記録ID: 3396297
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沢登り
大台ケ原・大杉谷・高見山
【台高】本沢川・釜之公谷 遡行
2021年07月28日(水) [日帰り]
hillwanderer
- GPS
- --:--
- 距離
- 13.3km
- 登り
- 1,237m
- 下り
- 1,228m
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| 天候 | 晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2021年07月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
【釜之公谷】 ・ 水量豊富で滝が非常に多く，滝の形もバリエーションに富んでとても美しいため，最初から最後まで飽きさせない。にもかかわらず難易度はほどほどで，どの滝もそれほど苦労せず直登or高巻きできるため，お得感が高い谷である。 ・ 個人的に注意が必要と感じたのは以下の3箇所（他の滝場は自然にルート取りが決まる感じでそれほど悩むことはないと思う） � ‘�渓…出合の吊橋の右岸側のたもとから入渓する。最短ルートは5mほどで入渓だが，その5mのトラバースが結構怖い（スリングが下がっている。でも足元は巨岩の隙間に空いた底知れぬ暗黒空間…）。高めに高巻くともう少し安全なルートから入渓できる（こちらも谷に降りる箇所にトラロープが張ってある）ので，お好みで判断を。 �◆‘�渓してすぐ出てくるゴルジュの高巻き…左岸が穏やかそうに見えたので左岸巻きしたところ，トラロープ完備の立派な巻き道があった。ゴルジュを巻き終えてからすぐ入渓すると長い淵のある小滝に阻まれて苦労するので，ある程度谷が開けるまで巻いてしまったほうが時間短縮になると思う。 �� 源頭の50m大滝…フィナーレを飾る爽快空間。途中までは簡単に直登できるが，残り1/2は若干ホールドが細かくなるので，ロープを出したほうが安全そう。今回は単独なので途中まで直登してから右岸の樹林帯によじ登り，右岸巻きしました。 【筏場道（下山路）】 ・ 筏場道は，土豪・土倉庄三郎が開削し，入之波から熊野灘の船津までを結んだ土倉街道の一部で，古くは大杉谷で伐採された木材はこの道を越えて筏場まで搬出されたそうだ。大台ケ原ドライブウェイができる前の大台ケ原へのメインルートもこの道だったという。 ・ このように歴史的に興味深い道だが，平成16年9月の台風21号で被害を受けて以来，公式には未だに通行止めとなっている。他に下山ルートの選択肢がないためやむなく使ったが，もともと切り立った道である上に，山崩れで道が消滅している箇所もあり，確かに危険度は高い。しかし，急斜面に驚異的なバランスで美しく組まれた石垣を随所で見るにつけても，この近代産業遺産ともいうべき道をこのまま崩壊するにまかせてしまうのは，何とも惜しい気がする。 ・ なお，三津河落山からコブシ辻までは，川上辻を経由しなくても，尾根通しに直接下ることができる（踏み跡は薄いものの，マーキングあり）。また，それ以降も，大台辻までの道は2万5千図の点線路と一致していないので注意。 |
写真
駐車場からすぐに本沢川沿いの山道に降り（道標あり），白倉又谷を細いコンクリート橋で渡って道を辿っていく。釜之公谷までの道は一部崩れている箇所があるものの，概ねきれいで歩きやすい。
駐車場からすぐに本沢川沿いの山道に降り（道標あり），白倉又谷を細いコンクリート橋で渡って道を辿っていく。釜之公谷までの道は一部崩れている箇所があるものの，概ねきれいで歩きやすい。
しばらく行くと，「五色湯跡」の道標。あまり事前勉強せずに来たため，まさか温泉跡があると思っておらず，ちょっとびっくり。
対岸を眺めると，確かに湯の花らしき白い物体が付着した岩が散見され，河原に降りてみることに（五色湯跡の道標のすぐそばにトラロープが張ってあり，河原に降りられる）。
対岸を眺めると，確かに湯の花らしき白い物体が付着した岩が散見され，河原に降りてみることに（五色湯跡の道標のすぐそばにトラロープが張ってあり，河原に降りられる）。
対岸に渡渉して少し上流側に歩くと…あったあった！ 岩の間からこんこんと温泉が湧いている源泉を発見。ちょっと入浴するには生ぬるすぎるが，岩には白い湯の花がびっしり付着して，辺りには硫黄のいい匂いが漂っている。
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対岸に渡渉して少し上流側に歩くと…あったあった！ 岩の間からこんこんと温泉が湧いている源泉を発見。ちょっと入浴するには生ぬるすぎるが，岩には白い湯の花がびっしり付着して，辺りには硫黄のいい匂いが漂っている。
近くには，妙な管のようなものが岩から突き出ており，水が湧き出ていた。もっと温泉の温度が高く湯船があったころに，この水で温度を調整していたのかもしれない。（実際，江戸時代に湯治場があったそうです。）
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近くには，妙な管のようなものが岩から突き出ており，水が湧き出ていた。もっと温泉の温度が高く湯船があったころに，この水で温度を調整していたのかもしれない。（実際，江戸時代に湯治場があったそうです。）
吊橋の上から釜之公谷をのぞき込む。暗く狭い谷底に巨岩が積み重なった中に豊富な水量の水がどうどうと飛沫を上げており，なかなか気が引き締まる眺め。ちなみに，手前の岩盤のように見えるものは，1個の岩です。一軒家くらいはありそう。
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吊橋の上から釜之公谷をのぞき込む。暗く狭い谷底に巨岩が積み重なった中に豊富な水量の水がどうどうと飛沫を上げており，なかなか気が引き締まる眺め。ちなみに，手前の岩盤のように見えるものは，1個の岩です。一軒家くらいはありそう。
吊橋の右岸側から入渓するが，最短距離で入渓するルートはトラバースがちょっと怖く（足元が巨岩の間に口を開けた暗黒空間で，絶対に落ちたくない…），やや大きめに高巻いた。結果，比較的安心安全に入渓できました（入渓ポイントにトラロープあり）。
吊橋の右岸側から入渓するが，最短距離で入渓するルートはトラバースがちょっと怖く（足元が巨岩の間に口を開けた暗黒空間で，絶対に落ちたくない…），やや大きめに高巻いた。結果，比較的安心安全に入渓できました（入渓ポイントにトラロープあり）。
さて遡行開始…と行きたいところだが，いきなり台高名物・巨岩の迷路に阻まれ，右往左往。
と，ほどなくゴルジュの入り口に掛かる5mほどの滝。まさにゴルジュゴルジュした感じの見事なゴルジュで，取りつくしまもなさそう。
左岸から巻きに入る。巻きながらゴルジュの中をのぞき込むと，5m滝の上にも同じくらいの滝が掛かっているのが見える。凄い空間だ。
さて，この左岸巻き，トラロープどころか，こんな木のハシゴまで設置されていた。やはり人気の谷なのだ。でも，ここまで完備されると，ちょっと盛り下がるなぁ…。
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さて，この左岸巻き，トラロープどころか，こんな木のハシゴまで設置されていた。やはり人気の谷なのだ。でも，ここまで完備されると，ちょっと盛り下がるなぁ…。
ゴルジュゴルジュしたゴルジュを巻き終わってすぐに谷に降り立つ（懸垂不要）。ゴルジュの落ち口の真上に掛かる倒木の一本橋から，決死の思いでゴルジュ内部を撮影した一枚。
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ゴルジュゴルジュしたゴルジュを巻き終わってすぐに谷に降り立つ（懸垂不要）。ゴルジュの落ち口の真上に掛かる倒木の一本橋から，決死の思いでゴルジュ内部を撮影した一枚。
さて，遡行再開。すると，両側をつるつるの側壁に挟まれた深い淵が。ここは泳ぐ。この谷，結構水がちべたいです。
しかし，出口の小滝でちょっと苦労。登れる人ならフリーでクリアしてしまいそうだが，そういうフィジカルのない私としては，側壁にハーケンを一枚浅打ちしてA0でズルして越えた。ハーケンは回収済み。（この箇所は，手前で谷中に降りずに，高巻きを継続して巻いてしまえば苦労せずに済むと思う。）
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しかし，出口の小滝でちょっと苦労。登れる人ならフリーでクリアしてしまいそうだが，そういうフィジカルのない私としては，側壁にハーケンを一枚浅打ちしてA0でズルして越えた。ハーケンは回収済み。
（この箇所は，手前で谷中に降りずに，高巻きを継続して巻いてしまえば苦労せずに済むと思う。）
（この箇所は，手前で谷中に降りずに，高巻きを継続して巻いてしまえば苦労せずに済むと思う。）
時折出てくる滝は，どれも青く美しい大きな釜を持っている。泳がなくても大抵は側壁をトラバースして抜けられる。
しかし，この谷で驚くのは，結構上部まで植林が散見されることだ。本谷川の一番奥地の険しい谷なのに，こんなところまで律儀に植林してあるとは…。毎度のことながら，紀伊半島の林業関係者の執念に脱帽。
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しかし，この谷で驚くのは，結構上部まで植林が散見されることだ。本谷川の一番奥地の険しい谷なのに，こんなところまで律儀に植林してあるとは…。毎度のことながら，紀伊半島の林業関係者の執念に脱帽。
そして大きめの直瀑。15m位か。なかなか端正な滝で眺め入る。この滝は右岸を大きめに巻いた。
真ん中に巨岩が鎮座した8mほどの滝。右端を瀑水をかぶりながら突っ切り，左岸から小さく高巻く。
CSから落ち，中段で弾ける面白い形の滝。この谷は本当に滝の形のバリエーションが豊かだ。
そして巨岩がみっしり詰まった2条15mほどの滝。なかなか迫力のある空間だ。左岸から巻いた。
滝の多さが嬉しくて，最初はニヤニヤしながら登っていたのだが，あまりの多さにだんだん笑顔がひきつってきた…。
巨岩をぐるりと左に回り込むと，この水が流れるコーナーがあり，ここは簡単に登れた。面白い地形だ。
そしてその先には，この谷のフィナーレを飾る50m大滝が。最後の最後にこの爽快な大空間，心憎い演出だ。
しばらく大滝を眺めながらおにぎりを食べて休憩したあと，大滝を直登していく。下段は簡単に登れる。
ここもまだまだ簡単。しかし，水が本当に冷たい…。滝が起こす風を浴びているだけで寒くなってくる。
大滝の中段あたりに到着。まだまだ登れそうにも見えるが，次第にホールドが薄くなっていくのが見て取れる。ここまでにしますか。
慎重に右岸側にトラバースして樹林帯に入り，急斜面を巻いていく。ちょっと笹薮が出てくるが，大した藪漕ぎではない。
急斜面を慎重にトラバース気味に降りると，ちょうど50m大滝の落ち口だった。絶景だ！
落ち口から下をのぞき込む。さっきまで立っていた滝の中段が見える。さすがに高いな…。
左手には圧倒的な岩壁が屹立している。大蛇�瑤澆燭い澄�いい感じの登攀ルートが引けそうだが，登った人はいるのかなぁ…。
稜線に出た。大台ケ原周辺に特有の，白骨化したトウヒが散見される低い笹原が広がっている。青空の下の笹原が美しい（が，もともとはここも豊かな森だったはずなので，素直に喜べない。）
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稜線に出た。大台ケ原周辺に特有の，白骨化したトウヒが散見される低い笹原が広がっている。青空の下の笹原が美しい（が，もともとはここも豊かな森だったはずなので，素直に喜べない。）
三津河落山に到着。2万5千図上のP1654mが三津河落山だと思っていたら，その北の少し低いピークにプレートがあった（P1654mは，如来月というんですね）。うん，ここが三津河落山でいいや笑 ←登るのがめんどくさくなったらしい…。
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三津河落山に到着。2万5千図上のP1654mが三津河落山だと思っていたら，その北の少し低いピークにプレートがあった（P1654mは，如来月というんですね）。うん，ここが三津河落山でいいや笑 ←登るのがめんどくさくなったらしい…。
コブシ辻で大台へ向かう山道に合流。このあたりの道はきれいで歩きやすい。周囲の樹林も美しい。
筏場道はやはり崩壊している箇所が多く，もともと切り立った道でもあるので慎重に下っていく。
一番ひどかった箇所はここ。山崩れで道がごっそり逝っている。この箇所はさすがにダイレクトにトラバースするのは難しく，上から高巻いた。
しかし，随所に美しく組まれた石垣が残っており，心惹かれた。さすが土倉翁が巨財を投じて開通させた道である。
装備
| 備考 | ・フェルトソール沢足袋使用。それほどぬめっている印象はなかったので，ラバーでも大丈夫かと思う。 ・40mロープを携行したが不使用。 |
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感想
なんだか長めの谷をひたすら歩きたくなった。しかし，日帰りしか日程が取れない。日帰りで行けてなるべく大きい谷，しかもちゃんと稜線まで詰め上がりたい，となると，なかなか選択が難しい。この時期，北のほうはオロロの大群や雪渓崩壊が気がかりだしなぁ…。いろいろ悩んだ末，これまで行きたいと思いながら未訪問だった本沢川・釜之公谷に行ってみることにした。大台ケ原の北側を流下する名渓である。
釜之公谷は人気の谷で，それこそ書籍やネット上の記録はたくさんある。こういう場合，遡行図をなるべく見ないようにして出かけるのだが（そのほうが新鮮な驚きを楽しめる気がするので），今回はそれで正解だったと思う。あまりに滝が多すぎて，遡行図を見ていたとしても役に立たなかったと思うからだ。それくらい滝が多く連なっていて，しかも形もバリエーション豊かで面白く，さらに遡行難度もほどほどときているので，とにかくお得感が高い谷である。ラストの50m大滝は，天から陽光弾ける瀑水が降り注ぐような開放的な爽快空間で，その下に一度腰を落ち着けてしまうと，なんだか立ち去りがたくなってしまう。
いまもなお本沢川の河原に密かに湧く五色湯の源泉や，かつての大台ケ原へのメインルートでもあり近代林業遺産とでもいうべき筏場道など，道中に見どころも多い。楽しい沢旅の一日だった。
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