UTMB 2018 完走記(ゴール動画あり)

- GPS
- 415477:05
- 距離
- 170km
- 登り
- 9,995m
- 下り
- 9,967m
コースタイム
- 山行
- 37:06
- 休憩
- 2:41
- 合計
- 39:47
GPSの軌跡はGarminのサイトのものです。実際かかった時刻とは合っていません。スント9がうまく作動しなかったので通過時刻は公式記録から拾っています。
天候 | 8/31(金)雨、9/1(土)雲、9/2(日)雲のち晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2018年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー
飛行機
(復路) 車:シャモニー→ジュネーブ、飛行機:ジュネーブ→ロンドン→香港 |
コース状況/ 危険箇所等 |
★コース状況及び危険箇所★ ロード、林道、登山道のミックス。片側か切れた崖の箇所多数あるが気をつければ問題ない。マーキングは頻繁に出てくるので迷うことはない。そもそもボリュームゾーンにいれば前後に人がたくさんいるので変なところへ行けばすぐ指摘してもらえる。 直前にコースで落石事故があったためにコースが変更(バルロシーネとラ フレージュ間)になり距離はそのままで獲得標高が約200m少なくなった。(GPSには反映されていません) |
その他周辺情報 | ★全体の旅程★ 8/29 (水)深夜便で香港発、到着日はシャモニーの街の散策と受付及びギアチェック 8/30 (木) 前日はモンタンベール氷河散策(往復登山電車)及び買い物 8/31 (金) 当日は買い物とレース準備 9/2 (日)ゴール当日は仮眠の後お疲れ様会 9/3 (月)午前中シャモニーの街の散策、昼発、ジュネーブ、ロンドン経由 9/4 (火) 香港着 |
写真
装備
個人装備 |
ザック(1)
雨具上下(1)
ハイドレーション(1)
ボトル(1)
保温ボトル(1)
ヘッドランプ(2)
予備電池(2)
救急キット(1)
非常食(2)
行動食(2)
トレッキングポール(1)
ミッドレイヤー(2)
携帯電話(1)
時計(1)
手袋(2)
帽子(1)
タイツ(1)
バフ(2)
レスキューシート(1)
食器セット(1)
バラクラバ(1)
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感想
★大会概要★
フランスのスキーリゾート「シャモニー」発、モンブランの周りを反時計回りに、イタリアの登山基地「クールマイヨール」、スイスのリゾート地「シャンペ湖」の3ヶ国を通過して、「シャモニー」へ戻る距離170km、累積標高9,800mのトレイルレース。今年の参加者数2561名、うち完走者数1778名、完走率69.4%、制限時間46時間30分。途中のエイドステーションは16ヶ所、ドロップバックはクールマイヨールに備置可。
★行動の記録★
【スタート前】
レース当日は8:00過ぎに起床、ニューハレテープのブースに10:00に行き不安の残る膝、腰、脹脛にテーピングを施してもらう。物産展のブースでお土産やトレイル用品を購入して、一旦ホテルに戻り天気予報を見ながら装備をザックとドロップバックに振り分ける。昼食は他の日本人ランナーと一緒に、街はずれのオムレツの名店に行く。天気予報の話になり、かなり寒そうなので急遽バラクラバを購入して装備に加える。ホテルに戻り着替えて、レースモードに気持ちを切り替えていく。膝が少し痛むのと低温の予想なので下はCWXのサポートタイツにショーツを重ねた。スタート時間が近づくが雨が降りしきる中ランナーの出足は遅い。1時間以上前にスタート地点に行ったが列が少ないので一旦ホテルに戻りコーヒーを飲んで時間をつぶした。わざわざ寒い中雨にあたり体温を低下させることもない。結局30分前にスタートの列に加わった。様々な注意がアナウンスされるが、体感温度がマイナス10度というのと生きて戻ることが大事だというのにはビックリ。MCがランナーを盛り上げ歓声の中少し遅れてレースがスタート。序盤は後ろの位置をキープしながら徐々に順位を上げる作戦だ。
【前半戦】
最初のエイドのサンジェルべ(21km)まではほぼ想定のタイムだったが、最初の大きな山の登りで全く足が動かず先でかなり苦戦することが予想された。コンタミン(31km)に着いた時にも雨は止まず、逆に激しく顔を打ちつける。寒さのあまり帽子とバラクラバをつけてフードを目深に被り出発した。そこからは更にバルム峠(39km, 1706m)、ボンノムのコル(43km, 2329m)へと標高を上げて行く。計画とは裏腹にここで順位を落とし2200位台まで下がってしまった。下りで少し挽回したがシャピュー(50km)のエイドには予定より45分遅れて到着、ここでも補給とトイレに手間取り時間をロスした。そこからはグラシエ村を通り前半の最高峰セーニュのコル(60km, 2516m)へきつい登りをこなす。この頃には明るくなり少し元気も出てくるが、まだ気温は低くシェルは脱げない。下りはスピードを出して少しずつ順位を上げてコンバル湿原(67km)のエイドに到着。この頃には水よりスパークリングウォーターを飲むようになった。口の中が爽快になるからだ。短い休憩の後、更に少し下ってからファブレ山の尾根に取り付く。山頂は通らないが急な登りだ。これをこなすと楽しみなクールマイヨールまで下りだ。クロイシュのコル(76km)を超えて街はすぐそこに見えるがなかなか着かない。つづら折れのホコリっぽい下りが延々と続く。漸く車道に出るとサポートが待っていてくれた。途中あちこちで熱烈な声援を受けてクールマイヨール(80km)のエイドに入る。計画より1時間以上遅れている。ともかく着替えて後半に必要な食料を詰め込み、パスタを食べた。炭水化物を食べないと後で確実にシャリバテになる。トイレに並んでからエイドを出た。心配していた膝もまだ順調。
【後半戦】
後半最初はベルトーネ小屋(85km, 1991m)までの急な登り。日本の山のようにつづら折れの道が登りで700m続く。この小屋でトイレに寄り先を急ぐ。あまり食欲はない。次のタイミングポイントはボナッティ小屋(92km, 2025m)で標高差があまりないので1時間45分で到着。そこからアルヌーバ(97km)まで約200mの下りだが順位を落としている。ここでは関門制限までの余裕が45分程で更に余裕を無くしていた。エイドを出るとき雨具の下を着るようにと指示された。山の上は低温なのだろう。コース最高峰のフェレ峠(102km, 2537m)に向かい登りを開始する。アルヌーバでかなりの人数が脱落したらしく順位は上がっている。フェレ峠までの登りはウンザリする程長く急であそこがピークだと思い辿り着くと更に登りが延々と続く。やっとの思いで到着、ここがイタリアとスイスの国境だ。下りでスピードを上げるつもりでいたが思った程上がらずラプール(105km)のタイミングポイントに到着、トイレに寄り次のエイドまでの6kmを急いだ。この区間も本来なら走れるはずだが全く余力なくほぼ歩きでラフーリ(112km)に到着。トイレに寄りフルーツを食べストレッチしてシャンペ湖に向かう。途中眠くなり蛇行して歩いてしまったのでこれはやばいと思い町はずれのベンチで少しの時間ウトウトした。時計を見なかったが時間にして5分か10分だと思う。その先から山に入ると左側に鎖、右は谷になっていてかなり下から沢の音が聞こえたのでスッパリ切れた崖なのだと思ったら目が覚めた。暫く下ってプラッツ デ フォート(120km)の街を通過、そこからシャンペ湖まではきつい登りだ。途中に水場があったので飲んでみたら美味かった。1時間以上余裕をもってシャンペ湖(126km)に到着したものの30分滞在してしまいチャラに。
ここから山を3つ超えればゴールだ。朝になって日が昇れば楽になると言いきかせてル ゲーテへの登りを粘った。標高差500m。トリエント(142km)はすぐ下に見えたがグルグル遠回りしてようやく7時に着く、30分も休んでしまい、関門までの余裕は30分になった。その先は急登で2000mのラ テッペスを超えてバロルシーネ(153km)の街に出る。朝から熱い声援を受ける。ここでは滞在を短くして先を急ぐ。そして最後のエイド目指して勢いよく飛び出した。ところがコース変更と最終エイドの標高をよく理解してなくて最終エイドで関門制限にかかると勘違いして暗澹たる気持ちで下山を開始した。最終エイドのラフレージュはもっと下にあると勘違いしていて実際のラフレージュ(164km)をタイミングポイントだと思いこんでいた。すると途中でサポートが待っていてくれて
サポート「もう少しでゴールだよ」
私「??え、関門カットじゃないの?」
サポート「腕輪取られてないでしょ?」
私「そうだけど次の関門でカットでしょ?」
サポート「もう次はゴールだよ、さっきの上のが最終関門、余裕で通過したのを確認したから大丈夫」
私「???」
というわけで勘違いが判明して気持ちを切り替えてゴールに向かった。シャモニーの街へ入ると声援が凄い。少し遠回りしながらラストは応援の人達とゆっくりタッチしつつ余韻を楽しみながらゴール!
★感想★
計画では41時間でゴールするつもりが出来上がりは45時間半。なんとか完走して充実感はあったものの計画通りに行かなかった点では反省点の多いレース。気温が予想してたよりも低く足が動かなかったのと、慣れないエイドで動作がスムーズにいかずに時間がかかってしまった。1つ1つの山が大きいのは理解していて、練習で「笠ヶ岳日帰り」「中央アルプス日帰り縦走」「富士山」等で対策を練ったつもりだったが、本場のアルプスでは通用しなかった。とはいえ本場のレースで途中の街や村、ゴールで熱狂的な応援を受けたのは素晴らしい経験だった。やはりスポーツ文化が根付いているのだろう。なんといっても全ての完走者がヒーローになれるというコンセプトが素晴らしい。
★ギリギリランナーのためのメモ★
制限時間1時間前の完走なので偉そうなことは言えないけど完走のためのポイントをいくつか書き留めておきます。
(1) 予想ゴール時刻の設定
今回計画では41時間でゴールするつもりで計画を立てた。UTMFで38時間で完走できたので追加の獲得標高で3時間かかると仮定を置いた。結果としてはそれより4時間半余計にかかった。そもそも時間の設定が甘かったのだろう。では指標はあるか?今年のUTMBのタイムとIRTAポイントの相関を回帰分析したデータがある。それによると
21時間36分+(900-自分のIRTAポイント)/100 x 5時間19分で予想タイムが計算できるという。(Rスクエア=0.61)
これによって計算すると自分の予想タイムは42時間11分。普段通りの力が出せなかったというところだろうか。いずれにせよ。予想タイムに基づいて各エイドの通過予定時刻を休憩時間も加味しながら決めていく。参考になるのは前年度の同じくらいのタイムの選手のエイド通過時刻。数名見て前半飛ばす方か後半追い込み型か自分のスタイルに合うスタイルの選手を参考にすれば良いだろう。
(2) 装備
必携品の他にストック、保温ボトル、気温によってはバラクラバ、オーバーミトン、バフは持参した方が良いだろう。特に今年のように冬用装備が奨励されていた場合、日本のレースとはまったく違う気候で行うレースだと考えた方が良い。日本で冬山の経験のない方は気温摂氏0度程度での高地のハイキングを経験しておくと良いと思う。
人によってはエイドの食事が合わない場合もあるだろうから、自分が食べられるものを保険の意味でザックに入れておいた方がよい。
(3) 山の大きさ
日本と山の大きさが違うと言われている。一気に1000-1500mの登り下りが出てくるので、可能なら日本で北アか南アで大きな山を経験しておいた方が良いだろう。私の場合UTMFの後に笠ヶ岳、富士山御殿場コース、中央アルプス日帰り縦走で足を慣らしておいた。これはコース最高峰フェレ峠の登りで心折れずにクリアできた要因だと思う。
(4) ポイントとなる所
関門ギリギリのランナーにとってはどこで頑張るか重要。メリハリをつけないと最後まで持たない。ポイントは5箇所。1つはコンタミンの関門。今年はここまでで76名がカットされている。皆飛ばすので流れに乗っていけば良いがあまり後ろに位置取ると後で挽回がきつくなる。次が夜間のボンホム峠。コンタミンから1300m標高を上げる前半のハイライト。参加者のライトが延々と上に見えいつまでたってもピークに着かない。精神的にめげてくるが、明けない夜はないと言い聞かせて頑張る。特に天候が悪い場合、ここを降りてシャピーのエイドで気が抜けてリタイアする人も多い。3つ目は最高峰フェレ峠。アルヌーバーから800m程度の登り。傾斜がきついのでなかなか進んでる実感がない。4つ目はシャンペ湖までの登り。Praz de Fortの街から400m以上登るがここが意外ときつく感じる。シャンペ湖(126km)にとどり着けば、そのあとは小山を3つ超えるだけなので完走はかたい。ここまでなんとか頑張ればあとは大丈夫。
(5) 最後に
あるトップランナーのアドバイス。途中で命の危険を感じたら迷うことなくリタイアしなさい、それ以外でどこかが痛いとか、寒いとか、腹が減ったとか、そういうことは全部脇に置いておいてともかく前へ前へ進むこと。リタイアする理由なんて何百だって考えらえる。そんな自分の声を聞いては完走はおぼつかない。だそうです。 なるほど〜その通りでした。これから出場しようと検討されている方、ぜひチャレンジしてみてください。こんなに感動的なゴール日本では絶対味わえません!
トレイルランニングレース#33
コメント
この記録に関連する登山ルート
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kennoguさん
UTMB出走計画見て、いよいよ挑戦するんだ〜と感心しました。レース後しばらくが経過し、レコを待っていましたが、なかなかUPされないので、もしかしたらDNFだったのかなとも思ったりしましたが、大変失礼いたしました。
完走おめでとうございます。用意周到な準備とレース運び、感心するばかりです。高い高い高〜い目標を達成してしまった今、次の目標をお尋ねするのは野暮でしょうか。
UTMBのfinisherと山歩きしたいです。訪日登山の際にはお知らせいただければと思います。筑波山や日立アルプスだったらいつでも大丈夫です。
mnakanoさん、ありがとうございます。ギリギリでしたが熱い応援に背中を押されて完走することができました。さすが本場のアルプス、懐が深いです。写真を撮る余裕すらなかったですが、山の大きさ、美しさ、そして人々のトレイルランニングへの理解に感動しました。来年もどこかヨーロッパのレースに出たいと考えていますがまだ考慮中です。日本での山行は適宜計画にアップしていきますので都合があえばぜひご一緒させてください。
お疲れ様でした!!世界最高峰の舞台でのレースの素晴らしさが記事から十二分に伝わってきました!!
感動を、ありがとうございました!!
ありがとうございます。ヨーロッパで山登ったのは初めてですが、これ登山=ピークハントではなくてハイキング=山歩きの世界なのですね。日本の山はほぼ例外なくピークハントですが標高の高いかつピークが鋭いヨーロッパでは日本の登山とはちょっと違う概念のようでした。それを体感できただけでも大きな収穫です。山に登る意欲が多いに刺激された1週間でした。
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