薬師岳



- GPS
- 19:39
- 距離
- 39.7km
- 登り
- 3,032m
- 下り
- 3,015m
コースタイム
- 山行
- 18:02
- 休憩
- 0:29
- 合計
- 18:31
天候 | 雪→晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
雪はたっぷりあるので問題はない。 神岡新道はアップダウンがあるので上手くルート工作しないと帰りが大変。 当然稜線はカチカチで暴風。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
ハードシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
ネックウォーマー
バラクラバ
日よけ帽子
毛帽子
ブーツ
ザック
ビーコン
スコップ
ゾンデ
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
ファーストエイドキット
ガムテープ
常備薬
日焼け止め
保険証
携帯
時計
サングラス
ツェルト
ストック
カメラ
ビンディング
スキー板
シール
ヘルメット
|
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感想
前夜は眠れなかった。久々の山行前の興奮。それはまるで遠足前夜の小学生だ。
厳冬期の薬師岳ワンデイ。延々と林道を進み神岡新道を経て稜線に乗り、太朗山を越えて薬師岳を目指す。来た道を引き返すと、距離は40kmを超え、累積標高も3000mを軽くオーバーする。まぁ普通の人なら2月に日帰りで行こうなんて思わない。いや残雪期でも夏山でさえこのルートで薬師岳を日帰りで行く人は稀だろう。しかし、金沢の著名な山スキーヤーがそれをやってのけてしまう。それを見て「いつかはオレも」と思ったがチャレンジ出来ずに数年が経った。そしてようやく明日チャンスがやってきた。これを逃したら次はないかもしれない。明日決めるのだ。
スタート地点の神岡町打保に23時半に到着する。天候は雪だ。しかし、天気予報では昼前後から晴という。シールを貼ったりなんやらしてたらスタートは0時半前。さぁ長い旅のスタートだ。神岡新道に取り付くまでは林道を進む。数日前の雨とそれ以降の降雪がなかったため雪はしまっており歩きやすい。
順調に進み、1時間半ほど歩くと取り付き地点に到着。沢沿いの急な登山道を詰めていき稜線に乗る。ラッセルは脛程度であるがそこまでキツくはない。どんどん高度を上げて行きたいところだが、斜面がなだらかでなかなか思うように標高を稼げない。おまけに微妙なアップダウンがいくつもあり早くも帰りが思いやられる。巻道を作りたいが、暗闇のため上手くルート工作できない。ちびちび進んでいると寺地山手前に到着。ここは南に巻きながら進む。
その後もアップダウンを繰り返すと徐々に樹林が薄くなり森林限界を超える。この辺りで夜明けを迎えるが、曇り空。あぁ今日はハズレかな?でもまぁいいや。ここまできたのだ。とりあえず稜線には出よう。北ノ俣岳から広がる大斜面をのんびり登っていると、本日1度目の睡魔が到来。周りの木が人に見えてきて幻聴まで聞こえる(この日は木がゲレンデでリフトを待ってる子どもに見えて、ゲレンデの音楽が聞こえてきた)。まぁこの程度のことウルトラトレイルを走っていたらあるあるなのだが。しかしまぁ幻覚幻聴とわかっていてもやはり辛いものは辛い。どんなに頭に言い聞かせても見えるものは見えるし聞こえるものは聞こえる。我慢しながら登っていると薄日が射し始める。ん?これは行けるのでは?そのうち雲が晴れて稜線に近づく頃には青空が広がり始めた。眠気も吹き飛ぶ素晴らしい景色。これだから山は行ってみないとわからない。
直下の硬い斜面を慎重に登り稜線に乗ると見えるのは北アルプスの大絶景。風は猛烈だが槍の穂先までくっきり見え、目指す薬師岳も遠くに浮かんでいる。いやそれにしてもあれは遠いな。写真を撮りまくり滑降モードに切り替え太郎平小屋を目指す。400mほどスキーで降り小屋に到着。楽しい滑りであったが、帰りここを登り返すと思うと少し憂鬱だ。再びシールを貼り、ここからが本番。メインの薬師岳を目指す。
薬師峠からの急登は樹林が濃く比較的深いラッセル。これなら帰りはパウダーだな。ここで本日2度目の睡魔到来。ここで秘密兵器のカフェイン入りエナジードリンク(レッドブル)を投入。といきたいところだが、まぁ当然のことながら中身も表面も凍っている。ウィペットでかち割り、シャーベットになったドリンクをかじりながら歩く。翼は授からなかったが、おかげで眠気は覚めた。
薬師平に出ると樹林もなくなり風も一層強さを増す。ここからまずは薬師岳山荘を目指し稜線を忠実に歩く。が、とにかく遠い。歩いても歩いても一向に山荘は見えない。雪は硬くなり、地面には岩や這松が見え始める。しかし、必ずピークを踏む。這ってでも行くのだ。そう思いながらなんとか薬師岳山荘に到着。しかし、ここからもとにかく長い。この先は雪がクラストしてる可能性が高いのでクトーを装着。カチカチの稜線をクトーの刃とシールを効かせて登る。登れど登れど薬師岳は見えない。
猛烈な風に吹き曝されながらテクテクと登るとようやく見えた。避難小屋跡が。そして避難小屋に着くと薬師岳も顔を出す。その姿はまさに威風堂々。薬師如来の浄土として信仰を集めた山に相応しい姿だ。暴風の中なんとか山頂へ。スタートから約11時間。ようやく厳冬期の薬師岳の頂を踏むことができた。無事ここまで来れたことに感謝し山頂の祠を参る。それにしても遠かった。ログを見ると距離は20km、累積標高はなんと3000mを超えていた。トレランレースでもありえない数値。1kmで150mも登っているのか。いや太郎まで滑降したことも含めるともっとか。
さぁここからは滑降の時間だ。と言いたいところだが、稜線は岩稜が剥き出しでとても滑れたもんではない。クトーを効かせながら慎重に下る。避難小屋跡を超え山荘が見えたところでようやく滑降開始。硬い斜面をゆっくり滑る。山荘からは峠まで大斜面だ。薬師岳をバックに華麗に滑りたいが、登りでかなり体力を使ってしまって足がなかなか動かない。薬師平から峠までは激パウだ。雄叫びをあげながら滑り、振り返ると自分達だけのシュプール。これは山スキーヤーの最も好きな風景ではないだろうか?
峠に着くとここからは登り返し。シールを貼り、北ノ俣岳の方へえっちらおっちら進む。もう足は完全に売り切れ状態。食料も底をつきかけている。エイドが多数あるレースにや山小屋でご飯が食べられる登山に慣れていると後半のエネルギー不足が辛い。途中、風景を撮り気分転換しながらようやく滑降開始地点へ。
北ノ俣岳西斜面の滑降は素晴らしかった。西に傾きかけた太陽を見ながら大斜面を滑る。体力が残ってたらもっと楽しかっただろうに。今度は北ノ俣岳の為だけに来よう。最高のスキーを楽しみ森林限界まで下る。ここからもう一度シールを貼り神岡新道のアップダウンを攻略する。寺地山に来た。行きのトレースを利用するが、南側は樹林もなくスッパリと切れ落ちている。深夜はわからなかったがおっかない斜面だ。早々に通過してあとはボブスレー。途中で暗くなったのでヘッドライトをつける。最後は林道を下りゴール。厳冬期薬師岳ワンデイがここに完結した。
もっと感動できるかと思ったが、そうでもなかった。いかんせん疲れ過ぎた。トータルで41.7km、累積標高3674mという冬山の常識を遥かに超える行程は余韻に浸る体力すら奪い去った。とにかくご飯が食べたい、お風呂に入りたい、何より早く寝たい。先日フルマラソンで念願のサブリスリーを打ち立てたが、自分もまだまだだなと思う。片付けをして早々に関西へ向かった。もちろん帰路で3度目の睡魔に襲われたことは言うまでもない。
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