<下ノ廊下 (日電歩道&水平歩道)>吉村昭「高熱隧道」の世界へ



- GPS
- 32:00
- 距離
- 24.7km
- 登り
- 1,157m
- 下り
- 2,136m
コースタイム
7:55黒部ダム - 12:30十字峡13:00 - 14:35東谷吊橋14:45 - 15:07仙人谷ダム
- 16:30阿曽原温泉小屋
>2日目
5:55阿曽原温泉小屋 - 8:50大太鼓 - 12:30欅平駅
(※かなりのスローペースです)
天候 | 10/19 曇り 10/20 雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー 自家用車
・信濃大町駅から扇沢まで、タクシーで5,500円(20分ほど) ・駅近くに無料駐車場があるそうです(後から知りましたorz) ・扇町駅のトロリーバスチケット発売は6時50分から。 ・黒部ダム駅から登山口に向かう通路脇にトイレと水場があります。 >復路 ・トロッコ列車は普通車は窓がありません(むき出し)。 天候次第とは思いますが、いやほんと、とても寒かったです。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
<1日目> >黒部ダム〜仙人谷ダム ・序盤20分ほどは下り、川を渡ってしばらくは若干のアップダウン。 ・その後は十字峡手前の登攀ポイント、崩落現場の梯子場、あと 東谷吊橋手前の急な下り坂を除き、ほぼ水平な道です。 ・ワイヤーが張られているので、左手を添えておくと安心です。 (一度、丸太で足をすべらせて崖下に落ちそうになりましたが、 ワイヤーにしがみついたお陰で助かりました) ・途中2カ所、必ず濡れるポイントがあります。ザック内の防水は確実に。 ・仙人谷ダムには自動販売機があったらしい。。(後から知りました) >仙人谷ダム〜阿曽原温泉小屋 ・ダムを過ぎてすぐ、1日目の行程唯一のがっつりした登りがあります。 ・小屋手前で急坂を下ります。 >阿曽原温泉小屋(テント泊のため小屋内は不明) ・ビールの自販機がありました。最高に美味 ・露天風呂はテント場から5分ほど下ったところにあります。 脇のトンネル内に脱衣所がありますが、温泉脇のすのこでも可 ・奇数時刻が男湯、偶数時刻が女湯で、夜8時以降と朝は混浴だそうです。 ・テント場の水量は豊富。トイレも水洗でした。 <2日目> >阿曽原温泉小屋〜欅平 ・序盤は仙人谷ダムからと同程度の上り、あとは欅平手前までほぼ 水平な道が続きます。 ・1日目と違い道幅があるので、序盤からトレッキングポールを 使っていったほうが楽だと思います。 |
写真
感想
毎年1度、予定をあわせて山に登っている友人Mから、
今年はピークハントは止めて下ノ廊下にしようと提案を受けたのは数ヶ月前。
断崖絶壁を伝う縦走路の醸し出す秘境感、しかも大好きな作家である
吉村昭の小説の舞台。これは行くしかないでしょ!
当然、高熱隧道は事前に読了。山行の日を待ちわびていました。
1日目。
天気は生憎の曇り。
JR信濃大町駅近くに車を停め、タクシーで扇沢へ。
走り出してすぐに目に飛び込んでくるのは後立山連峰の山々。
五竜、鹿島槍、爺ヶ岳の頂は既に白い雪を纏っていて、今年の無雪期登山も
終わりかと少し寂しくなってしまいました。
扇沢でトロリーバスのチケット行列に並び、始発で黒部ダム駅へ。
いよいよ下ノ廊下トレイルの始まりです。
しばらく道を下ると、左手に黒部ダムが現れます。
展望台から見下ろすアングルは良くみますが、下から見上げる姿というのは
なかなかレアです。周囲で「進撃の巨人みたいだな」という声がしていました(笑)
その後小さなアップダウンを繰り返すうち、気がつけば道は峡谷からの
高度を保ちつつもだんだん平坦に。日電歩道らしくなってきます。
その後、東谷吊橋手前の急な下り坂まで高度感のある水平路が続くわけですが、
時にはむき出しの岩肌、時には木々の間、そして時折梯子やフィックスロープの
岩場の登攀があったり、と表情を次々と変えるので、飽きることがありません。
東谷吊橋手前のS字峡あたりから、遠くに秘密基地のような建物、
黒部第四発電所が見えてきます。
そして高度感のある吊橋を渡ってしばらく行くと、透明感のある紺碧の水を
たたえた仙人谷ダムへ到着します。
ほんと、発電所といいダムといい、よくこんな奥地に建造したものだと
感心してしまいます。
そして登山道はなんとダムの中へ。
靄の立ちこめる薄暗い通路(=登山道)は、高熱隧道と交差していました。
10月中旬の肌寒い外気と、隧道から漏れ出る高温の湿気は互いに相入れることなく、
腰から下は透明な冷気の層、しかし腰から上は靄や蒸気で視界不良の中
じっとりした熱気が体にまとわりつき、早くこの場を離れたい衝動に駆られました。
166度まで上昇したというトンネル採掘の作業現場の過酷さは一体どれほどの
ものだったのかは現場に身を置いてなお想像しがたいものでした。
世界で類を見ない難工事と言われるのも納得です。
構内から外へ出ると、関西電力の寮の方がタバコを吸っておられました。
風の通り道なのであまり積もらないとはいえ、冬場の積雪は3mほどにも
達するとのこと。そしてその大雪の中、越冬するそうです。
電力の安定供給とは大変なものだなと、頭が下がる思いでした。
でも冬の間にお金貯まるんでしょうね(笑)
寮の裏手からは20〜30分程度、がっつり急坂を登ります。
このあたりでMの膝の調子が悪くなり、ペースがガクンと落ちました。
励ましながら登りきると、阿曽原温泉小屋手前までまた水平移動が続きます。
その途中、いい加減疲れてきたのでぼんやり丸太を渡っていると、濡れた足元に
右足がツルっと滑りました。
ザックの重量は約20kg、体勢を立て直す間もなく右下の崖へ滑り落ちそうになる
直前、とっさに左ヒジをワイヤーに咬ませてしがみ付きました。
あまりに一瞬の出来事で、Mも、そして自分自身ですら何が起きたのか
よく分かってませんでしたが、後になってじっくり思い出してぞっとしました。
ほんと、よくあの時ワイヤーを掴んだものです。
長距離のトレイルなのでどうしても気が緩みがちになりますが、
気を抜くと命取りになりかねないと痛感しました。
最後の急坂もスローペースで下り、16時半に阿曽原温泉小屋到着。
小屋の方の対応はとても親切で、しかもこんな山奥というのにビールの
自動販売機があるという、とてもよいところでした。
テント場はかなりの混雑でしたがなんとか幕営するスペースも確保。
山行の途中で風呂に入るというのは初めての経験でしたが、ここの露天風呂は
ほんと、あの温泉入るためにもう一度行こうかと思えるくらいに最高でした。
雲間から照らす月を眺めながらゆったり30分ほど湯船につかり、体の芯まで
温まったせいか、丸々8時間爆睡。
テントであれだけ爆睡したのも初めての経験でした。
2日目。
朝4時ジャストにテントを打つ雨音で起床。
予報で雨とは知っていたものの、前日の月夜に抱いた淡い期待はもろくも崩れ、
雨の中のテント撤収の面倒さと、朝風呂に入れない悔しさによるローテンションの
中、6時前に欅平に向けて出発。
2日目の行程は約10km。
序盤、関電寮からと同程度の急坂を登ったあたりで阿曽原温泉小屋のほうを
みると、雨の中、温泉の湯気が立ちのぼっていました。
「高熱隧道」で強烈な印象を放つシーンとして二度の泡雪崩による被害が
描かれていますが、その二度目の被害を受けた作業員宿舎の土台の上に、
今の阿曽原温泉小屋は建てられています。
まだ薄暗い山間に湧く白い湯煙に手を合わせ、一路欅平を目指します。
1日目と異なり、道幅は概ね広いので、2日目の行程は序盤からトレッキング
ポールを出しておいたほうがよいように感じました。
しばらく進むと絶景ポイントの大太鼓が見えてきます。
はるか遠くに欅平の赤い橋が見え、真下をみれば切り立った数百メートルの崖。
昨日から散々絶壁を歩いてきてなお、本当にここは日本か、と思ってしまう
ほどの異空間でした。
2日目はトンネルが何回か登場します。
その中でも志合谷のトンネルは150mと最も長く、とてもヘッデン無しでは
歩けるものではありませんでしたが、雨のせいか沢山の小さな水滴が岩肌に
染み出していて、そこにライトがあたり、天の川のように無数の光が輝いて
いました。
そしてその光景を見て、「ラピュタだ、飛行石だ」とさわぐ三十路男2名。
水平歩道も終盤にさしかかると、1日目の序盤同様、だんだん
水平ではなくなってきました。
微妙なアップダウンの影響がMの膝にじわじわ蓄積してしまい、欅平への
最後の下り手前で大幅にペースダウン。
結局、コースタイム5時間に対して6時間半。12時半に無事欅平に到着しました。
最後は気力だけで下りたというM、いやーほんとおつかれさんでした。
13時10分発のトロッコ列車では乗車料金をケチったおかげで、
寒空の中をむき出しの車両で凍えながら宇奈月まで1時間20分耐える羽目に
なりました。
そして宇奈月から魚津、糸魚川、南小谷を経由して、19時前に信濃大町駅到着。
5時間半の長旅でしたが、他のトレッカーの方々と色々話ができたおかげで、
本当に5時間も電車乗ってたのかと思うほどすぐに時間が経ってしまいました。
皆さんありがとうございました!またどこかでお会いしましょう(・∀・)/~~
そして大町温泉郷で汗を流して、関西へ。家に着いた頃には翌朝になっていました。
いやーほんと遠かったです。
今年の遠征はもう無いと思いますが、無雪期登山の最後をしめくくるには
この上ない山行でしたヽ(゜∀゜)メ
二〜三十年前に、剣御前辺りから仙人池を経由して、最後は水平歩道を歩いて下ったことがありますが、風に乗って流れてくる欅平のアナウンスの声が聞こえてからが長かった!!との記憶があります
拙者も、トロッコ電車では寒い思いをしました
ホント、よくワイヤーにしがみつかれましたね
落ちれば、もう、後はないですもんね
yamabeeryuさん
お褒めにあずかり、恐縮です
確かに、2日目の終盤は列車や駅のアナウンスの音が聞こえているにも関わらず、中々辿りつかないもどかしさがありました(笑)
ワイヤーの件は、もし腕全体ではなく左手だけで掴んでいたら、また、もし欅平からの南下ルートを選択して、右腕でワイヤーを掴んでいたら(利き腕が左なので)、等々考えれば考えるほど、
あのまま崖下へ落ちていても不思議ではなかったと思います。ほんと幸運でした。
慢心というのは実に怖いものだと改めて気付かされた次第です
LAAMO さん、こんばんは。
下ノ廊下 、完歩お疲れ様です!
また、無事で何よりです。
下ノ廊下 の存在は、今年のお盆の山行で初めて聞いて、その時に教えてもらった「高熱隧道」も読了していました。
厳しいとは聞いていましたが、その通り大変な道もあるようですね
今年は行けずじまいでしたが、レコを見て行けた気分になりましたよ♪
来年こそは・・・と気分が高まりました。
行けるかなー
>taktak6125さん
ありがとうございます、無事踏破しました。
が、いまになって膝が痛くなってきました(笑)
なんという時間差攻撃、、orz
登れない、渡れない、ってのはないものの、
やはり大半が高度感のある崖なので、
集中力が途切れたときが怖いですね。
実際、1日目の行程で行方不明者が出ていたみたいです
(富山県警の捜索隊が入ってました)
高熱隧道読まれたのですね!
生憎の天気で写真を撮りきれなかったのは残念でしたが、それでも当時の情景を想像しながらのトレイルは凄く味わい深かったです
来年こそはぜひ!
お疲れ〜
下ノ廊下...超!楽しそうじゃん!
高度感あるとこ多くて、俺向きだな(笑)
でも行くなら、もう少し暖かい時期が良いかなぁ
もう北アは雪化粧しちゃったな
俺もどっか
そうそう、高度感はずっとあるし、
滑落さえ気をつけたらめっちや楽しめるはず
(岩掴む登攀系はほとんどないけど)
しっかし一気に寒くなったよねえ、北アは普通に積雪してるし。
とりあえずちょいちょい冬装備買い足していってるところ。
軽目の雪山あたり、予定あわせて行ってみる?
ホント寒いな
土曜日天気良さげだから、寒いけど雪積もる前に残した仙丈か、日曜までもつなら八ヶ岳あたり行ってこようかな〜
そうそう、冬用の靴高いし。
ほかにも足りない装備を言い出したらあれもこれも、で
かなりの出費になるのが辛い。。
とりあえずこっちは3連休は近場(滋賀あたり)で冬に通えそうなところの下見に行ってくるわ。
八ヶ岳いいねえ。天気予報みてたら3日の夜は雨になるそうだから、気をつけて( ・∀・)ノ
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