大日ヶ岳〜天狗山〜水後山☆美林の尾根と霧の雪稜 濃飛国境より越美国境へ
- GPS
- 05:58
- 距離
- 14.4km
- 登り
- 1,086m
- 下り
- 1,060m
コースタイム
- 山行
- 5:26
- 休憩
- 0:27
- 合計
- 5:53
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス タクシー
|
コース状況/ 危険箇所等 |
この日は気温が高く雪が終始、腐れ気味 ツボ足ではかなり踏み抜くことになるのでスノーシューまたはワカンが望ましいと思います 大日ヶ岳〜水後山は雪庇が崩れかけており、クレヴァスにはくれぐれも要注意 鎌ヶ峰の前後が核心部、雪の状態によってはアイゼンが有効かと思います ※大日ヶ岳〜天狗山の間でピッケルを拾得しています。お心当たりのある方はどうぞご連絡を |
写真
感想
大日ヶ岳
翌日の山行のためにこの日の夜は美濃白鳥の旅館に投宿することが決まっていた。土曜日は午前中に予定があったのだが、何とか前日の夜までに片付けることが出来たので、朝から出発することが可能となる。折角の機会なので、以前から訪れたいと思っていた大日ヶ岳への山行を計画する。この山を訪れるならば天狗山と水後山をつないで縦走したいと思っていたが車二台を使うのでなければ、この縦走を容易ではない。さて、いかなる手を使おうか。
ところでこの大日ヶ岳はかつては三国岳とも呼ばれ、美濃、飛騨、越前の三国が接する山であった。現在の県境は別山の南尾根上の銚子ヶ峰から野伏ヶ岳を経て毘沙門岳に至る稜線上に設定されているが、かつては銚子ヶ峰からこの三国岳を経て毘沙門岳に至る尾根が国境をなしていた。すなわち、ひるがの高原から大日ヶ岳に至る尾根が濃飛国境、大日ヶ岳から天狗山の稜線は越飛国境、大日ヶ岳から満天の湯のある桧峠への尾根が越美国境稜線となる。
美濃白鳥までは長良川鉄道を利用すると京都をどんなに早く出発しても11時53分にしか到着しないが、名古屋から高速バスを利用するとひるがの高原に9時半過ぎに到着することが出来る。問題はこの高速バスの予約が前日の0時で締め切られてしまうので、乗れるかどうかはバスセンターで空席の有無を尋ねるしかない。
朝7時過ぎの新幹線に乗り、名鉄バスセンターに移動すると7時40分発のバスには十分に空席があり、すんなりと乗車することが出来た。バスが名古屋を出発すると濃尾平野はすっかり晴れわたり、御嶽山が雲の上からその頂を出している。平野の西に見えるわずかに雪を残す大きな山が伊吹山であることにすぐには気がつかなかった。
美濃白鳥を過ぎるとようやく道路の周囲に雪を見かけるようになる。バスの進行方向には大きな大日ヶ岳が見える。ひるがの高原バスのSAからはゴンドラのある高鷲(たかす)スキー場までは無料のシャトルバスがあるが、そのバスが出発するまで50分近く待たなければならない。高鷲のタクシー会社に電話をかけて配車を依頼する。
バスはおよそ10分近く遅れてひるがのSAに到着。スキー場から下はすっかり晴れているが、山頂部には雲がかかっている。午後には雲が晴れることを信じて、登山口に向かう。本来の登山口は除雪されていないようだが、除雪終了地点の道路脇の広地には3台の車が停められていた。ナンバーは京都、尾張小牧、静岡と、遠くから来られている方もおられるようだ。
登山口からは早速にも広々とした自然林の尾根が続く。数名の先行者のトレースがあるが、いずれもつぼ足のようだ。
すぐ隣のスキー場から流れてくる音楽を聴きながら緩やかに自然林の尾根を登ってゆく。スキー場が広いせいだろうか、音楽の賑やかさとは裏腹にゲレンデは空いているように見える。あるいは未だのコロナ禍の影響が続いているのだろうか。
やがて、大日ヶ岳から東に伸びる尾根に乗ると、斜面からは左前方に純白の大日ヶ岳のピークが視界に入る。高度が上がるにつれ広々とした疎林となり、ブナの大樹が次々と現れる。尾根がかなり広いのであたかも平原を歩いているかのような錯覚を感じる。
樹間からは右手に白山が見える筈なのだが、山の上の方は雲の中だ。振り返るといつしか鷲ヶ岳の山頂部も白山から流れてきたものと思われる雲に覆われている。
大日ヶ岳の山頂が近づき、展望台と呼ばれる地点に到着すると白山にかかる雲が一気にとれて、その純白の山頂が別山と共に姿を現した。
山頂まではもう一息だ。山頂の直下で三人のパーティーが休憩されておられる。浜松ナンバーの車のパーティーであった。ツボ足で山頂まで4時間半近くかかったとのこと。山頂近くでもかなり沈んでいるようなので、それは大変だっただろう。
青空を背景に大日ヶ岳の山頂へと登り詰める。山頂からは鎌ヶ峰の峻険な山容が視界に飛び込む。北西の天狗山へと続いていくたおやかな稜線とは好対照だ。空には淡墨を流したかのような雲が急速に広がってゆく。稜線が雲の中に入ってゆくのは時間の問題のようだ。
山頂では折しも大阪から来られたという女性二人組が雪だるまを作っているところだった。YAMAPユーザーのナオナオさん達であることを下山後に知る。お二人の記念写真を撮らせて頂くと山頂を後に一路、天狗山に向かう。
広々とした稜線を天狗山に向けて辿ると次々と数組のパーティーとすれ違う。振り返ると大日ヶ岳の山頂は早速にも雲の中へと吸い込まれてゆく。
天狗山の山頂へとたどり着いた時にはちょうど二人組の若い男性が休憩されておられるところであった。装備からして明らかにゴンドラではなく、下の登山口から登ってきた雰囲気だ。お伺いすると京都ナンバーの車の主であった。
大日ヶ岳の山頂を再び目指し雲の中へと入ってゆく。途中で真新しいピッケルが落ちている。おそらく先ほどすれ違ったパーティーのどなたかが落とされたのだろう。リュックに2本目のピッケルを括り付けると急に重く感じられる。山頂では雪だるまが完成されていた。鎌ヶ峰への稜線もすっかり雲の中だ。
鎌ヶ峰との間のコルへの下降とその登り返しがこの縦走路の核心部だろう。尾根の南東側に張り出した雪庇は崩壊が進行中だ。急峻な下降を下ると、雲の中から鎌ヶ峰のピークが姿を現し、急峻な斜面が折からの陽光に煌めいた。
鎌ヶ峰に雪庇の張り出した急峻な尾根を登ってゆくが、山頂が近づくにつれ再び稜線は雲の中へと入ってゆく。幸いにもスノーシューが程よく斜面の雪にくい込んでくれる。今回はチェーンスパイクしか持参していなかったが、雪の状況によってはアイゼンがなければ相当なスリルを味わうことになったかもしれない。
鎌ヶ峰の山名標が設置されているのは地図上のピークから水後山の方に降ったところであった。白鳥観光協会が設置した山頂標には1669mと刻まれている。山名標がある地点はギリギリ雲の下なのであろう。ようやく水後山の姿を確認することが出来る。
水後山への吊尾根を辿ると稜線にはブナの樹が現れる。雪庇には雪割れが多く見られるばかりでなく、所々で雪庇が落ちて灌木が露出していた。水後山は本来は展望が良いのであろうが、生憎、周囲の展望はガスの中である。
雪庇の尾根を下降してゆくと突然、西の空の雲が上がり、小白山と野伏ヶ岳が雲の中から姿を現すが、残念なことに尾根の西側の樹木が眺望を遮る。慌てて水後山に向かって尾根を登りかえすが、見晴らしが効く地点まで登った時には山々は再び雲の中に隠れてしまう。
尾根を下降し、西側に伸びる支尾根の分岐が近づいたところでもう一度、西の空が晴れる。もしやと思い、この支尾根に足を踏み入れると、尾根を少し降ったところで石徹白を挟んで正面に小白山と野伏ヶ岳の展望が大きく広がる。この展望を堪能することが出来るのも樹々が葉を落としたこの季節ならではだろう。午後の光を浴びて輝くこれらの山々の姿はなんとも壮麗であった。その後、これらの山々が雲の中から再び姿を現すことはなかった。
再び尾根を分岐に向かって登り返すと、尾根上には立派なブナの樹林が広がっていることに気がつく。右手には山頂からは石徹白に向かって下降する気持ちの良さそうな尾根が続いている。石徹白から大日ヶ岳を周回するのも良さそうだ。
東側には鷲ヶ岳を眺めながら西側にブナの樹林が続く尾根を緩やかに下降してゆく。鷲ヶ岳にずっとかかっていた雲もついに取れたようだ。
Winghillsのスキー場のゲレンデトップに到着したのは15時半。このゴンドラの営業が15時半だったのでその時間を見計らって来たのであったが、15時半に下を出発したゴンドラが到着するまではゴンドラは運転しているのだろう。ゲレンデの上部にはまだそれなりの人がいる。
スキー場の係員にゲレンデの中に入らないで下さいと釘を刺されるので、ゲレンデのすぐ左手の樹林の中を歩く。もとより圧雪されたゲレンデよりも樹林の中の雪の方がはるかに気持ちい。ゲレンデには頻繁に「林間滑走禁止」とゲレンデから外れることを注意する看板があるが、そんな看板などお構いなしに広々とした樹林の中には多数のシュプールがある。そのほとんどはスノーボードのものであった。
樹林の中には数日前のものと思われるワカンのトレースが続いている。ゲレンデの下にたどり着き、山の上を振り返ると水後山への稜線にも霧がかかっていた。
下山後はのんびりと「満天の湯」の温泉に浸かり、丁度、スキー場が終了した時間と重なってしまったために温泉は大混雑であったが、温泉に浸かっているうちに急速に入浴客が少なくなってゆく。
温泉から上がるとビールを飲みながら石徹白から美濃白鳥へのバスの時間を待つ。満天の湯の入口にバスが通過する予定は18時47分。すっかり日がくれた道を歩いてバス停に向かう。バス停に到着して時刻を確認するとなんと18時49分。しまった!美濃白鳥までタクシーを使うとかなりの高額だろう。
タクシーの電話を調べようとして、スマホを操作しようとした瞬間、暗闇の中から忽然とバスが現れて目の前で停まる。まるでトトロに出てくる猫バスのようだが、実際には石徹白からのバスであった。バスが二分ほど遅れていたのである。
バスに乗り込むと乗客は私のみである。美濃白鳥までは30分とかからない距離であった。旅館の名前を告げると運転手はそのすぐ前で私を下ろしてくれる。
展望を眺めることが出来たのはわずかではあったが、それでも要所で十分に素晴らしい展望を堪能することが出来た山旅であった。そして樹林の林相の良さははるかに期待を上回るものであった。また違う季節にも訪れてみたいと思ういい山だった。
※後日、ヤマレコの質問箱にピッケルの拾得の掲示を出したところ早速にもピッケルの持ち主からご連絡を頂いた。
コメント
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yamaneko さん、今晩は
ひるがのから大日を越えて、檜峠まで横断されたんですね。実は、檜峠のウィングヒルスキー場の近くに、学生時代のクラブの山小屋が有り、レポを懐かしく読ませていただきました。20日は会のメンバーと久しぶりの野伏の予定ですが、今年は雪も多そうですから、3月末か4月初めに芦倉(丸山迄の周回などは体力的に無理ですので、久しぶりのピストンぐらいならいけるかなと思っています)に登ってみたいなと思っている所です。
shikakuraさん コメント有難うございます。
大日はスキー場の喧騒さえ気にならなければ。実にいいところですね。特に林相が予想をはるかに超えた良さでした。shikakuraさんにとっては様々な想い出の詰まった山なのでしょうね。
私も20日か21日に野伏ヶ岳を考えておりました。小白山に向かうか、野伏から北上するかは決めかねておりましたが。ニアミスでなければいいのですが。
山猫さん、こんにちは。
ここは行きたかったところなんです。ルート図を見ていて、どのようなアプローチ?と興味津々で感想を読み進めると… なるほど。ひるがの高原行きの高速バスの件も参考になりました。
まあ、私の場合は軟弱なものでゴンドラ利用なんですけどね。そんなわけで以前調べていたら「クイックライナー」というスキーバスで京都駅から高鷲スノーパークに早朝5:00に着けるので存分に遊べるなと思ったことを思い出しました。
展望を眺めることが出来たのはわずかとのことでしたが、写真を拝見すると絶景写真も多数ありいい稜線歩きが出来たような。
下山後のバス利用というのは不安もありますが、温泉に浸かれる時間的余裕もありいいですね。バスが少し遅れていて幸いでした。
ののさん コメント有難うございます。
ここはゴンドラ利用でも十分に楽しめると思いますし、余裕があれば天狗山と鎌ヶ峰の両方をピストンというのがいいかもしれません。鎌ヶ峰にかけての登り返しがキツイですが、この大日ヶ岳は遠くから眺めるとむしろ鎌ヶ峰のピークの方が目立つんですよね。
クイックライナーは知りませんでした。
展望を眺めることが出来たのは一瞬でしたが、展望は一瞬でも見ることが出来れば十分に思われます
yamanekoさん、こんにちは。
ナオナオです。
YAMAP見てコメントしてくださりありがとうございました。
そして感想の中にも記載していて『キャー』と嬉しく思いました。
素敵な描写と記載で本を読んでるみたいです(笑)
沢山の山行されてるみたいで、他もゆっくり読ませてもらいまぁす。
YAMAPしか見たことなかったので、ヤマレコを見るきっかけともなりました。
ありがとうございました〜。
皆さんの山行見て次登りたい山を日々検討したいと思います。
ナオナオさん コメントどうも有難うございます。
こちらこそ、大日ヶ岳の私の思い出の心のアルバムの中に魅力的な一葉を追加して下さったことに感謝しております。お友達にもどうぞ宜しくお伝え下さい。
私の山行記録はあまり参考にはならないかもしれませんが、過去のレコ(ヤマレコではそう呼びます)がナオナオさんがご存知でない山を知るきっかけになると幸甚です。
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