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Yamareco

記録ID: 4460624
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
甲斐駒・北岳

鳳凰三山強行日帰り

2022年07月02日(土) [日帰り]
 - 拍手
GPS
10:58
距離
17.5km
登り
2,122m
下り
2,143m

コースタイム

日帰り
山行
9:08
休憩
1:51
合計
10:59
5:35
81
青木鉱泉
6:56
7:05
75
8:20
8:28
19
8:47
8:47
45
9:32
10:06
46
10:52
11:16
4
11:20
11:25
31
11:56
11:57
24
12:21
12:31
23
12:54
13:04
47
13:51
13:59
81
15:20
15:21
33
15:54
15:55
39
16:34
青木鉱泉
★「歩くペース」は0.7〜0.8。GPS不調で表示されなかった。ほぼコースタイムの75%
AKU
天候 晴れ/雷雨/晴れ
過去天気図(気象庁) 2022年07月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
青木鉱泉:駐車料金1日800円。早朝は建物右に回り込んだ「受付」備え付けの用紙に記入し、お金と一緒に封筒に入れます。
コース状況/
危険箇所等
・ドンドコ沢コース:険しい道で下りは難儀しそう。最初の渡渉点と最初の滝、鳳凰小屋手前の涸れ沢では一瞬、行く手に迷ったものの、ピンクテープなどが豊富で道迷いの恐れは少ない。
・中道コース:ひたすら樹林帯を下る長く単調な道。こちらはこちらで登りに使いたくない
道の駅にらさきで4時起床。適当に撮った右の木の上のピークにオベリスク?
2022年07月02日 04:36撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 4:36
道の駅にらさきで4時起床。適当に撮った右の木の上のピークにオベリスク?
青木鉱泉。誰もいなかった
2022年07月02日 05:28撮影 by  DSC-HX90V, SONY
1
7/2 5:28
青木鉱泉。誰もいなかった
快晴! 砂防堰堤の上は方角的に薬師ヶ岳か?
2022年07月02日 05:46撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 5:46
快晴! 砂防堰堤の上は方角的に薬師ヶ岳か?
最初の渡渉。支沢なのに「渡るの?」と一瞬戸惑った
2022年07月02日 06:01撮影 by  DSC-HX90V, SONY
1
7/2 6:01
最初の渡渉。支沢なのに「渡るの?」と一瞬戸惑った
下がえぐれて剣呑。遠からず崩落か
2022年07月02日 06:20撮影 by  DSC-HX90V, SONY
1
7/2 6:20
下がえぐれて剣呑。遠からず崩落か
最初の滝。下へ降りて見物するつもりが、
2022年07月02日 06:36撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 6:36
最初の滝。下へ降りて見物するつもりが、
渡って右岸を登るのでした(ロープ有)。
2022年07月02日 06:38撮影 by  DSC-HX90V, SONY
2
7/2 6:38
渡って右岸を登るのでした(ロープ有)。
自動的に滝見台コースへ誘導
2022年07月02日 06:53撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 6:53
自動的に滝見台コースへ誘導
南精進ヶ滝。さすが落差、流量ともすばらしい
2022年07月02日 06:54撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 6:54
南精進ヶ滝。さすが落差、流量ともすばらしい
今日は時間と体力の温存が肝要なのでこの滝はパス
2022年07月02日 07:23撮影 by  DSC-HX90V, SONY
1
7/2 7:23
今日は時間と体力の温存が肝要なのでこの滝はパス
鳳凰の滝コースが合流した先の大岩で皆さん休憩中
2022年07月02日 07:38撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 7:38
鳳凰の滝コースが合流した先の大岩で皆さん休憩中
白糸の滝は少しだけ近寄ってお茶を濁す
2022年07月02日 08:20撮影 by  DSC-HX90V, SONY
1
7/2 8:20
白糸の滝は少しだけ近寄ってお茶を濁す
険しい登りが続く。赤ペンキやテープの道しるべは豊富
2022年07月02日 08:23撮影 by  DSC-HX90V, SONY
2
7/2 8:23
険しい登りが続く。赤ペンキやテープの道しるべは豊富
五色滝も遠望で観賞。凄い落差です
2022年07月02日 08:46撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 8:46
五色滝も遠望で観賞。凄い落差です
そして行く手はるかの雲間にオベリスク視認(右上)
2022年07月02日 09:15撮影 by  DSC-HX90V, SONY
1
7/2 9:15
そして行く手はるかの雲間にオベリスク視認(右上)
登山道はほぼ涸れた沢に合流。概ね左岸伝いに歩く
2022年07月02日 09:16撮影 by  DSC-HX90V, SONY
2
7/2 9:16
登山道はほぼ涸れた沢に合流。概ね左岸伝いに歩く
シロバナノヘビイチゴかな
2022年07月02日 09:17撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 9:17
シロバナノヘビイチゴかな
見上げれば、ぬっと現るオベリスク
2022年07月02日 09:18撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 9:18
見上げれば、ぬっと現るオベリスク
ただし望遠で。まだこんなに遠い
2022年07月02日 09:23撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 9:23
ただし望遠で。まだこんなに遠い
こじんまりした鳳凰小屋。「最後の水場です」と声をかけてくれました
2022年07月02日 10:05撮影 by  DSC-HX90V, SONY
3
7/2 10:05
こじんまりした鳳凰小屋。「最後の水場です」と声をかけてくれました
コーラ以外の泡の出るヤツも冷えていますが今は我慢
2022年07月02日 10:05撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 10:05
コーラ以外の泡の出るヤツも冷えていますが今は我慢
じきにダケカンバ林となり、足元が砂地に
2022年07月02日 10:26撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 10:26
じきにダケカンバ林となり、足元が砂地に
音に聞く地蔵ヶ岳間近の砂地獄。きつい
2022年07月02日 10:31撮影 by  DSC-HX90V, SONY
3
7/2 10:31
音に聞く地蔵ヶ岳間近の砂地獄。きつい
ほぼ到着。二股を地蔵ヶ岳=オベリスクへ
2022年07月02日 10:37撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 10:37
ほぼ到着。二股を地蔵ヶ岳=オベリスクへ
観音ヶ岳方面を振り返る
2022年07月02日 10:43撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 10:43
観音ヶ岳方面を振り返る
オベリスクの下にある地蔵群
2022年07月02日 10:54撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 10:54
オベリスクの下にある地蔵群
ちょっと登ってみる
2022年07月02日 10:54撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 10:54
ちょっと登ってみる
中段にある祠。左手の外に新しいお地蔵さんがあった
2022年07月02日 11:01撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 11:01
中段にある祠。左手の外に新しいお地蔵さんがあった
てっぺんは残置ロープもなくなり素人は登攀不能とのこと
2022年07月02日 11:02撮影 by  DSC-HX90V, SONY
1
7/2 11:02
てっぺんは残置ロープもなくなり素人は登攀不能とのこと
この辺で引き返します
2022年07月02日 11:06撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 11:06
この辺で引き返します
下を見れば砂地が賽の河原へと続く
2022年07月02日 11:07撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 11:07
下を見れば砂地が賽の河原へと続く
お地蔵さんが並ぶ賽の河原でオベリスクを振り返る
2022年07月02日 11:17撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 11:17
お地蔵さんが並ぶ賽の河原でオベリスクを振り返る
花びら8枚のツマトリソウ?
2022年07月02日 11:20撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 11:20
花びら8枚のツマトリソウ?
赤抜沢ノ頭も立派なピークでした
2022年07月02日 11:24撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 11:24
赤抜沢ノ頭も立派なピークでした
あいにく西側の南アルプス(これは北岳)は雲の中
2022年07月02日 11:25撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 11:25
あいにく西側の南アルプス(これは北岳)は雲の中
キバナノコマノツメ
2022年07月02日 11:43撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 11:43
キバナノコマノツメ
赤抜沢ノ頭(左)と地蔵ヶ岳を振り返る
2022年07月02日 11:52撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 11:52
赤抜沢ノ頭(左)と地蔵ヶ岳を振り返る
鳳凰小屋からの道を合わせた区間も砂地だが傾斜は気持ち穏やか
2022年07月02日 11:57撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 11:57
鳳凰小屋からの道を合わせた区間も砂地だが傾斜は気持ち穏やか
コイワカガミの群生。ちょこちょこ生えていたが、こんな大集団はここだけ
2022年07月02日 12:02撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 12:02
コイワカガミの群生。ちょこちょこ生えていたが、こんな大集団はここだけ
振り返って。砂地が小屋からの道との合流点。スケール感がつかみにくいが右下の木の横に人が2人
2022年07月02日 12:05撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 12:05
振り返って。砂地が小屋からの道との合流点。スケール感がつかみにくいが右下の木の横に人が2人
遠雷が響きだしたが、観音ヶ岳はまだ遠い
2022年07月02日 12:06撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 12:06
遠雷が響きだしたが、観音ヶ岳はまだ遠い
観音登頂。雷が近づき、ポツリと降り出した
2022年07月02日 12:22撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 12:22
観音登頂。雷が近づき、ポツリと降り出した
急ぎ出発すると、かすかに下界が見えた
2022年07月02日 12:30撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 12:30
急ぎ出発すると、かすかに下界が見えた
雷は間遠だが雨が本降り化して薬師ヶ岳
2022年07月02日 12:54撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 12:54
雷は間遠だが雨が本降り化して薬師ヶ岳
雨カバーを付けたリュックとモンベル傘。上下レインも着用中
2022年07月02日 12:54撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 12:54
雨カバーを付けたリュックとモンベル傘。上下レインも着用中
薬師山頂にもミニオベリスクがある
2022年07月02日 12:54撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 12:54
薬師山頂にもミニオベリスクがある
すぐにこんな道となり、レイン上を脱いで傘も畳む
2022年07月02日 13:36撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 13:36
すぐにこんな道となり、レイン上を脱いで傘も畳む
御在石到着。レインズボンも脱ぐ。まだ先は長い
2022年07月02日 13:51撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 13:51
御在石到着。レインズボンも脱ぐ。まだ先は長い
林道交差(とても林道には見えないが)
2022年07月02日 15:19撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 15:19
林道交差(とても林道には見えないが)
やっと平地に到着。なにやら廃墟も見える
2022年07月02日 15:51撮影 by  DSC-HX90V, SONY
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7/2 15:51
やっと平地に到着。なにやら廃墟も見える
もう一軒には「大昭和」の文字
2022年07月02日 15:53撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 15:53
もう一軒には「大昭和」の文字
ゴールの青木鉱泉まではまだ長い林道がある
2022年07月02日 15:55撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 15:55
ゴールの青木鉱泉まではまだ長い林道がある
名残の地蔵ヶ岳と甲斐駒(車で韮崎へ下る途中撮影)
2022年07月02日 17:06撮影 by  DSC-HX90V, SONY
7/2 17:06
名残の地蔵ヶ岳と甲斐駒(車で韮崎へ下る途中撮影)

装備

個人装備
ヘッドランプ 予備電池 1/25000地形図 コンパス 筆記具 保険証 飲料 ティッシュ バンドエイド タオル 携帯電話 計画書 雨具 防寒着 ストック 水筒 時計 非常食 緊急保温シート 着替え ツェルト ファーストエイドキット 医薬品 カメラ GPS

感想

 産業医にメタボ対策で促されて登山を始め、はや足かけ20年。還暦を過ぎると何でもないのに膝が痛んだりして、無理が効くうち”日帰り登降2000m”に挑戦しようと思い立った。鳳凰三山をターゲットに日の長い梅雨の中休みに・・・のつもりが早々と梅雨が明けてしまったが、計画通り金曜の夕刻、山梨県へ車を走らせた。道の駅にらさきで仮眠し、4時起きで青木鉱泉へ。早寝したかったが、猛暑で車の窓を開けてもなかなか寝付けないのが誤算だった。
 青木鉱泉への林道がいきなりダート区間なのには驚いたが、すぐに舗装路に戻り、既に多数の車が並ぶ鉱泉駐車場に到着。駐車料金を払い、出発する。天気は快晴で今日も猛暑日予想。標高1100mから歩くなら暑くはなかろうと踏んだのは甘かった。砂防ダム付近の陽だまりでじっとりと汗が吹く。樹林帯に入ってホッとしたが、すぐに急登が始まって汗が止まらない。
 支沢の渡渉で「え、右岸に渡るの?」とちょっと逡巡。ドンドコ沢がこんな細流の筈はないと思い至り、ひと跨ぎに渡る。1時間ほど歩いて今度は滝の音が近づき、休憩するハイカーが見えた。水は少ないがそこそこ落差のある滝が見下ろせる。「何滝だろう?」と見物のつもりで近づいたが、トレランが一人右岸に渡って岩壁を登って行った。ヤマレコアプリでこちらがルートと確認し、岩に取りついた。確かに険しいルートだ。
 汗を絞られながら登っていくと、南精進ヶ滝の指導標があった。滝の音がして木々の向こうに雄大な落水が覗く。岩場を登って左へへつると全容が見渡せた。戻ってもう一段岩をよじると、今度は中段の滝壺が見える見晴らし。こちらが本来の滝見台なのだろう。
 滝はまだまだ続く。次は鳳凰の滝だが、体力温存のためショートカットを選択。滝のコースと合流した先の大岩で登山者が何人も休んていた。
 白糸の滝分岐ではそこから滝が透かし見える。先行者はここで写真を撮って良しとしたが、当方は少しだけ下ってもう少しよく見える所まで頑張った。
 最後が五色の滝で、落差はこれまでで一番ではないか。ただ、こちらも遠くから望むだけで失礼した。
 コメツガの林が開けて道が沢と合流すると、はるか見上げた先に雲間からオベリスクが浮かび出た。ピンクテープを頼りに沢伝いに進み、やがて再び右手の林に入る。しばらく進むと後でトイレと知った建物がまず見えて、こじんまりした鳳凰小屋に着いた。
 小屋の女性に「日帰りですか」「最後の水場てすよ」と声を掛けられた。ありがたく給水させていただくつもりで、急登の負荷を軽減するため水は少なめの1.5Lしか携行していない。早めだがここで昼食とした。寒くないのでカップ麺はやめてお握り2個とコンビーフで済ます。
 小屋からしばらく歩くと前方が明るくなった。林相がダケカンバに一変し、何より足元が白っぽい砂に変わっている。そのダケカンバもすぐになくなって、むき出しの砂地になった。目線を上げれば立派なオベリスクが目と鼻の先のように見える。
 が、名にし負う地蔵の砂地獄はここからが本番だった。踏めばズブリと靴が潜り、勾配も一段と増す。夏の日差しが照りつけ、空気だって平地の四分の三しかない(実測750hpa程度)。
 前後の登山者ともども歩いては止まりを繰り返し、やっとの思いで地蔵ケ岳山頂オベリスクの下に辿り着いた。先ほど軽やかに抜いて行った男女4人のトレランが、その岩から降りて来る。聞くと、てっぺんの二枚岩はとても登れないとのこと。別の登山者が、以前あった残置ロープが撤去されたので無理だと教えてくれた。
 リュックを置いて少し登ってみた。中段に古い小さな石の祠と、少し離れて新しい地蔵像がある。その上は多少険しくなるが、下り方を確認しながら二枚岩へ接近し、下界を見下ろした。賽の河原までは見通せるが、雲が多くて南アは望むべくもなく残念だ。
 さて、もう十分歩いた気もするが、今日はこれからが長い。賽の河原のたくさんの地蔵を見て、赤抜沢ノ頭へ登り返す。右手、西の方に南ア主稜らしき山体が見えるが、上部は雲に隠れて判然としない。行く手の観音ヶ岳もガスに見え隠れしているが、一度もったいないほど下らねばならない。最低鞍部から登る稜線は地蔵ヶ岳同様、風化した花崗岩らしい白っぽい砂利が目立つ。
 鳳凰小屋からのショートカットを合わせる付近も、地蔵山頂に似た砂地獄だった。息が続かず、コイワカガミなどの高山植物に心を和ませながら若い登山者たちに道を譲りつつの道中となる。そこへゴロッと腹に響く不吉な音。西丹沢で驚かされた演習場の砲声などではなく、正真正銘の雷鳴だ。
 まずいことになったが、進むより仕方ない。時々遠くから音が聞こえるだけなので、差し迫った危険はないだろう。重くなり始めた脚に鞭打つようにして観音ヶ岳に到着すると、間もなくポツリと雨粒が落ち始めた。小休止して先を急ぐ。相変わらず北アの燕岳あたりを思わせる白い砂の上に、ほぼフラットな尾根道が続くのがありがたい。
 12時半を回り、いよいよ雨が無視できない降りになってきた。ザックにカバーをかけ、取り急ぎレインの下をはいて傘を取り出す。この気温でレインの上は着たくないので、風がない場合は傘を差すに限る。下り基調の尾根を急いで13時前に最後の薬師ヶ岳に到着した。ここもミニオベリスク状の岩が目立つ広々した山頂だ。
 雨は強弱を繰り返しており、ここからは下りなのでレインの上を羽織ってみる。「青木鉱泉」と書かれた道へ向かうと、ほどなくコメツガかシラビソの林の中に入った。結局、暑くなったのでまずはレインの上を脱ぎ、続いて傘を畳んでリュックの外ポケットに差し込んだ。雨は弱まってきたが完全にはやまず、遠雷も思い出したように轟いている。
 珍しく登ってくる人がいた。同世代の2人組で、見るとお一人はレンジャーの腕章を付けている。休憩がてら稜線の雷雨の様子や甲府の温泉の話などについて、情報交換させてもらった。薬師ヶ岳の小屋に泊まるとのこと。
 御座岩に着き、レインの下も脱いだ。雨は上がって、いくらか明るくなってきたようだが、足が疲れてきた。その後も道は一向に乾かず、むしろ土が余計湿り気を帯びてきている。どうやら稜線よりこちらの方が本降りの雨に遭ったらしい。濡れた木の根は非常に滑りやすく、分かっていながら何度も足を取られた。 
 雨装備の出し入れをするうちにどんどん追い抜かれ、登りの二人以外ずっと人影を見ていなかったが、林道出合いの手前で若者二人に追いついた。急な下り勾配が緩み、休憩していた二人を追い抜く。林道の先はがぜん暗い森となり、足元も湿って一層滑りやすくなった。前方に見覚えのあるウェアの男性が見え、勾配の加減で見えなくなった際にザザッとスリップの音が聞こえた。
 ほどなく追いついて声を掛ける。地蔵から抜いたり抜かれたりを繰り返してきた八王子の人で、けがは無かったようだが「もう足が限界です」と嘆いた。ネットで見て10時間の日帰りコースのつもりで訪れたが、「どうもトレランの人の記録だったみたい」とのこと。あと250mくらい下れば林道だと励ますと、「まだそんなに・・・」と絶句していた。
 こちらも本音は同様で、いい加減飽きてきた。延々と続く山腹のジグザグ道を下り、薬師から3時間かけてようやく林道に降り立つ。ついて来た件の男性に「あとは林道歩きだけですよ」と声を掛けた。林の中に「大昭和」の文字が見える廃墟がある。大昭和製紙関係の保養所跡だろうか。
 さて、その林道歩きも決して短くはない。途中、沢を渡渉して青木鉱泉へショートカットできる道があり、目印の赤ペンキの木も見つけたが、雨の後の増水を考えてそのまま林道を行くことにした。沢を渡る橋の手前で足音がして、男性が追いついてきた。きつかったこの山の話などで盛り上がり、最後は気持ちよく駐車場へゴールすることができた。

※GPSロガーが不調で青木鉱泉5:35スタートから13分間ログがなく、その後も大きくルートを外れて白糸の滝手前付近で正常化。このため、南精進ノ滝までは自動入力、そこから8時3分までのルートは手入力による。ルート外に自動配置された前半の写真が狂ったログの残骸。

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