正座峰☆平良道を辿って
- GPS
- 02:36
- 距離
- 5.5km
- 登り
- 465m
- 下り
- 446m
コースタイム
天候 | 雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
一般登山道なし |
写真
感想
正座峰の南に位置するサケビ峠を越える峠道はその昔、針畑川流域から北川の流域を経て朽木に至る重要な交通経路であったようだ。針畑川の側からは桑原と平良の集落からこのサケビ峠を越える道が通じていた。
膝蓋骨の骨折を負ってから2週間が過ぎ、少しばかり歩けるようになった2/8のこと、リハビリもかねて正座峰に登るべく、南桑原からこの峠を目指したのであった。前日の降雪もあり、県道から少しはいると膝まで沈む程の積雪である。早速にもスノーシューを履いて、古い道標に従って植林地の中をトラバースする小径を歩むとすぐに明瞭な古道が出現した。平坦でかなり幅広い道が尾根筋を何度も跨いでゆっくりと登ってゆく。牛が通れるように道が付けられたということもあって、牛車が通ることを前提として傾斜がかなり緩く、同時に十分な幅を有する広い道が造られたのだろう。
この程度の傾斜ならば骨折を患った脚でも十分に登れると調子よく歩行していたのだが、やがて道が斜面をほぼ水平にトラバースするようになり峠に向かって南へと大きく向きを転じたところで恐らく昨年の台風によると思われる杉の倒木の密集地帯が現れた。それでも果敢に倒木を越えようとしたが、健側の脚で雪を踏み抜いた瞬間、膝蓋骨を骨折した患側の膝に激痛が走った。夥しい数の倒木を不自由な脚で越えることは到底ままならないと判断し、諦めて引き返したのであった。しかし、この日以来、このサケビ峠に至る平良からのもう一つの古道を辿り、サケビ峠から正座峰に至ることは私の宿願となったのだった。
再びこのサケビ峠に向かうべく京都の自宅を出てR367を北に向かうと、雨の予報は午後からであったがすぐさま小雨が降り出した。眺望を期待する登山ではないので、天気があまりよくないことは気にならない。そもそも登山という目的であればある程度天候を選んで山に入るわけだが、昔の人が生活のために道を辿ったのはおそらく雨がふろうと雪が降ろうと天気にかかわらず道を辿らねばならない必要性があったことだろう。
平良の集落を過ぎて道が大きく左に曲がるあたり、サケビ峠の一つ南のピークから西に延びる尾根が張り出すあたりで道路脇の駐車適地に車を停める。平良からサケビ峠に至るに古道はこの尾根をどこかで横切る筈だから、尾根を辿ればどこかで古道と出遭えるだろうという読みである。
植林地の中へと入ると直ぐに広い古道が出現した。早速にも古道に巡り合ったかと糠喜びしたが、道を辿ると山の方に向かわずに道は県道に沿って北の桑原の方へと進んでゆく。どうやら針畑川に沿って往来するための昔の道のようだ。道を右手にそれて明瞭な尾根の取り付きが見えたので、尾根に乗るとすぐにも古道が現れた。桑原からサケビ峠へとあがった古道とほぼ同じ雰囲気の広い道だ。斜面を何度も行き来しながら緩く登っていく。
間もなく数本の倒木が道を塞いでいるので、そこを無理やり越えると完全に道が失くなっている。密集した藪を漕いで先に進むと舗装された林道に飛び出した。切り開かれた林道の周囲は見晴らしがよく、針畑川を挟んだ対岸には経ヶ岳を望む。しかし、辺りを見回すも肝心の古道の続きが見えない。諦めて林道を先に進んだところで、左手の斜面から尾根に登ることにした。
小さな支尾根に乗ると、林道の少し上の斜面をトラバースしてくる古道に再び出遭う。古道を辿ると、やはり尾根筋を幾度も跨いで緩やかに尾根を上がってゆく。尾根を乗り越えて北側斜面をトラバースするようになると途端に古道の上には積雪が増え、片斜面となった。サケビ峠はかなり近くなり、このままトラバースしていくと峠にたどり着くのだろう。ステップを刻みながら雪の片斜面の道を進む。しかし、谷の急斜面を越えなければならないところで諦めることにする。斜面を登るとすぐに尾根に辿り着き、サケビ峠の一つ南側のピークに登る。
サケビ峠に向かう尾根には急に雪が出現し、積雪の上をつぼ足で進む。緩やかに下ってサケビ峠にたどり着くと、桑原と平良から登ってくる緩やかな道が合流している。草川啓三さんの本にも峠にはお地蔵様の写真が載せられているが、かつてはこの峠には美しいお地蔵様の石仏があったが、数年前に盗まれてしまったらしい。萬霊等と彫られた石がかつての祠のありかを示すようだ。
雨や雪の中を必要に迫られてこの峠を越えた人々の安全を祈念されてきたお地蔵様を盗むなどどうしてそんなことが出来るのだろうか。
峠から緩やかな尾根を北に辿り、正座峰のピークを目指す。杉林から落葉した自然林に入ると、途端に尾根は明るくなる。山毛欅や小楢、楓が多く見られる樹林は紅葉が美しいことだろう。尾根芯から東側は雪が残り、雪が消失した西側斜面との間に季節の境界線がひかれているようだ。
正座峰は山頂標も何もない地味な山頂であった。踏み跡を辿り引き返すと、登ってきた尾根を下り再び先程の古道に出る。先程、古道を見失った地点がどうなっているか気になるところだ。見失った地点が近づいてくると、忽然と林道の法面の上に出たところで古道が切れている。先程林道に出た箇所は20m程の崖下である。すなわち林道を通すために斜面ごと大きく削られてしまっているのだった。
踏み跡なき斜面を下り、途切れた古道の先に出る。古道を戻ると、最初に古道に乗ったところあたりからは下の方に県道が見えるようになった。後はこの古道を県道まで辿るだけだ。最後は小さな谷を越えるべく斜面を大きく左手に曲がったところで息を呑んだ。谷を越えるあたりで夥しい数の杉の倒木が古道を覆って隠しているのだった。おそらく昨年の台風による被害だろう。諦めて、古道から杉の植林地の中の緩斜面を歩いて、歩き始めたあたりに戻るのだった。
再びR367に出て京都に向かうと本降りの雨が降り始めた。古道の大体を歩くことが出来たのではあるが、大変な努力を払って造られたであろうこの古道が林道や倒木により寸断され、歩行困難な状況になっているのは何ともやるせない気持ちに陥るのだった。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
つまらない山を勧めてしまったかなと思っていましたが、楽しんでいただけてよかったです。倒木の情報まで持っていなくて失礼しました。
お地蔵さんが盗まれたのは10年ほど前です。あのときは騒動になりました。おそらく緩やかな古道を台車で運んだんだと思います。お地蔵さんに古道、古き良きものがなくなっていくのは寂しいものです。
勿論、十分に楽しませて頂きました。特に不完全ながらも平良道を辿ることが出来たのがよかったと思います。それにしてもお地蔵さんが盗まれるなんて酷い話ですね。
新たに林道が延びたのもおそらく近い過去なのかもしれませんが、完全に古道が寸断されてしまっており、その寸断された間には迂回路もつけられていないのは残念なことです。しかし、道の辿り方はわかったので、また違う季節に訪れてみたいと思います。
教えて頂き有難うございました。遅ればせながら、お礼を申し上げます。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する