晩秋の湖南アルプスへ
- GPS
- 04:23
- 距離
- 15.8km
- 登り
- 1,054m
- 下り
- 1,044m
コースタイム
- 山行
- 3:59
- 休憩
- 0:24
- 合計
- 4:23
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
矢筈ヶ岳のの西尾根は一般登山道なし(詳しくは感想にて) |
写真
感想
この日は午前中は京都市内で用事があったので、午後からの短い山行を考える。京都を正午に出発する新快速に乗って滋賀に向かうと、丁度、石山駅から湖南アルプス登山口に向かうバスに乗り継ぐことが出来る。バスの終点で降りたのは私一人だけであった。
まずは堂山へと向かう。天神川を徒渉する必要があるのだが、徒渉点に向かうと水深の浅い川には石が並べられており、難なく徒渉できる。右岸の河岸段丘を歩き、小さな沢沿いへと入る。
尾根に乗るとあたりは潅木のみであり、早速にも好展望が開け、琵琶湖の彼方には比叡山から比良の山並みを眺望することが出来る。蓬莱山の山頂部分は白く輝いている。山頂からも東側には大きな花崗岩の点在する好展望の尾根のアップダウンを繰り返しながら、徐々に高度を下げる
やがて低木の樹林の中を下ると忽然と広地に飛び出した。地図では鎧ダムと記され、ダム湖が広がっているところである。どうやら流入する土砂によりダム湖が堆積してしまったようだ。そもそも堰堤は草津川への土砂の流入を防ぐためのものであったらしい。
新オランダ堰堤とも迎不動堰堤とも呼ばれる大きな堰堤に出る。オランダ人、ヨハネス・デ・レーケによる鎧堰堤の設計を模して作られたという堰堤は多数のブロックによる整然とした幾何学的模様が美しい。堰堤の脇では若い男性二人がランチを調理しておられた。太神山へと向かう道路に合流すると堰堤の下には何台からの車が停められている。
舗装路を歩き始めるとすぐにゲートがある。川沿いの林道へと入るとすこちらでもすぐに堰堤がある。堰堤を越えると天神川を渡る橋があり、その手前では下山して来られた男性二人が話をされいる。一人の方から「こんな時間から登り始めるとは・・・」と呆れた感じで仰られる。矢筈ヶ岳から笹間ヶ岳を周回して下山するつもりだといったらどのように反応されるだろうかと思ったが、余計なことを口にするのはや止めておいた。男性は「お気をつけて」と笑顔でご挨拶いただいた。
尾根は最初の急登を過ぎると、なだらかな尾根道が続く。泣き不動も不動明王の石仏がなんとも豊かな表情である。金勝アルプスもそうであるが、この太神山の登山道も石仏の表情が魅力的だ。やがて両側に丈の低い熊笹が繁茂する快適な尾根道を辿ると山中に忽然と二対の堂々とした石仏が現れる。二尊門である。
左側の石仏は剣を携えており、明らかに男神像である。剣のつかの上に頬杖をついた独特のポーズ、そしてその顔は柔和な表情を浮かべながらも、曰くありげな何とも不可思議な表情を浮かべている。右側の石仏は女神像であり、こちらは両手を合掌し、何とも優しい表情を浮かべている。
石仏の間を通り、先へ進むと樹高の高い立派な杉の樹が多くなる。山門をくぐると不動寺の境内へと入る。境内を奥へと進むと山中に忽然と懸崖造りの立派なお堂が現れる。薄暗いお堂にお参りすると、お堂の背後に祠のある山頂を訪ねる。
不動堂の下では橙色に美しく色付いた楓が秋の名残りを感じさせる。曇天のせいだろうか、ひと気のない境内には過ぎつつある秋の寂寥感が色濃く漂っているのだった。
不動寺を後にすると矢筈ヶ岳への尾根に入る。尾根の入り口には本願谷の登山道が崩落により通行止めとの看板がある。地図にはそのようなルートは記されていないが、この谷を通るバリエーション・ルートがあるようだ。
こちらもアップダウンの少ない快適な尾根が続く。山頂直下で少しの急登を登ると樹林の間から北西の展望が開け、琵琶湖の対岸に比叡山から比良にかけての山並みを展望する。
矢筈ヶ岳からは一般登山路を辿ると・・・一度、天神川にかなり近いところまで北上することになる。国土地理院の地図には山頂から登山道から西側の北西に伸びる尾根に破線で記されたルートがある。この尾根を下り、林道から笹間ヶ岳に向かうという方法があることに気がつく。
尾根上には有るか無きかという程度ではあるが、なだらかな尾根にはかすかな踏み跡がある。踏み跡を辿るうちに地図に記された破線よりも一歩、北東側の尾根に入り込んでいることに気がついたが、踏み跡は続いているのでそのまま尾根を下ると、まもなく堰堤の手前の廃林道に飛び出した。
林道を下るとすぐに舗装された笹間ヶ岳林道に合流する。林道が沢を横切るところで沢沿いをさらに上流に進む細い林道へと入る。左手に小さな堰堤を越えると突然、広地が現れた。大谷河原と呼ばれるところだ。ここも土砂が堆積して出来たところなのだろう。小さな焚き火の痕跡がある。キャンプをするにもいいところのようだ。
すぐ手前には小さな池がある。池の底に堆積した落葉から滲み出てきたものだろうか、透明な上澄みの奥底には藍色の水が沈んでいるのだった。大谷河原を奥に進む御仏河原からくる登山道に合流する。なだらかな尾根道を辿って笹間ヶ岳の山頂にたどり着く。
山頂の八丈岩からは再び琵琶湖と比叡山から比良にかけての山並みの眺望が大きく広がる。その彼方では空はすっかり晴れており、夕暮れ時の淡いパステルカラーが空に広がり始めていた。時刻は既に16時半。今から下ると湖南アルプス登山口発17時16分のバスに丁度良いタイミングだろう。
笹間ヶ岳の西尾根を下ると稜線からも所々に展望が広がる。丁度陽が沈むあたりには厚く雲がかかっており、雲の合間から橙色の光がこぼれ落ちているが、夕陽を拝むことが出来ない。最後は笹間ヶ岳林道の下りとなる。林道からは随所に展望が開けるが、みるみるうちに西の空が茜色に燃え上がってゆく。しかし、夕焼けはわずかばかりの間であり、高速道路の建設現場に出るとすっかり夕空の色は醒めてしまっているのだった。
笹間ヶ岳の西側斜面は新たな高速道路を建設しているようだ。おそらく京滋バイパスと新名神をつなぐための道路なのであろう。工事現場に差し掛かると林道も非常に真新しい。重機や資材を整えるために最近になって整備されたようだ。この高速道路ができると、この湖南アルプスのあたりの景色も一変してしまうことだろう。今の自然な姿を見ることが出来るのもあとわずかかもしれない。
工事現場を離れて登山口のある里へと林道を下るとバスの時刻の10分ほど前に登山口のバス停にたどり着くと、急速に夜の帳が降りてくるのだった。
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