前泊日帰り・上高地〜焼岳〜中の湯
コースタイム
day2 0730西糸屋山荘-0800西穂高登山口-1100焼岳小屋-1200焼岳北峰(2393m)1230-1430中の湯バス停
天候 | day1 雨のち晴れ day2 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2009年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
【帰路】中の湯〜松本 濃飛バス 松本〜白馬 JR大糸線 *上高地ゆうゆうチケットを利用 |
写真
感想
日本の六月は連休もなく、お天気は悪いし、一般的に旅行シーズンではないですよね。五月の連休と夏休み前の端境期、折からの不況という事もあるし出費は控える方向。。。
しかしシフト制で働く私にあまりカレンダーの曜日は関係なくて、たまたま同僚に頼まれて出勤日を交代したらタナボタ的に平日3連休ができちゃったので、どこへ行こうか考えた。むろん1人でだけど。。。
アルプス行きたい。だけど足がないから公共機関でアクセスのいい所がいい。そして思いついたのが、天下のリゾート上高地。実は未だ行ったことがないのだけど、ここなら天気が悪くてもそれなりのトレッキングを楽しめるし、晴れたら日帰り登山のコースは選び放題、温泉もある。
ちょうどGW後から夏休み前までの間、「上高地ゆうゆうチケット」という新宿ー上高地間のバス&鉄道が2割引になるお得な切符を発売していて、往復8000円になるという。高速バスは松本発着だけど、途中の停留所から乗り降りもできる。松本から白馬までは大糸線で一本なので、おかんと相談して、上高地帰りに白馬へ寄って一泊し、最終日は一緒にすずらんの咲く入笠山にハイキングに行き、そのあと中央道で落としてもらって松本からのバスを拾って戻ってくるという長野県周遊プランにした。
day1 初めての上高地
出発当日は朝からあいにくの雨。ゴアテックスのジャケットとゲイター&登山靴で装備し早朝7時新宿発の高速バスに乗り込む。さすがに車内はがら空きなので席をダブルで占有し、松本までの3時間爆睡。松本で路線バスに乗り換えて、12時に上高地についたときには、午前中の雨がウソのようにカラリと晴れ上がった!イエ〜イ!天気予報どおりだと、このあと金曜日まで梅雨の中休みが続くらしい。
さて、上高地の第一印象は、「急峻な山のあいだにはさまった谷間」。もっと軽井沢的な高原をイメージしていたのだけど、むしろ黒部ダムとかに近い感じ?ずっと針葉樹&ダムの続く道をバスで登っていくのだけど、雪をいただく峰々が見えるわけじゃなし、眺望も開けず心もとない。それがバスを降りて河童橋のあたりまで歩いて来ると突然今まで見えなかったホワイトキャップの穂高連峰がバーンと目に飛び込んで来て、真っ白な川床にミルキーなコバルトブルーの梓川の清らかな流れと相まっておおー!来たか!となるわけだ。
この日は観光客の数もまばらで、聞いていたほど河童橋にウンザリするほど俗っぽい印象は受けなかったな。韓国からの旅行者がけっこう来てた。
そこから、午後は左岸を明神池まで「表参道」ルートで歩くことにした。
さすが標高1500mだけあって、関東の下界ではまずお目にかかれないブナ、カラマツ、白樺、ダケカンバの美しい樹林の下、快適な遊歩道がキレイに整備されている。そして木漏れ日さす明るい日陰には、雨上がりの浅い緑がみずみずしいシダ類が茂り、ハートの葉っぱの上に鶴が舞うマイヅルソウの白い花がそこかしこに!胸がドキドキしてきた。見るもの全てが好き!かわいらしい!この感じ、去年歩いたクロアチアのプリトヴィッツェ国立公園以来だ。
橋を渡って明神池を参拝し、今度は右岸を田代橋まで下る。こちらは岳沢湿原を通る木道をトコトコならしながら回遊してあるく。この湿原がまたたまらなくかわいらしいのです。ちょうどレンゲツツジが満開のなか、アゲハチョウがふわふわ舞い、マガモがカップルでスイスイ泳いでいたり、あるいはヒナを連れて道を渡るのです。笹原を歩けば、カサコソ音がする方に目をやると、オリーブグリーンの毛並みがふさふさのニホンザルが脇目もふらず一心に笹の新芽を摘んでは忙しく口に入れている。皆私の存在などおかまいなしに。
なんていいところなんだろう!シーズンオフ万歳!
夜は西糸屋山荘という河童橋近くの山小屋に泊まった。ここは温泉ではないけれど2階に穂高連峰が見える大きなお風呂があって、ここらの湧水を焚いているから水質がすばらしいせいかとても気持ちがよかった。宿泊客は私の他にたったの2人。1人は定年間近のおじさんで、夕食をご一緒しながら話を聞くと、今日は乗鞍岳に登りに行ったものの今年は雪解けが遅くてまだ山頂付近は4mも残雪があり断念したという。昔は槍だ穂高だってよく登ったんだけど年だねえ、でも僕は剣が一番好き、特別な装備なんかいらないよ、軍手ぐらいあればシロウトでも行けるから是非いってごらんなさい、と言われた。もうひとりは20代らしき女の子で、ワンピースにサンダル履きで来ていて、明日もこのあたりでのんびりするだけと言っていた。私は明日は山登りだ。宿の人にお弁当を頼んでおいた。よく寝て早起きしてがんばるぞー。
day2 初めての日本百名山・焼岳へ
上高地で迎えた朝は、予報通り晴れていた。
朝7時、7時間の山歩きに向け朝ごはんをしっかりいただく。よく山小屋で、「朝食をお弁当にできます」って言われるけど、温かいお味噌汁と一緒に食堂できっちり食べた上で、おにぎりの弁当を持って出る方が好きだな。昨日のおじさんと朝も一緒になったので「焼岳に行く」というと、きょとんとした顔をされた。昨夜も燕岳のハナシをしたらそんな山あったっけ?という顔をされたっけ。あのおじさんにはスリルのない山なんて無意味なのかも。
7時半、コーヒーが飲みたいな。。。と後ろ髪引かれつつ出発。田代橋までマガモの親子の散歩につきあったり見事な白樺の3兄弟に見とれたりしつつゆっくり歩き、西穂高登山口で一応入山届けを出して出発。
さて、大正池から見る焼岳はずんぐりむっくりして、並みいる3000m級の穂高連峰に比べると確かに颯爽とした格好良さはないかもしれない。だけど北ア唯一の活火山ですからね。毎日噴煙があがる火山のピークまで登れるって案外できないじゃない?ガラパゴスのモンテネグロ以来ですわ。去年行った阿蘇山は結局危険なガスが立ちこめてて立ち入り禁止だったし。
登り始めてすぐ、道に迷った。
今まで赤いテープでルートが誘導されていたのに、急に黄色いテープに変わったと思ったら沢登りになった。しばらくゴロンゴロンした岩を飛んで歩き倒木をよじ登るが、目印はふっつり見当たらない。他の登山者もなく、おかしいな?こんな厳しい道なんて聞いてないぞ。まあでもまだ時間は早いし水もタップリあるからもうちょっと冒険してみよ。と30分ほど登った所で、いよいよ沢が滝の様相をなしてきた。持っている地図を開いて見てもよくわからん。恥を忍んで山小屋に電話して聞くか?と携帯を取り出すも電波なし。仕方なく来た道を戻って最後に赤いテープを見た所まで下ることに。。。すると全く別の方角にちゃんとした登山道が続いていた。あはは。
その後はピンクのイワカガミや白い鈴のようなツガザクラが足元に咲いている樹林帯を快調に登っていくと、急に視界が開けて崖崩れの後のようなところから目指す山頂が見えた。その後ぐっと勾配がきつくなり垂直のハシゴを連続して登りきったところで森林限界を超え視界が開けた。わーっと駆けだしたくなるキモチを押さえつつスネにあたる笹でサワサワ言わせつつ歩く。振り返るとはるか眼下に梓川&上高地のホテルの赤い屋根が見える。これですよこれ。近所の里山では得られない眺望。ほどなくして焼岳小屋についた。こんにちわ、と声をかけるがうすぐらい室内に小屋の主らしき影は見えるも返事なし。なんだよここまで歩いて初めて出くわした人間なのに。それにしても小屋はボロく、初日にココまで登って夜を明かすオプションを切り捨てた自分の選択は間違ってなかったと確信しつつ、展望台へ出た。
わお。これが峠ってやつなのね。正面に焼岳山頂をみすえ、あっちへ行けばロープウェイがかかった西穂高とそれに続く穂高の山並み、こっちに降りれば奥飛騨温泉郷、その向こうの山は笠が岳?逆側、遠くに雪を抱いた山が見えるのはもしかして乗鞍?急に自分の頭の中の地図が3Dパノラマに立ち上がって見えてしばし興奮。あとひと登りで山頂だと思うと疲れも吹っ飛ぶ。
しかしそのあとひと登りの1時間が一番キツかった。
硫黄臭がぷんぷんして勢い良く上がる白い噴煙はすぐそこに見えているのに、目の前のザレた火山礫が崩れやすくて歩きにくい。岩の上につけられた目印を辿るにはジグザグ登らなくてはならない。朝の炭水化物が全て底をつきかけた頃に、上から降りてくる登山者に遭遇、「キツいけどあとちょっとだよ」と励まされる。2つの峰の鞍部にはちょうど昼時で休憩中の登山者が二組お弁当を広げていた。「頂上はあっちだよー」とノンビリ声をかけられ、こんなところ通っていいの?というほど硫黄で黄色く焼けただれた噴気坑の脇をすりぬけようやくハゲ頭のような北峰トップ2393mに立ったー。ヤッホー。向こう側にはちっちゃい火山湖もある。ちょっと風が強いけど、私はここで弁当を広げてやろ。この硫黄の臭いをかぐと条件反射的にゆで卵が食べたくなるが、残念ながらタマゴは入ってなかった。でも山で食べるおにぎり最高。穂高へ続く稜線を見ながら、この夏の北アルプス縦走計画への妄想が広がる。
風に当たってカラダが冷えたので鞍部まで降りてくると、同世代の女の子2人が真新しいストーブにコッヘルでコーヒーを入れていた。どっち側に降りるんですか?と話しかけると、私と同じように上高地から登って来て中の湯方面に降りるのだという。「私たち、名前に岳ってつく山に登るの初めてなんです」だって。その割には上から下まで有名ブランドのギアで装備を固めバッチリお化粧、ご丁寧につけまつげまでついてる。言われなくても東京から来たってわかりますよ。「次は富士山に登るんです」ハイハイやっぱりね。ひとしきりおしゃべりした後、先に行くことにした。
帰りのルートは中の湯の温泉宿に降りる新道とバス停に降りる旧道があってどっちにしようか最後まで迷ったが、バス停脇にも卜伝の湯という洞窟風呂があり私好みの秘湯っぽかったので、旧道を行くことに。
2時間樹林帯を下り、飲み水も空っぽになってゴール。さあこのギトギトした汗をさっぱり流そうと思ったら、卜伝の湯の受付をする売店は準備中の札が下がっていた。げっ。「こんにちわ!」と声をかけると、トンネル前で交通整理をしていたおじさんが近づいて来て、「温泉入りたいの?今日は管理する人がいないからお湯熱すぎると思うよ。何?それでもいいって?じゃあ待ってな、今鍵開けるから。お代はいいよ。」だって。ラッキー。タダな上に貸切じゃん。温泉は確かに洗い場もなく真っ暗な洞窟に濁り湯でちょっと熱め、でも入れないことはない。確かに秘湯だ。
汗を流して着替えをしたら、すっかり生き返った。湯上がりにシュワシュワしたもので喉を潤したかったが売店には何もなく。。。バス停のベンチに座っていると、さっきのおじさんが来て「15分後に松本行きの特急があるよ」と教えてくれた。つくづく親切なヒトだなあ。
松本で乗り継ぎが1時間以上あったので、本屋で暇つぶしを仕入れて(さすがアルプスのお膝元レアな山岳本が揃ってる)からスタバでコーヒーフラペチーノのエスプレッソがけを注文しホッと一息。ああ文明開化の味がする。
白馬へ向かう大糸線では当然山側のボックス席に陣取り、夕焼けの北アルプスを横目でチラチラ眺めつつ買ったばかりの山の本を読んでいたら、トイメンに座った上品なおばさんに話しかけられた。「ひとりで山登り行かれるんですか?」
実は今焼岳から降りて来てこれから白馬の実家に行くところですと答えると、いよいよ目を輝かせて「私も登山が大好きで定年して埼玉から大町に移住してきたんですよ」という。なんだ。ウチの両親と似たパターンだな。そこから1時間、ノンストップ山トーク。このおばさんは高山植物好きで私と山の趣味が似ておりなおかつ女性の1人登山推進派とあって年齢差も関係なくとても話が弾み、大町に着く頃にはすっかり打ち解けてお土産まで色々いただいてしまった。山好きのこういう気安さはいいね。
白馬に着く頃にはとっぷり日も暮れていたが、雪がタップリ残って雄大な白馬三山と松川の眺めが迎えてくれた。うーん、ひっそり奥まった上高地もいいけどやっぱり私は明るく開けた白馬が好きだなあ。
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