寒江山から高松峰
- GPS
- 09:42
- 距離
- 19.4km
- 登り
- 1,377m
- 下り
- 2,114m
コースタイム
寒江山 1694m 高松峰1439m
往路 5時間34分
復路 5時間54分
移動距離 22.8 km
総上昇量 2190 m
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
距離は大日杉から飯豊本山のピストンと同じくらいだった。三方境から以東岳を望むとどうしても歩きたくなった。日暮れ沢小屋から三方境までピストンで10時間程度なので日帰りでの以東岳ピストンは15時間余りだろう。3時から歩けば日没までにはなんと戻れるか。日暮れ沢からの車道を暗闇のなかで運転はしたくない。 清太岩山手前の1350mのピークまでの稜線は雪が残っていて、その雪の壁を登るにはピッケルがほしいところだった。竜門山の登りにも残雪が多かったがスプーンカットを利用してつぼ足で行けた。 |
写真
感想
前夜は忘年会とビアパーティを合わせたような宴会で、楽しいお酒を頂いた。目が覚めると2時すこし前だった。水を3杯のんでみた。酔い覚めにはちょうどいいだろう。ピッケルよりはストックのほうが歩みには助けになろう。
日暮れ沢小屋まで根子川沿いの林道を車を走らせると、夜明け前の空に朝日連峰の雪型が浮かび上がった。その映像が私の胸にも響き渡り、からだも浮いたように山に向かう。県外ナンバーをパスして小屋に着いた。1台が駐車。程なくして県外ナンバーも到着。山でお会いしたのは二人だった。小屋に戻る方と、大朝日岳に向かった方だろう。県外のパーティは駐車場でお先します、と別れてからは、会わずじまいで、戻った時には車は私のしかなかった。
4時を過ぎればもう歩くには足下の不安はなかった。まずは、清太岩山まで2時間を目標に歩き出す。今日はのんびりしていてはウスユキソウに逢えないのだ。
残雪から顔を出した落ち葉もすこし湿っている程度で歩き易い。歩き出した時は寒さを感じたが、上に羽織ったフレースはいらなくなった。振り向くと谷間を満たすように雲海が見えてきた。
山道の土は落ちたばかりのブナの葉のように赤みをおびてきた。歩みを進めると自分の影も斜面に映っている。夕べの雨模様が嘘のようだ。早朝のうちに稜線にまで登りたい。雲海は大井沢の谷から根子で広がり、かすかに見え出した主稜線はもう一段上の雲に隠れて見えない。雲に挟まれた私は、雲海の展望と厚い日傘に恵まれ、快適な出だしとなった。
道一杯にタムシバの白い花びらが落ちていて、まだ雪が残っているのかと思う程だった。その花の絨毯を抜けると本当の残雪が待っていた。沢に残る雪はまだ固く、向こう岸まで踏み抜くこともない。でも、垂れた枝が私が通ると弾けて、帽子を飛ばした。ピッケルを持ってきたほうが良かった。アイゼンはザックにあるが、靴のエッジを効かせて登った。ショウジョウバカマが朝露に濡れていた。
もう7月になろうといているが、6時前の残雪は固い。ザックの中には簡易アイゼンはあるが、行ける所まで登ってみる。清太岩山は朝日連峰の主稜線までの最短ルートの第一関門となった。日暮れ沢からの尾根は清太岩山の東西に伸びる稜線を幾分、脇から乗り上げるようにつながっている。稜線への最後の登りは雪の壁だった。稜線のなるべく下の方から取り付くとすると、大きく右にトラバースしなくてはならない。つぼ足のトラバースは自信はない。万一滑っても、下は薮で大きく滑落はしないだろう。キックステップで壁を登ろうとした。
新しい夏靴は底が柔らかく歩き易いが雪面を蹴り込みにくかった。ストックのゴムを外して、左手で氷雪をつかんで、這い上がる。一度は滑り落ちたが、瀧山での新雪の登攀よりは苦労しなかった。私のブログを読んでつぼ足で登る方もいるかもしれない。事故のないことを祈る。
清太岩山山頂の手前には慰霊碑がある。単独登山の中年登山家の私は、慰霊碑の前で己を支えてくれる家族や山の神に無事を祈る。清太岩山山頂は遮る者もなく、ガスがなければ主稜線や目指す寒江山が一望できる。しかし、まだガスは厚く、谷から雪渓を吹き上げる風は冷たい。ザックをおろしてフリースをまた着込んだ。コンビニで買ったオレンジやパインのジュースの甘さがからだに駆け巡る。目標の2時間を17分過ぎていた。雪で手こずったかもしれないが、真夏の暑さでは最もペースは落ちるだろう。それならば、あと1時間早くヘッデンを頼りに歩けばよい。
ユーフンまでの尾根歩きで一人とスライドした。ザックにマットがあった。髭がのびていた。挨拶だけで別れた。ガスの向こうに竜門小屋が見えた。谷間にはガスは下りて来なくて、雪の白さと緑の蒼さがお互いを引き立たせていた。
竜門山までの稜線にはムイヅルソウ、アカモモ、ヒメサユリなど私でもわかるような花が山道を彩っていた。竜門山の雪の手前にコバイケイソウも咲いている。この先、寒江山までコバイケイソウはもったいないくらいに花弁を開いていて、それも、道の真ん中に堂々と茂っていた。
竜門山の雪はまだ解けかかってもいなかった。それでも、黒ずんだ雪は日を多く貰ってツルツルしている。相変わらずつぼ足の私はスプーンカットの凹みに上手く靴底を載せて登りだす。以前に高校山岳部だった女性から石転び沢をつぼ足で登った経験を聞いていた。トラバース気味に靴のエッジをスプーンの底に刻みつけるようにして高度を上げる。滑ることもなかった。
竜門小屋には8時に着いた。水場のポースからの飛沫が顔にかかって気持ち良かった。ガスはいつの間にか薄くなって、袖朝日のゼブラ文様の向こうに飯豊連峰も見え隠れ、HITOIKIついて稜線歩きは続く。
竜門からはお待ちかねのウスユキソウが今を盛りに咲いている。有名なのだが、先週の月山で今年のお初を見ていたので、それよりは相模山の雪型に見とれてしまう。寒江山は9時前に到着。ここで予定を変更して三方境から天狗角力取山までの尾根までお散歩することに。折り返しは11時まで。フリースは竜門小屋で脱いだが汗ばむ程でない天候が何よりだった。寒江山の頂きを越えると未知の空間に痺れてしまった。狐穴小屋が見えると以東岳は山頂を雲に隠し、全貌はまだ見せない。それまでの天に登るような尾根は霧に洗われて、緑が一段と鮮やかに見える。
高松峰までは地図で見るとほとんどが下りのようで、わずかに頂きが見えるくらいだ。南側は切れ落ちているのが目標だ。去年に歩いた障子ヶ岳から二ッ石山もよく見えた。その遥か向こうには先週登った月山も見え隠れする。そんな痩せ尾根を下ると以東岳の頭にあった雲も消えていた。
以東岳のどっしりとした山容はエズラの双児峰に取って代わる。二つ高まりは女性の乳房よりは相撲取りの力瘤を連想させる。高松峰山頂にはなんの標識もないが、朝日連峰の北の臍のような存在だった。以東岳から大朝日岳の主稜線を西に、東にはメバラメキ、コバラメキ、二ッ石山、ウツノシマ峰、天狗角力取山、障子ヶ岳が見渡せる。6時間近くの歩きを終えて、早めの昼食にした。
チングルマは花を落として、ツマトリソウは清楚に咲いている。兎のような愉快な大石が以東岳に向き合っている。踏み跡がわずかに残っていた。三方境までもどると相模山が気になり出した。善六池までとはいかなくても三方池まで寄り道した。池からの見る以東岳は西の方にも裾を伸ばしていた。ここで折り返してヒメサユリロードを楽しむ。
北寒江山から主稜線の太い帯の頂点に大朝日岳の鋭峰があった。同じ道を今度は、北から南へと縦走すると、展望が新しくなる。竜門小屋には遅くとも1時には着きたかった。2度目も寒江山頂上でも相模山を右に見ただけで歩き続けた。日差しが強くなってきて、雪渓から流れ落ちる水を頭から浴びたかった。
竜門小屋でタオルと帽子を濡らして頭を冷やした。小屋で2度目の昼食と暫しの休憩をさせて頂いた。日暮れ沢小屋まで3時間が最後の目標だ。
清太岩山までの尾根で何度も今日歩いた稜線を振り返った。途中に雨が落ちてきた。明るいのにどこに雨雲があるのか、と天を仰ぐ。目眩がした。
清太岩山からの最後の下りの道には登りにはなかった、目新しいトラロープや赤布があった。雪の壁があった所も夏道の入り口に赤布があったので、それと目がけてシリセードした。うまい具合にストックで方向がコントロールできて嬉しかった。
日暮れ沢小屋近くになって小走りになった。目標の3時間ちょうどだった。
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