(かむろやま);1365m)があり、この山地も産総研「シームレス地質図v2」を見ると、第四紀火山ではない(非火山性の)山地です。
以下では、「和賀山塊」(真昼岳付近を含む)と、「神室山地」について、その地質構造を中心に説明します
1−1)「和賀山塊」と「真昼山地」
この1−1項)では、「和賀山塊」を中心として説明します。「真昼山地」については、上記のような経緯で、範囲が不明瞭なので、真昼岳付近に限定して説明します。
「和賀山塊」は、(文献1)によると、古くからマタギなど、限られた人たちしか立ち入らなかった、とされている奥深い山塊です。ただし、ヤマレコの山行記録を調べると、2005年(「ヤマレコ」がスタートした年)から2023年までで、累計 400件以上の記録がアップされており、近年では登山者も増えているようです (なお私は、この山域を歩いたことがありません)。
奥深い山塊であるためか、「和賀山塊」は、観光開発も、森林伐採の手からも逃れたため、(文献2)によると、現在では逆に、ブナの巨木や貴重な動植物など、豊かな自然が残っている山域として注目されているようです。
「和賀山塊」の主峰は和賀岳(1439m)で、日本二百名山に選ばれています。その他のピークとしては、(文献2)によると、朝日岳(1376m)、白岩岳(1177m)などがあります。
「和賀山塊」の地質は、産総研「シームレス地質図v2」によると、
(a) 白亜紀後期(約100〜80Ma)の花崗岩類
(b) 新第三紀中新世の花崗岩類
(c) 新第三紀中新世の火山岩類
(玄武岩、玄武岩質安山岩、安山岩、デイサイト、流紋岩と、スペクトルは幅広い)
の3グループの地質体が分布しています。
白亜紀の花崗岩類自体は東北地方に幅広く分布しており、特別なものではありません。
形成時代を詳しく見ると、産総研「シームレス地質図v2」によると、「和賀山塊」に分布する花崗岩類の形成年代は、白亜紀後期の「セノマニアン期」〜「サントニアン期」(約100〜80Ma)です。東隣りの北上山地(「北部北上帯」、「南部北上帯」)に分布する花崗岩類の形成年代は、白亜紀前期の「アプチアン期」〜「アルビアン期」(約120〜100Ma)で、時代的には異なります。一方、西にある「太平山地」の花崗岩類は、「セノマニアン期」〜「サントニアン期」(約100〜80Ma)です。
なので、元々は「和賀山塊」の花崗岩体と「太平山地」の花崗岩体は、同じ時代に、近接した場所で形成された深成岩体であり、その後の「日本海拡大/日本列島移動イベント」によって、少し異なる位置に定置したのでは、と思われます(私見を含みます)。
新第三紀中新世の花崗岩類、火山岩類も、東北地方の各地、特に「奥羽山脈」や、日本海側に、広く分布している地質グループです。これらはおそらく、約20〜15Ma(中新世 中期)におきた「日本海拡大/日本列島移動イベント」に関連して生じた火成活動によって、形成されたものだと思われます(私見を含みます)。
なお、「和賀山塊」にフォーカスした地質学的な学術論文は、ネット検索では見つからず、地質に関する詳しい調査は行われていないようです。
最後に「真昼岳」について、簡単に説明します。
真昼岳は、前記の「和賀山塊」の和賀岳からみて、南西 約10kmに位置している、1060mの山です。
「真昼山地」の代表格だった山ですが、「真昼岳」に関する情報は、(文献2)(ウイキペディア)くらいしか見つかりませんでした。なお産総研「シームレス地質図v2」によると、真昼岳付近の地質は、「和賀山塊」とほぼ同じで、新第三紀中新世の火山岩類(玄武岩、玄武岩質安山岩、安山岩、デイサイト、流紋岩)が分布しています。
※ “Ma”は、百万年前を意味する単位
「和賀山塊」は、(文献1)によると、古くからマタギなど、限られた人たちしか立ち入らなかった、とされている奥深い山塊です。ただし、ヤマレコの山行記録を調べると、2005年(「ヤマレコ」がスタートした年)から2023年までで、累計 400件以上の記録がアップされており、近年では登山者も増えているようです (なお私は、この山域を歩いたことがありません)。
奥深い山塊であるためか、「和賀山塊」は、観光開発も、森林伐採の手からも逃れたため、(文献2)によると、現在では逆に、ブナの巨木や貴重な動植物など、豊かな自然が残っている山域として注目されているようです。
「和賀山塊」の主峰は和賀岳(1439m)で、日本二百名山に選ばれています。その他のピークとしては、(文献2)によると、朝日岳(1376m)、白岩岳(1177m)などがあります。
「和賀山塊」の地質は、産総研「シームレス地質図v2」によると、
(a) 白亜紀後期(約100〜80Ma)の花崗岩類
(b) 新第三紀中新世の花崗岩類
(c) 新第三紀中新世の火山岩類
(玄武岩、玄武岩質安山岩、安山岩、デイサイト、流紋岩と、スペクトルは幅広い)
の3グループの地質体が分布しています。
白亜紀の花崗岩類自体は東北地方に幅広く分布しており、特別なものではありません。
形成時代を詳しく見ると、産総研「シームレス地質図v2」によると、「和賀山塊」に分布する花崗岩類の形成年代は、白亜紀後期の「セノマニアン期」〜「サントニアン期」(約100〜80Ma)です。東隣りの北上山地(「北部北上帯」、「南部北上帯」)に分布する花崗岩類の形成年代は、白亜紀前期の「アプチアン期」〜「アルビアン期」(約120〜100Ma)で、時代的には異なります。一方、西にある「太平山地」の花崗岩類は、「セノマニアン期」〜「サントニアン期」(約100〜80Ma)です。
なので、元々は「和賀山塊」の花崗岩体と「太平山地」の花崗岩体は、同じ時代に、近接した場所で形成された深成岩体であり、その後の「日本海拡大/日本列島移動イベント」によって、少し異なる位置に定置したのでは、と思われます(私見を含みます)。
新第三紀中新世の花崗岩類、火山岩類も、東北地方の各地、特に「奥羽山脈」や、日本海側に、広く分布している地質グループです。これらはおそらく、約20〜15Ma(中新世 中期)におきた「日本海拡大/日本列島移動イベント」に関連して生じた火成活動によって、形成されたものだと思われます(私見を含みます)。
なお、「和賀山塊」にフォーカスした地質学的な学術論文は、ネット検索では見つからず、地質に関する詳しい調査は行われていないようです。
最後に「真昼岳」について、簡単に説明します。
真昼岳は、前記の「和賀山塊」の和賀岳からみて、南西 約10kmに位置している、1060mの山です。
「真昼山地」の代表格だった山ですが、「真昼岳」に関する情報は、(文献2)(ウイキペディア)くらいしか見つかりませんでした。なお産総研「シームレス地質図v2」によると、真昼岳付近の地質は、「和賀山塊」とほぼ同じで、新第三紀中新世の火山岩類(玄武岩、玄武岩質安山岩、安山岩、デイサイト、流紋岩)が分布しています。
※ “Ma”は、百万年前を意味する単位
1−2) 「神室山地」
「神室山地」(かむろさんち)は、前述のとおり、「奥羽山脈」の主脈からは、約20km西側にあって、秋田県と山形県との県境をなす山地です。説明の都合上、ここで説明します。
「神室山地」は、東北地方の山としては、他の百名山クラスの山々に比べると知名度の高い山地ではないようですが(私もこの山域を歩いたことがありません)、主峰の神室山(かむろやま;1365m)は、日本二百名山、および「花の百名山」に選ばれています(文献3)。
(文献3)によると、「神室山地」は、標高はさほどではないものの、険しい山容であり、古くから山岳信仰の対象ともなっていた山だ、とのことです。
さて、「神室山地」の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で調べてみると、神室山とその周辺は、以下のような色々な地質体で形成されており、地質学的には興味深い山地です。
(1) 白亜紀の花崗岩類;神室山の山頂部を中心に分布しています。形成年代は、白亜紀のうち「アプチアン期」〜「アルビアン期」(120〜100Ma)で、地理的に東方に位置する北上山地(「北部北上帯」、「南部北上帯」)にある花崗岩類と形成時代は同じです。
(2) 白亜紀の結晶片岩類;上記の白亜紀の花崗岩類に近接して、泥質片岩が分布しています。 一般的には、泥質片岩などの結晶片岩類は、海洋プレート沈み込み帯に特徴的とされる高圧型(高P/T型)が多いのですが、この山地の泥質片岩は、産総研「シームレス地質図v2」では、「低P/T型」と記載されており、やや特殊な感じがします。変成年代が、白亜紀のうち「アプチアン期」〜「アルビアン期」;120〜100Ma)と記載されていて花崗岩類と同時代なので、近接して分布する花崗岩類(の元となったマグマ溜り)が、その変成作用の要因かもしれません。いずれにしろ、奥羽山脈では、変成岩自体が珍しいものなので、興味深い岩体といえます。
(3) 新第三紀中新世の深成岩体(閃緑岩、石英閃緑岩);神室山地の西側斜面側に分布しています。東北地方の中新世の深成岩体はほとんどが珪長質である花崗岩類なのですが、中間質の閃緑岩、石英閃緑岩は、やや珍しいと言えます。
(4) 新第三紀中新世の火山岩類;主に、安山岩、玄武岩質安山岩が分布しています。その他、玄武岩が多少、分布しています。(3)も含め、時代的に考えると、これらの火成岩類は、新第三紀中新世に生じた、「日本海拡大/日本列島移動イベント」(約20〜15Ma)に関連して形成されたものだと考えられます。
「神室山地」には前述のとおり、産総研「シームレス地質図v2」に基づくと、「結晶片岩類」とされる変成岩が分布していますが、インターネットで調べても、この地質体に関しての詳しい研究はほとんどないようです。また(文献4)にも記載はありません。この変成岩に関する、ごく簡単な研究報告としては、(文献6)がありました。
(文献6)は、学会発表の要旨集なので、ごく簡単にしか記述されていませんが、この「神室山地」の変成岩を、(結晶片岩類ではなく)「片麻岩類」とし、阿武隈山地の竹貫変成岩類と特徴が類似している、と記載されています。いずれにしろ、この変成岩体は、謎が多く、興味深い感じです。
※ “Ma”は、百万年前を意味する単位
「神室山地」は、東北地方の山としては、他の百名山クラスの山々に比べると知名度の高い山地ではないようですが(私もこの山域を歩いたことがありません)、主峰の神室山(かむろやま;1365m)は、日本二百名山、および「花の百名山」に選ばれています(文献3)。
(文献3)によると、「神室山地」は、標高はさほどではないものの、険しい山容であり、古くから山岳信仰の対象ともなっていた山だ、とのことです。
さて、「神室山地」の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で調べてみると、神室山とその周辺は、以下のような色々な地質体で形成されており、地質学的には興味深い山地です。
(1) 白亜紀の花崗岩類;神室山の山頂部を中心に分布しています。形成年代は、白亜紀のうち「アプチアン期」〜「アルビアン期」(120〜100Ma)で、地理的に東方に位置する北上山地(「北部北上帯」、「南部北上帯」)にある花崗岩類と形成時代は同じです。
(2) 白亜紀の結晶片岩類;上記の白亜紀の花崗岩類に近接して、泥質片岩が分布しています。 一般的には、泥質片岩などの結晶片岩類は、海洋プレート沈み込み帯に特徴的とされる高圧型(高P/T型)が多いのですが、この山地の泥質片岩は、産総研「シームレス地質図v2」では、「低P/T型」と記載されており、やや特殊な感じがします。変成年代が、白亜紀のうち「アプチアン期」〜「アルビアン期」;120〜100Ma)と記載されていて花崗岩類と同時代なので、近接して分布する花崗岩類(の元となったマグマ溜り)が、その変成作用の要因かもしれません。いずれにしろ、奥羽山脈では、変成岩自体が珍しいものなので、興味深い岩体といえます。
(3) 新第三紀中新世の深成岩体(閃緑岩、石英閃緑岩);神室山地の西側斜面側に分布しています。東北地方の中新世の深成岩体はほとんどが珪長質である花崗岩類なのですが、中間質の閃緑岩、石英閃緑岩は、やや珍しいと言えます。
(4) 新第三紀中新世の火山岩類;主に、安山岩、玄武岩質安山岩が分布しています。その他、玄武岩が多少、分布しています。(3)も含め、時代的に考えると、これらの火成岩類は、新第三紀中新世に生じた、「日本海拡大/日本列島移動イベント」(約20〜15Ma)に関連して形成されたものだと考えられます。
「神室山地」には前述のとおり、産総研「シームレス地質図v2」に基づくと、「結晶片岩類」とされる変成岩が分布していますが、インターネットで調べても、この地質体に関しての詳しい研究はほとんどないようです。また(文献4)にも記載はありません。この変成岩に関する、ごく簡単な研究報告としては、(文献6)がありました。
(文献6)は、学会発表の要旨集なので、ごく簡単にしか記述されていませんが、この「神室山地」の変成岩を、(結晶片岩類ではなく)「片麻岩類」とし、阿武隈山地の竹貫変成岩類と特徴が類似している、と記載されています。いずれにしろ、この変成岩体は、謎が多く、興味深い感じです。
※ “Ma”は、百万年前を意味する単位
第2節 「奥羽山脈」の隆起、および地形的特徴について
この第7部「東北地方の山々の地質」の最初の章である、7−1章でも触れたように、東北地方は、その東側から太平洋プレートが日本海溝にて沈み込んでいて、その影響によって、東西方向の圧縮場となっており、日本海溝に近い側に北上山地、阿武隈山地という前弧隆起帯、中央部に奥羽山脈という隆起帯が存在しています(文献5―a)。
この節では、「奥羽山脈」の隆起過程、およびそれにも関連した、地形的特徴について、いくつかの文献を調べた結果をまとめます。
まず地形学の専門書である(文献5)のうち、(文献5―b)、(文献5−c)によると、「奥羽山脈」は、約8Ma頃には大部分が陸化していた、と推定しています(逆に言うと、約8Ma以前は海面下にあった)。
その後の「奥羽山脈」の隆起過程、隆起スピードについて、(文献5)には明解な説明がありませんが、大まかには、新第三紀 鮮新世(約5〜2.6Ma)には隆起傾向が明確となり、第四紀(約2.6Ma〜現世)になって本格的な隆起状態となって、「奥羽山脈」が現在のような山地として成長した、とされています。
また隆起量は、現在の「奥羽山脈」の基盤岩(第四紀火山の火山岩体を除いた部分)の標高から見て、1300〜1500mと推定しています。
(文献5−c)には、「奥羽山脈」が南北方向に約500kmもあるのに、東西方向の幅がせいぜい20〜30kmしかなく、非常に細長い山脈である、という地形的特徴についての、説明があります。
それによると、元々この一帯は、「日本海拡大/日本列島移動イベント」頃(約20〜15Ma)の伸張場において形成された多数の正断層のうち、南北方向の2つの正断層に挟まれた「リフト帯」(=ここでは「地溝」と同義と思われる)が、その起源と推定しています。
その後、「鮮新世」末〜「第四紀」にかけ、東北地方が強い東西方向の圧縮場となったため、これらの正断層群は、いわゆる「インバージョン(=反転)テクトニクス」によって、逆断層へとその活動様式が変化し、2つの逆断層に挟まれた細長い隆起域が、「奥羽山脈」となった、と説明されています。
次に、(文献7)、(文献8)に関して説明します。(文献7)は、産総研 地質調査総合センターのリリース資料、(文献8)は、ほぼ同内容の英語論文です。これは日本列島とその近辺の「アナログ模型」を使って、第四紀における日本列島(主に「東北日本」)の東西圧縮の原因を検討した研究で、マスコミにも取り上げられたので、割とよく知られているのでは、と思います。
この研究によると、東北日本で顕著な東西方向の圧縮場は、「フィリピン海プレート」、「太平洋プレート」、および陸側プレート(「ユーラシアプレート」、「北米プレート」)の相互作用により、約3Ma(新第三紀 鮮新世末)から始まった、と結論付けられています。
なお(文献7)、(文献8)では、「奥羽山脈」について直接言及はされていませんが、(文献8)の図では、東北地方の東西圧縮が図示されているので、「奥羽山脈」が、このようなメカニズムで隆起した、ということかと思われます。
次に、(文献4−a)、(文献4−b)に基づいて説明します。(文献4)は地質学の専門書ですが、「奥羽山脈」の隆起や地形的特徴に関しても説明があります。
このうち(文献4―a)の項は、多数の原文献を元としているため、すっきりした内容にまとまってない感じがありますが、要約すると、東北地方全体でみると、顕著な隆起活動の開始は、約3.5Maからで、「奥羽山脈」に限って言えば、顕著な隆起活動は、約1Maから始まった、と推定しています。
また、(文献4−b)の項によると、「奥羽山脈」の本格的な隆起は、約3Ma以降と推定しています((文献9)を元にした説明)。また「奥羽山脈」が標高の高い山脈となった証拠といえる、山麓部、盆地部における扇状地が発達するのは、約1.5〜0.5Ma、と説明されています。
また(文献4−b)によると、「奥羽山脈」の第四紀の平均隆起スピードは、約0.24〜0.32mm/年(=約0.2〜0.3m/千年)と見積もられています。なお水平方向の短縮速度は、6.6〜8.5mm/年と、かなり大きな値が見積もられています。
次に、(文献9)に触れておきます。(文献9)は英語論文で、かつ無料ではアブストラクト程度しか読めないので詳細が良く解りませんが、東北地方の地殻変動、特に「奥羽山脈」の隆起に関しての総合的な観点での論文のようです。
これによると「奥羽山脈」地域は、約12Ma以降、複雑な地殻変動の歴史を持ち、その地殻変動(隆起)は3つのステージに分けられています。その中で、最後のステージである約3Maから、強い圧縮応力場となって、顕著な隆起が生じたと推定されています。なお(文献4−a)のうち、図3−2−29は、この(文献8)からの引用です。
最後に、「奥羽山脈」の地形的特徴のうち、「南北主軸方向での高度のうねり」について触れます。この特徴は、かなり前から認識されていたようです(文献10)。
(文献5―b)には、この点について簡単な説明があります。それによると、「奥羽山脈」は、軸方向に約50〜80kmの波長の高度のうねりが認められるとされていますが、そのメカニズムについては明確な説明はなく、浸食の影響についてのみ説明されています。
※ “Ma”は、百万年前を意味する単位
この節では、「奥羽山脈」の隆起過程、およびそれにも関連した、地形的特徴について、いくつかの文献を調べた結果をまとめます。
まず地形学の専門書である(文献5)のうち、(文献5―b)、(文献5−c)によると、「奥羽山脈」は、約8Ma頃には大部分が陸化していた、と推定しています(逆に言うと、約8Ma以前は海面下にあった)。
その後の「奥羽山脈」の隆起過程、隆起スピードについて、(文献5)には明解な説明がありませんが、大まかには、新第三紀 鮮新世(約5〜2.6Ma)には隆起傾向が明確となり、第四紀(約2.6Ma〜現世)になって本格的な隆起状態となって、「奥羽山脈」が現在のような山地として成長した、とされています。
また隆起量は、現在の「奥羽山脈」の基盤岩(第四紀火山の火山岩体を除いた部分)の標高から見て、1300〜1500mと推定しています。
(文献5−c)には、「奥羽山脈」が南北方向に約500kmもあるのに、東西方向の幅がせいぜい20〜30kmしかなく、非常に細長い山脈である、という地形的特徴についての、説明があります。
それによると、元々この一帯は、「日本海拡大/日本列島移動イベント」頃(約20〜15Ma)の伸張場において形成された多数の正断層のうち、南北方向の2つの正断層に挟まれた「リフト帯」(=ここでは「地溝」と同義と思われる)が、その起源と推定しています。
その後、「鮮新世」末〜「第四紀」にかけ、東北地方が強い東西方向の圧縮場となったため、これらの正断層群は、いわゆる「インバージョン(=反転)テクトニクス」によって、逆断層へとその活動様式が変化し、2つの逆断層に挟まれた細長い隆起域が、「奥羽山脈」となった、と説明されています。
次に、(文献7)、(文献8)に関して説明します。(文献7)は、産総研 地質調査総合センターのリリース資料、(文献8)は、ほぼ同内容の英語論文です。これは日本列島とその近辺の「アナログ模型」を使って、第四紀における日本列島(主に「東北日本」)の東西圧縮の原因を検討した研究で、マスコミにも取り上げられたので、割とよく知られているのでは、と思います。
この研究によると、東北日本で顕著な東西方向の圧縮場は、「フィリピン海プレート」、「太平洋プレート」、および陸側プレート(「ユーラシアプレート」、「北米プレート」)の相互作用により、約3Ma(新第三紀 鮮新世末)から始まった、と結論付けられています。
なお(文献7)、(文献8)では、「奥羽山脈」について直接言及はされていませんが、(文献8)の図では、東北地方の東西圧縮が図示されているので、「奥羽山脈」が、このようなメカニズムで隆起した、ということかと思われます。
次に、(文献4−a)、(文献4−b)に基づいて説明します。(文献4)は地質学の専門書ですが、「奥羽山脈」の隆起や地形的特徴に関しても説明があります。
このうち(文献4―a)の項は、多数の原文献を元としているため、すっきりした内容にまとまってない感じがありますが、要約すると、東北地方全体でみると、顕著な隆起活動の開始は、約3.5Maからで、「奥羽山脈」に限って言えば、顕著な隆起活動は、約1Maから始まった、と推定しています。
また、(文献4−b)の項によると、「奥羽山脈」の本格的な隆起は、約3Ma以降と推定しています((文献9)を元にした説明)。また「奥羽山脈」が標高の高い山脈となった証拠といえる、山麓部、盆地部における扇状地が発達するのは、約1.5〜0.5Ma、と説明されています。
また(文献4−b)によると、「奥羽山脈」の第四紀の平均隆起スピードは、約0.24〜0.32mm/年(=約0.2〜0.3m/千年)と見積もられています。なお水平方向の短縮速度は、6.6〜8.5mm/年と、かなり大きな値が見積もられています。
次に、(文献9)に触れておきます。(文献9)は英語論文で、かつ無料ではアブストラクト程度しか読めないので詳細が良く解りませんが、東北地方の地殻変動、特に「奥羽山脈」の隆起に関しての総合的な観点での論文のようです。
これによると「奥羽山脈」地域は、約12Ma以降、複雑な地殻変動の歴史を持ち、その地殻変動(隆起)は3つのステージに分けられています。その中で、最後のステージである約3Maから、強い圧縮応力場となって、顕著な隆起が生じたと推定されています。なお(文献4−a)のうち、図3−2−29は、この(文献8)からの引用です。
最後に、「奥羽山脈」の地形的特徴のうち、「南北主軸方向での高度のうねり」について触れます。この特徴は、かなり前から認識されていたようです(文献10)。
(文献5―b)には、この点について簡単な説明があります。それによると、「奥羽山脈」は、軸方向に約50〜80kmの波長の高度のうねりが認められるとされていますが、そのメカニズムについては明確な説明はなく、浸食の影響についてのみ説明されています。
※ “Ma”は、百万年前を意味する単位
(参考文献)
文献1) ウイキペディア 「和賀山塊」の項
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E8%B3%80%E5%B1%B1%E5%A1%8A
2024年1月 閲覧
文献2) ウイキペディア 「真昼山地」の項
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E6%98%BC%E5%B1%B1%E5%9C%B0
2024年1月 閲覧
文献3) ウイキペディア 「神室山」の項
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E5%AE%A4%E5%B1%B1
2024年1月 閲覧
文献4) 日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第2巻 東北地方」
朝倉書店 刊 (2017)
文献4−a)
(文献4)のうち、第3部「(東北地方の)地質構造発達史」の、
3−2−e)項 「島弧火山活動期」
及び 図3.2.29「東北日本弧における構造発達史」
(この図の原典は、(文献8))
文献4−b)
(文献4)のうち、第8部「(東北地方の)第四系と変動地形」の項
文献5) 小池、田村、鎮西、宮城 編
「日本の地形 第3巻 東北」
東京大学出版会 刊 (2005)
文献5−a)
(文献5)のうち、1−1章「島弧としての東北地北」の項
文献5−b)
(文献5)のうち、4−7章「火山群の土台としての奥羽山脈」
文献5−c)
(文献5)のうち、第7部「東北日本の地形発達」の項
文献6) 町田、石渡
「陸羽 4 県県境地域の阿武隈帯および北上帯変成岩」
日本鉱物科学会 2010 年年会講演要旨集、p204 (2010)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jakoka/2010/0/2010_0_200/_pdf/-char/ja
文献7) 産総研 地質調査総合センター (高橋)
「東北日本の東西短縮テクトニクスの原因に関する思考実験」(2017)
(産総研のサイト上の資料)
https://www.gsj.jp/publications/pub/openfile/openfile0638.html
文献8) M. Takahashi (高橋)
“ The cause of the east-west contraction of Northeast Japan ”
(東北日本の東西短縮テクトニクスの原因)
Bulletin of the Geological Survey of Japan、第68巻、( 2017)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bullgsj/68/4/68_155/_article/-char/ja/
文献9) T. Nakashima et al,
“ Uplift of the Ou Backbone Range in Northeast Japan at around 10 Ma and
its implication for the tectonic evolution of the eastern margin of Asia “
Palaeoecology 誌、第241巻、p28-48 (2006)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0031018206003920
(このリンク先からは、この論文のアブストラクトのみ、無料で読める)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E8%B3%80%E5%B1%B1%E5%A1%8A
2024年1月 閲覧
文献2) ウイキペディア 「真昼山地」の項
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E6%98%BC%E5%B1%B1%E5%9C%B0
2024年1月 閲覧
文献3) ウイキペディア 「神室山」の項
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E5%AE%A4%E5%B1%B1
2024年1月 閲覧
文献4) 日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第2巻 東北地方」
朝倉書店 刊 (2017)
文献4−a)
(文献4)のうち、第3部「(東北地方の)地質構造発達史」の、
3−2−e)項 「島弧火山活動期」
及び 図3.2.29「東北日本弧における構造発達史」
(この図の原典は、(文献8))
文献4−b)
(文献4)のうち、第8部「(東北地方の)第四系と変動地形」の項
文献5) 小池、田村、鎮西、宮城 編
「日本の地形 第3巻 東北」
東京大学出版会 刊 (2005)
文献5−a)
(文献5)のうち、1−1章「島弧としての東北地北」の項
文献5−b)
(文献5)のうち、4−7章「火山群の土台としての奥羽山脈」
文献5−c)
(文献5)のうち、第7部「東北日本の地形発達」の項
文献6) 町田、石渡
「陸羽 4 県県境地域の阿武隈帯および北上帯変成岩」
日本鉱物科学会 2010 年年会講演要旨集、p204 (2010)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jakoka/2010/0/2010_0_200/_pdf/-char/ja
文献7) 産総研 地質調査総合センター (高橋)
「東北日本の東西短縮テクトニクスの原因に関する思考実験」(2017)
(産総研のサイト上の資料)
https://www.gsj.jp/publications/pub/openfile/openfile0638.html
文献8) M. Takahashi (高橋)
“ The cause of the east-west contraction of Northeast Japan ”
(東北日本の東西短縮テクトニクスの原因)
Bulletin of the Geological Survey of Japan、第68巻、( 2017)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bullgsj/68/4/68_155/_article/-char/ja/
文献9) T. Nakashima et al,
“ Uplift of the Ou Backbone Range in Northeast Japan at around 10 Ma and
its implication for the tectonic evolution of the eastern margin of Asia “
Palaeoecology 誌、第241巻、p28-48 (2006)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0031018206003920
(このリンク先からは、この論文のアブストラクトのみ、無料で読める)
このリンク先の、7−1章の文末には、第7部「東北地方の山々の地質」の各章へのリンクを付けています。
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【書記事項】
・第7部「東北地方の山々の地質」の見直し、追記計画に基づき、これまで記載していなかった、奥羽山脈の非火山性の山々の地質、及び 奥羽山脈の隆起に関する事項をまとめ、新しい章((新)7−9章)とした(2024年1月27日)
△最新改訂年月日;2024年1月27日
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