三十三間山: 轆轤山〜能登越周回
- GPS
- 07:51
- 距離
- 19.1km
- 登り
- 1,177m
- 下り
- 1,196m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
天気予報をみると、この時期には滅多に晴れ間をみることがない福井県に晴れの予報となっている。しかも前日は雪の予報なので降雪直後。トレースの無いルートを愉しむには理想的な状況だ。そこで前々から気になっていた若狭の三十三間山に行くことにした。山域的には野坂山地に属し、この山域特有とも云える風衝草原が南稜に大きく広がり、北綾にはブナの林が広がっている。風衝草原というのは冬型の気圧配置では勿論のこと、大谷山や赤坂山での経験からしても、好天でもかなり風が厳しいことが少なくない。
ところが前日の夕方になると、この近辺は雪の予報となる。晴天が確実と思われる鈴鹿の山に気持ちが傾きかけるが、最も信頼するサイトでは時折の曇りはあるものの、概ね晴れの予報だったので、初志貫徹。前回でスノーシューの感触に味をしめたか、今回も学生のS君が同行することとなった。
琵琶湖の湖西道路を北に向かうと乗鞍岳、大谷山、武奈ヶ嶽に至るまで主だって山々がすっきりとした姿を見せている。目指す三十三間山は武奈ヶ嶽の影となり見えないのだが、そのあたりだけ雲が。三十三間山の駐車場に着くと我々の他には一台も車はない。さすがに平日にこのマイナーな山に登る登山客は少ないか。やはり三十三間山の上には雲がかかっている。
晴れることを祈りつつ、敢えて三十三間山に向かうルートをとらずに、南に位置する轆轤山を目指す。国道を歩いてから、林道白屋線に入る。林道は最初は沢に沿って谷筋を行くが、折り返して斜面をトラバースして登っていく。既に轆轤山の上からはすっかり雲は消えており、稜線上の好天の期待が膨らむ。
谷筋につき当たったところで沢をつめて尾根に出る。地図では林道をもう少しいったところか右手に斜面を登るルートがあり、トレースもそのコースを辿っていた。まもなく杉林の斜面となり、傾斜がきつくなるが、ここしばらく登ってきたルートから比べるとものの数ではない。斜面が緩くなるにつれ周りは霧氷のブナの林となる。霧氷の向こうには日本海だ。この時点で標高は600m台と思われるが、この標高でこれだけの霧氷が見られるというのは他所では考え難いことであろう。この山行で終始一貫して見られた現象だが、霧氷がついているのはあくまで日本海側の樹木のみ。有難いことに、以前のものと思われるトレースは昨日までの雪のせいか、ほぼ消えている。
斜面を登りきると途端に眼前に広がる雪原に感嘆しないではいられない。なだらかの雪原の尾根がずっと続いている様子は想像をはるかに上回る景色だ。疎らに生える樹々には霧氷がより大きく霧氷を纏う。勿論、周りは展望を遮るものはなく、東側には武奈ヶ嶽、南には比良山地の武奈ヶ岳、百里が岳、三国岳といった京都北山の最奥部の山々、そして、北西の方向には間近に日本海。トレースのない山やルートを求めることが多いのだが、トレースを刻みこむのが申し訳なく思うほどの美しい稜線だ。
絶景が続くためであろう。轆轤山から高度が徐々に上がるつれて、感じられる高揚感が半端ない。振り返ると雲のせいで、陽光に照らされた稜線が照らされていない稜線とのコントラストを浮かび上がらせる。あまりの美しい光景に新しく購入したばかりのカメラで写真を撮りまくり、自然と歩行の速度は遅くなる。山頂に着いてしまうのが勿体ないほどだ。南側には二つのブナガタケ(武奈ヶ嶽と武奈ヶ岳)が並んで、写真の視野に治るのはここだけではないだろうか。いつしか百里が岳のあたりでは西から雲が湧き起こり、山頂のあたりは吹雪だろうと予想される。
倉見からの登山道と合流すると雪に埋もれてはいるもののトレースの数が増す。山頂直下でこの展望の最高点に達し、これまでに歩んできた稜線の彼方に轆轤山を望む。遂にこの草綾も終わってしまうのかと思うと残念だ。山頂はブナの樹々囲まれており、幸いにも風もなく、山頂でランチをとる。
三十三間山の山頂から先は景色は一転して、ブナの樹林の中である。日本海側から尾根上の樹々は霧氷を纏う。気温の上昇につれて、次々と霧氷を落としていく。この霧氷が落ちてのは、花や葉が落ちていくのとは異なり、ハラハラという表現が全く相応しからぬ。風に舞って落ちるのではなく、雪の上をめがけて直線的、刹那的に落ちる様はパラパラと表現したらよいだろうか。実際、雪に衝突して微かな音を立てるかのようである。
山頂の一つ北側のピークまでは、トレースがあったが、それも間もなく消えて、ここからはしばらくの間、全く人が歩いた形跡がないようだ。このピークは北側の稜線からアプローチすると山頂と誤認されるため、偽ピークと呼ばれるが、広大な頂上を有する堂々としたピークである。
風衝草原を有する小さなピークを辿りながら徐々に高度を下げていく。武奈ヶ嶽はいつしか南に遠ざかり、かわりに三重嶽がその大きな山容を広げている。いつしか樹々の霧氷も消えている。大きな雪原の峠に出たと思ったら、能登越であった。雪に埋もれんばかりの 道標が雪の深さを物語る。
ここから小さなピークを登り返すと、倉見側に下る能登越の登山道の分岐を見出す。ここでリュックをデポし、三十三間山からの稜線の終点でもあり、三重嶽からの稜線が交差する726m峰を目指す。尾根を下ると右手から登ってくる天増川林道に合流する。ほとんど雪に埋もれんばかりのカーブミラーがこの奥深い山になんとも場違いな印象を与える。この726m峰は以前、無線中継所があったところで、この長大な林道は頂上まで続いている。726m峰のピークに頂上は開けた雪原となっており、南面には三十三間山から辿ってきた尾根が一望のもとである。傾いた陽が尾根に影を落としている。
下山は南斜面を直接、下降する。リュックを回収し、能登越の下山路に入ると雪に埋もれてはいるものの、深く掘削された登山路が古道の趣きを呈する。天増川の深奥にかつてあった能登郷という集落へ至るルートであり、近江坂古道の一部である。登山路には倒木も多く、当然ながら雪の吹き溜まりとなっているので、斜面を直接下降していく。下りきるとスノーシューを外し沢を渡渉するが、少し足を濡らしてしまう。登山時でなくてよかった。最後は再びスノーシューを装着し、長い林道歩きである。車を停めた駐車場に帰還すろと、折しも17時を知らせる近隣の寺からの梵鐘が、ファンファーレの如く鳴り響くところだった。
南稜のダイナミックな雪原の尾根、北稜の美しいブナの霧氷と、表情の変化にも著しく、稜線歩きの醍醐味を味わう山だ。明日の朝からの東京での予定があるので、これこら東京に向かう。出張前の日帰り登山にしてはかなりの運動量となってしまったが、数少ない北陸の晴天の日に、ここまで足を伸ばしてよかったと思う。
コメント
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三十三間山〜轆轤山は近くてお気に入りの稜線です。ここは風の神様がいるほどの風の通り道で、樹木が育ちません。幸運にも風がなかったのなら、大展望を楽しめたことと思います。
お疲れ様でした。
コメントどうも有難うございます。出張のついで(?)に登った赤城山から戻って参りました。ところで、この稜線の素晴らしさは予想を遥かに上回るものであり、歩いた者は魅力に取り憑かれるのではないでしょうか。flatwellさんも昨年のほぼ同時期に登られておられますよね。その時は今回の山行よりも遥かに素晴らしい晴天が広がっているように思われますが、その時は風はきつかったのでしょうか。
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