森吉山 静かな湿原と森を辿る (コメツガ山荘〜山頂〜黒石川林道)
- GPS
- 06:56
- 距離
- 17.1km
- 上り
- 1,031m
- 下り
- 1,027m
コースタイム
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
下山の黒石川林道は、割沢森北東の沢付近で崩れている個所があり、通行止めになっていた。林道そのものは荒れておらず、1キロ半ほどで舗装道路に出た。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
すべてしっかり整備された道です。道標もあり。ヒバクラ岳下の分岐から小池ケ原〜割沢森〜高場森への道はあまり歩かれていない感じでしたが、藪のうるさいところはありません。 森吉山から山人平へ下る途中で残雪が一か所、5mほど。 shun-sさんとcitrusさんによる、2年前のレコを参考にさせていただいた。感謝します。http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-119421.html |
写真
感想
森吉山へ登ったのは何年ぶりだろう。たぶん20代の頃、職場の仲間と登った時以来だ。
初めて登ったのは大学3年の秋、山に登りだして間もなくのことで、その山旅は今でも強く印象に残っている。父の車を拝借して出かけ、泊った阿仁中村の民宿旅館にはシャワーは無く、かなり古かったこと。翌日はクマに怯えながら、草の覆いかぶさった長いコースを登ったこと。コメツガ山荘に下山し、分校のような広い小屋に一人泊まり、翌朝は様田集落までの長い林道をひたすら歩いて下ったこと。様田からはバスに乗って、さらに奥の太平湖、そして遊覧船に乗って小又峡散策へ。ところがバスで帰ろうとしたところ、その日は運行していなかった・・
茫然とする私に、レストハウスにいた地元の人が、車に乗せていってやろうと声をかけてくれた。そのオヤジさんは、阿仁前田からの列車時刻に間に合うようにと、車一台通るのがやっとという細く曲がりくねった道を、猛然と飛ばす。もしも対向車があったら事故必至という運転だったが、幸い対向車はなく、無事に阿仁前田の駅に着いた。距離は20キロぐらいはあるのだろうか。途中でオヤジさんの住所・名前を聞いてメモし、後日、礼状を書いた。今は亡き母にお礼の品を用意してほしいと頼んだが、贈ったのは、いただき物のシーツだったと思う。
今、私はたぶんあの時のオヤジさんぐらいの年齢になっている。人が困っていたら親切にしようと思ってはいるが、はたしてあのオヤジさんのようなことまでできるのか、正直自信はない。
そんな若い頃の印象強い森吉山へ、5月の750RSさんのレコ www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-302486.html を読んでから、また登ってみようかな・・と思っていた。スキー場ができてから、自分の中では何となく山登りの対象から離れていたが、歩いたことの無いコースもある。レコでよく拝見する山人平や奥森吉のコースとは、どんな様子なのだろう・・・
そう思っていた時、昨年和賀山塊でお会いして以来、仲間として交流させていただいている東京のnomoshinさんが、この3連休に秋田の山を登られるという連絡をいただいた。レンタカーを利用し、主に秋田県北の山々を計画しているとのこと。ならば縦走コースをお互い反対側から登り、途中出会ったところで車のカギを交換することにしませんかと提案、快く受け入れて下さった。ここ2年ぐらいで秋田県北の主な山・コースを歩かれているnomoshinさんに、県北の山を知らない私は何も提案・お奨めはできなかったが、結局、森吉山を東西に歩くコースで決定した。大雨洪水警報の出ている秋田ではあるが、nomoshinさんの強力な晴れ男ぶりに期待して。
当日は予定より早く自宅を出発、初めて見る森吉山ダムから舗装された道路を経て、まずは「妖精の森」のコテージなどを確認。立派な建物に生まれ変わったコメツガ山荘から、懐かしいコースを登って一ノ腰へ。ガスるのを覚悟していたので、一ノ腰から森吉山頂の美しい三角錐が見えたのには感激した。
そして本当に静かだ。nomoshinさん以外では、山頂直下でお一人とすれ違っただけだった。左前方に山頂を眺めながら針葉樹の香り漂う木道を歩き、やがてガスに囲まれた山頂へ。展望は、これから初めて歩く山人平方面だけだった。
小さな湿原と針葉樹の森が交互に現れる美しい道。花は端境期のようだったが、ニッコウキスゲの黄色が、黒い針葉樹を背景にして夏の到来をつげている。
小池ケ原の手前あたりでnomoshinさんと出会い、しばし情報交換。私の方が早く出過ぎてしまっているので、時間調整も兼ねて小池ケ原でのんびりとすごした。木道に足を伸ばして座り、ニッコウキスゲの高さの目線になってモウセンゴケを触ってみたり。途絶えることなく続くウグイスたちの会話を聞いていると、だんだん眠くなってきた。まるで天国のよう・・(行ったことはないが)とウトウトし始めたら、ハエが顔に止まって目が覚める。
ブナなどの広葉樹林の森を延々と歩いて割沢森、そして高場森へ。どちらも、ピークははっきりしない。高場森へ向かう途中で忽然と天然杉の群生が現れて驚いた。高場森からも道は続いていたが、秋田駒方向で雷鳴が聞こえてきたし、奥森吉の散策はこれからの楽しみとしよう。
秋田の人は自分たちの住む秋田の良さを知らない、自分たちがいかにいいものに囲まれているかを知らない・・という論調を、地元紙などでよく見聞きする。私もその類かもしれない。たとえば国指定の重要無形民俗文化財の数が日本一、なんて知らなかった。奥森吉、森吉山東部に広がる森を訪れたのも初めてである。ここは桃洞の滝を始めとして、美しく貴重な自然が溢れているようだ。
全国の山を500回以上登り歩いておられるnomoshinさんは、「東北の山はいいよ、もしも可能なら退職後は東北に移り住んで東北の山々をもっと歩きたい・・」とおっしゃっていた。冬は毎日毎日、雪が降り続く土地。雪寄せは重労働、山間部には年寄りしかいなくなった・・だが冬の厳しさがもたらす美しい自然が、天気のいい日にサッと出かけられる距離にある。これはありがたい。節度を持って、これからも味わいたいと思う。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
レコの写真、感想を読んでいるうちに
東北出身でもない私がどうして東北の山々に魅せられてしまうのか
何となくその答に近いような感触がありました。
冬の厳しさがあるが故の美しい自然風景は昔も今も変わることなくそこにある。
信仰の道を切り開いた昔の人々
山に崇拝と畏れを抱き、山に感謝するという気持ちをどこかで忘れていたのかもしれません。
森吉山…秋田に住んでいた頃、スキーで行っただけです。
太平湖や小又峡に行きたいと思っていた事も思い出しました。
私も
ゆっくりと北秋田の山々を歩いてみたいです
おそらくそのとおりでしょうね。
何気なく吸っている空気のように身近であればあるほど意識外なのだと思います。
僕は秋田を10年以上離れていたことがありまして、帰ってきた頃はこれまで暮らしてきた他県との違いがくっきりと見えたものでした。今では元の鞘におさまり、そういう違いについて考える事もなくなりました。
秋田の宝は、やっぱり冬が厳しいだけに手つかずに残された自然ですかね。
それと、暮らしに自然がすでに溶け込んでいるからなのかどうかわかりませんが、登山者人口がそんなに多くないような気がします
森吉山へはスキー場ができてから山登りには行かなくなりましたが、私もスキーでは2回ほど行きました 今はゴンドラで手軽に登れるようになって、多くの方がこの美しい景観や花々を楽しむことが可能になりましたね。これはこれで良いことだと思います。クマなどの野生動物には申し訳ないと思いますが・・
山に崇拝と畏れを抱き、山に感謝する・・というと、この地域だとマタギですね。彼らのメンタリティには見習うべきことがたくさんあるように思います。
奥森吉や太平湖・小又峡はやっぱり遠いですね。でも道路が昔よりもずっと良くなってますから、時間的には大変という感じはしませんでしたよ
秋田県は人口が少ないから登山者も少ないということの他に、人口に対する割合も少ないのかもしれませんね。山菜・タケノコ・キノコ採りの人の割合は高いと思いますが
それとも、静かな山を選んでいるから、そう感じるのでしょうか
外に出てみないとなかなか気づかないことって、ありますよね。私の息子たちも今は、「秋田は道路が広れ〜」とか、「人少な〜」とか言ってます
森吉山はお花の山と聞いてから、少しずつ興味が沸いていましたが、湿原と聞いて、もっと興味が沸きました!!
あまり森吉山について知らないのですが、その辺りまで行く人は少ないのでしょうかね。
コメントの話題に乗っかってしまいますが、秋田って、東北でも独特な文化ですよね。
京との交流があったからなんでしょうが、イントネーションも京に近いものを感じることがあります。
独特の文化って、どんな? こっそり聞いてみたいです イントネーションは、確かに東北の他の地域とは違いますね。よく芸能人が秋田弁をマネするけど、「なんだそれえ〜っ」って言いたくなります
秋田でも、県北と県南はまた違いますね。県北の大館だと、津軽言葉に近いですね。
森吉山は花の百名山、Springさんにピッタリだと思いますよ
私は朝早かったので静かでしたが、nomoshinさんが山頂に立った頃は登山者がいっぱいだったとのことでした
この冬の豪雪でずっと雪に閉じ込められたと思ったら、梅雨時期の秋田はこんどはずっと雨模様でしたね。久しぶりの晴れのち曇りを楽しまれてよかったです
森吉山、そのおおらかな山容から見ても、八幡平の仲間ですね。植生も似ているような。山人平からヒバクラ方面を眺めると、湿原が点在しているようで気になっておりましたが、kamadamさんのレコで納得しました。私もこの湿原と森の道を是非歩いてみたくなりました
nomoshinさんと会われたのですね。お二人にはとても似通ったところがあります。山の志向だけでなく、落ち着いた文体からもお二人の人柄が浮かびます。
kamadamさんの昔の山歩きの話が好きです。毎回ちょこっと書いてね
今回は湿原で眠りかけてハエに起こされた・・とか、どうでもいい話ばっかりだったので 昔の話を主体にしちゃおうかなと考えました 若い頃は本当にいろんな人にお世話になりましたね〜
おっしゃるように、歩きながら、昨年の南八幡平と似ているな・・と思いました。玉川で分断されているだけで、緯度は一緒だからでしょうね。このおおらかで美しい道は、kiyoshiさんもきっと気に入ると思いますよ。その際は温泉に泊まって、渓流・滝の散策とセットで
nomoshinさんは、高層湿原が好きとおっしゃってましたね。私はご存じのように稜線の展望ですが
500回以上の登山経験をたっぷりうかがいたいと思いました。虎毛や神室の小又などは未登とのことですので、またお会いする機会があると期待しているところです
私達の記録を参考にしていただいたなんて・・・・・
こんな事を書かれてしまうと、嬉しくて涙が出てきちゃいますよ
基本的に私が係る記録は、どれもこれもふざけた記録に仕上がっちゃいますので
kamadamさんの記録を読ませていただくと、つくづく私の記録が軽く感じます
だからと言って、とても真似はできませんがね
ところでこのコースですが、いいコースですよね
さすが秋田県だと思います
最近少し秋田の山には行けていませんが、またオジャマさせていただきますね!
頭の中には、やっぱり森吉周辺があり、次は沢で森吉を堪能してみたいとは思っています。
いやいや、私のレコはハエが顔に止まった・・とか、ふざけていますよ 写真もどうも味気ない、物足りないなあ・・shun-sさんのように、自分撮りの勇気を持てばいいのかもしれませんが
お二人の記録は、割沢森・小池ケ原方面を歩かれた唯一のレコでしたので、ホント助かりました。私もレコに書いたように、秋田とは言っても知らない所がいっぱいありますので
もっともっと秋田へお邪魔して レコで紹介してくださいね。特に森吉周辺の沢は天国のようなナメとのこと、水が落ち着いたら沢歩きレコ、期待しています
それと、積雪期になったら、白神山地のレコも見せてください
こんばんは
森吉山縦走ご苦労様でした。
コメントが遅くなりましてすみませんでした。
kamadamさんの歩かれた縦走コースは昔、歩いたコースですが・・・いつかまた歩いてみたいといつも思っていましたが、下山後の足を考えるとなかなかできないコースでした。なるほど車の鍵を山で交換ですね。良いアイデアです(笑)
また、私のヤマレコをきっかけにしていただいてありがとうございます。
一の腰から眺める容姿端麗な森吉山はいつ見ても良いですね。
私もまた行ってみます。
太平湖のレストハウスから阿仁前田の駅まで・・・・親切な方でしたね。
当時は阿仁前田から発電所のある小滝までが県道でした。小滝から奥は森吉町の町道でした。県道も根森田の集落あたりから渓流沿いの狭い道路で今は森吉山ダムの堤体のあたりにあった桐内沢集落まで特に狭かった記憶があります。様田には森吉登山口があり、その奥の森吉集落には商店や学校、郵便局、営林署の事務所もありました。さらに小滝、女木内と進み、そま温泉の入口を過ぎ、国民宿舎、湯ノ岱、平田・・・
今では「そま温泉」と「国民宿舎」以外のすべてが無くなりました。ダムの底に沈んだり、移転したり・・・秋田県の人口が減るはずです(笑)
ダムを造ることで生まれる公益の犠牲になった森吉地区のたくさんの方に感謝しましょう。
そうですね。秋田の人は秋田の良さに気づいていませんね。気づいていれば山にゴミなんか捨てられるわけがありませんからね。
秋田は多種多様の自然、文化・・・他に類を見ない貴重なものがたくさんありますが、意外と県民は知らない人が多いですね。
森吉山の思い出はたくさんあります・・・kamadamさんのヤマレコを拝見してまた少し思い出してきました(笑)歳を重ねると最近のことはすぐに忘れますが・・・昔のことは何かきっかけがあると鮮明によみがえってきますね。
ありがとうございました。
ご丁寧な文面、恐縮しております。ありがとうございます。750RSさんのレコを拝見して、自分の若い頃の山歩きが懐かしく思い出され、nomoshinさんのご協力もあって、久しぶりに登ってみた次第です
一の腰に上がった時には、山頂部や山頂に続く稜線が良く見えていて、感激しました。あの整った姿の山頂部がスキー場にならなくて、本当に良かったですね
阿仁前田から太平湖に続く道路と集落のこと、さすがにとてもお詳しいですね。今はすべてが無くなったとのこと、750RSさんは思い入れが強いだけに、寂しさもつのるのでは・・と拝察します。
実は当日、クマを2回見ました。1頭は下山して車に乗って間もなく、2頭目は県道沿いです。私は山でクマに出会ったことはなかったので、さすがにマタギの山だな〜と思った次第です。昨今はクマの生息域がますます狭まって、クマにとっては受難な時代かと思いますが
私も750RSさんを見習って、秋田の山のすばらしさ、貴重なものを少しでも紹介・発信できたらな〜と思ってます
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する