鈴ヶ岳・鈴北岳・御池岳周回


- GPS
- 06:06
- 距離
- 9.9km
- 登り
- 1,008m
- 下り
- 1,017m
コースタイム
天候 | 晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
主稜線はよく踏まれた登山道。登りと下りの支尾根は滑落や道迷いの恐れあり。 |
その他周辺情報 | 永源寺温泉。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
靴
ザック
昼ご飯
飲料
レジャーシート
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
GPS
ファーストエイドキット
保険証
携帯
時計
サングラス
カメラ
シュリンゲ
|
---|
感想
週末の行き先を考えているうちに、ちょうど今、ベニバナヤマシャクヤクの開花期だということに気が付いた。去年、学能堂山に行くつもりで調べていたが結局行かずじまいに終わっていたのだ。しかし、近ごろ学能堂山は有名になってこの週末は混雑するに違いない。近場で他にどこか自生地はないかと探してみたが、保護地以外ではピンポイントで行けるような場所が見つからない。ようやく探り当てたのが、近江の鈴ヶ岳であった。この山は鈴鹿山地の西端、琵琶湖の東岸にあるらしい。滋賀県の山は賤ケ岳と赤坂山辺りしか知らず、鈴鹿には足を踏み入れたことがない。だが、自宅から2時間余りで登山口に達することができるようなのだ。ヤマシャクヤクの類は開花しても強風や豪雨にあえばたちどころに散ってしまうので、開くそのタイミングを逃さないようにすることが肝要だ。絶対、今、でしょう。ということで、好天が見込まれるこの日、運試しを決行する。
調べ当てた情報によれば、ミノガ峠というところまで林道で上がり、そこから桜峠に登るということだったが、林道走行となると時間が読みづらく、また道路状況も不確かなので、北側を走る国道から登って周回するほうが確実であろうと思い、独自のルートで登ってみることにした。
登山口となる鞍掛橋手前に車を置いて、心地よい青空のもと、早速行動開始だ。ルートは国道が橋にかかるヘアピンの手前、小沢の西側についた細い踏み跡から始まる。テープマーキングがあり、奥には巡視路を示す「火の用心」プレートがある。草木に隠れてこの時には気づかなかったが、「鈴ヶ岳」と書かれた小さな木製標識もある。のっけから急登であるが、杉植林の中を行くため直射日光がなく、梅雨入り前の乾いた空気のおかげでそれほど汗をかくことなく高度を稼いでいく。意外に早く第一鉄塔に到達するが、うれしいことにその近くで今日のお目当てであるベニバナヤマシャクヤクの生育地があった。もう少しで開花という蕾。この地のベニバナヤマシャクヤクは全て白花系統であるとのことであったが、確かに蕾はいずれも白で、わずかに付け根辺りがピンクがかったように見える程度である。この先、開花したものがあることを期待してさらに登る。鉄塔の周囲は伐採されて岩の露出がよく見える。白っぽく滑らかな様子から石灰岩であることがわかる。石灰岩地のフローラが期待できそうだ。上の高圧線の鉄塔にはすぐに達する。ここまでは明確な巡視路で迷いようがないが、ここで道がなくなったかに見える。実際には鉄塔のすぐ上で右手に長いトラバースルートがついているのだが、伐採ボサなどに覆われてまるで見えない。かろうじてカラーマーキングが目に入り、そちらに進むと、踏み跡が現れる。下り加減に林下を横に横にとつけられている。左は岩場を伴った急斜面がせりあがり、その下をトラバースしてゆくのである。延々と横に進んで、少し傾斜が緩むあたりから左に曲がって登ってゆく。途中に赤ペンキがすっかり消えて白板と化した「火の用心」プレートがあり、ここも巡視路であることを知るが、整備がほとんどなされていない感じである。周囲にはフタリシズカが花を咲かせている。特に目立つのはトリカブトで、優占種となっている。登るにつれてバイケイソウが増えてゆく。要するに、毒草が支配的なのである。シカの食害を逃れる毒草の天国となっていることがわかる。この辺りからミズナラやオオイタヤメイゲツ、ウリハダカエデなどの目立つ若い温帯広葉樹林となり、明るさがかえってくる。見上げれば鉄塔がすぐそこに立っており、桜峠目前であることを知る。展望が開け、眼下には国道のうねうねと山腹を走る様子が手に取るように見える。一登りで桜峠に着く。この先はミノガ峠からのハイカーたちによって賑やかな道行となる。峠から鈴ヶ岳方面への登路には待望のベニバナヤマシャクヤクがパッチ状に生えているが、明日には開こうという蕾を付けたものはあっても開花した株は結局、見ることなく終わった。それは残念だが、まだこれだけの株が残っているということには励まされた。ひょっとすると、標高の低い「万野」ピーク辺りではすでに開花していたかもしれない。
登るにつれて周囲はバイケイソウの支配をますます強く受けて、食圧の高さを知る。周囲は温帯広葉樹林で石灰岩の露出があり、雰囲気は上々だが、登山者による踏みつけによって道は不必要に広がってしまっている。不思議なことに、道沿いにはおびただしい数のシソが芽を出していた。眺望を楽しみつつ、側面の急傾斜地とは対照的な丸みを帯びた稜線をゆるゆる登っていくと、さしたる苦労もなく鈴が岳の山頂に出る。小広い山頂には多数の石灰岩がオブジェをなして散在し、その一つに陣取れば、正面には伊吹山の細長く広がった姿が眺められる。東に目を転ずると、木のない三角形をした鈴北岳の山頂が顔を覗かせている。周囲にはウスバシロチョウがふらふらと舞う。ここのウスバシロチョウは、日本海側に分布する鱗粉の少ないもので、むしろ黒い。涼やかな風にあたりながら、青空のもと、kinuasaのお手製チキンカツサンドを頬張る。
お昼休憩の後は、かの鈴北岳に向かって稜線を進む。ヒルコバへの急降下のあと、鈴北岳への登りが始まる。やがて広葉樹林が矮化して最後には木がなくなり、苔に覆われた露地の山稜となる。日のガンガン当たる尾根の上が苔に覆われているというのは見慣れぬ光景だ。ところどころに石灰岩の露岩がある。振り返れば、もやっとした空気に阻まれつつも琵琶湖を臨むことができる。そして、鈴北岳山頂に立つ。ここで御池岳はあれかな、これかなとkinuasaと話していたら、親切な方が御池岳への行き方を教えてくださった。「今日はいかないんですけどね」と申し訳ない気分で私が言い、お互い苦笑するが、その方の人徳か、こちらも行ってみようという気がしてきた。そして、御池岳へと向かうのだった。歩き出してみると、ここが非常に面白い地形をしていることを知った。いわゆるカルスト台地なのだな、と。高原の園地であり、苔に覆われた広々とした平坦地に池が散在している。日本庭園と呼ばれているようだ。道はその間を縫うようにしてつけられている。広々とした園地の果てから広葉樹林帯に入り、登りとなる。登るにつれ、各所で立派なイケマが蔓を伸ばし始めている。これは、と蔓をたくさん摘み、帰宅後、湯がいて食した。実にうまかった。さてこうして登りついた御池岳、ひょっとして太平洋まで見渡せるか、と期待したが、それは無理というもの。帰宅後に知ったことであるが、この山が鈴鹿山地の最高峰ということだ。自分の無知を恥じる次第だが、今回登れたのもあの親切なお方のおかげである。改めて感謝したい。
さて、予定外の登頂によって時間をくったので、踵を返して鈴北岳へと向かう。途中、登山道のロープにasakinuが足をひっかけて、絵に描いたようにバタンと前向きに転倒したが、大したことはなく済んだ。鈴北岳からは石ザレの急な道を走るように下り、途中のコブからはマイナールートを拾って登山開始点近くへと降りる。この尾根がまた急峻で、慎重を期して下る。地図を見ると尾根の終わりはもっと急なのでどうなることかと心配になったが、途中、高圧線をくぐって後は巡視路となって道らしくなり、最後のところもジグザグを切っての下りとなった。それでも落ちれはおしまいという危なっかしい道で、林道着地点にはトラロープがぶら下げられている。そして無事、駐車地点に帰還を遂げたのだった。ベニバナヤマシャクヤクの花は拝めなかったが、実にバリエーションに富み、充実の山行を終えることができた。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する