【奥越】打波川・草池谷左俣から薙刀山
- GPS
- --:--
- 距離
- 14.2km
- 登り
- 1,315m
- 下り
- 1,304m
コースタイム
- 山行
- 13:50
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 13:50
天候 | 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2022年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
【美濃又川沿いの林道(アプローチ)】 ・ 中洞集落跡から800mほど入ったところで大きな崩落があり,それ以降は崩壊や藪化がひどいが,釣り人などの出入りがあるらしくシングルトラックが続いていて歩行可能。 ・ 今回は取水施設のある二俣から左俣(中ノ水谷)に沿った林道を進んだが,右俣(三ノ又谷)の林道以上に藪化が激しいものの獣道が続いており何とか歩ける。 【草池谷左俣】 ・ 薙刀山のわずかに南に突き上げている谷。10〜20mクラスの滝が結構出てきて,しかも両岸が手掛かりの乏しい切り立った岩壁や泥壁のことが多く,藪も濃いため高巻きにはかなり苦労させられる。さらに詰め上げた後の稜線は深い藪で登山道が皆無のため,下山をどうするかも考えないといけない。遡行難度はこの流域としては高めで,野性味のある沢登りをしっかりと楽しめる。 ・ 単独のため,ほとんどの大きめの滝は高巻いたが,ホールドが豊富で登れそうな滝も多いため,確保が取れるなら滝を直登しても楽しいでしょう。 ※ なお,今回誤って一時的に右俣に入ってしまいましたが,右俣も直登できる滝や立派な25m滝が現れるなど,面白そうでした。一部,岩に湯の花が付着している区間もあり,温泉(冷たいので,冷泉か)も湧いているようです。 【新谷(下山ルート)】 ・ 薙刀山の北西に突き上げている谷。穏やかな谷で下降路にはぴったり。2,3ほど巻き下りが必要な滝があるが,あとはクライムダウン可能で,懸垂下降不要で降りることができた。下部は優美なナメ滝が多く美しい。 ・ 薙刀山からこの谷に降りる際の注意点としては,誤って岐阜県側の谷に降りてしまう可能性が高いこと。地形図をよく見ると分かると思うが,薙刀山の北側の顕著な谷状地形に入るとほぼ確実に岐阜県側の谷に入ってしまうので,意識して北西側の斜面を下りていく必要がある。笹薮が激烈なのでルート維持が難しく,注意が必要。 ・ なお,新谷を下り切って中ノ水谷に合流してからは,見事な20m滝が出てくるが,これは左岸から大きめに巻き下ることができる。また,草地谷との合流点手前で巨大なスリット堰堤が出てくるが,これは懸垂下降が必要(高さは10mほど)。 ・ このほか,下山路としては,知土谷(薙刀山の西にほぼ直接突き上げている谷)も滝が少ない谷なので選択肢になりうる。ただし山頂直下に崖があるのでうまくかわす必要がある。また,草地谷左俣を下降してもいいと思うが,大きな滝が多く,沢床近くでは支点にできる丈夫な木も乏しいため,時間に余裕を見たほうがよさそう。 ※ さっそくメジロアブ(イヨシロオビアブ)が出始めています。これからこの周辺の沢に入渓される方はご注意を。 |
写真
装備
備考 | ・ 沢足袋使用。ぬめりはそれほどひどくない印象だったため,ラバーソールの沢靴でもいいかもしれない。 ・ 40mロープ携行。草池谷左俣では使用しなかったが,下山時に中ノ水谷のスリット堰堤での懸垂下降で使用(懸垂距離10mほど)。 |
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感想
「…その山あいに巨大な栃ノ木が一本立っていた。目通りは四メートルもあったろうか,分かれている大枝が,普通の栃の大木くらいなのであった。見上げているだけで吸い込まれそうな気持ちになる。…薙刀山と聞けば,森の精のようだった大栃が浮かんでくる。」
増永迪男氏の「福井の山150」(静かな詩情を湛えた文章と煙るような空気感の写真がうつくしい本)の一節である。今回の山行を計画したのは,増永氏が草池谷の源頭で見たというこの大トチノキに会いたくなったからだった。積雪期の薙刀山しか登ったことのない私には,この「森の精」のような大トチノキに会わなければ,本当の薙刀山を知ったことにはならないような気がした。
草池谷の左俣は,想像以上に厳しい谷であった。暗く切り立った谷にすらりと白く落ちる直瀑が次々に前途を阻み,その度に草付きや灌木にかじりつきながら危うい高巻きを重ねた。近年,人が分け入った形跡は皆無で,自分が薙刀山という奥深い山の,そのさらに奥深いところに入り込みつつあることを,滝を乗り越えるたびにひしひしと感じた。
7月の薙刀山は,背丈を越える一面の笹薮に覆われていた。先日登った小白山のような気持ちの良い腰丈の笹原の稜線を期待していたのだが,薙刀山の藪はあくまで頑強で,生き物の侵入を拒絶しているようにすら感じられた。だだっぴろい稜線の,いつ終わるとも知れない深い薮の中へとひとり突入するときの心境は,無事登り切ることができるか五分五分の滝のホールドに最初の一手を掛けるときや,先がどうなっているか分からない不気味なゴルジュの淵の中に飛び込むときの心持ちとそう変わらない。ひとたびその中に入ってしまえば,同じ場所に引き返すことが困難だからだ。それでも先に進もうとするのは,藪漕ぎ自体が好きだからというよりは(もちろんそれもあるけれど),…藪の向こうに誰も見たこともないような風景が広がっていることをどこかで夢見ているからだと思う。
ようやくたどり着いた薙刀山の山頂は,深い笹藪で立錐の余地もないほどで,切り開きすらなく,三角点を見つけることも叶わなかった。背伸びすると笹の葉越しにようやく見える野伏ヶ岳や日岸山が,照りつける夏の日差しの下で,緑の笹原に覆われた堂々たる山体を黙って輝かせていた。
ところで,大トチノキはどうなったか。草池谷の最後の滝を登り切ってたどり着いた源頭は,確かにブナやトチノキの大木の森に包まれていた。しかし残念ながら,これは,と目を見張るような巨樹に出会うことはできなかった。奥美濃の川浦谷・銚子洞の沢ノ又で出会ったような圧倒的な大トチノキを夢見ていたのだが,想像を膨らまし過ぎてしまったのだろうか。それとも,深い藪の中で枝谷の選択を間違え,見逃してしまったのだろうか。後者だと信じたい。私が出会えなかった大トチノキは,この谷の源頭のどこかで,本当に森の精のように,今もひっそりと聳えていると。今度は紅葉の頃に,また訪ねに行きます。
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