金剛山(百ヶ辻〜シルバールート〜ちはや園地〜念仏坂〜百ヶ辻)


- GPS
- 04:33
- 距離
- 11.0km
- 登り
- 924m
- 下り
- 931m
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
金剛山シルバールートの真実
【プロローグ】
「経営者」というものは、「1年365日24時間、ひたすら会社の事を考えるのが仕事だ」と聞かされてきた。それが経営者の仕事なら、飽きっぽい自分には、「会社経営など到底無理だ」と思っていた。しかし、リストラに近い形で会社を辞めた自分にとって、会社経営しか残された道はなかった。実際、起業して分かった事は、「1年365日24時間、ひたすら会社の事を考えるのが仕事」ではなく、「1年365日24時間、ひたすら会社の事を考えてしまう」というのが本当のところだ。具体的にはどういう事かと言うと、暇があれば、とにかく会社に行くという事である。経営者の仕事は、ナンボでもあるのだ。そのため、山行きが遠ざかってしまい、気が付けば半年振りの登山になった。行き先は、金剛山シルバールート。ひたすらPCの前にしがみつき、ぶよぶよとした贅肉がたんまりついた今の自分にピッタリの自虐的なルートである。
【シルバールート】
ネットで調べると、シルバールートは、細尾谷ルートや木馬道ルートなどとも呼ばれており、その昔は、山で切り出した材木を橇に乗せて搬出していたらしい。つまり、橇が使える程度の緩い斜度で、シルバーでも比較的容易に登る事ができるルート、という事だ。
それを見て、自分が勝手に想像したのは、(ということは、まあ、寺谷ルートの軟弱版か)ということである。ご存じのように、寺谷ルートは整備が行き届いた、まさに初心者向けの安全この上ないルートである。実際、自分が登った時でも、老若男女、多くのハイカーが寺谷ルートを楽しそうに歩いておられた。(そんな寺谷ルートよりも、まだ、軟弱なルートとは・・・)、半年振りだというのにも関わらず、行く前から俺はシルバールートをかなりナメテいたのである。
河内長野駅から、8時30分発金剛山ロープウェイ行のバスに乗る。車内は寿司詰め満員状態だ。そのバスに最後に乗った俺は、必然的に昇降口のところでドアに身体を預けるような恰好になり、バスがカーブを曲がる度に手足を踏ん張って、左右の揺れにひたすら耐えるのだ。そんな拷問が約40分。バスは金剛山登山口に止まり、そこで多くの乗客がバスから吐き出されるように降りて行く。残った自分は、空いた席に座り、終着のロープウェイ前を目指す。
百ヶ辻からゲートを抜け、セメント舗装された伏見峠道(念仏坂)を登っていくと、直ぐ左手に、文殊尾根ルートの入口が見える。そこからさらにコンクリ道を登っていくと、今度は寺谷ルートの取り付きが現れる。多くのハイカーは、ここから寺谷ルートに入っていった。やはり、人気のあるルートなのである。
さて、ここからは、未知のルートである。念仏坂をゆるりゆるりと登っていくと、左手に「通行禁止」と書かれた大きな看板、よく見るとその看板の上にマジックで「↑シルバーコース」と書かれている。「通行禁止とちゃうんかい!」などと突っ込みながら、矢印の方向に進んでいく。
直ぐにいきなりの大岩出現、トラロープに手をかけながら、大股でグワシグワシと登っていく。直ぐ横には、マイナスイオン全開の小さな滝が流れており、写真を撮りたいのだが、なんせ足場が悪い。(シルバールートと言いながら、結構、シルバーで無いところもあるんやなあ)などと思いつつ、(多分、入口のここだけやろう)と勝手に想像して先に進む。
だが、その先も、足場の悪いガレ道が続いたり、トラロープのある岩場があったり、倒木が折り重なった谷筋を遡行したりと、なかなかワイルドな箇所が、頻繁に現れるのだ。途中、休憩場の手前のところで、紛らわしい分岐地点に出くわした。左は山裾を登って行き、直進は小さな橋を渡ってそのまま谷筋を進むようになっている。辺りを見回したが、行き先を示すような目印もない。仕方が無いので、そのまま直進したのだが、少し行くと道がなくなり(正確には、道はそのまま谷筋に突き当り)、よっぽど引き返そうかとも思ったのだが、少しすると、人が登って来るのが見えたので、まあ、とにかく、行けるところまでいこう、と、そんな気で歩いていった。
その辺りからは、ほとんどガレ石の上を歩いていったような気がする。谷筋を流れる川では、何度も足を洗わそうになった。いつもは、ツオロミブーツというハイカットブーツを履いてくるのだが、今回は、メドーウォーカーというモンベルのローカットブーツを履いて来たのだ。メドーウォーカーは軽くて大変履きやすいのだが、ガレ場や谷筋の遡行は、足を取られそうになって、ちょっとしんどかった。
ウーム、シルバールートは寺谷ルートの軟弱版などと勝手に想像していたのだが、事実は全く違うようだ。ハイカーのために、過剰なまでに整備された寺谷ルートと比べて、このシルバールートは、ほとんど人の手が入っていないルートだ。唯一、シルバールートだと感じさせられるものは、丸太ベンチの上のシートに書かれた「ゆっくり休んだらボチボチ登ってください」と手書きで書かれたメッセージのみである。後は、「まあ、登りたきゃ登れ」的な扱いである。少し行くとその理由が分かった。「立入通行厳禁。登山者へのお願い」という立て看板が立てられていたのである。その看板には「伐採搬出作業による倒木落石等の危険あり、此処より当山林への立入進入通行全終日禁止。通行せし者の一切の事故の責任は負いません」と書かれてあった。(ウーム、そういうことか、しかし、ちょっと待てよ)よく見ると、期日は、平成14年から平成15年となっている。今から10年前だ。
これは推測だが、もしかしたら、山主さん的には、ハイカーが歩くのをあまり好ましく思っていないのかもしれない。それが、このルートが手つかずな状態となっている理由かもしれない。
寺谷ルートと比較してどちらが良いかは、人それぞれだろう。ただ、ハイカーの数は、断然、寺谷ルートのほうが多い気がする。実際、今回、このルート上で出合った人は、10人ぐらいだった。(その内の一人、中学生ぐらいと思われる少女が、自分の横を追い抜き、あっと言う間に、ガレた谷筋をまるで風のように消えていったのには驚いた)
尚も谷筋を詰めて行くと、正面に水場のある休憩場所があった。どうやら谷筋はここで終りのようである。少し休憩していると、一人の女性が上から下りてきた。頂上が後どれくらいなのか尋ねると、もう少しとの事。やれやれと思い、「ここから下は結構なガレ場ですよ」と言うと、その女性も「どこがシルバールートですかね」との返事。自分も全く同じ気持ちだったので、思わず笑ってしまった。
金剛山シルバールートの真実とは、この女性が発した言葉「どこがシルバールートですかね」につきるのだった(笑)。
【エピローグ】
ちはや園地の大屋根広場の下で飯を食おうと思い、ベンチに腰かけて、ザックからワラワラと荷物を取り出していると、正面のベンチにどこかで見たような方がおられるのに気が付いた。よく見ると、自分が毎週かかさず拝読させていただいてる「ザ・金剛登山」というブログによく登場されておられるOさんであった。Oさんは連れの方二人とおいしそうにラーメンを啜っておられる。もちろん、Oさんは私の事など全く知らず、いきなり、挨拶するというのも、失礼な気がしたので、自分は黙ってそのまま飯を食った。(先ほどヤマレコを確認すると、当日のOさんレコが掲載されていました)
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する