ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 320899
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
関東

日本百名山計画『富士・上信越シリーズ』

2003年07月17日(木) 〜 2003年07月26日(土)
 - 拍手
過去天気図(気象庁) 2003年07月の天気図

感想

昔書いていたホームページのバックアップより。タイトルは富士・上信越となってるが山形県朝日岳にも登っている。連日の雨だが、2003年中に終わらせる気満々である。



日本百名山計画『富士・上信越シリーズ』


--------------------------------------------------------------------------------


いきなり富士

2003年7月17日木曜日夕刻、待ちに待ったツーリングが幕を開ける。
気がかりなのは、未だ梅雨が明ける気配のないことだが、
もはや今秋中に百名山計画を完遂するぞ!との決意は固く、
この休み中に北ア以外に残った9つの山すべてを制覇するつもりである。
雨が降ろうが槍が降ろうがこの決意は変わらない。


20:00にはガレージを出て走り始めた。
スポに乗るようになってから高速道路を走ることが多いが東名を
走るのは今回が初めてだ。なんとなくだが、東名のSAって豪華な
気がするのは俺だけだろうか。


1日目、18日。富士ICで降り、富士宮口を目指して走る。
薄くかかったキリを突き抜けると朝日を背にうけた富士の黒々と
したシルエットが浮かび上がった。


4:50登山開始。去年10月以来の(本格的な)登山のせいか、
夜通し走ったせいか、腰が痛い。しかし、日ごろから鍛えている為か
ペースは速い。いつものごとく前を行く登山者を次つぎと追いぬいていく。
天気は悪くはない。といっても良くもない。


途中「強力」と思もわれる男性がパイプ状の資材を担いで登っているのを見掛けた。
今はもう重機だのヘリを使って済ませるものと思っていたので意外だった。


火口のふちには7:20頃に着いた。なぜだか急に走りたくなった。
「うりゃ〜日本一の高地でジョギングじゃ〜」
めったにできぬ体験である。馬鹿だね〜。周囲の登山者からの視線が痛い。


山頂には7:30に到着した。
そこに居た若いアベックにシャッターを押してもらって記念撮影。 このアベック、そうは見えないが実は新婚ホヤホヤの夫婦だったのだが、 嫁の方はダンナをダーリンとか呼んでるバカ夫婦だった。 どこか吉本新喜劇の一場面でも見ているようだ。
この夫婦と1時間ほども話しこんだあと、火口を一周して下山した。





10:50には五合目に戻ってきたが、そこは女子大生の御一行数百人でごったがえして
いて、着替えるに着替えられず。。。


日本一の山を征して意気揚揚、富士でのもう一つの用事にかかる。
正月休みにお世話になった自転車屋「サイクルセブン」にご挨拶にうかがうのだ。


ところが微妙に場所がわからない。住所はあらかじめメモしてきていたものの
以前に来たときは店の車に乗っていたせいか記憶が定かでない。
仕方なくガソリンスタンドで給油がてら道を尋ねるとその角を曲がると目と鼻の先だった。


妥協の浅間

少し懐かしい話をしたあと、舵を北にとる。
R139はオウム騒ぎがあったころ富士一周ツーリングをして以来だ。


甲府へ抜けさらにR141を小諸へと急ぐ。コンビニで地図を確認していると
ポツリポツリと降り出した。
小諸にある車坂峠が次のターゲット黒斑山への登山口となる。
ちなみに黒斑山は百名山ではない。本当なら隣にそびえる浅間山を登りたいところ
なのだが、あいにく浅間は火山活動のために登山禁止なのだ。
そこで浅間とそれほど高さの変わらない浅間の外輪山である黒斑山を代替の山として
登ることが百名山登山を志すものの間では一般化している。


一昨年は浅間山の火口の一部である前掛山まで登山できたのだが、
去年は前掛山はおろか黒斑山でさえも登山禁止となっていた。
それが今年になって解禁されたのだ。今登らずして何時登る!


車坂は濃い霧に覆われた。ヘッドライトに照らされ視界はゼロといっていい状態だ。
なんも見えん。おそるおそる10km/hにも満たない低速でようやく峠に着きはしたものの、
あまりの霧の濃さとシトシト降る雨のせいでキャンプ地を探して歩く気にはなれず
峠のテッペンの道端でテントをかまえた。どうせ明日一番で撤収するのだし、かまうまい。
こうして二日ぶりの眠りについたのでした


2日目、19日。パツっパツっパツっという雨粒がフライシートをたたく音で目覚める。
晴れてほしいという甘い期待はみごとに裏切られた。これでは浅間は見えまいな。
朝っぱらからテンション低調のままテントを撤収する。


近くの公衆トイレで小用を済ませて戻ってくると一人のおじさんが登山口を偵察に来ていた。
「登られるんですか」
声をかけてみる。
「ええ」
「どのくらいかかると思います」
「往復4時間くらいかと・・・」
「そんな早く行けます?」
「え、黒斑山ですよね」
「いえ、浅間を・・・」
「登れませんよ。っていうか、登る気だったんですか?」
知らないっていうのは強い。
俺が蛮勇ふるいたくても越えることのできなかったハードルをいともアッサリ越えている。
にしても、ここは黒斑山に登るには最短のルートだが、浅間を登るにはちと遠い。
確かに浅間までルートは通じているものの山一つ越えていかなきゃいけない。
それに雨と霧でコンディションは良くない。
と、そんな内容の会話をしてるうちに、おじさん不安になってきたのか
「いっしょに行きましょう」とか言い出した。
あくまで俺は黒斑登山のつもりだが、今日はこの山1座きりの予定だし
たまにはのんびり登山も悪くはないか。
おじさんの身支度の整うのを待って5:45の出発となった。


始めはなんやかんやと話をしながら歩いていたが次第に無口になった。
話題が尽きたというのもあるが、おじさんには俺のペースに付いてくるのが
やはりキツイらしい。と言って、俺が情け容赦なく飛ばしているかというと
そんなことはない。俺にしては相当スローペースなのだ。ま、やむをえん。
富士山ですらノンストップで歩きつめた俺であるが
「休みましょうか」などと気遣ってみる。
おじさん、安堵の表情を見せる。


休むと雨で濡れた体が冷えてそれはそれでつらい。
「そろそろ行きましょうか」
瞬時暗くなるおじさんの表情。なんて分かりやすいんだ。
仕方なくもう少し休んでからの最出発となった。


山頂には7:50についた。案の定、浅間山はこれっぽちも見えず、 これで浅間を登ったことにしていいものか、一抹の不満を感じつつ 峠の登山口へと戻ることにした。おじさんも結局、浅間登山は断念し、 いっしょに峠へと戻ることにした。


峠には割と立派なホテルがあった。
ここでお風呂をいただくのが下山中の楽しみだった。
なにせ体が冷えて仕方がない。これで夏か、ホントに。


峠には9:00頃に着いた。早速ホテルのフロントに出向いて尋ねると
10:00から清掃が始まるがそれまでならかまわないとのこと。
おじさんと二人でのんびりと朝風呂を楽しんだ。いや、気持ち良かった。
おじさんとはここで別れた。


意外な高妻山

さて俺は高妻山のある長野県戸隠へと向かう。
今回の旅の予定には組み込んでいなかった山だが、
地図で見れば遠くなく、盆休みに少し余裕を持たせたいとのねらいもあって
今回登ってしまうことにしたのだ。


高妻に向かう道中次第に天気は回復し、R921のTシャツでバピューンとかっ飛ばして
登山口の牧場へとやってきた。今晩はここに併設されているキャンプ場で泊ることにした。
夏のキャンプ場などは登山者には鬼門であるが、登山口に最も近いのだから是非もない。
しかして予想どおり、宴会キャンパーのバカ騒ぎのためなかなか寝付けず、
イライラをつのらせつつ眠りに就いたのは10:00過ぎだったと思う。


3日目、20日。それでも朝4:00には目が覚めた。普段の寝坊助とは別人のようだ。
テントを出ずとも分かる。雨は降っていない。外に出て青空を確認して
出発準備に掛かる。4:50出発。前回去年のGWに一度チャレンジした山だが
その時は途中に道を間違って断念したのだ。
その時どこでどう道を間違えたのか確かめようと、周囲をキョロキョロと
見回しながら進むがGWのころとは葉の繁り様がまるで違う。
とても同じ山道とは思えない。
しかし、滝にかかる鎖場に至って前はここまでは来てないと分かった。
残雪の時期にこんな危険なところ登っていない。


しかし、そこを越えさらに少し登ったところでGWにこの山を登るなど 所詮シロートには無理だったのだと思い知った。 切り立った崖に鎖が点々と等間隔で縦にぶら下がっている。 靴がやっと乗るほどの幅しかない足場はあるものの、苔むし、濡れているし、 微妙に谷底側へ傾斜している。足をすべらせたが最後50メートルは落ちる。 そんな崖である。 おそるおそる、ヘッピリ腰で何とか通過したものの、 帰りにももう一度通過するのかと思うと気が重かった。


山頂には8:15に着いた。例のごとく証拠写真を何枚か撮っているうちに
撮った画像がおかしいことに気が付いた。像が薄い。透けている。
2度3度撮り直すが同じだ。
ふと、もしかして、俺ってさっきのあの崖で死んだんじゃ?
とか不吉な考えが浮かぶ。
で今、量子物理学の言うところの「シュレディンガーの猫」のような
半死半生のような状態で、生きている自分が死んでいる自分を見ているんじゃ?
とかオカルトっぽい考えと科学っぽいことを取り混ぜた変な空想してみたり。
あとでPC画面で見直せば、どうもレンズが曇っただけ・・・かと思う。


例の崖を再び通過し下山してきたのは11:30ごろだった。
登山口付近には朝にはいなかった「登山相談所」なる仮設テントが出来ていた。
なるほど、あんな崖に素人が安易に踏み込めないようにここで食い止めようと
いうのだな。
と、覗いてみると若い女性が独り番をしていた。
「もう、行ってらしたんですか」
と彼女の方から声をかけてきた。すごい美人だ。
訊くと自給¥800の有給ボランティアだそうだ。
「じっとしてるだけで。おいしい仕事やなぁ〜」
と言うと
「なかなか、成り手がいないんですよ」
とのことだった。
通り過ぎてから写真撮ってこなかったのが悔やまれた。
それほどの美人だった。





雨の苗場

高妻山をあとにし、野尻湖の周りをグルっと一周したあと向かうは苗場山である。
苗場には東からと西からの2つの選択子があった。スキー場として名の知れた東側の
新潟県湯沢から登るルートと長野県栄村秋山郷から登る西側のルートである。今回は
秋山郷から登ることにする。
地図で見、実際に行ってみて思うに、この秋山郷って土地。
絶対新潟県に組み込むべきだと思う。
だってまともな道で長野と繋がっていない。
人里とまともな道で繋がっているのはR405のみだが
長野県側に通じていないのだ。津南からそのR405に入り、
途中温泉に浸っているうちに、また雨となった。土砂降りである。


くねくねとうねる断崖絶壁の1車線道路を雨の中走るのは
あまり楽しいことではなかった。
その日は登山口にほど近い自称「オートキャンプ場」にて幕営した。
昨日の高妻よりはよほど良い、静かな(寂れた)キャンプ場であった。


4日目、21日。雨で目覚める。
実は当初の予定では苗場と谷川はダブルヘッダーで片付けるつもりであったが、
目覚めとともに「今日は苗場のみ」と相成った。
ここにくるまでの悪路をまた雨の中、
時間に追われて走るのはあまりに危険との判断である。


苗場の登山口はオートキャンプ場前の林道をさらに進んだ突き当たりにあった。
ガイドブックによれば、ダートとなっていたが実際には全体の9割は既に舗装ずみで
さほどの難もなく登山口に到着した。
登山口といっても三合目である。多少のうしろめたさがある。
雨でヌタった登山道にはうんざりしたが、これといって難しい箇所もなく
鎖があるといってもその必要を感じないという程度のものであった。


山頂付近の湿原はきれいだったとはいえ、雨の登山はつらいばかりだ。
苗場がいい山なのに違いないが、残念なことに俺にはよい印象が残らなかった。

それと・・・なぜが傘をさして登る輩をやたら見かける。
難しいところはない、と書きはしたが、どこぞの山と違って木道オンリーということも
なく、それなりに悪路だ。ナメるのもホドホドにしろよ、とか思った。


苗場は6:00登山開始で山頂には8:00、下山してきたのは10:00といった具合だった。
もう雨はうんざりだったが、この後も容赦なく降り、持ってきた服の過半は
既に濡れるか汚れるかしてしまっていた。
近々コインランドリーの世話にならざるえないだろう。


魔の谷川

苗場から津南に戻り、峠を一つ越えて関越道へ。


SAでデジカメのバッテリーを充電するとともに場合によってはここで一夜を明かす
つもりだった。バッテリーは全部で4つ持ってきていたが、どういう訳か消耗が早い。
SAのどこで充電するかと言えば身体障害者用のトイレだ。ここならまず間違いなく
サービスコンセントがあるはずだ。思ったとおり確かにあった。
順調に3つまでは充電できた
ものの最後の一つでトラブルが発生した。そろそろできたかと覗きに行くと、
なんと無くなっているではないか。慌てて周囲を見渡すと掃除のおばちゃんを発見!
もしやと思い尋ねると案の定であった。


ここのSAは残念ながら野宿には適さなかった。仕方なく次の山、谷川岳の麓目指して
夜の関越道をひた走った。


5日目、22日。谷川の麓には未明2:00に到着した。
もはやテントを設営するものかったるいのでロープウェイ駅の軒下で寝袋にくるまった。
4:00には目覚め、4:50登山開始。月が見える。晴れているようだ。
谷川岳といえばかつて「魔の山」とも言われた遭難の多い山である。
よくよく思えば昨日苗場とダブルヘッダーを企むなど
雨が降ってなくとも十分に無謀なことだった。
しばらく樹林帯の急登をかけあがる。
既に体力は出来あがっていて、若干息はきれるものの
ふとももにも、ふくらはぎにも疲れがこない。
一切休憩することなく一気に「ラクダのコル」まできた。
コースタイムどおりなら2時間50分かかるところを
1時間10分で到達するという離れ業である。
ここからは岩場にへばりつくような急峻な登りとなる。
山頂なであと少しとせまったところで眼下にヘリの爆音が聞えてきた。
見るとヘリがなにやら俺がここまで登ってきた登山道の上を行ったり来りしている。
遭難者でも出たのかな?
ていうか、今日ここまで登ってくるあいだに誰にも出会ってないぞ。
平日とはいえメジャーな山でこうも人に会わないのは珍しい。
もしかして、山にいるの俺独りだったりして。。。
えっじゃあ何、遭難者って俺?
まさかな。まだ入山して2時間だぜ。
とはいえ、「ヘリ 1回飛んだら150万」とか言うし。
ちょっと心配になったりもする。


7:15にガイドブックで紹介されているコースの最高点「トマノ耳」に到着した。
しかし、谷川岳の「2つ耳」のうち、より標高が高いのは「オキノ耳」である。
なぜ「オキノ耳」へのコースを紹介していないのだろう?
危険なコースなのかとも思ったが行ってみればどうということもない道だった。
7:25「オキノ耳」到着。
4時間30分かかるコースをわずか2時間半で制覇したことになる。


しかし下りは慎重に歩を進めた。なにせ魔の山である。
途中、岩場に花と線香が供えてあるのを見つけた。
過去この岩場で誰かが亡くなったらしかった。
恐るべし谷川。あなどるわけにはいかない。


難関皇海山

登山口に戻ってきたのは9:35だった。
まだ朝である。次の山を、と考えるのは当然だろう。
体力にも余裕があった。
皇海山は沼田から40キロほどのところにある。
谷川と沼田も高速道路を使えばすぐ目と鼻の先だ。
問題は皇海山の登山口にいたるまでの林道が
20キロにおよぶダートだとおいことだ。
ゆっくり1時間くらいかければなんとかなるか、
と算段した。山自体は谷川と比べればなんということもない。
コースタイムどおりでも4時間ほどだ。
12:00に登山開始しても十分明るいうちに林道を脱出できるだろう。


こうして性懲りも無く再びダブルヘッダーを目論み関越道を南下した。
沼田ICを降り、やる気満々で走っていると、
前方に黒々とした雲が現れたかと思うや、
あっというまに土砂降りの雨となった。
しばらくコンビニで雨宿りしているうちに小降りになりはしたが、
一気にモチベーションは落ちた。
この雨の中ダート走行などオレの力量ではムリというものである。


ダブルヘッダーをあきらめると時間がたっぷり余っている。
一路、沼田に引き返す。するとどうだ。路面が乾いているじゃないか。
馬の背で分ける、とは良く言ったものだ。
沼田市内の本屋で時間をつぶしたあと
再び皇海山方面へと走る。
この日の登山はあきらめたが、やはり登山口近くに泊った方が
効率がいいには違いない。
地図によれば皇海山への林道入り口近くに温泉とキャンプ場が隣接してある。
吹割温泉は湯自体は悪くないものの貧相で、
施設、サービスとも中の下といった感じでおすすめできないものの、
フロントのおばちゃんから皇海山に関する有益な情報が
得られたので良としよう。


キャンプ場もこれまた貧相でおすすめしない。
その上管理人の態度の悪さはほんの2、3言かわしただけで嫌気がさすほどで、
こんな男にたとえわずかでも利をあたえてなるものか、
とそそくさと退散することにした。
行き場を失いコンビニで地図に目を落としていると
サラリーマン風の男が話し掛けてきた。
やはりハーレーを所有しているらしく、
しばらくバイク談義に花を咲かせる。
結局その日は赤城道路の北端に位置する薗原湖の湖畔にテントを張り眠りについた。
何もないところだったが、さっきのキャンプ場の数百倍も居心地がよかった。


6日目、23日。


皇海山へ通ずる栗原川林道はうわさどおりの悪路で、その悪路を早朝から雨の中、
荷物満載の我がスポで走るのはやはり相当スリリングだった。
距離にして20キロ、1時間におよぶ苦闘の末、
ようやく登山口のある皇海橋にたどりついた時にはスポは見るも無惨な有様となっていた。








山自体はどうということもなく、7:20登山開始9:00登頂と順調にこなし、
10:35には無事下山してきた。無論これから林道の復路に挑むのだ。
復路は主に下りとなり、往路よりもさらに難度が高い。
何度となくフラつきなりながらも幸運にもなんとか転倒することなく
11:50、百名山計画随一の難関を繰りぬけた。


巻機 氷との戦い

次の山、巻機山へ向かう為、再び関越道を北上した。


巻機への登山口はまたも行き止まり国道R291の終点付近にあった。
しかし前のR405と違いは路幅は十分過ぎるほどある2車線道路で
交通量は皆無。快適な路線であった。にもかかわらず、後で聞いた話では
この道路で警察がなにやら検問していたという。なんだろ?


登山口には駐車場と銘打った単なる空き地があった。
「バイク300円」とあるが徴収人はいない。車はおろかオレ以外には誰もいない。
また、すぐ傍には「幕営禁止」との看板もあるがあっさり無視して
テントを設営した。


7日目、24日。天気予報通りに夜中には土砂降りだったが、同じ予報で
50%と言っていた割には雨は降っていない。
5:50。登山口には登山禁止ルートや登山者へ注意を喚起する
看板の類が多数見受けられたがその全てを無視して前進した。
7:00ころスリッピーな岩肌の脇を鎖をたよりによじのぼると、
次に待っていたのは雪渓歩きであった。
しまった。アイゼンなど今回の山行では不要と思い持ってきていない。
しかも、ところどころポッカリと深い穴が開いている。
雪の下には空洞が出来ていていつ崩れても不思議でない状態だ。
いわゆるスノーブリッジである。





地図ではルートは沢の底をまっすぐ1本尾根まで伸びているだけなので迷うことは
なさそうではあるものの、本来の登山道は雪の下で、その雪の上を歩くには危険
すぎる。不安定なスノーブリッジでもあるし、バリバリに凍った傾斜のある雪面は
とてもアイゼン・ピッケルなしで歩けるものではない。
やむえずU字に切り立った側面の壁をへばりつくように進む他はない。
楽に登れると思っていただけに精神的ダメージは大きい。
しかし、幸いなことに空はピーカンに晴れている。
こんな青い空はこの旅出て以来初めてだった。
この時は梅雨が明けたかと思ったものだ。


壁面との戦いが終わると次は急な雪の坂道が待っていた。
いよいよアイゼンがないことがくやまれる。
スプーンカット状にカチコチに凍った雪の表面は
折からの強い日差しを受けて融け、ツルツルとよく滑る。
右手には木ぎれを杖代わりに左手には鋭く尖った石をピッケル代わりに
持って恐る恐る一歩一歩前進する。
しばらく登って降りかえる。
高い。
ワンミスで谷底まで滑り落ちそうだ。


なんとか雪渓区間を超え、尾根に上がるとそこは正に夏山。
目にもさわやかな高原の緑がひろがっていた。


しばらく歩くと頭の剥げたおっさんが一人メールを打っていた。
その脇には山頂を示す道標が立っている。しかしおじさん曰く
「ここは山頂じゃないよ。ホントの山頂はもう少しむこう」
とのこと。じゃこの道標はなんなのよ。
足元にはもう一つ「巻機山」と刻した木切れが置いてある。
「本当の山頂」には何もないらしいのでこの木切れを自力で運んで
そこで記念撮影することにした。
しかしこの木切れが意外に重い。
約10分後、周囲を見渡すとおそらく一番高い?らしい場所に着いたが
何もないのでここが「本当の山頂」なのかどうか確信が持てない。
もう少しむこうに同じくらいの山がある。
あっちがそうかも?とか迷っているとそっちの方から歩いてくる人がいる。
若い男性である。その人がこっちまで歩いてくるのを待って尋ねてみると
やはり、ここが「巻機山」の山頂だということだった。
ここでようやくにして恒例の記念撮影を済ませた。
なぜ「本当の山頂」に何もなかったのかは謎である。



この人は俺と同い年らしいかったが、やってることがすばらしい。
各大陸の最高峰を登っているというのだ。
特にキリマンジャロを登った時の話は鮮烈で「目指せ世界」とか思ってしまった。
結局この人とは登山口まで道連れとなっていろんな話ができた。
すごい人がいるもんだなぁ。と思った。


下山後、湯沢の名物「へぎ蕎麦」なるモノを食してみた。
「へぎ」という木の箱に盛られているということ以外とくに述べることもなし。
しかし、一人前の量は思いのほか多く、二人前も注文したのは失敗だった。


魚沼駒ケ岳 雨の強行登山

この日は魚沼駒ケ岳の西側の登山口近くにある越後三山公園キャンプ場で野営した。
テントを濡らしたくなかったので炊事場の屋根の下に張るという暴挙に出てみたり。


8日目、25日。今日も雨。目覚めてすぐテントの外を覗くとヘッドランプを点けて
出発する一団がテントの前を通り過ぎるところだった。急ぎテントを撤収し、
歩き始めたのは4時半だった。


しかし、歩き始めて10分。思いのほか、平坦な林道が続く。
これならバイクで行ける!とばかりに引き返し、またもスポでの林道走行に挑むことにした。


だがこの判断は誤りであった。先へ進むにつれて荒れるのは林道の常。
百名山最難関のひとつ皇海の林道をこなしたことで少し思いあがっていたに違いない。
皇海の林道よりも距離こそ短いものの、
その轍の、砂利の深さはこちらの方が遥かに上だった。
何度かリアを滑らせたものの運よく転倒はなんとかまのがれ、ことなきを得た。
途中、落石・倒木・残雪と並み居る障害物をクリアしてようやく十二平に辿り着いた。


そこでさっきテントの前を通り過ぎた一団が身支度を整え、
いよいよ登りはじめるところだった。


少し言葉を交わす。なんでも今この山で21日下山予定の男性が遭難中らしい。
21日。今日はもう25日だ。かわいそうに。もう助かるまいな。ちょっとビビる。
雨はまだ降っている。リーダーと思しき男性が
「この山、きついで」
とアドバイスをくれる。バイクで登山口に乗り付ける単独行の素人と見られたようだ。
素人には違いないわな。
「平気ですよ、きついのはイッパイこなしてますから」
と言い残して、彼らより先に登り始めた。5:00。

反発もあってか普段にも増してペースが速い。
それが災いしてか、登り初めてすぐに右足の膝裏の筋を痛めてしまった。


第一目標は十二平から140分登ったところにある三合目「力水」である。
コースタイムどおりに登って2時間20分だから俺のペースなら1時間半も登れば
「力水」に到達できると踏んで黙々と急斜面を登る。
しかし中々それらしきポイントが現れない。現在位置を示す道標の類も一切ない。


地図どおりに登山道は尾根づたいに伸びているし、
分岐もないから間違ってはいないとは思うが、
霧雨で周囲が見えず、ついさっきの遭難話を思いだし不安になる。


2時間登ってようやく道標発見。「忘我峰」とある。
ガイドブックによればなんと既に七合目だ。
コースタイムどおりだと4時間50分の地点である。
名からすれば絶好のビューポイントなのだろうが、
今は何も見えない。

そこから30分から登って標高2003メートルの山頂に着いた。
ここでも霧雨のため全く展望がなく記念撮影だけして、そそくさと下山にかかる。


十二平で出会った一団とは「忘我峰」ですれ違った。
「もう(山頂に)行ってきたん!」
「速ぁ〜」
と驚嘆の声が上がる。
行きしなにアドバイスをくれたリーダーはバツが悪そうだった。

十二平に辿り着くと、いつもどおり時間の記録を兼ねた記念撮影をしようと
カメラを取り出す。カメラをスポスタに向け液晶ディスプレイを覗いていると
ナニかがスポの向こうにいることに気が付いた。
肉眼で見てみるとそれはカモシカだった。
フレームを合わせることもせず、慌ててシャッターを切る。
ちゃんと2枚目を撮ろうと液晶を覗くがカモシカは茂みの奥へと走り去るところだった。




地震?山形県朝日岳

魚駒下山後、朝日岳に向かう移動中も雨は止まず。
初日を除けば今回の計画の中で最も長い移動となる。
連日の登山と雨ですでに疲労困憊している。
山形県小国町に入ったところで温泉休憩を入れた。
温泉を出たあと朝日の登山口を目指すべきだったが、
折角温まったあと、雨の中走る気になれず、夜、閉館になるまで、
温泉施設で休んだあと近くのキャンプ場の駐車場で野営した。


未明、登山口を目指し移動にかかる。
予定では朝日岳の東側から登る予定だった。
しかしここで問題発生!ガソリンが足りない。
登山口は林道の奥にあって、残っているガソリンの量では
登山のあと林道を脱出するには、ちと足りない。
スポをチビタンクにしたことが悔やまれる。

朝、まだ早く開いているガソリンスタンドは見付からない。
R113からR287へ北上、登山口を目指しながら、ガソリンスタンドを探す。
林道入り口へ向かう分岐に至っても開いているガソリンスタンドは無く、
仕方なく最も近い町、寒河江を目指すことにした。
結局、寒河江の山形自動車道近くに開店準備をしている店を見つけ、
開店には少し早い時間だったが無理を言って給油してもらった。

寒河江からだと東側の登山口より、北側の登山口の方が近い。
登山後、秋田港からフェリーで帰ることを考えても
北側からの方が都合が良さそうだ。


時間もかなりロスしていたので月山まで山形自動車道を使うことにした。
この選択は失敗だった。 高速入り口で、停車しようとして、何故か、転倒した。
何が起こったのか全く分からない。グラっ来たかと思うと気が付けば、
入り口のチケットを発行するブースに激突していた。
油でも踏んだのか、雨で滑りやすくなっていたのか。
体に特に問題はない。駆け付けたおじさんに手伝ってもらってスポをお越す。
幸いブレーキレバーもブレーキペダルもステップも折れてはいなかったが
ハンドル周りのコントロール類が上にグルッと回ってしまっていた。
多少操作しにくいものの走行には問題なさそうだ。

しかし、実際走ってみたあとになって気がつくのは、
この区間、高速使う価値が甚だ薄い。
下道走っても多分ほとんど変わらなかったと思うとナントもうまくない選択だった。

月山で降り(というかここまでしか高速が通ってない)
そこから県道を南下して、小寺鉱泉の登山口を目指す。鉱泉とは温泉のことで、
東側の登山口には朝日鉱泉というのがある。
また雨の登山になることは避けがたいようだったので、
この小寺鉱泉に期待していたが、見るからに古びたその建物を見て、
他に温泉まで走ろう、と思った。

登山口の駐車場には数台の乗用車とバスが停めてあった。
バスの中には運転手が独り待機している。
ツアーの連中が来ているのだ。俺は正直、ツアーで登山に来る連中が嫌いだ。
人間、徒党を組むと羞恥心と責任感を喪失する。登山道の真ん中で平然と休んだり
絶好の撮影ポイントを陣取って動かない。何十人もの集団の中には登山経験の
ない者も多く含まれ、そういう連中の装備は見ていて危うい。

このツアーの連中にはほどなく追い付いた。予想どおりに雨の中、
Gパンにスニーカ姿でコンビニで買ったかのような透明にビニール傘を差している
人が長い列の中に2,3人含まれている。
この密集した行列では、みんな前を歩く人の踵ばかりを見て、ただ歩いているだけだ。
すべては人まかせ。この雨の中、こんな登山をして何か得るものがあるのだろうか。

とは言え本来の景色が見えないのは俺も同じ。徒労感はつのる。
小朝日を越えた頃から強風が吹きはじめた。しかも冷たい。
今が夏であることを忘れそうになる寒さだ。手がかじかむ。
無防備に晒された耳が痛い。


大朝日岳山頂でかじかむ手でのカメラ操作に苦労しつつ、
なんとか記念撮影を済ませ、急いで下山する。
今回の登山で予定した山すべてを登破した。通算92座目!

下山してくると駐車場付近で草刈りをしているおじさんが話しかけてきた。
「地震どうやった?」
へっ?全然気が付かなかったが朝7時ころに地震があったらしい。
結構大きい地震だったらしいが、全然気が付かなかった。
昨晩にも結構大きいのがあったらしいが全然知らなかった。
このおじさんとしばし弁当とかご馳走になりながら世間話をしたあと、 秋田へ向けて、帰途に着いた。


庄内平野の向こう、日本海には待望の青空が広がっていた。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:338人

コメント

まだコメントはありません
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら