奥ノ谷山〜中山谷山縦走☆ささやかな秋の恵みに
- GPS
- 03:55
- 距離
- 8.2km
- 登り
- 609m
- 下り
- 606m
コースタイム
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
コース全般的に一般登山道はないが奥ノ谷山の西尾根にはca810mの手前あたりまで明瞭な踏み跡あり。踏み跡は尾根の西端の取り付き(田歌舎の裏手)から続くものと思われる。 奥ノ谷山から中山谷山の間は下生のない快適な自然林の尾根が続く。 下山の尾根は林道の法面が崖になっている。わずかに斜面をトラバースした地点でトラロープがあり、林道に着することが可能であったが、この尾根を下る場合には事前に着地点を確認しておいた方が良いと思われる。 |
写真
感想
この日は日がな晴天の予報ではあったが、予報に反して白く霞んだような空がどこまでも広がっている。気温は25度とそれほど高くないようだ。FMをつけるとエストニアの現代作曲家アルヴォ・ペルトの特集であるらしく、彼の代表作が次々と流れてくる。壮麗ではあるがどことなく陰鬱な音楽はこの日の虚ろな空によく似合う。
周山の道の駅は緊急事態宣言で営業を休止しているようだが、美山の道の駅は空いていた、駐車場にはツーリングのバイクが停められている。入口近くにはフェラーリやポルシェのオープンカーが並んで停められている。美山から佐々里峠や大野ダムに向かうルートはツーリングの人気コースなのだろう。
美山の茅葺きの里では蕎麦の花が満開であり、あたり一面に白い花を咲かせている。周囲の水田では黄色く色づいた稲穂が収穫の季節が近づいたことを物語っていr。
田歌の集落の奥から左手に分岐する五波峠への林道を目指す。田歌舎というジビエ料理の料理旅館が門にあるのだが、この旅館の敷地のように見えてしまうので要注意だ。田歌舎には大勢の人が集まっていたが、食事会でも催されているようだ。
五波谷林道に入るとすぐにも右手の谷に入る苔むした林道がある。芦谷というらしい。この分岐から尾根に取り付くことにした。
尾根の取り付いてすぐに蛙がいたので、トレッキング・ポールを地面において写真を撮る。再びトレッキング・ポールを拾い上げたところで指先に嫌な感触のものが纏わり付く。なんと大きなヒルだった。どうやらここはヒルの多発地帯らしい。私の後ろを歩く家内が地面から首をもたげるヒルを見つける。この日はヒル避けの準備もして来なかった。
頻繁に足元をチェックするが、幸いなことに靴を這い上がってくるヒルはいないようだ。急峻な取り付きを過ぎると尾根の傾斜は緩やかになる。尾根は多少の馬酔木の藪があるが、通過に難儀するほどではない。
奥ノ谷山の西尾根と合流地点の手前ではca550mのあたりからユズリハの濃密な藪が現れる。ユズリハの藪を避けて右手にトラバースするとすんなりと尾根に乗ることが出来た。ここは右手に進むことを選択して正解だったようだ。尾根の北側にはしばらくはユズリハの藪が続いており、左手に進むと藪こぎに難儀したであろう。
広い尾根には途端に明瞭な踏み跡が現れる。五波谷の入口から続いているようだ。尾根には所々にユズリハの藪が現れるが、刈払いがされているのだろう、踏み跡は辿ると難なく通過することが出来る。尾根は歩きやすいが鬼蜘蛛の蜘蛛の巣が非常に多い。トレッキング・ポールはもっぱら蜘蛛の巣を払うための道具と化す。
尾根からの景色は山深い雰囲気なのだが、右手の谷からは時折車かバイクのエンジン音が響いてきては深山の静寂を破る。細尾根になると左手から谷が上ってくる。沢の水が湧き出しているところがあったので、谷に降りて水を汲む。尾根にはテープの類は一切見当たらないのだが、沢に下降する鞍部の樹に巻かれたテープはこの尾根で見かけた唯一のものであった。
ca810mのピークの手前からしばらくは急峻な尾根の登りとなるが、南から上ってくる尾根と合流するとブナの美林が広がった。ca810mの小ピークにはPH(peak hunter)氏による「奥ノ谷山」への道しるべがある。
奥ノ谷山への吊尾根を辿るといくつもの紫色のキノコを見つけることが出来る。ムラサキアブラシメジモドキだろう。先日の比良の山行ではモドキではなく御本家のムラサキアブラシメジに遭遇することが出来たにもかかわらず、キノコを入れる袋が一枚もなく無念にもキノコを採るのを諦めたのだった。この日は勿論、ビニール袋を用意してある。
奥ノ谷山の三角点のあるなだらかな山頂は小さな広場となっている。山頂の北西にはイワヒメワラビの小さな草原があり、遠くに八ヶ峰が見える。
中山谷山への尾根は山頂からわずかに東に向かい、次の小さいピークを左に曲がることになる。
アップダウンのほとんどない尾根には下生のない快適な自然林が続く。左手から植林が上っくると、植林との間に張られた防鹿ネットが目障りではあるが、それもすぐに終わってくれる。
昼過ぎには晴れることを期待していたが、空は相変わらずどこまでも白く霞んだままだ。空気は湿り気を帯びてはいるものの、日差しがないせいか程よく涼しいのが有難い。
やがて広々とした尾根には山毛欅の疎林が広がるようになる。所々で尾根の東側にはイワヒメワラビの繁茂する草原が広がり、東側に広がる京大演習林方面の展望を楽しませてくれる。目立つ二つのピークはブナノキ峠と傘峠だろう。一般的には峠というと鞍部の名称であるが、この地域ではピークを指すことが多い。
尾根上には大きな糞によく遭遇する。糞の主には遭遇したくはないものだ。残念ながら奥ノ谷山以降、紫色のキノコは全く見かけなくなってしまった。
中山谷山は山毛欅の若木の樹林のこじんまりとしたピークだ。
山毛欅の美林を辿って尾根を西に向かうと突然樹林が途切れて広々とした草原に出た。ここからの開放感のある大展望はこの山行におけるハイライトと言えるだろう。正面には八ヶ峰から西へと延々と続いてゆく若丹国境尾根が見える。その先にあるピークは頭巾山だろう。八ヶ峰の右手には相変わらずミルクを溶かしたような白く霞んだ空の先には空と同じ色の日本海がが広がっている。
イワヒメワラビの繁茂する草原では所々でボロギクの綿毛がそよ風に揺れている。草原の先にある樹林ではかすかに黄色く色づいたリョウブが夏が過ぎ去ったことを物語る。虚ろな空の下で初秋の空気を胸の奥に心ゆくまで吸い込んだ。
有名な歌の哀しげな一節を思い出す・・・虚ろな目の色、溶かしたミルク・・・ミルクを溶かしたのが何なのか気になっていたが、コーヒーではたいのは確かだ。それは空だったのかもしれない。
Ca680にかけては複雑な地形となっているが、快適な山毛欅の林が続く。ca680mにわずかに登り返すと、山毛欅の高木による壮麗な樹林となっていた。山毛欅の林は湖北や奥越に見られるような広大な樹林ではなく、こじんまりしたものではあるが、久しぶりに山毛欅の美林の中を歩く悦びを再認識させてくれる。
ピークの南西は再びイワヒメワラビの小さな草原があるが、ここから先で尾根の形が急に分かりにくくなる。小規模な二重尾根となっており、尾根の間を北に向かって下降してしまうが、結果的にはca670mのあたりからまっすぐに西に向かうのが正解だったようだ。
そこから先は山毛欅は途端に少なくなるが、登りに辿った尾根とは違って、馬酔木やユズリハの下生のない歩きやすい尾根が続き、快適に尾根の末端部まで下降することが出来る。しかし、最後に大きな問題が待っていた。
尾根の末端部では林道の法面が崖になっているのだった。尾根を戻って別の尾根を下降するということも考えたが、わずかに急斜面をトラバースしたところで、杉の樹から下に向かって垂れ下がるトラロープを見出すことができた。ロープの助けを借りて無事、林道に着地することが出来る。もしもこの記事を読まれて、この尾根を辿ることを考えられる方がおられるとしたら、登山の前にロープがあることを確認してから登られる方が良いと思う。
帰宅後、収穫したムラサキアブラシメジモドキはアスパラガスと豚肉と共に陶器の鍋でオリーブオイルで蒸し焼きにしてみた。やはり美味であった。
コメント
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最後の場面だけご一緒したかったー
ヒルの移動速度はかなり早いですね
私は前日にスパッツの内外にひるさがりのジョニーを吹き付けています
是非、ご一緒にトラロープの懸垂下降を
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