猪ノ鼻ヶ岳〜西山〜音羽谷☆シャクナゲ渓から新緑の美林に滝巡り


- GPS
- 06:28
- 距離
- 14.8km
- 登り
- 809m
- 下り
- 793m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
シャクナゲ渓(林道)に入るのに環境保全協力金¥400 |
コース状況/ 危険箇所等 |
西山から音羽谷林道への下降は地図上の破線は完全に廃道 沢下りなのでそれなりの難度、また沢は倒木が多く、急斜面のトラバースを強いられる箇所が多い |
写真
感想
昨年、一昨年と花が咲くのが早いと感じていたが、今年は更に早いようだ。日野観光協会のホームページによると鎌掛谷のシャクナゲが週の半ばですでに満開とのことだ。以前、シャクナゲが満開の鎌掛谷にを訪れたのは日野の曳山祭りのついでだった。この祭りが行われるのは例年5月3日なので、以前に比べると10日ほど早いということだろうか。
昨年のhanabanaさんとE-yamaさんのレコを拝見して、猪ノ鼻ヶ岳から西山にかけての尾根を縦走したいと思っていたが、どうせこの猪ノ鼻ヶ岳を訪れるなら鎌掛谷のシャクナゲが見られる季節がいいと考える。
まずは藤の花で知られる正法寺を訪れる。藤の花は満開とまではいかないが、長大な藤棚から垂れ下がる藤の花々が連なる様は十分に見応えがある。訪れた時には他に訪れる客もおらず、静かな境内を独占させて頂く。藤の間を忙しなく飛び回る虫は蜂かと思ったが、案内板には花虻なので刺される心配はありませんと書いてあり、安心する。
シャクナゲ渓、無料駐車場には数台の車が停められているが、昨日の鈴鹿の八風キャンプ場の登山口に比べればはるかに数が少ない。舗装された林道を歩くとまもなく対岸の遊歩道の案内があり、遊歩道に入ると早速にもシャクナゲが登場する。他の人々はみな舗装林道を歩いており、遊歩道を歩く人はいないようだ。
花の季節が早いということは新緑も早いのだろう。遊歩道が辿る広々とした河岸段丘では新緑が美しい。川沿いにはカーネーション椿なる椿の変種の群生が現れる。椿も花期の盛りのようで、樹々の花に近づいてみると、深紅の花の中心部に見られる複雑な襞は確かにカーネーションのように見える。
鎌掛谷に入ると谷沿いにはシャクナゲが数多く咲いている。ここは谷沿いや対岸の斜面に咲いているシャクナゲを眺める趣向らしい。谷沿いの遊歩道はすぐに終わり、柵にロープが張られている。国土地理院の地図では鎌掛谷に沿って尾根まで破線が続いているが、植生保護のために柵から先は通行禁止らしい。
まずは遊歩道の展望地に上がってみる。対岸の新緑の中で星を散りばめたようにシャクナゲの花々が咲いている様子が美しいのだが、写真に収めるには周囲の新緑の鮮やかな光とのコントラストが強すぎて、露出の調整が難しい。
猪ノ鼻ヶ岳の山頂を目指すには遊歩道を鎌掛谷の入口まで戻ってから谷の右岸の尾根に取り付くのがいいかと思っていたが、遊歩道から尾根に直登するのはさほど難しくないと判断して、イワカガミの咲く斜面を登り始める。しかし、この判断は極めて甘かった。まもなく斜面は足元が見えない濃厚なシダの藪に覆われる。
シダをかき分けて右手から登ってくる尾根になんとか登りつめるとシダの藪から途端に解放され、尾根上には踏み跡が現れる。尾根を辿って鎌掛谷の右岸尾根に合流するとさらに明瞭な踏み跡が現れる。
尾根は所々で東側に展望が開け、右手に見える植林のピークはこれから向かう砥山だろう。尾根は自然林が続いているが、倒木や立ち枯れの樹が多く目立つ。よく見てみるとその殆どがアカマツであり、樹肌には数多くの穴が穿たれている。マツクイムシの被害が甚大なのであろう。
尾根をなだらかなに辿るうちに林道と交差する。林道から上は急に踏み跡が薄くなる。頻繁に馬酔木が現れるが、通行を邪魔するほどのことはない。歩きやすい自然林を辿って猪ノ鼻ヶ岳から東に伸びる稜線に出る。
細い若木の自然林の辿ると、すぐに宝殿林道から上がってくる明瞭な登山道と合流する。猪ノ鼻ヶ岳は宝殿ヶ岳とも呼称されるようだ。山頂は低木の樹林に囲まれた地味なところである。近江百山の一つではあるが、がっかり百山と呼ばれてもおかしくないとところだろう。しかし、家内はこのような低木の繊細な樹林が好きらしく、展望もないこの地味な山に一向も不満はない。
山頂から折り返して稜線を東に辿ると山頂の東の小さな鞍部に降りたところで南に樹林の切れ目があるようだ。稜線からわずかに下降してみると途端に甲南方面、あるいは伊賀、甲賀といった方がいいだろうか、大展望が広がる。存在感のある山が少ないので山座の同定が困難ではあるが、果てしなく広がる丘陵の新緑が美しい。
尾根を東側に進むとすぐに左手から登ってくる掘割の古道が現れる。おそらく鎌掛谷の左俣に下降して、南の土山に抜けるかつての古道の名残なのだろう。尾根は新緑の自然林が続いていたが、まもなく檜の植林に変わる。
さらに進むとすぐに南側の宝殿林道が尾根上を走るようになる。歩けるところはなるべく林道を離れて尾根芯の踏み跡を辿る。砥山にたどり着くと丁度12時を知らせるメロディーが左手の山麓から聞こえてくる。山自体は人の気配のない静かなところではあるが、鈴鹿スカイラインが近いせいだろう、山麓から頻繁に聞こえてくる車やバイクの走行音が頻繁に静寂を破る。
砥山のピークは山頂の南側にシロモジなどの自然林が広がっていたが、東に進むと単調な植林の尾根が続く。カメラを一度も取り出すことなく、次のピーク丸茅山に辿りつく。雰囲気のいいところであればここでランチ休憩をと思っていたが、植林の中の殺風景な場所では休憩する気にもならなかった。
ここから尾根は大きく南に大きく向きを変え、ついに林道とも離れることになる。西側は植林が続くが、東側はシロモジの新緑の樹林となり、ようやく山を歩いているという感覚が得られるようになる。小ピークca630mで再び東へと方向を転じるといよいよシロモジの樹林となり、鮮やかな若葉色の透過光に包まれて歩くことになる。右側には音羽谷の美しい源頭が次々と現れる。
ca670mのピークへの登りにさしかかると尾根は大きく広がり、地図には現れない二重尾根となる。この尾根の間のなだらかな谷におけるシロモジの新緑の樹林は今回のコースの白眉だろう。この樹林が鮮やかな黄葉に変わる秋の季節もさぞかし美しい景色が広がることだろう。
ca670mのピークから尾根を少し南西に進むと今度は広いススキの草原が広がる。西山のピークへの尾根から少し外れることにはなるが、このススキの斜面を訪れない法はない。ここでも西側の大展望が広がり、琵琶湖の南湖の彼方に京都の愛宕山、比叡山を望む。視線を右に移すと比良の山々を一望し、さらにその北には野坂の山々の展望が広がる。
ここからリョウブの新緑の中を進むと忽然と東側に展望が開けた尾根に飛び出し、目の前に鈴鹿の山々の眺望が広がる。ついに西山に辿り着いたようだ。綿向山から雨乞山を経て御在所岳、鎌ヶ岳から仙ヶ岳に至る稜線の贅沢の展望を眺めながら、簡単に行動食のランチで休憩する。
西山に端を発する音羽谷右俣の林道に向かって破線が付いている。源頭は極めてなだらかであるが、谷を下降するにつれ急に傾斜を増してゆく。予想してはいたが、地図の破線のルートは完全に廃道となっており、道の痕跡はほとんどない。始末の悪いことに谷には頻繁に倒木の集中が見られる。倒木を潜ったり、斜面をトラバースしながらなんとか谷を下降する。
音羽谷川沿いの林道に出るとここからは無難な林道歩きが続くのかと思いきや、早速にも林道には大きな崩落箇所が現れる。以前の国土地理院の地図ではこの音羽谷の右俣には林道は記されておらず、破線がつけられていたので林道は比較的真新しいのかと思っていたが、廃林道となって久しい印象だ。
林道沿いは青紅葉が美しい。ところどころでまだ花を多くつけた桜の樹も現れる。左俣との出合が近くなったところで林道が右岸へと移る橋の下から滝音が聞こえる。沢に下降してみると滝壺を有する落差5mほどの段瀑が現れた。本日の目当ての滝のうちの一つ目の滝である。
左俣の林道と合流した後の本流にもすかさず滝が現れる。上流の滝と異なり、谷に差し込む日差しが滝の流心を眩しく輝かせていた。
ここからは耶斧岨川に向かうには先ほどの砥山から南に伸びる長い尾根を迂回しなければならないので、かなり遠回りを強いられる。いっそのことこの尾根を越える可能性も考えたが、地図で見る通り音羽谷の左岸はかなり峻険であり、それ以上に高く感じられるのだった。
音羽谷を離れて耶斧岨川に向かう破線のルートを辿る。流れは細く谷を渡渉しながら遡行するのに困難はないが、上流で谷が分かれるあたりに来ると踏み跡は不明瞭となる。意外だったのは上流に大きな堰堤が現れたことだ。どうやってこの谷奥まで堰堤を築くための資材を運び込んだのだろうかと思う。
小さな峠を越えると耶斧岨川側は踏み跡が明瞭であった。踏み跡が渡渉する地点には桟敷の橋が次々と現れるが、到底、今にも折れそうな細い材木の橋を渡る気にはなれなかった。
耶斧岨川林道に出るとすぐに奥の滝の滝音が聞こえてくる。林道から沢に下降しないと滝を眺めることが出来ない。私が滝に下降している間、上で待っていた家内の傍をバイクが通過していったようだ。
滝を後にすると耶斧岨川沿いに歩いてまもなく鎌掛谷の入口にたどり着く。鎌掛谷から戻ってこられた人々の姿がちらほらと目につくが、遊歩道には相変わらず人の姿はない。新緑の樹林の中で西陽を浴びたシャクナゲの花々が繊細な照明器具のように静かに光を放っていた。
この日は前日に比べるとかなり気温が涼しかったようだ。京都に戻り、予約しておいた次男の誕生日のケーキを北山通で購入してから岩倉に向かうと、狐坂の電光表示板は16℃を示していた。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
山猫さん こんにちは。
鎌掛峠? 思い出しました。新名神の土山ICから北上すれば綿向山登山口へ行けるなと考え通りましたが、次は無いな… と思ったルートです。
途中に「しゃくなげ渓」という道路案内板がありましたが、そこなんですね。観光客も歩ける舗装林道もあるんですね。
いいな〜って思ったのが、耶斧岨川渡渉ポイントでの「下流を眺めて」のカット。とてもいい感じです。
ルートは難度も高そうな感じですが、新緑の源頭部や滝もありシャクナゲの季節にいいルートですね。
ののさん コメント有難うございます。
土山ICから綿向山登山口に行かれたのは恐らく県道41号線を通られたのではないでしょうか?googleのナビではこのルートに誘導されましたが、道路崩壊とかで通行止めでした。しかし、この道は入り口から明らかに悪路の雰囲気が漂っており、ここに入らなくて良かったのだろうと思いました。実際にかなりの悪路のようですね。
代わりにその西側を走る県道182号線に迂回することになりますが、こちらは快適な道でした。
この「しゃくなげ渓」は鎌掛谷よりも耶斧岨川沿いの新緑は実に綺麗で、遊歩道沿いにはしゃくなげも咲いているので、舗装林道を歩いてしまうのは「もったいない」と思います。
今回、私達が辿ったルートは確かにアドヴェンチャー・コースではありますが、綿向山のついでにでも立ち寄るのにいい場所だと思います。シャクナゲが咲いていない季節はとても静かなところのようです。
今年は季節が早くて、あっという間にシャクナゲの季節が過ぎて行きそうですね。
ご想像の通りです。県道41号はやめておいた方がいいルートですね。鹿に脅されるわ、舗装はされているんですが車幅+少々の山道みたいなルートでした。
おっしゃる182号は少し遠回りに見えますがそちらの方がいい道のようですね。
ヤマコレを見ていて、今年は季節が早いというのが解りますね。実際家庭菜園の段取りも1〜2週間早くなっています。比良のシャクナゲも全盛期を迎えているようですね。
>県道41号はやめておいた方がいいルートですね
重要な道路情報有り難うございます。下手に入り込まないようにします。
>今年は季節が早いというのが解りますね
昨年、一昨年も早かったですが、今年はそれに輪をかけて早いように思います。
>比良のシャクナゲも全盛期・・・
なんとなんと ‼︎・・・ということは京都北山のシャクナゲはもう終盤かも⁉︎
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する