檜洞丸〜犬越路周回☆雨の日は山に花を求めて
- GPS
- 06:21
- 距離
- 13.2km
- 上り
- 1,592m
- 下り
- 1,536m
コースタイム
天候 | 雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー
|
コース状況/ 危険箇所等 |
危険箇所なし |
写真
感想
今回の山行は最近、登山に興味を抱き始めたという小生の学友であるkjnh氏と共に。今回は出張先が横浜だったので、山行先は丹沢と心に決めていた。木曜日に表尾根の醍醐味を味わうような山行を経験しているので、迷うことなく西丹沢に。果たして正しい選択かどうかはともかく、彼に登山の魅力を知ってもらうためにと西丹沢の盟主たる檜洞丸を選んだ。
山麓のキャンプ場で前夜泊をするが、夜通し降り続いた雨は、天気予報の通り朝になっても止む気配は一向にない。朝になって予報を再確認すると、前日の予報では晴天に変わるのが、前日の予報では15時頃からであったのが、朝の9時頃からと前倒しになっでいる。稜線上での晴れ上がりを期待して、蕭々と降り続く雨の中を早朝から出立することとした。
先日の丹沢表尾根の山行と同様、山麓は新緑のベスト・シーズンであろう。浅緑、若緑、柳緑‥知る限りの新緑の色を並べたててみたくなるが、なんと云っても、最も目に色鮮やかなのはイロハモミジの新緑に代表される萌黄色である。単に黄緑色でもいいのかもしれないが。
ツツジ新道に入ると、登り始めて間もなく、ミツマタの大群生のお出迎えだ。だが、残念ながら、悉く花期が終わっている。代わりに満開のミツバツツジ、そして、頻回の桜散らしの雨にもめげずに花をつけている桜が新緑を彩る。
ゴーラ沢の渡渉は降り続いた雨による増水を心配したが、なんとか無事、渡渉するといよいよ勾配がきつくなる。登るにつれて、雲の下縁も上昇していくようだ。このまま晴れ上がってくれたらいいのだが。しかし、その期待も虚しく、いつしか登山道は雲の中に入っていく。展望台からは眺望はまったくない。
山頂が近づくと尾根路はなだらかになる。ブナのみならず、松をはじめ、様々な大木が目立つ。あたりは湿地なのであろう。木道の上をいくと、バイケイソウが特徴的な葉を地面から突き出している。残念ながら、山頂に至るまで花の姿はまったく見当たらない。期待ハズレであったか・・・
山頂にたどり着くと石の祠がある。中を覗き込むと端正なお顔立ちのお地蔵様が立っておられた。晴れていれば周囲、好展望が広がるのだろうが、相変わらず雲の中だ。風も強いので、暖をとるべく、早々に山頂を辞し、青ヶ岳山荘に立ち寄る。
小屋に入ると、お泊まりの先客が3名おられた。若女将の最初の歓迎のお言葉は「よくこの天気の中を登られる気になりましたね」と。「どちらからですか」「京都からです」「あら、あちらの方も大阪からですよ」。大山から三泊四日の縦走らしい。
かつて皇太子殿下が訪れられた際の若かりし頃のお写真に否が応でも目が行く。皇太子殿下がこの山荘でご賞味されたのもドリップ・コーヒーらしいが、当時はブルー・マウンテンNo.1だったらしい。ブルー・マウンテン‥青が嶽‥ということらしい。
ふと外が明るくなったと思うと窓の外からは陽光が一瞬、流れ込む。天候が好転することを願って、青が嶽山荘を辞すと、犬越路への尾根へと入る。雨は上がってはいるものの、吹き荒ぶ風の音が凄まじい。幸いにも気温が低くないからいいものの、これで気温が低ければ、コンディションがかなり厳しいものになっただろうと危惧する。
やがてあたり一帯は丈の低い熊笹となり、霧の中にブナの大木がシルエットの影絵のように浮かび上がる様はなんとも幻想的だ。私が最も好きな監督、テオ・アンゲロプロスの晩年の作品「霧の中の光景」を思い出す。
ふと見ると、熊笹の中に多くの白い花が目につく。注意深く目を凝らすと、夥しい数だが、悉くリンドウのように下を向いている。何の花だろう?ところどころ、紫色の花もあるようだ。数は少ないものの、淡紅色の花もある。葉に注目してようやくわかった。花弁を閉じたキクザキイチゲではないか。この悪天候で花弁を閉じて下を向いているという訳だ。
熊笹の茂る穏やかな尾根道は唐突にやせ尾根となり、急峻な岩場が出現する。足元に注意しながら進むと、岩場の影に身を隠すようにして、可憐なピンク色の花がひっそりと咲いているではないか。コイワザクラ、絶滅危惧種II類らしい。滅多にお目にかかれない代物だが、急峻な岩場に咲くとあっては、花が咲く場所に辿り着くのも容易ならざることが多い。
急峻なアップダウンと鎖場が次々と現れる。最初に出遭ったのはわずかに二株だけであり、それでも充分に満足していたのだが、やがて霧の中からコイワザクラが群生が姿を顕す。花を閉じているものも多いが、キクザキイチゲと同様、晴れていたら花を開かせるに違いない。やはり雨の日に山に花を求めるというのはあまりよろしくなかったか。それでも、特徴的な切れ込みを有する花弁を大きく開いた株になんとか一株だけ出遭うことが出来た。岩場を通過する労苦が全く気にならなかったのは、コイワザクラのお陰かもしれない。
犬越路が近くなると尾根は緩やかになり、油瀝青(アブラチャン)の大群生となり、登山路の両側から小さな花をつけた枝が歓迎してくれる。犬越路からは、沢沿いの下山路に入ると、途端にコナラやイロハカエデなどが多くなり、林相がガラリかわる。再び鮮やかな新緑の中を降りてゆく。いつしか、風もすっかりなくなり、時折、雲の合間から青い空が顔を覗かせる。美しい沢と対岸の山肌の新緑を楽しみながら、程なくキャンプ場に帰り着く。
私にとっては学生時代に幾度となく足を運んだ想い出の山域だったのだが、新緑の季節ははじめてで、雨のせいで新緑の美しさがより鮮やかに見えるように思われた。kznh氏には展望も無く、悪天候の山行となり、残念だったかもしれない。しばらくは今回のような悪天候や、難路はそうはないだろうから、少なくとも今後の山行のハードルが下がったことと期待したい。
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