高見山☆初登山は霧氷の山頂から静寂の北尾根に
- GPS
- 05:45
- 距離
- 15.7km
- 登り
- 1,028m
- 下り
- 1,013m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
北尾根は踏み跡が不明瞭な箇所もあるが基本的には藪のない歩きやすい尾根 |
写真
感想
霧氷が期待出来る山の中で高見山を山行先に選んだのは賑わいが予想される山頂から北に伸びる尾根の縦走に惹かれたからだ。大晦日は久しぶりに西高東低の冬型の気圧配置となる。明神平と山行先を両天秤にかけることになったが、強い冬型の気圧配置の時は明神平のあたりは西側の奈良県川からの上昇気流により山頂部は雲と強風の中となることが多い。これまで経験では高見山は明神平とは異なり晴れていることが多いが、果たしてこの元旦の日は如何だろう。
朝は子供を駅に送り届けてからの出発にならざるを得ない。奈良に向けて南下すると雲ひとつない東の空から朝陽が昇ってくる。昨年も元旦は素晴らしいご来光日和となったが、今年も少なくとも関西南部では絶好の初日の出を拝めることが出来たに違いない。
新木津トンネルを抜けると山頂部に霧氷を纏った高見山が視界に飛び込んでくる。関西のマッターホルンの異名をとる綺麗な三角錐状の鋭鋒は否応無く視線が吸い寄せられる。記憶にある高見山の霧氷はもう少し下まであるように思われたが、贅沢は云うものではない。
登山口近くのたかすみの里に到着したのは9時丁度。既に数台の車が停められているが、多くの車のガラスが凍ついているところからするとご来光目当ての登山客のものだろう。ちなみにさすがにたかすみ温泉はさすがに元旦は営業していないので、心置き無く駐車できる。
車を停めて準備をしていると丁度、下山して来られた一人の男性が「山猫さんではないですか」とお声掛け下さる。果て、どこかの山でお遭いした方だろうかと思ったが、最近はこのような状況ですぐに人の名を思い出せないことが多くて困る。「yamaotocoさんの友人のakirasです。つい最近の伊吹山のレコを拝見しました」とご紹介いただく。どうやらお遭いしたことがある人を思い出せなかった訳ではなかったようで、ホッと一安心する。「今日のご来光はさぞかし素晴らしかったのではないでしょうか?」「最高でした!」とのこと。
平野川を渡って登山道に入ると最初はなだらかな植林の尾根を緩やかに登ってゆく。よくぞこれだけ整備されたものだと感心するほどに、杉の丸太による階段が延々と続く。ご来光登山の登山客と何組もすれ違う。
尾根が広くなり、なだらかな杉の植林の中にひときわ大きな杉の樹が現れ、その根元には祠がある。高見杉である。案内板には樹齢、推定700年と書かれている。
植林地の樹間より白く輝く高見山の山頂を垣間見るが、写真に撮れるほどの眺望はなかなか得られない。ようやく杉の植林地から抜けて自然林に入ったかのは標高は1100mのあたりだった。ほどなく尾根上の樹々に霧氷が現れたかと思うと、上につれてますます霧氷は立派になってゆく。細尾根の両側から樹々が差し出す枝は霧氷のトンネルをなす。
見上げると、先ほどまで杉林の中にふんだんに陽光を降り注いでいた太陽は一面に広がる曇り空の向こうに姿を消してしまった様だ。しかし、北の方角に目を向けると倶留尊山、古光山やその彼方の大洞山、尼ヶ岳といった名張の山々のあたりは光を浴びているようだ。霧氷の谷間からはこれから辿る予定の北尾根にも日差しが降り注いでいるのが視界に入る。尾根上には一際明るい黄土色の箇所が見られる。地図には記載は見られないが、大きな崩落地でもあるのだろうか。
杉の植林地の中ではほとんど風もなく汗ばむほどであったのだが、山頂が近づくにつれて急に冷たい風が吹きわたるようになる。考えて見ればこの風のお陰でこの山頂部にこれだけの立派な霧氷がつく訳なのだが。
尾根上の展望地からは南の明神岳をはじめとする台高北部の山々が目に入る。どうやら雲は山頂部をギリギリ覆い隠してしまっている。折しも雲の合間から日差しが溢れ落ちるとその瞬間に霧氷の樹々がキラキラと白銀の光を放つ。しかし、雲の間から気まぐれに降り注いだ陽光は一瞬のうちに消え去ってゆく。
山頂直下から振り返ると登ってきた尾根の霧氷の白銀が周囲の山々の杉林の深緑と見事なコントラストを見せてくれる。いつもこの光景を見るたびに、季節の境界線という言葉が脳裏をよぎる・・・勿論、実際にはそんなものはないのだが。
山頂直下にたどり着くと風はますます強くなり、途端に指先が悴(かじか)み始める。山頂の避難小屋に駆け込み、慌ててフリースを着込む。登山口でお遭いしたakirasさんのお話では、山頂の避難小屋は人が一杯で入れなかったとのこと。日中ですらこれほど寒いので、早朝はどれほどの寒さを凌がねばならなかったことかと思う。
山頂からは東に伸びてゆく稜線の先に三峰山が大きな山容を広げている。高見山と同様に霧氷が有名な山ではあるが、ここから見る限りではその山頂部には霧氷は見当たらない。山頂からの霧氷の景色を堪能すると北尾根を目指し、まずは尾根を東に進む。
尾根を下るにつれ徐々に樹々の霧氷は勢いを弱め、請取峠への分岐となるサイメ谷山の手前で再び杉の植林となると跡形もなく霧氷は消え失せるのだった。サイメ谷山への尾根の南側からはしばしば明神岳への展望が開けるが、北尾根に入るとこれで台高北部の山々の眺望も見納めである。
天狗山へはなだらかな吊尾根n杉の植林が続くが、天狗山の山頂から北側では林相が一変する。山毛欅の中に小楢や楓の混じる明るい自然林の樹林が続いている。残念ながら展望が開ける箇所はないものの、振り返ると樹間からはかろうじて高見山を秀麗な容姿を望む。
アップダウンの少ないなだらかな尾根は快適に進むことが出来る。時折、背後から気まぐれに日差しが差し込んでは柔らかな落葉のカーペットの上に長い影を落としてゆく。船峯山を越えて小さな自然林を越えたところで尾根上には再び植林が現れる。しかし、植林の中をわずかに降ったところで目の前には広大なススキの原が出現する。
高見山の山頂から崩落地のように見えた明るい一点の正体はこのススキの原なのであった。原曽爾高原の亀山を思い出すようなススキが尾根の西側斜面いっぱいに広がっている。正面には曽爾高原の北西の国見山から住塚山かけての稜線を大きく望む。
尾根伝いに辿り、尾根が少し西向きになる箇所まで進むととついに南側に高見山を正面に展望することが出来る。ススキに陽射しが当たるとその穂先だけでなく斜面一面がが黄金色に光り輝く。北尾根のどこかで好展望が開けるものと期待してはいたが、ランチ休憩にこの好展望地以上に相応しい場所はない。
高見山の強風が嘘のように冬の柔らかい陽射しを運ぶ風は穏やかだ。雲烟の合間から溢れ落ちる日差しが高見山の霧氷を時折、白銀に輝かせながら通り過ぎていく景色を愉しむうちに時を忘れて、元日の穏やかな午後のときをゆっくりと過ごすのだった。
ススキの原の展望地を後にすると再び植林の中を登り、尾根上の唯一の点標のある黒石山に辿り着く。黒石山からの北尾根の最終章は小刻みに蛇行とアップダウンを繰り返しながら植林の尾根を差杉峠へと下ってゆく。すぐにも尾根には林道が現れるが、くどいほどに「関係者以外の林道の通行を禁止する」との看板が頻繁に現れる。どうやら西側の植林の中には地図にはない林道が何本も走っているようだ。
差杉峠に至ると峠の北側に小さな石の祠を見つけることが出来た。祠の中に役行者の半跏像が「よう来たのう」と歓迎してくれるかのように穏やかな微笑みを浮かべておられ。ここの石像に出会えることを秘かに期待していたのであった。
峠からはなだらかな植林の谷を下り、サイスギ谷の出合からは林道を歩いて滝野の集落に至る。滝野ではこの日の小さな山旅の最後を締めくくるもう一つのアミューズメントがあるのだった。白馬寺の境内を滝野川に沿って奥へと入ると狭い谷間には滝音が響きわたっている。谷奥には一筋の大きな滝が目に入る。
滝のすぐ左手には大きな一本杉が聳え立つ。友掛杉というらしい。案内板には樹齢1000年とある。道理で高見山への登山道で見かけた高見杉よりもさらにスケールが大きいようだ。
滝野からは林道をたかすみの里まで県道の舗装路を黙々と辿る。たかすみの里からは再び彼方に高見山の山頂を望むことが出来るのだった。高見山山頂の霧氷もさることながら冬の静寂と高見山の好展望が印象的な北尾根であった。
コメント
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yamaneko0922さん、yamaizuさん、こんにちは。
駐車場ではどうもでしたっ!写真25の高見山は凄い迫力ですね!ススキも素晴らしい!是非とも周回したくなりましたよ!いつ行こうかな〜!?また東吉野に車を走らせる楽しみが増えましたっ!
akirasさん 駐車場ではお声がけ下さり有難うございました。
それから早速にもコメントどうも有難うございます。
この北尾根は天狗山からは延々と自然林の尾根が続き、こういう林相がお好きな方、そして静かな山域が好きな方はとても気に入られるのではないかと思います。
そして最後に広大なススキの原!このススキの原が緑に変わる季節も良さそうですが冬の陽光に霧氷が煌めく高見山を遠望するのはなんとも魅力的というか贅沢な感じが致しました。
感想では書き損ねましたが、東西から眺めるのと北側から眺めるのとでは高見山の印象がまるで違います。鋭鋒というよりも非常に山容が大きい山であることを再認識いたしました。
またどこかの山でなくとも、駐車場でもお会い出来るのを期待しております。今年もどうぞよろしくお願いします。
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